幼馴染はオトコノコ〜男の娘なんて好きじゃない〜 作:脊髄反射
幼馴染といえば。
古き良き友人。予期せぬ理解者。幼い恥の目撃者。腐れ縁。
ただ近くにいたというだけで、なぜだか遊ぶようになり、
くだないことで笑い、怒り、泣き、寄り添い、気づけば多くの時間を共有するようになった。
今になって思えば、そんな奇跡みたいな出来事が自分にもあったんだなと驚く。
かつての幼馴染は、小学5年生の時に、遠くへ引っ越してしまった。
同じ中学へ通った他の友達とも、一人県外の高校へ進学したことで離れてしまった。
とにかく俺は今、高校の入学式を終え、
見ず知らずの同級生たちに混じって、冷や汗を書きながら教室の椅子に座っている。
所詮、小さな町の小さなコミュニティの中だけで生きてきた自分には、
同い年とは思えないような大人びた若者たちに声をかけ、
お互いが敵ではないことを伝えるコミュニケーション能力など持ち合わせていなかった。
同じ中学校から進学してきたであろうもの同士が、教室の中でいくつかの塊になってはしゃぎ合い、
何人かは俺と同じように息を潜めながら、事前に配られたプリントを読んだりして時間をやり過ごしていた。
監視カメラのように慎重に、視線が向けられていることを悟られないようゆっくり、
首を回しながら辺りをうかがっていると、右後ろからこちらへ向けられていた視線と不意にぶつかってしまった。
明確に自分を見ていたことが分かるほど、真っ直ぐでまんまるに輝く瞳と焦点がつながり、
俺の頭は急いで同じコースを通って前へ向き直した。
ヤバイ! 目が合った。
想定外のアクシデントに鼓動が強く、速くなる。
しかし、それだけではなく、
今目が合った女の子のあまりの可愛さが、更に拍車をかけて鼓動の回転数を上げさせた。
都会の女の子って、かわいい・・・!
色々な味のガソリンで空吹く心臓のドキドキを、深呼吸でごまかしていた時、
教室の前の扉が開き、ボタンを外したスーツ姿の中年男性が入ってきた。
入学式の中で、俺が所属する1年3組の担任だと紹介されていた人だ。
「はーい!! 席について下さい!」
教卓の前に立った先生が声をかけ、クラスメイトたちは自らに割り振られた席に着いた。
何となく着慣れていないように見えるスーツ姿と、服の上からでもわかる体格の良さ。日焼けした肌。ガラガラとしゃがれていながら、教室の奥まで届く声からして、体育教師であると見受けられる。
「えー、みなさん! 改めてご入学おめでとうございます! 私がこの1年3組を担任します、福田善晴(ふくだよしはる)です! 1年間よろしくな!」
福田と名乗った教師はそう言うと、体育会系らしい圧の強い笑顔をこちらに向けた。