エロシーン……乳が出てはいるんですけども。
違うのかな……。
『それだけはやめときなさい。そのうち食われちゃうわよ』
佑が頭を抱えて呻き混じりに言う。どういう意味だ、と水輝が憮然と問い返した直後、理子はにっこりと笑って言った。
『だって予行演習になるでしょ? せっかくその気になっても、理子がへたくそだったら幻滅されそうだもの』
子供の姿に似合わないことを言って理子がまた佑の乳に吸い付く。水輝は呆れた顔をして理子を見下ろした。
『誰に似たのかしら……』
深々とため息を吐いて佑が呟く。水輝はつられてため息を吐いて佑を睨んだ。
『何でそこでおれを見る?』
『それで、どうなの? あいつ、鈍いから全然気づかれてないに五千点くらい賭けたいんだけど』
さりげなく水輝から視線を背けた佑が話を逸らす。むう、と口の中で呻いて水輝は仕方なくその場にあぐらをかいた。だがまだペニスは佑の膣の中で勃起している。動かさなければ喋るのには邪魔にならないのだろう。当たり前の顔をして話をしている佑をちらりと見て、水輝は何となくそう考えた。
『気付いてない気付いてない。パパは気付いてるっぽいけど、多輝はぜんぜん』
そこがいいの、と笑って理子がちゅう、と音を立てて佑の乳首を吸う。
『落とすのは構わないけど、その後きちんと責任持ちなさい。由梨佳さんの事わかってるわね? うまく制御すれば問題無いから』
『ママはまあ……うん、大丈夫。別に理子、多輝を独占したい訳じゃないから』
理子がけろりとした顔をして言う。
『苺ねえ……。どこがいいんだか』
水輝は顔をしかめてそう呟いた。すると理子ががばっと頭を上げて水輝を睨む。
『ただの寄生虫のくせに! 理子の多輝の悪口言わないで!』
きっぱりと言い切ってから理子がまた佑の乳に吸い付く。水輝はやれやれとため息を吐いて肩を竦めた。翠はそんなやり取りを余所に乳を吸い続けている。だが二人に吸われても佑の乳房は縮んだりもしないし、形も崩れていない。一体、どういう仕組みになっているのだろう。
『まあ、あなたならなんとかしそうね。優一郎はどうしてか、視野狭くなっちゃってるから、あなたの存在は必要不可欠だし』
『パパは多輝のことしか見えてないもん。多輝が良ければ、他はどうでもいいんだもん』
顔を上げ、つんと横を向いた理子が拗ねたように言う。それを見て水輝はおや、と胸の奥で呟いた。理子が腕組みをしてずらずらと優一郎の今現在の様子を並べ立ててみせる。優一郎は仕事をしていると多輝には言っているが、その実、多輝に出来るだけ負担がかからないよう、来る依頼の多くを断っている状態らしい。水輝はふうん、と呟いて口許に手を当てた。あの二人から意識を切り離して少し経つ。だが状況はそれほど変わっていないらしい。
『由梨佳さんの挙動にも注意してあげてね。あなたには知られたくないだろうし、難しいところよねえ』
『ママは大丈夫。ママは理子のこと好きでいてくれるもん。だから、平気』
考えるような顔をして理子が頷く。それから理子は思い出したように慌てて身を屈めて佑の乳を吸った。垂れて流れそうになっていた母乳を舌で舐め取ってから再び乳首を口に含む。
『なんだ。結局、優一郎狙いか?』
これまでの理子の話からはじき出した答えを水輝は何の気なしに口に乗せた。その瞬間、理子が慌ただしく顔を上げてその場に立ち上がる。
『違うもん!』
『違うっつっても、そうとしか考えられないんだが』
真っ赤な顔をして叫んだ理子を見つめ、水輝は顔をしかめて頭をかいた。なあ、と同意を求めて佑をちらりと見る。
『両方とも狙ってるのよ。この娘ってば』
我が娘ながら贅沢よねえ。そう言って佑が頬に手をあてて深々とため息を吐く。すると理子はますます顔を赤くして違うもんと叫んだ。
『いい男がいたら抱かれたいと思うのが女だもん! 理子は悪くないもん!』
『……似てるって意味がよく判った』
水輝は眉を寄せて低い声で呻いた。腕組みをしてふん、とそっぽを向いた理子が唇を尖らせる。
『理子。あなたなら優一郎を本当の意味で落とせるかもしれないわ』
『どういうこと? そりゃあ、理子はこのままいったらもの凄い美人になるけど』
それまで拗ねていた理子が真顔に戻って訊ねる。再びその場に座った理子の頭を佑は優しく撫でた。
『優一郎にとって、ヒューマノイドは結局玩具、あるいは道具でしかないわ。お気に入りだけど、愛を語る相手じゃない』
『それは当然だと思うの。パパは寂しがり屋さんだもん』
こまっしゃくれたガキが。水輝はそんなことを思いながらついつい苦笑してしまった。だが話に聞き入る理子には水輝の表情が見えなかったらしい。真面目な顔をして佑を見つめている。
『優一郎は孤独なのよ。多輝ではどうしても埋められない穴がある』
『たくさんお気に入りの玩具に囲まれても、一緒に遊んでくれる相手がいない。一応、遊んでくれそうな多輝は見つけたけど、でも違う』
佑の言葉を受けて理子が淡々と語る。その語り口だけなら大人と言っても差し支えないだろう。水輝は少し感心して理子をじっと見つめた。
『パパが欲しいのはママよ。広いところで、たくさんの玩具で遊ばせてくれるママ。欲しい時にお乳をくれて、わがままを聞いてくれて、いけないことをしたら叱ってくれるママが欲しいの』
すらすらと語ってから理子は間違っている? と佑に問い掛けた。
『わかってるじゃないの。そのとおりよ、でも、そう思わせてはだめ。対等、だと思わせるの』
『うん、パパって変なところでプライド高いんだもん』
ぶつぶつと口の中で言って理子が眉を寄せる。それから理子は顔を上げてあどけない子供らしい笑みを浮かべた。
『そうね、まずは、斎姫さんの股間を自由に覗ける立場を得なさい。そこがスタート地点よ』
『確かに斎姫お姉さんの股間を覗けるような立場って事は、パパの懐に近いものね』
頷いて同意してみせてから理子はくすりと笑った。小さな手で佑の乳房をつかみ、理子が口許に嗤いを浮かべる。
誰に似たのか、という佑のセリフがまさに!
その通りで今さら笑いました。