川面を見つめて
ぼんやりとした目で川面を見つめていた水輝は傍に気配を感じてため息を吐いた。草むらに座り込んでいた水輝に近付いてきたのは和也だ。
「水輝様。こちらにいらっしゃったのですか。お身体に障りますよ」
そう言いながら和也が水輝の肩にそっとカーディガンをかける。水輝は険しい顔をしてそれを乱暴に払いのけた。
「白々しい。つけてきてやがったくせに」
けっ、と喉の奥で言ってから水輝はまた川面に目を戻した。和也が黙って落ちたカーディガンを拾い上げる。水輝は素知らぬ顔をして膝を抱えた。
腹がやたらと苦しい。水輝の下腹部はふっくらと膨らんでいるのだ。だが水輝はそれを無視してぎゅっと膝を腕に抱えた。このまま腹が縮めばいいのに。そんなことを考えてみる。そうしたらもう、嫌なことは考えなくて済むし、二度と立城にも会わなくていい。
さらさらと流れる川面に冷たい風が吹く。ぼんやりと流れていく枯れ葉を眺めていた水輝は、唐突に手を引かれて顔をしかめた。
「離せよ!」
「立城様がお留守の間、お世話を任されておりますので」
やはりいつもと同じようにきっぱりと和也が言う。水輝は憎しみのこもった目で和也を睨みつけた。だが和也はそんな水輝の視線をものともせず、強引に腕に水輝を抱いて顎に手をかける。
「離せっつってんだろ!?」
叫んだ水輝の唇を和也が塞ぐ。その瞬間、水輝の身体からがくんと力が抜けた。ぬめる舌が口の中に入ってくる。水輝はされるがままに唇を開き、艶めかしく動く舌に舌を絡めた。
「あまり手間を取らせないでください」
「や、だ、離せ……はなせよ!」
殆ど力の入らない身体を捩り、水輝は必死で喚いた。ここで逃げなければ、またあの訳が判らなくなる感覚に囚われてしまう。懸命に身じろぎをする水輝を片腕に抱え、和也が落ち着いた挙動でスカートをめくり上げる。ショーツの中に手が入ってくる感触に水輝はびくんと身体を震わせた。
「あ……あ……あ」
頼りない声を漏らして水輝はがくがくと足を震わせた。とても立っていられない。たかがショーツの中に手を入れられただけなのに、何でこうなってしまうのだろう。
水輝を片腕に抱えた和也がショーツの中を探る。肛門を弄られた水輝は掠れた声を漏らして和也の腕にしがみついた。快楽にあっけなく緩んだ肛門に指が入ってくる。
「いや……いやあ!」
悲鳴を上げて水輝は首を振った。だが水輝の感情とは裏腹に身体は勝手に反応し、深い快楽が腹の奥からこみ上げてくる。
「嫌、ではなく、欲しい、の間違いではありませんか?」
微かに笑って和也がゆっくりと指を揺すりはじめる。水輝は頼りない声を上げて首を何度も振った。違う。そうじゃない。おれは嫌なんだよ。だがそう思ってもきちんと言葉が出ない。
こうなってしまったのがいつだったかよく覚えていない。水輝は頻繁に立城に抱かれるようになった。気が付けば押し倒され、膣に男根を咥え込んでいる。立城がいない時にはこうして和也が肛辱を繰り返す。腸壁を指で穿られて水輝はぶるりと身を震わせた。手慣れた調子で和也が水輝の腸内をかき回す。
「くふっ! んっ! あああんぅ!」
「お声が大きいですよ、水輝様。誰かに聞かれたらどうするんですか?」
嘲笑を浮かべて和也が水輝の耳許に囁く。その瞬間、水輝は絶頂に押し上げられ、声にならない声を上げた。背を反らした水輝を後ろ向きに抱え直し、和也が手早く水輝のショーツをずり下げる。
「真っ昼間から青姦ですか。水輝様もお好きでらっしゃる」
「ち、ちがっ……!」
