幼馴染はオトコノコ〜男の娘なんて好きじゃない〜 作:脊髄反射
翌日から、オリエンテーションやら新入生歓迎会やらイベントをはさみつつ、
徐々に通常の授業へと移行していった。
俺は予定通り、バスケ部を見学した後に入部届を提出し、
クラスの中でも、気軽に声をかけあえる友達ができた。
それには何といっても、遠藤の影響が大きい。
たまたま前の席にいたノリの軽い男子、遠藤和希(えんどうかずき)。
彼のノリの軽さは、初対面の思春期同士の心の壁を取り去るには非常に効果的で、
遠藤を媒介にクラスメイトが繋がっていき、一緒に昼飯を食べるグループもできた。
そうして新しい学生生活は、順調にスタートしていった。
ただ一つ、ある問題を除いて。
俺が入学初日からずっと目を背け続けていること。
そう、宮野蛍だ。
初日から衝撃のカミングアウトがなされ、はじめこそ戸惑っていたクラスメイトたちだったが、
宮野の類稀なる容姿と、のんびりとした人当たりの良さから、彼の周りには自然と人が集まり出した。
更には学年を超えて、とんでもない美人が入ってきたという噂が学校中に広まり、
しかもそれが男だという子供の嘘みたいな話を確かめに、
校内の野次馬どもが次々とうちのクラスを訪れた。
一躍、時の人となった宮野を囲んでいる同級生たちを尻目に、
俺は何となく集団から距離を置いていた。
彼は幼馴染みの宮野蛍なのか。
仮にそうだとしても、なんて声をかけたらいいのか分からない。
そもそも、あっちが俺のことを覚えている保証なんてないじゃないか。
なんだかんだと、それらしい言い訳を並べ立てて、
俺は宮野と接触することを避け続けた。
しかし、状況は刻一刻と変化していく。
昼休み。
だんだんお決まりになりつつある男子たちで今日も固まって、弁当を食べようとしていた時、
前に座っていた遠藤がふいに、例のごとく軽いテンションで声をあげた。
「あ、宮野ちゃ〜ん! お昼一緒に食べな〜い?☆」
は? なんて?
右後ろの方から返事が聞こえる。
「食べる食べる〜! みんなも行こ〜」
席を立つ音が聞こえ、宮野と、一緒にいた数名の女子たちがこちらへやってくる。
「お〜やった〜! 今日は大人数だネ〜☆」
みんなで机を移動して、向かい合わせになるよう一塊りになる。
俺も椅子を運びながら、不自然にならないよう、宮野と距離をとって座った。
はじめは男女ともに緊張している様子だったが、遠藤のチャラさがいい緩衝材になり、
気づけば和気藹々とした雰囲気でお昼時は過ぎていく。
みんなが他愛もない話で盛り上がる中、俺は目の前の弁当を食べることに集中して会話の輪から外れていた。
すると、ふいに言葉が飛んできた。
「岡島くんは何が好きなの?」
違和感を察して顔を上げると、みんなの視線が俺に集中していた。
会話が止まっている。
何のことやら分からず皆の顔を見渡すと、宮野がこちらを見て微笑んでいる。
どうやら宮野が俺に質問したらしい。
話を聞いていなかった俺は
「ごめん......。聞いてなかった......」と言葉をふりしぼった。
あ、ヤバイと思った瞬間、
「聞いてないんかい!!!☆」
と遠藤が俺の肩にパーンっとツッコミを入れた。
その瞬間、ドカンと笑いが巻き起こる。
相変わらずキョトンとした顔で固まっている俺に、遠藤が
「岡ちゃん食べるのに必死になりすぎだって〜!☆」
と追いツッコミを入れることで、更に笑いが膨れ上がった。
好きな漫画の話だったらしく、恥ずかしさで赤面しながら無難な答えを返すことで
何とかその場をやり過ごすことができた。
そうこうしているうちに昼休みも終わり、午後の授業が始まる。
俺らは席を元に戻し、それぞれの席へ帰っていった。
遠藤のおかげで変な空気にならずに済んだ。
それでも少し落ち込んでいる自分がいる。
悪いことなど何もしていないはずなのに、この後ろめたい気持ちはなんだろう。