私たち肉便器は旦那様のおもちゃです 〜メイド娼館で調教レイプしていただきます♡〜 作:ゆっとぴあ
ドン!ドンドンドン!
「ぐっ!……あ゛ぁ゛……!」
外から無理矢理開けられそうな店の玄関の大扉を、全身を使って必死に押さえつける。
鍵は掛けているが、こうも乱暴にされれば、いずれ壊されてしまうだろう。
「ん゛〜〜〜!!」
外にいるのが誰だかわからない。
敵かそうでないのか。何の目的で店に入ろうとしているのか。
万が一彼らが敵だったら、妹たちを危険に晒すことになる。
それだけは。それだけはダメだ。
『開けろ!!開けろと言っているだろう!!』
外から野太い声が飛んでくる。怒鳴り声に近い声量で。
開けていいのか、開けちゃダメなのか。
「わかんない、よ……ッッ゛!!」
◇ ◇ ◇
九時間前。
窓の外が騒がしくて目が覚めた。
なにやら叫び声も聞こえてくる。
「んん…………ふわぁ」
やべっ、今何時だ………七時半か、よかった。
隣では全裸のリーナが可愛い寝息を立てている。
昨夜は随分と盛り上がってしまった。
私にあんな恥ずかしい体勢を……リーナったら大胆だ。スケベめ。
「リーナ、起きよ〜」
リーナの腕を掴んで揺らす。
なかなか起きようとしない。
「リーナ」
今度は優しく呼びかける。
それでも起きてはくれない。
「リーナさ〜ん」
耳元で囁くように名前を呼ぶと、
「ん……ぅん……?」
ようやくリーナが目を覚ます。
ゆっくりと目を開けて私と目を合わせると、安心したように微笑んだ。
そして小さな呟きを。
「………ょかったぁ………」
可愛いなぁもう。
頬にチュッと優しくキスをして、サラサラの髪を手に絡める。
「おはよ、リーナ」
「おはよう……アナちゃん……」
「早く準備しよう。朝礼に遅れちゃう」
そう言ってベッドから飛び降りる。
「わ、もうこんな時間か」
リーナも時計を見て驚き、急いでベッドから這い出た。
それにしても外が騒がしいな。
貴族街なんて普段はもっと静かなのに。ましてや朝なんて。
まぁ今はいいや。
まずはリーナに謝らないと。
「リーナ、昨日は迷惑かけてごめんなさい」
頭を下げる。迷惑をかけたことへの謝罪の意を込めて。
「昨日はちょっとしんどかったけどね。今日はもう普段通りのアナです」
胸を張って、自分は大丈夫だと言い張る。
「だから、もう大丈夫だよ。私は、大丈夫だから」
「……本当?」
リーナが心配そうに聞いてくる。
「うん、ほんと」
「……本当かなぁ?」
「ほんとだって。元気いっぱいアナちゃんだよ」
リーナは小さく微笑み、
「……そっか、ならよかった」
それ以上何も聞いてこなかった。
その優しさが、今はとてもありがたい。
ベッドを綺麗に整えて、メイド服を見に纏う。
毎朝の流れだ。
もう目を瞑りながらでもできるもんね。
「朝ごはん間に合わないね」
「そうだね〜、お昼まで耐えようか」
鏡を見ながらブリムを整えていると、
『アナ!リーナ!起きなさい!』
クララのやたらと焦った声が扉の向こうから聞こえてきた。
「起きてるよー」
返事をすると、息を荒げたクララが勢いよく扉を開けた。
何をそんなに焦っているんだい?
「どしたの?朝ごはんの大鍋、誰かがひっくり返しちゃった?」
冗談を言うとクララに睨まれた。
どうやら本当に急を要する事案らしい。
「支配人がどこにもいないのよ!治療師も店に来ないし!