お前らが勝手にしやがるんだろうが! だが水輝が叫ぶ前に和也がぐいと腰を押し出す。指より太いものを肛門にねじ込まれ、水輝は背を反らして声を上げた。
やがていつものように言いようのない快感が襲ってくる。和也に犯されながら水輝は甘い声で鳴き始めた。伸ばした水輝の手が何もないところを泳ぐ。二人は川辺で立ったまま交わっていた。吐いた息が寒さで白く染まる。
気が付くと水輝はベッドに寝かされていた。どうやらまた和也に抱かれて我を忘れてしまったらしい。近頃ではまともにものを考える時間の方が短く、意識があるかないか判らない時間が長い。
水輝はぼんやりと天井を見つめてのろのろと身体を起こした。まるで起きる時間が判っていたようなタイミングで部屋に和也が現れる。水輝は和也が差し出したグラスを乱暴に払いのけた。水の入っていたグラスが飛んで床に落ちて割れる。
「水輝様……。お薬は飲まれませんと」
「どうせ、どうせ飲まなくったって変わんねえだろうが! お前らはいつだっておれを好き放題犯しやがるんだからな!」
目を吊り上げて怒鳴ってから水輝は腹を手で押さえた。酷い痛みが急に襲ってくる。くそ、と呟いて水輝は自分の腹を憎しみをこめて見下ろした。こんなものが腹に居るから、だから自分は酷い目に合っているのだ。
水輝は怒りを込めて右手をこぶしの形に握って振り上げた。自分の腹を本気で殴りつけようとしていた水輝の腕を和也がつかんで止める。
「離せ! これを殺しておれも死ぬ!」
「何を馬鹿なことを……。水輝様、ですからお薬を飲んでください」
「うるせえ! いいから離せ!」
腹の底から怒鳴って水輝はがむしゃらに暴れた。ため息を吐いた和也が水輝の両手をつかむ。今度は左手で殴ろうとしていた水輝は子供のように足をばたつかせた。
「いいかげんになさいませんと、また縛りますよ?」
「やりたきゃやれよ! どうせおれは止められねえんだからな!」
勝手に屋敷を出ることも出来ない。隙を見て出たつもりでも必ず和也に後を付けられる。そして気が付くとまたこの部屋に戻ってきているのだ。
たちの悪い夢でも見ている気分だった。どこまで行っても終わらない悪夢のような気がした。それならいっそのこと、悪夢の原因を絶てばいいのではないか。近頃の水輝はその思いに囚われ、隙あらばこうして自分で腹を痛めようとする。中に居る子供を殺してしまおうとするのだ。
「はーなーせー!」
錯乱して叫ぶ水輝を見つめて和也が深々とため息を吐く。
「仕方ありませんね」
「嫌だ! 離せ、殺せ! どうせならおれを殺せ! 出来るだろうが、てめえなら!」
喚き散らす水輝をあっという間に和也がロープで縛り上げる。ベッドに転がされた水輝は自分の舌を噛みきろうとした。だがその直前に和也が水輝の口にタオルを突っ込む。
「仕方ありません。注射させていただきます」
そう言って和也が宙に手を差し伸べる。水輝は呻きながら必死で身じろぎした。だがロープは硬く結わえられていてとても解けない。
手元に注射器を寄せた和也がベッドに片足をかけ、水輝の服の袖をまくる。暴れる水輝を足で押さえ、和也がむき出しになった腕に針を刺す。水輝はベッドの上でがむしゃらに身体を動かそうとした。
「はい。これで大丈夫です。しばらくお休みになってください」
うるせえ、と言おうとした水輝の声が喉の奥で呻きになる。何とか身体を転がしてベッドから落ちようとしていた水輝は、不意に襲ってきた感覚に目を細めた。やけに身体がだるく、それに妙に眠い。
くそったれ。心の底で吐き捨てて、水輝は目を閉じた。
このシーンを入れていなかった気がするのですが……。
重複していたらすみません。