幼馴染はオトコノコ〜男の娘なんて好きじゃない〜 作:脊髄反射
俺は昔から、事なかれ主義の人間だった。
良く言えば冷静。
悪く言えば冷めている。
人と深く関わって様々な感情を共有することよりも、
その場の攻撃的な空気を中和するように、
自分が攻撃を受けないように、
振る舞ってきた気がする。
家族の影響もあるのかもしれない。
3つ上の姉は自己主張が強く、はっきり自分というものを持っていた。
それに意見してくる者があれば、たとえそれが親だろうと、きっぱり抵抗する。
その場の空気より、自らの正義に従って行動する。
そうして生まれる摩擦の熱に俺は耐えかねて、
適温を保つように間を取り持ったり。
その場からしれっと距離を置いたりしていた。
2つ下の妹は妹でクセが強く、
個性と個性の狭間にあって、俺は無色でいることを自分の一つの性質にしていった。
そんな人間であるからして、
自ら何か行動を起こすことはほとんどなかった。
「虎穴に入らずんば虎子を得ず」とはよく言うが、
それなら虎子なんていらない、と虎穴の前を立ち去るのが俺だった。
要は、俺から宮野にアプローチをすることはなかったということだ。
幸運にも、クラス内に友達ができたし、同じ部活の仲間もできた。
宮野とも言葉を交わすことはあったが、自ら絡みに行ったわけではない。
何人かで話している時に、たまたま宮野もそこにいただけ。
廊下ですれ違う時に、目が合いそうになれば慌てて目をそらして毎日をやり過ごしていた。
※ ※ ※
5月に入り、中間テストが行われることとなった。
テストの一週間前から部活は休みとなり、勉強のための時間を与えられる。
県外から通っている俺は、通学に1時間半ほどかかるのもあって、授業が終わり次第、早めに家へ帰ることにしていた。
6時間目の数学が終わり、教科書をカバンにしまうと、学校に残って勉強していくクラスメイトたちに挨拶をして玄関へ向かう。
下駄箱に上履きをしまっている時に、ポツリポツリと雨が降り始めた。帰宅する生徒たちが、傘がないだの持ってきただのと騒いでいる。
俺はと言えば、傘を忘れた側だった。
早めに帰るし、傘を持っていかなくてもギリギリ間に合うだろうとたかを括ったのが間違いだった。
まいったな。
雨足をうかがっている間にも、少しずつ雨が兵力を増してゆく。
雨が落ち着くまで図書室でも行って時間を潰そうか。
それとも、濡れてでもこのまま帰ってしまおうか。
玄関に立ちながらボーっと考えを巡らせていると、
後ろから声をかけられた。
「岡島くん?」
鼻にかかった、甘ったるくゆったりとした声だった。
振り向くと、宮島蛍が立っていた。