従業員も何も知らないって言うの。
それにほら、外見なさい外!」
クララに言われるがままにカーテンを開けて外を見る。
すると、
「……!?」
銃を持った大勢の兵士たちが、外の大通りを闊歩していた。
騒音の原因はこれだったのか。
「な、なにこれ……」
リーナも困惑したような声を上げる。
私にもわからないが、ただ何か、大きな出来事が起こっていることだけはわかった。
「私もよくわからないけど、方向的に王城の方に進軍しているみたい」
クララが窓の外を見ながら言う。
確かに兵士たちは全員、同じ方向に向かっている。
「とりあえずホールに来て。私だけじゃみんなに指示しきれないわ」
「わ、わかった」
クララの指示に従い、私達はホールへと向かった。
◇ ◇ ◇
「支配人様は!?」
「見つからないの!どこにもいないのよ!」
「ねぇなんで外に兵隊さんがいっぱいいるの!?」
「わかんないよそんなの!」
「私たちどうなるの!?撃ち殺されちゃうんじゃ……!」
「皆さん、一度落ち着いてください!皆さん!」
「怖いよー!」
「アナ姉さんは!?」
「今クララお姉ちゃんが呼んでくるって!」
「私たち、処分されちゃうんだぁ……」
ホールはパニック状態だった。
小さい子達が不安げに騒ぎ立てており、統率が全く取れていない。
エリンが中心となって落ち着かせようとしているものの、あまり効果はないようだ。
数人の従業員たちは隅に集まり、なにやらヒソヒソと話している。
こいつらは頼りにしないほうがいいだろう。
「あぁ、おはようございますアナ様、リーナ様。
すいません、私たちではどうにも……」
泣いている子を宥めていたカイネがこちらに気づいてくれた。
クララがすぅ、と大きく息を吸い込み、
「……静かにしなさい!!!」
ホール中に響き渡る大きな声で叫んだ。
クララが怒る時の声色だ。怖い。
すると一瞬で静寂が訪れた。流石。
よし、ここからは私の出番だ。
「みんな、一回落ち着いて。これからどうするか考えよう」
◇ ◇ ◇
まず最初に点呼を取った。
現在ホールにいるのは四十三人全員。誰一人欠けていない。
とりあえず一安心。
次に情報確認。
エリンが皆がそれぞれの知る情報を集め、整理してくれた。
「まず支配人様がいらっしゃいません。店全体を探しましたが、やはりおられませんでした。
次に治療師様が普段来られる時間になってもここにいらっしゃらず、特に便りもありません。
外に関しては、武装した兵隊の方が何百人とここを通過しております。向かう方向は恐らく王城。
関連することかは不明ですが、食材の業者様も本日は来られていません。
とりあえずは、以上です」
私たち年長組は話し合い、とりあえず開店時間までは普段通りに行動することに決めた。
旦那様が店に来られれば、外の情報も得られるはずだ。
自分たちで外に出て情報を得る案も出たが、外の兵士たちの目的がわからない以上、危険だとして見送った。
「……誰も来ないね」
「そうね」
けれど、開店後一時間経っても、一人の旦那様も来店しなかった。
普段なら既に三十人は超えているのに。
「アナ姉さん、これマズいんじゃない?」
不安げな表情を浮かべるサーシャ。
他の子達も同じような顔をしている。
……このままだと不安が広がる。またパニックが起こったらいけない。
誰かがパニックで店を飛び出して、何かに巻き込まれでもしたら。
「みんな!一度部屋に戻りなさい!
二人部屋の子はその子と一緒にいて!一人部屋の子は、誰か見つけて二人になって!
絶対に一人にならないこと!
それと、窓から顔を出すのは禁止!カーテンを閉めて静かにしていなさい!
何か異変があったら私かクララ、リーナに二人揃って知らせに来なさい!」
そう皆に指示を出す。
「成人組はここに残って。今後どうするかを決めよう」
16歳以上の、私含めて十一人で話し合いをする。
結論として、交代で数人が中央ホールに残って外を見張り、残りは小さい子達の部屋を巡って回るということになった。
そうこうしているうちに、気がつけば従業員たちは店から姿を消していた。
裏口から外に逃げたようだ。
私たちも逃げるべきかと考えたが、逃げたとてどこに行けばいいのか。
私たちの居場所はここにしか無い。
十一時。
私はまずは見張り組。
兵士たちの二十人余りの集団が三、四回店の前を通り過ぎた。
馬車が数台、兵士たちの進軍方向の反対方向に逃げるように走っていった。
十二時。
交代の時間。
私は中央ホールを離れて皆の部屋を順番に回る。
「シャル、モミ」
「アナ姉さん!」
二人が私の胸に飛び込んできた。その体は小さく震えている。
「大丈夫だよ、二人とも。大人しくできてえらいえらい」
小さな頭を撫でてやりながら落ち着かせてやり、持ってきたビスケットを渡す。
二人は嬉しそうにそれを食べ始め、やがて笑顔を見せてくれた。
そんな時、王城の方角から全身が震えるような轟音が響いた。
大砲の音か、はたまた爆撃魔法の音か。
地響きが起こり、地面が僅かに揺れる。
「わっ!?」
驚いた二人がまた泣きそうな顔を見せた。
「大丈夫、大丈夫。部屋で静かにしててね」
本当に、なにが起こってるんだよ……!
