……ないのですが、裸に近いことにはなります……。
「学校。清陵附属にするから」
「本当!?」
ぱっと顔を輝かせて理子がまた優一郎に抱きつく。どうやら理子は転校することが不満なのではなく、転校先の学校が気に入らないから反発しただけらしい。理子の反応を見て優一郎はそう確信した。
「児童虐待されるのが嫌なら、パートナーを見つけて。これまでも龍神の幼生体がいると思われる学校を選んでいたんだけど」
「ん。パパは理子に早く恋人が出来たらいいなって思ってるのね?」
優一郎の胸に顔を押しつけたまま、理子がそう訊ねる。理子の顔は隠れていて表情は見えない。
「このまま、理子が覚醒したら。理子が嫌だって言ったことをしなければならないから」
「どうして?」
まだ優一郎の胸に顔に伏せたままで理子が訊ねる。
「覚醒直後の龍神の状態を述べよ」
「生体維持のために極端に性感が過敏になり、性交渉を求める傾向にある。その傾向はまた、力を安定させるためのものでもある」
テキストでも読んでいるかのようにすらすらと理子が答えてみせる。
「そうなったら、僕は君を抱くよ。だからその前にきちんと恋愛してきなさい」
「どうして? 別にパパじゃなくてもいいでしょ?」
そう言って理子が顔を上げる。
「覚醒直後の状態の君をろくでもない奴に抱かせるつもりは僕には無い」
「なんで?」
不思議そうな顔をして理子が言う。優一郎は苛立ちに似たものを覚えながら頭をかいた。
「理子が好きだから」
「それは娘として可愛いということ? 子供だから大切にしたいということ?」
それとも、大切な人の子供だからってこと? 理子が真っ直ぐに優一郎を見上げて言葉を紡ぐ。
「そういう理由を分析して意味があるならするけど。何か意味がある?」
「理子はパパが大好きだから気持ちを知りたいと思うの。それはいけないこと?」
真摯な眼差しを受けて優一郎は怒りに近いものを感じた。どうして理子はこんな風に人の心を抉るような言葉を並べるのだろう。
「自分の心理を冷静に分析できてる自信は無いけど、覚醒した理子のことを僕は女として見てしまうと思う」
僕は多輝じゃないから。そこまで言ってから優一郎は漸く気付いた。多輝が自分のようにうろたえたりしないのは当然なのだ。自分は理子のことを子供だと言いながら、心の何処かで別の目で見ようとしているのではないか。
「それは玩具にしたいということ? たくさんいるヒューマノイドのお姉さんたちと同じにしたいの?」
澄んだ目で優一郎を見つめながら理子が言葉を継ぐ。
「彼女たちと君は違う」
「龍神だから? だって見た目だけで言ったらそんなに変わらないよ。お姉さんたちはみんな綺麗だし」
そう言ってから理子はゆっくりと腕を下ろして静かに優一郎から離れた。理子の問い掛けが突拍子もないものだと感じていた優一郎は訝りに眉を寄せた。さっきまで触れていた理子の温もりがまだ胸に残っている。
「理子は性格的にヒューマノイドには成り得ないよ」
「ふうん……。そういう理由?」
枕を抱きしめた理子がくすりと笑う。
「というか、ヒューマノイドになった理子なんて想像できない。正直、これまで一切想定したことさえなかった」
「パパ、生身の女とセックス出来るの?」
くすくすと笑いながら理子が言う。問われた優一郎は渋い顔をした。
「多輝は最近ずっと生身だよ」
「それもそうか。じゃあ、質問を変えよっと」
無邪気に笑って理子が首を傾げる。
「パパ、気のない女が相手でも勃つの?」
薄く形のいい唇がとんでもない言葉を紡いでいる気がする。そんなことを思いつつも優一郎は真面目な顔で理子を見つめた。
「具体的に誰のことを指してるの?」
「理子のこと」
そう言ってから理子があっ、と小さな声を上げる。もう、とぼやいて頭をかいた理子の身体が目に見えてはっきりと成長していく。その様を見つめて優一郎は驚きに息を飲んだ。大き目だった理子のパジャマが徐々に小さくなっているように見える。ささやかだった胸の膨らみは大きくなり、サイズが合わなくなってしまったパジャマを押し上げ、前を合わせていたボタンが引っ張られる。長かったズボンが短くなり、理子のふくらはぎの辺りまで裾が上がってしまう。
「あーあ……」
困った顔をして理子が頭をかく。
「タイムリミットか」
そう呟いて優一郎は嗤いを浮かべた。むー、と唇を尖らせた理子が枕を抱えて肩を落とす。
「残念。もう少しでパパの気持ちを確かめられたのになっ」
そう言ってから理子がにっこりと笑う。
「僕は本当のことを言ったつもりだけど」
「理子の欲しい言葉とは違ってたもん。だから仕方ないの」
つん、と顔を背けて理子が言う。今の理子は十代半ば過ぎほどまで身体が成長している。
「とりあえず。こうなった以上は誰にも渡さないよ」
嗤いを浮かべたまま、優一郎は張り巡らされた結界を強化した。えー、と唇を尖らせて理子がぐるりと部屋を見回す。
「何で? 理子、愛のないセックスは嫌だなあ。パパにそんなことされるくらいなら、あの人に抱いてもらうもん」
枕を胸に抱え込んだまま、理子がそっぽを向く。優一郎は手を伸ばして理子の腕を引いた。素早く抱き寄せて理子の顎をつかみ、強引に唇を合わせる。目を見張った理子が優一郎の腕の中で身じろぎする。
「だからー! 理子は、愛のないセックスは、嫌なの! そのまま抱いたらパパのこと嫌いになるから!」
顔を背けて口づけを避け、理子が叫ぶようにして言う。
「理子、愛してる」
「嘘吐き」
即座に言い返して理子が身を捩る。暴れようとする理子を両腕に抱きしめたまま、優一郎は怒りに目を吊り上げた。
ものすごーく前には龍神は17になると覚醒する、という設定があったんですけども。
正確には身体が成熟しかけると、でしょうかw