私たち肉便器は旦那様のおもちゃです 〜メイド娼館で調教レイプしていただきます♡〜 作:ゆっとぴあ
あっという間に二週間が経った。
私たちは三日ぶりに修道院に来たところだ。
「お姉ちゃんみてみて〜!側転〜!」
「すごいすごい。怪我しないでよー」
修道院の庭でベンチに座り、私は元気よく駆け回る妹達を眺めながら、隣に座るルイスくんの手を握り直した。
夏の終わりの涼しい風が、私たちの頬を優しく撫で、木々の葉をさらさらと鳴らしていく。
「みんな元気そうだ」
「はい、本当によかった」
王都の混乱は既に収まり、第二王子派の主だった者たちは拘束、もしくは失脚した。
第二王子とルイスくんのお父さんは今裁判中だそうだ。
王女様は速やかに周辺諸侯の後ろ盾を取り付け、次の王位継承者としての地位を確固たるものにした。
戴冠式はまだだが、それもじき、執り行われる予定らしい。
ルイスくんはこの二週間、信じられないくらい忙しそうだった。
王城とペンブロク邸とを行き来して、証言の整理だの、法務の再編だの、貴族たちとの折衝だの、私にはよくわからない難しい仕事を山ほど抱えているらしい。
それでも時間を見つけては、こうして修道院へ顔を出してくれている。
私はと言えば、ルイスくんと生活を共にし、日々忙しい彼の身の回りのお世話を焼いていて……と言えれば格好もつくのだが。
実際のところは、紅茶を淹れては濃すぎたかなと不安になり、上着を預かっては匂いにどきどきして、書類を運ぶ横顔をぼうっと見つめてしまうだけの、たいへん役立たずな日々を送っていた。
一緒に居られるだけ幸せなんだと、ルイスくんは言ってくれているけれど。
セックス?性交?もちろん一回もしてませんけど?
本当に忙しくて、そんなことしてる場合じゃないの。
「アナ。
少し、大事な話がある。裏へ行こう」
その一言に、私の心臓はぴくりと跳ねた。
「……だ、大事な話、ですか?」
思わず聞き返すと、ルイスくんはいつもの穏やかな顔のまま、けれど真面目な目で頷いた。
◇ ◇ ◇
修道院の裏手は静かだった。
表の庭からは妹たちの笑い声が微かに聞こえてくるけれど、こちらには背の高い木々の影が落ちていて、空気も少しひんやりしている。
ルイスくんは立ち止まり、落ち葉の山に腰を下ろすと、一度ゆっくり息をついた。
「まず昨日、正式に婚約を解消した」
「………あ」
実を言うと、婚約のことは本当にすっかり忘れていた。
この二週間はあまりにも濃すぎて、あまりにも色んなことが起こりすぎて、気づけばそのことを頭の隅へ追いやってしまっていたのだ。
「もともとあれは、父上と第二王子派の結びつきをさらに強めるための政略だった。
ハイゼルン家と王家の縁を、公に強くするためのものだ」
淡々とした口調だった。
何度も心の中で反芻して、ようやく言葉にしているような響きがあった。
「だから今の僕の立場では、あの婚約を残しておく方がまずい。
第二王子派との繋がりを保っていると見なされれば、王女殿下にも、カトリーヌ自身にも迷惑がかかる。
……いや、それだけじゃないな」
ルイスくんは一度、目を伏せた。
木漏れ日が、その睫毛に薄く影を落とす。
「カトリーヌとは二年ほど前、学校で知り合ったんだ。
同じ講義を取ったのがきっかけでね。
最初から婚約者候補として紹介されたわけじゃない。
普通に話して、一緒に本を読んで、互いに息の合う友人として過ごしてきた」
その言葉を聞いて、胸の奥がちくりと痛んだ。
けれど私は、黙って続きを待った。
「聡明で、気丈で、よくできた女性だよ。僕なんかより、ずっと人を見る目がある。
たぶん……いや、きっと、彼女には分かっていたと思う。
僕の気持ちが、最初から別のところにあるってことも。
婚約の話が出ても、心の中では喜びもせず逆に焦っていたことも。
全部、カトリーヌには見えていただろうね」
ルイスくんはそこで、自嘲するみたいに小さく笑った。
「僕は、女性二人を天秤にかけて、そのうち片方を選んだ卑怯者だ」
私はすぐに言葉を返せなかった。
だって、そんなふうに自分を責めるルイスくんの顔を、見たくなかったから。
「……カトリーヌ様は、なんて」