十三時。
再びホールで見張り。
この時間まで来客は一人も無し。
兵士の進軍も途絶えた。王城からの轟音は未だ止まない。
王城方面に目を凝らすと、煙が上がっているのが確認できた。
今からでも、皆を地下に移すべきだろうか。いや、しかし……
十四時。
また部屋を回る。どの子も怯えており、慰めと励ましの言葉をかけ続ける。
この時間の間にベティーと交代し、軽い昼食を摂った。
十五時。
轟音が止んだ。代わりに人々の喧騒が微かに聞こえ始める。
外に出るべきだと感じたが、恐怖で体が動かない。
外が、怖い。
そして十六時。
店の外に大勢の兵士が集まってきて。
『開けろ!!居るのはわかっている!!』
扉が激しく叩かれた。
◇ ◇ ◇
『開けろ!開けろと言っているだろう!』
外から野太い声が飛んでくる。怒鳴り声に近い声量で。
開けていいのか、開けちゃダメなのか。
「わかんない、よ……ッッ゛!!」
「アナちゃん!!」
リーナの声が聞こえる。ここに居てはダメだ。
「リーナ!!逃げて!!」
扉に体重をかけ、精一杯の声で叫ぶ。
「む、無理……!!無理だよそんなの……!!」
「ダメ!!行って!!お願い!!」
外の兵士たちは鍵を壊そうとしているのか、更に強く扉を打ち付けてくる。
「……私も、ここに居るから!!」
リーナはそう言い、私に寄り添うように扉を押さえた。
……もう。カッコぐらいつけさせてよ。
「アナ!!」「アナさん!!」
騒ぎを聞きつけ、クララとエリンが駆け寄ってくる。
「………アナ、リーナ。そのまま押さえてなさい。
入ってきたのがもし敵だったら、吹き飛ばすわ」
現状を瞬時に把握したクララはそう冷静に告げると、手に大きな火の玉を生み出した。
「他の大人は皆さんを裏口から逃す準備をされています。
もはや侵入は不可避です。
私たちは、その後を考えましょう」
エリンもそう言うと、両手に雷のようなものを纏わせる。
なにそれかっこよ。
「ありっ、がと……ッ!!」
ごめん、もう体力が限界……!!
なんとか、みんなが逃げる時間を稼いで……それで……!!
すると、扉の向こうから綺麗なよく通る女性の声が聞こえた。
『少佐様。やはり鍵開けも力任せも効果はありません。
私が扉の枠ごとぶっ飛ばします』
ん?なんかえらい物騒なこと言ってない?
ていうかちょっと待って。その声。
すごい聞き覚えが。
「ちょっ、まっ。エミリーねえさ───」
ドゴォ!!!!!!
「どぶへっ!?!?」
魔力の濁流が扉の左半分、つまり私が押さえている方を直撃し、周囲のレンガごとくり抜いて、直線を描いて私ごと後ろに吹き飛ばした。
壁と一緒に宙を飛びながら考えた。
もう意味わかんねぇ、と。
「アナちゃーーん!?!?」
リーナの悲鳴をバックミュージックに、私は机に激突した。
「いぃ゛っ……てぇな゛ぁも゛う!!」
苛立つ!腹立つ!もう知らん!
女の子とは思えない汚い濁声を上げながら、怒りに任せて瓦礫の中から立ち上がる。
回復魔法を全身に急いで施し、土煙の向こうの兵士たちを睨みつける。
かかってこいよ!非力な女子でも一人二人道連れにすることぐらい多分できるん…………
いや待て、待て待て待て。
さっき聞こえたあの声は?
ん?んん?どゆこと?
リーナを見れば、穴の向こうを見てポカンと口を開けていた。
「突入!!!」
兵士たちが次々と店の中に入ってくる。
だというのに、クララとエリンは何か納得したような顔をして、展開していた魔法を収め武装解除した。
そして私は。
リーナと同じく、口を開け唖然としていた。
「は、はへ??」
だって、向こうから兵士たちに混じって、焦り小走りで近づいてくるのは。
だって。
「ごめんなさいアナちゃん!まさか扉の後ろにアナちゃんがいるとは思わなくて!
あ!この兵隊さんたちは敵じゃないから安心して!」
「………エミリー姉、さん………???」
綺麗な金髪に、透き通るような碧眼。
体に合わないブカブカのサイズの軍服を身に纏い、顔には所々汚れが付着していて、騒ぎの中にいたのは明らかで。
一年半前に第二王子に売られていった、私が大好きな姉さんが目の前にいる。
「???」
いや、普通に意味わかんないんですけど。
なんで?いやどういうこと?
「大丈夫!?怪我してない!?
