※この作品はR-18です。

まやかしの終わり 三部 夜の女王   作:伊駒辰葉

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エロシーンはありません。


苦悩して妙なことを考えている優一郎

 その頃やっぱり優一郎も自分の部屋で唸っていた。

 

 考えてみればこれまで理子には戦いにまつわる一切の情報を知らせていない。そのつけが回ってきたのだと優一郎は真面目に考え込んでうなだれた。もう多輝を映していた番組は終了し、今は文字だけのニュースがテレビ画面に流れている。だがそのことに気付けないほどに優一郎は狼狽していた。

 

 唸りながら考えるうちに優一郎は段々と険しい顔をした。理子が貰ったという手紙の内容を思い出したのだ。理子は明るく笑って話していたが、きっと不快だったに違いない。好きですという告白だけならともかく、キス! その上セックス! ずらずらと考えて優一郎は深々とため息を吐いた。

 

 あの理子が誰かにキスをされたり、更に押し倒されたりする場面を想像するだけで怒りがこみあげる。優一郎は腕組みをして苛々と部屋の中を歩き回った。だが女子校に行けという優一郎の提案に理子は怒ってしまった。では理子の通う小学校のセキュリティを強化するのはどうだろう。それともいっそのことあの小学校から男子児童や男性教諭を追い払ってしまえばいいのだろうか。いや、それではまだ生ぬるい。男はそれだけではない。女子児童の保護者にだって当然、父親という男性がいるのだ。

 

 そこまで考えて優一郎ははたと我に返った。真面目に奇異なことを考えていた自分に深々とため息を吐く。

 

 最初はこんな風には考えなかった。理子がまだここに引き取られてきたばかりの頃は、優一郎は上手く互いの距離をとっていたのだ。だが一緒に同じ施設内に暮らすうちに優一郎は少しずつ理子との距離を縮めていった。

 

 日に日に理子は成長し、幼児から少女に変化していった。そして今は少女から女へと羽化し始めている。理子に心を寄せて手紙を送る男子児童の気持ちも判らなくはない。理子は優一郎の目から見てもとても美しい。成長途中の独特な色香も伴い、今の理子には言い表しようがない魅力があるのだ。

 

 その理子が無邪気に一緒に風呂に入ろうと言う。今日は何とか言いくるめる事が出来たが、それもいつまで続けられるだろうか。優一郎は部屋の奥にある机に寄りかかって深いため息を吐いた。

 

 こんな時、本物の父親はどうするのだろう。優一郎は自分を育ててくれた親である総一郎のことを思い出して複雑な顔をした。総一郎は全てにおいて、科学の進歩に繋がることなら肯定する性質をしている。もしも理子が科学のために風呂に一緒に入ろうと言ったらきっと当たり前の顔で頷いてしまうに違いない。よく考えてみれば、かつて優一郎の姉だった絵美佳も、そんなことを言って高校生くらいまでは総一郎と風呂に入っていたような気がする。

 

 父さんは駄目だ。参考にならない。優一郎は力なく呟いてうなだれた。それなら、理子の本当の父親である水輝ならどうだろう。そう考えてすぐに優一郎は力一杯首を横に振った。余計に駄目だ。水輝ならある程度成長した理子なら嬉々として一緒に風呂に入ってしまいそうな気がする。その上、理子の唇を奪って押し倒すくらいのことは軽々としてのけるだろう。ここにいたら水輝本人が怒りそうなことをつらつらと考え、優一郎はため息を吐きながらその場にしゃがみ込んだ。

 

 あれで多輝は意外にもその辺りのことに上手く折り合いを付けているらしい。床に座り込んで優一郎はふとそのことを思い出した。女になっている時はいい。多輝も特に問題なく理子と一緒に風呂に入ったり、同じ布団で眠ったりしているらしい。だが男性である時も多輝は理子に弱く、わがままを言われるとついつい聞いてしまうようだ。なのに多輝は優一郎のような悩み方はしない。風呂に入ったり、眠る寸前までは必死の抵抗を試みているようだが、実際に理子と一緒にそれらのことをした後はけろりとしているのだ。この間の林間学校の時も、理子が居ない間は何やら心配している風だったが、理子が帰ってきた時には笑顔で出迎えていた。優一郎がその後ろで気を揉んでいるにもかかわらず、だ。

 

 もしかしたら多輝は、理子が特別な好意を多輝に寄せていることに気付いていないのかも知れない。理子は幼い頃から多輝にべったりとくっついていた。もちろん理子は由梨佳も好いてはいるのだが、多輝を見る目と由梨佳のそれがどことなく違うような気がするのだ。そのことには由梨佳も気付いているらしい。時折、物言いたげな顔をしていることがある。

 

 ひょっとしたら理子は由梨佳の調子がおかしいことに気付いているかも知れない。理子は賢い娘だ。そして人の機微には敏感だ。もちろん理子はヒューマノイドの感情も敏感に感じ取ってしまうだろう。もしも理子が由梨佳の調子の悪さに気付いていたら。つらつらと考えて優一郎は青ざめた。

 

 理子がヒューマノイドのことを学びたいと言い出した時は、正直なところ驚いた。それに戸惑いもした。だが理子には隠していてもきっと先々でばれてしまうだろう。それならいっそのこと、知識としてヒューマノイドのことを学んでしまった方がいいような気がした。

 

 だがもしも理子が知識ではなく、目で見てヒューマノイドの実態を知ってしまったら。そこまで考えて優一郎ははっと顔を上げた。もしかしたら理子は自分を軽蔑してしまうのではないか。もう二度とこっちを向いてくれないのではないか。あの可愛らしい微笑みを二度と見ることが出来なくなってしまったら。

 

 考え込んだ優一郎は頭を抱えてうなだれた。あの水輝ですら、理子は寄生虫呼ばわりして嫌そうな顔をしていたのだ。あんな扱いになってしまったらどうしよう。動揺した優一郎は、やっぱり水輝が聞いたら怒りそうな失礼なことをずらずらと考え続けた。




総一郎さんはともかく、水輝はきれるっていうかw
人のこと言えるか!?ww くらいは言いそうです。
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