「理子。冬休みまでは通う予定だったけど。今日までで小学五年生は終了ということでかまわないかい?」
「え? どうして?」
理子は目を丸くして振り返った。難しい顔をした優一郎が腕組みをする。しまった。少し喋りすぎたかも知れない。理子は自分が油断していたことに気付き、心の底で舌打ちをした。
「来春までは、僕が護身術や龍神としての戦い方を教えるよ。そして、来春からは中学生として……成長状態によって学年は考えるけど朝霧女学院に通ってもらう」
「えええ!? 女子校!?」
理子は素っ頓狂な声を上げて立ち上がった。これまで幼いながらも男子児童が成長する様をこっそり眺めて楽しんでいたのだ。この子たちが成長したら、もしかしたら凄くいい男になるかも知れない。そうなったら抱かれるのも悪くない。そんな妄想に彩られた学校生活を思い出しながら理子は地団駄を踏んだ。
「やだあ! せっかく、まみちゃんやさっちゃんと仲良くなったのにぃ!」
「ごめん……」
「絶対、嫌! パパの意地悪!」
泣きながら喚いて理子は優一郎の部屋を駆け出した。待って、と追いすがる優一郎の声を無視してドアを閉める。苛立ちに任せて廊下を歩きながら理子は頭をかいた。
ちょっとやり方まずったなー。心の底で呟いて理子はため息を吐いた。優一郎はどこまでも真面目なのだ。だから理子が笑い話にしようとしていても、真面目に考えて返事をする。そのことを理子はついうっかり忘れていたのだ。
しまったなあ、と思いながら理子はエレベーターに乗り込んだ。もうそろそろ多輝と由梨佳も落ち着いているだろう。理子は一階分ほどエレベーターで上がり、自分の部屋に戻った。慎重にノックすると、返事をせずに多輝がこっそりドアを開く。
「大丈夫? ママ」
「ああ。寝てる」
小声でやり取りをしてから多輝がするりとドアの間をすり抜ける。音がしないようにドアを閉めてから多輝は困った奴、と笑って理子の頭を撫でた。
「じゃあ、お風呂に一緒に入ってくれる!?」
目を輝かせて理子は多輝の手につかまった。そこで多輝がうっ、と声を飲んで後じさりする。だが理子は多輝の手をしっかりとつかまえていた。
「いや、あのな? ええと」
「多輝、大好き! お風呂一緒にはいろっ」
にこにこと笑って理子は多輝にしがみついた。そこで根負けしたらしい。多輝が深々とため息を吐いて判った判ったと頷く。理子はしてやったりと心の底で舌を出しつつ、子供らしくわーいと歓声をあげた。手を繋いでバスルームに向かいながら多輝がぼやくように言う。
「何でこうなるかなー」
「多輝が理子に甘いから」
にこにこと笑ったままで理子はすらっと言葉を返した。すると多輝がまたうっ、と詰まる。理子は笑みを浮かべて多輝を見上げた。
「だから多輝、大好き!」
「うう、素直に喜べない」
そんなことを言いつつも多輝は理子を連れたままバスルームに入る。理子は脱衣場で慌ただしく服を脱いだ。多輝、早くー、と急かしながら硝子戸を開けて湯気のこもった洗い場に入る。
「うあー」
硝子戸を開けて洗い場に入ったところで多輝がうなだれる。理子は早く早くと多輝を急かして手を引っ張った。よし、気合いだ。そんなことを言って多輝が力強く頷く。
二人で身体を流し合い、理子は多輝と一緒に風呂に浸かった。その頃にはすっかり何かを悟ったのか、多輝はごく普通に理子と会話をしていた。
「は? 転校?」
「うん。パパが学校辞めなさいって。理子に危ないお手紙を出す人がいて」
理子は優一郎の部屋であったことを多輝にかいつまんで説明した。が、もちろん内容は大幅に圧縮する。多輝にとって理子は子供に過ぎず、やけに知識が多いことなどを報せても引かれるだけだ。だから理子は多輝にはその手の話は一切しない。
「あー……でも優一郎の気分も判るかも。理子は無防備すぎなんだよ」
困ったような顔をして多輝がぽんぽんと理子の頭を撫でる。そうかなあ、と唇を尖らせて、理子は浴槽の縁に顎を乗せた。広々とした浴槽の中に身体を浮かせ、足を軽く動かして水を叩く。
「パパにもお風呂一緒にはいろって言ったのに、断られちゃった」
「そりゃあなあ……。やっぱ理子、お前ちょっと無防備すぎ。身体が成長してきてて……その、なんだ。胸とか」
そこまで言って多輝がうっ、と呻いて口許を覆いそっぽを向く。はー? と声を返しながら理子は身体を起こした。胸、と呟いて自分の胸に手をあててみる。理子の胸は膨らみかけていて、今ではブラジャーを着けているのだ。
「多輝もパパも考えすぎだよぉ。理子は子供なのに」
「いや、それはそうなんだが、うう、優一郎に同情する」
多輝ががっくりとうなだれてため息を吐く。もう、とぼやいて理子はさっさと湯船から出た。多輝が遅れて風呂から上がり、脱衣場に入る。理子は先にバスタオルで身体を拭き始めていた。
「多輝……?」
ふと、見慣れないものを見止めて理子は小声で呼んだ。判ってるよ、と声を荒らげた多輝がくるりと理子に背を向ける。多輝のペニスは半分ほど勃ち上がっていたのだ。
「やっぱり今度から理子と一緒に風呂はなし!」
「えええ!? なんで!?」
「男は女の裸みたらむらむらするもんなの! 理子は特に可愛いからそうなるんだよ!」
珍しく照れることも恥ずかしがることもなく、多輝がきっぱりとそう言う。理子は驚きに目を丸くして多輝を見つめた。理子は子供らしい顔をするのも忘れ、しばし呆然となった。
「それに近頃、理子の胸また大きくなったろ!?」
「あ、うん」
多輝の剣幕に圧されて理子は素直に頷いた。理子の肌は白く傷一つなく、胸は手で覆えるほどだが膨らんでいて、先端の乳首は淡い桃色をしている。股間を隠す陰毛はまだ生えておらず、つるんとしている。理子はまじまじと自分の身体を見下ろした。
「だから! ついつい目がいくし、見ちまうと身体が反応するし、でも理子相手にそうなるのってまずいだろう!」
「理子は気にしないけど」
「おれは気にする!」
即座に叫び返して多輝はさっさと下着をつけた。そこで漸く多輝が振り返る。だがすぐに多輝はうっ、と呻いてその場にへたり込んだ。理子はまだ身体を拭いただけですっぽんぽんだったのだ。
「りーこー」
「あっ、ごめんなさい。服、着るね」
慌てて言って理子は籠の中からパジャマを引っ張り出した。うー、と低い声で呻きながら多輝はうなだれている。そんな多輝を横目に見やり、理子は心の底でため息を吐いた。
これは多輝の方が難関かも知れない。そんな理子の心の呟きに気が付かない多輝は、それからしばらく一人で唸っていた。
エロ……ではないと思いますが。
お風呂なので見方によってはエロでしょうか。
理子はまだ成長途中なので逆に妙な色気がありそうな気も。