やっとそれだけ尋ねると、ルイスくんは少しだけ遠くを見る目をした。
「怒られたよ。かなりネチネチとね」
そして、苦く笑う。
「呆れたように笑ってた。
最初からアンタ、そういう顔をしていたものねって。
むしろ遅いぐらいよ、どれだけその子を苦しませたのか、アンタわかっているの。
ようやく助けられたのなら、今度は絶対に手を離さないであげなさい、って言われた」
「……いい人、ですね」
「ああ。本当に」
風が吹いて、枝葉がさらさらと鳴った。
「自分の扱いには、逆に何も不平を言わなかった。
彼女は今、王都のとある邸宅に監禁中だ。
彼女の身の安全のためにも、場所は誰にも教えられないが」
それで昨日は、私もついて行かせてもらえなかったのか。
「第二王子の娘だからね。本人に罪はなくても、今はどうしても政治の渦中から切り離せない。
今後も、彼女には困難が続くだろう。
クリスティーヌ様もなんとか、周囲からの彼女への不満を逸らして穏便な着地点を探してくださっているが、今は自由の身には程遠い。
立場上、それは仕方のないことだと頭ではわかっている。
本人も気にするなと言ってくれたけど、それでも僕はカトリーヌに対して、どうしたって後ろめたさを感じる」
そう言ってルイスくんは、膝の上で組んだ指先を見つめた。
普段の彼らしくない、行き場を失ったような目だった。
「彼女は何も悪くない。父親と違って、カトリーヌが違憲行為をしたことも、道徳性に欠けることをしたことも無い。
ただ生まれがそうだっただけで、今は周囲の思惑に振り回されている。
……そして、その原因の一端は僕にある。
大切な友人を、僕は貶めたわけだ」
その言葉の最後だけには、迷いがないように私は思えた。
だからこそ彼は、このように苦しんでいるのだろう。
ルイスくんは深く息を吐き、両手で顔を覆ってしまった。
「……すまない、君にこんなこと言っても困らせるだけだとは分かっている。
けど君にだけは、きちんと話しておきたかった。
軽蔑されるかもしれないとも思ったけど、それでも黙っていたくなかった」
胸の中には色んな気持ちがあった。
苦しさも、安堵も、少しの痛みも。
でもそれ以上に、彼が自罰的に苦しんでいるのなら、それは。
だから私は、ゆっくりと彼の隣に腰を下ろした。
「……軽蔑なんて、しません」
声が震えないように気をつけながら。
体を横に倒し彼に体重を任せ、寄り添うように。
「そうやってルイスくんが今悩んでいるのは、ちゃんと、カトリーヌ様のことを大事に思っているからでしょう?
ここでもうカトリーヌ様は無関係の人だからって、何も感じない人だったら、ルイスくんのこと、私きっと好きになってません」
思ったことをそのまま言葉に乗せて、彼に伝える。
「カトリーヌ様のこと、大事に思うの、やめなくていいですよ。
というか、やめないでください。やめたらダメです。
やめたら多分怒ります、私」
ルイスくんの睫毛が揺れる。
「ただ、その上で……私のこと、ちゃんと一番好きでいてくれたら、それでいいです」
言ってから、少し恥ずかしくなった。
我ながら、ずいぶん欲張りなことを言っている気がする。
ルイスくんはしばらく何も言わなかった。
ただ、伏せていた目をゆっくりと上げて、私を見た。
その目が、少しだけ赤いように見えたのは、周囲に緑が多いからに違いない。
「………そう言ってくれて、救われるよ」
ルイスくんはそう言ってから、膝に手を当て落ち葉のクッションから立ち上がる。
「実は、もう一つあるんだ」
「大事な話が、ですか?」
「うん」
ルイスくんは一度、私から少しだけ視線を外した。
少し言葉を選ぶような沈黙ののち、口を開く。
「昨日、クリスティーヌ様から辞令が下りた。
法務省の大臣補佐官の席だ」
「あれ、今までも補佐官じゃなかったですか?」
「今までのは暫定政権での臨時、今回のが正式な任命だよ。
大臣のすぐ下で、政策を実際に動かす役職だと思ってくれればいい。
法の整備、関係各所との折衝、文書の起案、実務責任、その辺りを他の補佐官たちと分割して引き受ける立場だ」
………それって、とても重要な役職なのでは?
