双子の島の近くにはトゥルメニア以外の国はない。この二つの国の民は、外の国にはさほど興味もないらしく、たまに来る商船以外の出入りがない。その話を聞いた順は早速、その商船に潜り込ませてくれと頼んだ。ワイルは確かに可愛かったのだが、順の好みから若干外れていたからだ。
ワイルが手配してくれたのは意外と大きな商船だった。船員として雇われることになった順は食事係として、海の上で多くの人々のために毎日毎日、料理をした。そして航海中に初めて……化け物と遭遇した。
この龍宝珠界には向こうの世界にはいない、異形の生物が多く存在する。だが海から突然出てきた巨大なそれを見た時、順は驚くより先に呆れた。何しろ皆が化け物と叫んだそれは、サイズはともかく、どう見ても蟹にしか見えなかったからだ。
だが船を圧倒的に上回るサイズの蟹だ。さすがにハサミで突かれたり、いきなり体当たりでもされれば船がひっくり返ってしまうかも知れない。たまたまその商船には魔法士なる者も乗ってはいたのだが、どうも戦闘慣れしていなかったらしく、蟹を見た瞬間に気絶して戦闘を放棄してしまった。順は仕方なく力を使って蟹を丸焼きにした。こんがりと焼けた蟹は一瞬で絶命してしまったらしい。海に浮かぶ巨大な蟹に船を寄せ、食事係たちは総出で蟹の殻を剥がし、中身をありったけ拾い上げた。焼けた蟹の身はとても美味かった。
そのことがあってから、順は商船を操る船長に気に入られ、食事係兼、戦闘要員に任命されることになった。他の船員たちからは羨望の目で見られ、順の給金は倍以上に跳ね上がった。だが、いいことばかりではなかった。確かに順は船長には気に入られたのだが、その気に入られ方もちょっと特殊だった。夜ごとベッドに引っ張り込まれるのだからたまったものではない。だが順はその手のケースにはいいかげん慣れていたので適当に船長の相手もした。
数ヶ月を経て船は無事に陸にたどり着いた。順はしっかりと給金を手に入れ、意気揚々と船を下りた。
そこは水の国、ウルスマだった。商業も活発な国らしく、港は多くの人々で賑わっていた。空腹を満たすために順はまず、食堂に向かった。港には漁師や買い付けの商人たちを相手にする店が多く出されている。そこでなら情報も手にはいるだろう。順はそう思い、目に付いた店に向かった。
ドアを開けた途端に何かが飛んでくる。順は冷静にそれを指の間に受け止め、泡を食って飛び出してきた男に道を譲った。どうやら店の誰かにたたき出されたらしい。逃げる男を振り返ってから、順は店内に目をやった。
客は誰もいなかった。肩を怒らせ、エプロン姿で突っ立っていたのは一人の美少女だった。順は口笛を吹き、指の間に受け止めた包丁を少女に返した。そこで漸く少女は順がいたことに気付いたらしい。慌てたようにいらっしゃいませ、と挨拶をし、包丁を受け取った。
もちろん、その少女とも懇ろになった訳だが、そこで順は困った問題にぶち当たった。どうもこの店は少女が一人で切り盛りをしているらしい。包丁を投げつけられた男がどんな無礼を働いたのかを少女は説明しなかった。だが、順にはおおよその見当が付いた。少女の作る飯が恐ろしく不味かったからだ。
順は腰を据えて少女に料理を教えることに決めた。この世界の食材は向こうのそれとは多少、形や質が違うが似ていない訳ではない。調味料なども名前や形が違っても使い方は大差ない。元々、料理が好きなこともあって、順は少女に基礎から教えることにした。
数ヶ月後、店は以前とは比べものにならないくらいに繁盛することになった。泣いて引き留める少女に別れを告げ、順は店を後にした。少女と一緒にいる間に色んな情報が手に入った。とにかく神殿を目指す必要がある。そこに必ず守護神がいるはずだ。だが、普通に行ったのでは神殿には通して貰えないだろう。そこで順はまずは国の中心地である街を目指すことにした。
まあ、手間は省けたけどね。そう、心の中で呟いて順は箸の先でパスタをつまんだ。平たい板状のパスタを箸で食われるのが気に入らないのか、常磐が眉を寄せて順の手元を見る。だが順はそれを無視して箸でパスタを口に運んだ。
その街にはやけに活気があった。城下町ということで人の出入りが多く、建ち並ぶ店も港町とは異なり随分と派手だった。どうやらウルスマという国は巨大な色町も抱えていたらしい。城下町の半分以上がその手の店で埋め尽くされていた。そんな所を訪れた順は、真っ先に欲求を満たすために色町方面に足を向けた。
そこでラスティと出くわしたのだ。面識はなかったが、順には一目でラスティが守護神格の者だと判った。ラスティは逆に順には見覚えがあったらしい。会った瞬間に硬直していた。何しろラスティは色町の店の奥で、女とよろしくしているところで順と出くわしたのだ。
順の視点で進んでいますが早く巻いてるので、エロはあっても表現なしですw
その合間で機関車のことを必死に話してるラスティw
多分、順は聞いてないww