……あら、怪我一つない。意外と頑丈ねアナちゃん」
「回復魔法かけたので………あ、いや、違うそうじゃない。
なんで!?なんで姉さんがここにいるんですか!?」
「あぁそのこと?」
エミリー姉さんは私の顔をペタペタ触りながらも、いつもの調子を崩さずに言った。
その背後では武装した兵士たちが次々と店内へ雪崩れ込み、素早く周囲を警戒している。
けれど、その剣先も銃口も、誰一人として私たちには向けてはいなかった。
「うーん、私が説明してもいいけれど……」
姉さんはわざとらしく一拍置いてから、入口の方へ視線を向けた。
「そうね、それはやっぱり、あの人にお任せしようかしら」
入り口に溜まった兵士たちが左右に分かれる。
まるで誰かのために道を空けるみたいに。
その向こう、崩れた玄関の先から、一人の青年が中へ入ってきた。
「標的の確保は第二義的な目標です。
彼女たちの保護と証拠の確保を最優先事項として行動してください」
黒に近い濃紺の外套。
貴族らしい質の良い装い。
腰には細身の剣と小銃。肩には、戦場の埃が薄く積もっている。
少し乱れた黒髪。
深い紫色の瞳が辺りを見渡し、こちらを見つけると彼は安心したように少し微笑んだ。
「……………………」
息が、止まった。
顔なんて見間違えるはずがない。
たとえ三年会っていなくても。
写真越しでもすぐにわかるくらいなのだから、目の前にいるなら尚更だった。
「…………ルイス、くん………」
記憶の中の少年から、幼さを少しだけ残して、大人の男性の輪郭を纏った人。
私が何百回も夢に見て、何千回も会いたいと願って、それでもう二度と会えないのだと昨日ようやく思い知らされたその人。
「…………………ぇ」
喉が上手く動かせない。
声が、出ない。
ルイスくんはそんな私を見つめたまま、数歩、こちらへ近づいてきた。
その足取りは決して速くない。慎重で、ためらいを含んでいて、それでいて止まらない。
「アナ」
名前を呼ばれた。
たったそれだけで、視界が揺れた。
だめだ。だめだだめだだめだ。
こんなの、夢に決まってる。
昨日あれだけ泣いたから、頭が変になったんだ、私。
「……っ、なんで」
ようやく絞り出した声は、ひどく掠れていた。
「なんで、いるんですか…………」
ルイス君が私の前で立ち止まる。
手を伸ばせば触れられる距離だった。
「迎えに来た」
あまりにも真っ直ぐで、あまりにも簡単な答えだった。
「迎えに行くと書いたのに、三年もかかった。本当にすまない」
謝らないで、と思った。
でも同時に、遅いよとも思った。
会いたかった。ずっと。ずっとずっと会いたかった。
苦しくて、惨めで、信じたくて、でも昨日はもう、全部終わったんだと思ったのだ。
「………っ、もう、諦めようって思ってたのに………」
気づけば、足が勝手にふらついていた。
「アナちゃん!」
姉さんの声が遠くなる。
「もう、会えないって思ってたのに…………」
ルイスくんの表情が変わった。
次の瞬間には、彼は一歩踏み込み、倒れかけた私の体を抱き止めていた。
「……あ」
あたたかい、と思った。
胸板の硬さも、腕の力も、香りも、どうしようもなく懐かしかった。
三年間、触れられなかった温度だった。
「アナ」
耳元で名前を呼ばれる。
それだけで、涙が勝手に出た。
「会いたかった」
ルイス君の腕が、壊れ物でも扱うみたいに、それでいて失うのを怖がるみたいに、ぎゅっと私を抱きしめる。
優しくて、でも必死で。
その力の強さに、ああ本当に来てくれたんだ、とようやく実感してしまった。
なんで、とか。どうやって、とかは、今はどうでもいいと思えた。
そこで、私の頭は限界を迎えた。
昨日から泣いて、吐いて、倒れて、今日も朝からずっと気を張っていたのだ。
そこへきて、絶対にもう会えないと思っていた人に抱きしめられたのである。
むしろ今まで立っていたのが偉い。
「……ルイス、くん」
「うん」
「むり……」
「え?」
「情報量が……おおすぎで……むりです……」
そこまで言ったところで、ぷつん、と意識が暗転した。
「アナ!?」
「アナちゃん!?」
薄れていく意識の中、エミリー姉さんの悲鳴と、ルイス君の焦った声がごちゃまぜに聞こえた。
最後に感じたのは、私を抱きしめる腕が慌てて少しだけ強くなる感触で。
──ああ、夢じゃなかったんだ。
そんな、ひどく間の抜けた安心だけを胸に、私は人生二度目の、ルイス君起因の気絶をかましたのだった。
やったぜ。