ルイスくん凄い。
「18歳での補佐官任命は、現政治体系では前例がない。
父上の失脚で空いた穴を埋める政治的な意味もあるし、クリスティーヌ様からの信任でもある。
それに、一応僕は今回の王位奪還における功績者、という扱いを受けている。
その報奨の意味合いもあるんだろうね。
結局法務はハイゼルン家の私物かという批判も出ているみたいだけど、それはクリスティーヌ様が封じ込めているらしい」
ルイスくんはそこで一度言葉を切った。
木立の隙間から漏れる温かな日差しが、その横顔の輪郭を静かに縁取っている。
「……そのうえで、クリスティーヌ様は僕に、もう一つ役目を与えた。
補佐官任命は、その役目のために、僕が政権内で動きやすくするためでもある」
ま、まだあるんです?
期待の新星じゃないですか本当に。
ルイスくん凄い。
「国内の奴隷制度を終わらせるための、三十年をかけた計画だ」
「……え?」
思わず間の抜けた声が出た。
ルイスくんは、私の反応を予想していたみたいに小さく苦笑してから、続ける。
「もちろん、明日いきなり全部なくすなんてことはできない。
このドリアナ王国の奴隷制度は、もう二百何十年も前から農地にも工房にも貴族の私邸にも食い込みすぎている。
力任せに断てば、今度は生活の基盤を失う人間が大量に出る。
反発も抗議も起きるだろう。下手をすれば、解放されたはずの人たちが別の形で路頭に迷う。
だから三十年をかける。あるいは、もっと長く」
「そんなに長く……」
「ああ。新たな奴隷売買の規制。既存奴隷の戸籍化と実態調査。未成年者の優先解放。債務奴隷制度の廃止。里親制度の拡充。雇用契約への段階的移行。保護施設と教育機関の整備。買い手側への補償と、違法拘束への厳罰化。
全部を一度にはできない。
けれど順番を間違えず積み上げれば、三十年で制度そのものは終わらせられると、クリスティーヌ様は考えておられる」
風が吹いて、私たちの足元の落ち葉がかさりと鳴った。
「……王女様が、そんなふうに」
「もともと懐疑的だったんだ。奴隷制度そのものにね。
とにかくお優しい方だ。
幼い子供がただそう生まれたからというだけで、理不尽に虐げられているこの国の現状を、黙って看過できる方ではない。
別口で貧困層への救済措置も始められるおつもりだ」
ルイスくんの声は静かだった。
「王家に生まれた以上、表立って否定はできなかった。
王家の支持基盤の一部を敵に回すことになるし、戦時中はなおさらだ。
でもずっと、今のやり方は国家を腐らせるって考えておられたらしい。
今回、第二王子派の違法奴隷売買と結びついた証拠が大量に出たことで、ようやく切り込む口実と力を得た。
……そこで、僕がその責任者に指名された」
「せ、責任者、ですか……?」
「実務の中心、だね。
各省と議会と地方領主、修道会、軍、それに商人たちまで巻き込んで、この計画を形にする役目だ。
たぶん国中から嫌われるよ。既得権益を壊す側だから」
バカな私には、あまりに話の規模が大きすぎて、想像すらつかない話だった。
その上で、18歳の若い青年に背負わせていい仕事なのかと、私は思った。
だって、あまりにも責任重大すぎる。
「……断らなかったんですか」
彼の判断を侮蔑する失礼な物言いだなと思いつつもそう聞くと、ルイスくんは少しだけ笑った。
「うん。断る選択肢は元々無かったよ。
そもそも奴隷制は僕も嫌いだし。
それにアナだけを助け出して、その他の人は見ないふりをするなんて、それこそアナに対して誠実じゃない」
私に対して、誠実じゃない。
その言葉の意味を、私はすぐには飲み込めなかった。
「………ルイスくんは、すごいです」
ようやく意味を理解して、それから口を開いて出てきた言葉は、あまりにも子供っぽいものだった。
うまく、この気持ちを言葉にできない。
どうにも安っぽいことしか言えない自分が嫌になる。
「そうやって、もっとたくさんの人を助けようとするルイスくんのこと、本当にすごい人だなって、思います。
こんなにすごい人を好きになれて、私は今、幸せです」
言いながら、自分の声が少し震えているのがわかった。
尊敬と、誇らしさと、それからどうしようもない不安とが、胸の中で一緒くたになっていた。
「でも、私……今ちょっと、怖いなって、思っちゃいました。
