※この作品はR-18です。

幼馴染はオトコノコ〜男の娘なんて好きじゃない〜   作:脊髄反射

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第3話 家に帰って

目の前のことでいっぱいいっぱいになっているうちに、

高校生活の初日は終わっていた。

 

どんなに気張ろうが、手を抜こうが、一日は息を切らすことなく回り続ける。

 

クラス全員の自己紹介が終わった後、俺らは教室を出て校舎内を見て回った。

福田先生を先頭に出席番号順で一列になり、職員室だの美術室だの校内に何があるかを確認していく。

 

自己紹介が済んだことで、クラスメイトは”見ず知らずの同級生”から”顔見知り”に昇格し、

言葉を交わさないことの違和感に体がむず痒くなっていく。

 

かといって、話しかける勇気も出せない陰の者。

天使と悪魔に押しつぶされそうになっていた時、前を歩いていたノリ軽男子が俺に話しかけてくれた(高校マジでかくね?☆)。

ありがとう、遠藤......☆

 

 

 

色々あったが、家に帰ればルーティンは変わらない。

母が作ってくれた夕飯を食べ、風呂に入り、テレビを見てから自室に入る。

 

明日の必要な物をカバンに詰めていると、

ずっと心に引っかかっていたことが、ビート板のように思考の表面に浮かび上がってくる。

 

 

宮野蛍

 

 

あれは俺の知っている、”あの”宮野蛍なのだろうか。

 

たまたま家が近くにあって、物心ついた時にはすでに一緒に遊んでいた。

同じ保育園に通い、同じ小学校へ通い、5年生の時に父親の転勤でどこか遠くへ引っ越していった幼馴染。

近くに住んでいたというだけなのになぜか馬が合い、いつも一緒にいた友達。

いや親友と言える存在だった。

 

俺はあいつを「ほたる」と呼び、あいつは俺を「りょーちゃん」と呼んだ。

 

そいつと同姓同名のクラスメイトが、今日現れた。

なのに。

なのに、彼女は女の子の格好をしていた。いや、彼か。

彼ということは男だ。男なのにスカートを履いていた。

いや、それはいい。校則にも違反していないし、今は令和だ。ジェンダーフリーだ。

 

問題はそこじゃない。

彼が”ほたる”なのかどうか、ということだ。

 

自分で男だと言っていた以上、彼は男なのだろう。

そうすると、彼が”ほたる”である可能性は高い。

 

だが安直にそう決定づけられない事情がある。

それは、見た目がどう見ても女の子だということだ。

 

更にいえば、可愛すぎる、ということだ。

俺のタイプだから可愛く見えているというより、おそらく男性女性問わず10人中8人? 9人? は可愛いと答えるだろう。

それくらいの容姿には見えた。

 

確かにあいつには、女の子みたいなところがあった。

体は小さく華奢で、声変わりしていない男子たちの中においても比較的高めの声をしていた。

その上、小さな体に不釣り合いの大きな眼鏡をかけていたせいで、

やんちゃな男子たちから、からかいの対象にされることも少なくなかった。

髪もモジャモジャとか言われていた気がする。

 

そんな俺の記憶に残っているイメージと、彼の姿はあまりにもかけ離れている。

あれから時間が経っているとはいえ、数年で人はあんなにも姿が変わるものだろうか......?

 

 

 

彼が”ほたる”ではない確率の方がどう考えても高いように思えるのだが、

そう決め付けきれない、強い理由が一つあった。

 

今日の自己紹介の時。

 

彼は確かに、俺に向かって笑いかけた。

 

普通ならあり得ない。

何の取り柄もない平凡、もしくはそれ以下の容姿である自分。

性格に関して言えば、同い年のクラスメイトにすらビビって声も出せないほどのチキン野郎。

 

そんな人間に、それも初対面の男に、あれほどの容姿の女子が笑いかけることなどあり得るはずがない。

だが彼は、確実に俺を見ていた。

それも2回も。

1回目は偶然だとして、2回目は意図して見たとしか思えない。

 

じゃあ、なぜ彼は俺のことを見たのか?

そう考えていくと、一つの可能性に結びつく。

 

それは、彼が”あの”宮野蛍だから。

そして俺のことに気がついたから。

 

それが一番自然な答えであるように思えるのに、なぜだか頭が理解を拒んでいる。

う〜ん.......。

 

 

 

俺は考えるのを放棄して布団にくるまり、結論を闇に投げ捨てた。

 

 

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