何様なんだって思うでしょうけど、……その、きっと大変な仕事です。
危ないことだって、いっぱいあると思う。
殺されそうになることだって、あるんじゃないですかね……。
それが、怖いです。
……私、ルイスくんが傷つくのが、嫌です……怖い、です」
本当に、私は何様なんだ。
彼の生き方に、彼の選んだ道に、口を出せるような立場でもないのに。
こんなに自信満々に自分の出世を教えてくれた自分の大切な人に、私は水をぶっかけている。
こんなことを言って何になる。私のために、そんなこと辞めて下さいなどと言うつもりか。
でも怖いものは怖いんだ。
この人はきっと、どこまでも頑張れてしまう人だから。
すると俯いた私の手に、ふと、あたたかな重みが重なった。
ルイスくんの手だ。
「何様でもなんでもないよ」
静かな声だった。
顔を上げる。
少し気の抜けたような、優しい微笑みが私を出迎えてくれた。
「怖いって言ってくれてよかった。むしろ安心したよ。
君がもし、すごいですね、頑張ってくださいって笑うだけだったら、僕はたぶん少し寂しかった。
アナが不安に思ってくれているのは、アナが僕のことを真剣に考えてくれているからだと、僕はそう受け取ったよ」
「……え」
「正直言って、僕も怖いよ」
ルイスくんははっきりそう言った。
「さっきも言ったけど、失敗したら、何十万人もの人の人生が滅茶苦茶になる。
僕一人の失策で、解放が十年遅れるかもしれない。
反発も出る。貴族たちの恨みも買う。下手をすれば、僕自身が潰される」
「実を言うと、自分一人で乗り越えられる気がしない。
僕はまだ18で、政務の中枢にいる連中の中じゃ、どうしようもなく若い。
青二才ってやつだ。
経験も足りないし、敵も多い。
だから」
ここでルイスくんは一度言葉を区切った。
「だから、その……なんだ。ほら、その……。
……すまない、今言葉を探してて………」
ルイスくんが珍しく言い淀んだ。
な、なんだろう。なんだかドキドキする。
こんなにモジモジしているルイスくんを見るのは始めてかも。
「………ふぅ、よし。アナ」
「は、はい!」
私は思わず背筋を伸ばした。
彼はいつになく真剣な顔で、そして少し頬を赤くして。
「僕一人では無理だ。
だから、君に隣にいて欲しい。
隣で、僕を助けて欲しい。
この先、ずっと」
ルイスくんは私の目を真っ直ぐに見て、噛み締めるようにそう言った。
………ん?これってプロポーズです?
そう気がついた瞬間、私の顔は一瞬で茹で上がった。
い、一応確認を……!
「る、ルル、ルイスくん。これってその、やっぱり、ぷ、プロポーズで……?」
「もちろんそのつもり、だったんだけど……」
「は、はいぃ!」
うぅわ変な声。
自分でもびっくりするぐらい間抜けな返事だった。
でも仕方ないと思います。だって今私の心臓、爆発しそうだもん。
そんな私の反応を見て、ルイスくんは少し緊張が解けたのか、微笑んでまた話し始めた。
「ただ恋人として一緒にいたい、とか、そういう話だけじゃない。
もちろん、それもある。すごくある。
けど、それだけじゃなくて……君と、この先の人生を生きてみたい。
君が隣にいてくれたら、とても心強い」
彼の指が、私の手を包む。
あたたかくて、少し震えていた。
「今すぐ結婚はできない。
僕の立場もまだ不安定だし、君を巻き込むには危険が多すぎる。
きっとこの数年が一番大変になる。
制度改革も始まるし、僕自身、足場をもっと固めないといけない」
温かな声だった。
でも、その温かさの下に、揺るがない決意が見えた。
「だから、まず二年。僕たちが20歳になるまで。
二年間、恋人としてお付き合いをして欲しい。
そのあいだに僕は、自分の立場を固める。君を守れるだけの力を、もっと確かなものにする。
それで二年後、もしその時も君がまだ僕を好きでいてくれるなら」
ルイスくんは、まっすぐに私を見た。
「僕と、結婚して下さい」
風の音も、葉擦れも、遠くの妹たちの笑い声も、全部一瞬で遠のいた気がした。
あるのはただ、目の前の彼の声と、その言葉だけ。
答えは考えるまでも無かった。
「……………はいっ」
胸がいっぱいで、苦しくて、嬉しくて、涙まで滲んでくる。
「私でよければ、よろしくお願いします」
その瞬間、ルイスくんの肩から、目に見えるみたいに力が抜けた。
「……よかった」
本当に、本当に安心したみたいな声だった。
それがなんだか可笑しくて、愛おしくて、私は涙ぐみながら少し笑ってしまう。
「そんなに不安だったんですか?」
「そりゃ不安だよ」
ルイスくんは苦笑した。
「断られたら、しばらく立ち直れないと思ってた」
「断るわけないじゃないですか……っ」
思わず少し強い口調で言い返してしまう。
だって、そんなの本当に、あるわけがないのだ。
もしかしてだけど、私たち自己肯定感ひくひくカップルなのだろうか。
顔が自然と近づいていく。
そのまま、二人でキスをした。
三年ぶりの、唇を触れ合わせるだけの短いキスを。
「……これからよろしく、アナ」
額を寄せたまま、ルイスくんが囁く。
私も、答えるように頷いた。
「はい。
よろしくお願いします……ルイスくん」
遠くから、妹たちのはしゃぐ声が聞こえてくる。
夏終わりの風が、私たちを包むように優しく通り抜けていった。
◇ ◇ ◇
◇ ◇ ◇
◇ ◇ ◇
そして二年後、私たちは約束通り結婚した。
式は身内だけで小さく挙げた。
「ほらアナ、見えるかい?可愛い猫だね」
「ふふっ、見えてますよ。可愛いですね……あっ、あくびした」
週末はこうして、二人で手を繋いでお散歩するのが最近の楽しみだ。
この二年で、ルイスくんは奴隷解放の土台の一部を整えた。
来年から、16歳以下の奴隷の優先解放が始まる。
既に王都近郊には保護院と学び舎がいくつも建てられ、読み書きや簡単な計算、職能訓練を施す準備が進んでいるそうだ。
もちろん反発も多い。保守派貴族たちは顔をしかめ、強欲な商人たちは損失を嘆き、地方では今も不満の声が絶えない。
けれど、それでも確かに、この国は少しずつ変わり始めている。
私は結構頑張って勉強して、少しずつルイスくんの仕事の手伝いをできるようになってきた。
とは言っても、手紙、書類の仕分けだとか、そういう簡単なやつだけど。
それでも、いつまでも頼りきりではいられない。
早くルイスくんに相応しいお嫁さんになりたいものだ。
リーナはハイゼルン邸の近くの保護院に就職し、解放予定の子供の奴隷たちの受け入れ準備を進めている。近くに住んでいるので、よく家に遊びにきてくれるのだ。
アイリスさんは家政婦としてハイゼルン家に残り、エミリー姉さんもちゃっかりハイゼルン家にメイドとして雇われた。
ルイスくんのお父さんが居なくなり、アイリスさん以外の使用人が全員辞めてしまったので、現状家の家事は私たち三人で回している。
クララとは貴族のパーティでよく会う。
緊張でガチガチになりがちな私を上手くサポートしてくれるので、ほんと毎回マジ助かってますクララ様。
他の店の子達も、仕事を始めたり里親に出たりなど、それぞれの場所で自分の人生を歩き始めている。
カトリーヌ様は、クリスティーヌ様の養子となることで王都に留まれることになった。実に7歳差の親子である。
議会で真剣に話し合われていた処刑を阻止し、この形に落ち着けるよう、ルイスくんはかなり奮闘した。
彼女もよく家に遊びにきてくれる。この二年で随分仲良くなったものだ。
「もう夕方か。
家に帰ったら夕ご飯を作ろう。たまには僕にも手伝わせてくれ」
「ええ、じゃあ今日は二人で作りましょう。
アイリスさんとエミリー姉さんを美味しい料理でびっくりさせちゃいましょうね」
公園のベンチに二人で座り、他愛もない会話をする。
夕焼けの下、隣で微笑む夫の横顔を見つめながら、私はそっとその手を握り直した。
これから先も、苦しいことも、嬉しいことも、二人で分け合って生きていけるのだろう。
それがとても幸せで、私は静かに目を細めた。
というわけで、以上で一区切りとさせていただきます。
アナちゃんは無事、第一話での目標を達成しました。
ここまで読んでくださった方に、深く感謝申し上げます。
後日談だとか、過去の話だとか、いくらでも書くネタはあるのでそれも書け次第投稿していきます。
ここ五話と全くエロ無くてごめんなさい。しかし必要な展開でした。
タグ詐欺にならないよう、過去話として陵辱ものも書くのでどうかお待ちを。
あ、二人のドスケベイチャラブSMセックスも書かせてね。