夜。
布団をしっかりとかけて寝ないと風邪を引いてしまうこの季節ではあったが、
織部雪乃の布団のかぶり方は普通ではなかった。
羽毛の掛け布団の中にすっぽりと身を隠し、胎児のように身を丸めている。
家の者が見たら何かあったのかと思わずにはいられない、
部屋の真中に敷かれた寝具の内側で、雪乃は傍目には判らないほど小さく身体を動かしていた。
正確には身体全体ではない、肩と、足の間から覗いている手だけ。
誰にも見咎められることのない秘密の空間で、ひそやかな遊びが行われていた。
ひそやかで、そして──淫らな遊び。
あれから毎日、雪乃は妹と禁断の契りを交わしていた。
始めのうちはためらいもあったものの、ひたむきな妹の想いは背徳の意識を溶かし、
快楽が身体に染みついていくにつれ、妹が訪れるのを待つまでになっていた。
しかしこの一週間、雛乃が部屋にやって来ることはなかった。
それが焦らしているのだ、と判ってはいても、
二人きりの時以外はこれまでと変わらぬたおやめぶりを演じている雛乃に、
自分からねだるだけの勇気はまだ雪乃にはない。
そんな心を嘲笑うように、解き放たれた欲望は快楽をねだり、
とうとう雪乃は自ら慰めようと乏しい知識を総動員していたのだった。
パジャマの上から、そっと秘裂をなぞる。
臆病な手つきは、壊れ物に触れる時のそれで、どれほどの効果があるのか疑わしい。
しかもただ中指を前後に動かすだけの単調なもので、全ての感覚を下腹に集中させていても、
妹と親友の与えてくれる悦楽には程遠く、満たされない切なさだけが積もっていくだけだった。
これまで、自慰はおろか、自分の恥ずかしい部分などじっくりと見た事も無い雪乃は、
触れることにさえ恐怖を覚えていたのだ。
以前小蒔のは触ったことがあったが、あの時は下着越しで、
しかも過度の興奮状態にあったので、何をどう触ったのかほとんど覚えていない。
妹のやり方を思いだそうとしても、雛乃はあまりに上手に自分に触れてくるので、
やはり参考にはならない。
それでも、塵も積もれば山となるとでもいうように、雪乃は下手くそな自慰を続ける。
そのさなか、静かに襖が開く音がした。
注意深く聞けば、聞かせるために調節されたものだと判るその音に、
雪乃は全身の動きを止めて耳をそばだてる。
こんな時間に、ノックも、何のかけ声もなしに家族が入ってくることはあり得ない
──ただ一人を除いては。
その一人、雪乃がずっと待っていた一人は、暗闇の中を危なげなく進み、
雪乃の背中側に立った。
「姉様」
妹に呼ばれる、ただそれだけでそれまで決して得られなかった快感が噴きだす。
どんな声を出してしまうか怖くて返事はできなかったが、
妹は姉の匂いに満ちている空間に身を滑りこませてきた。
身体を丸めた雪乃に、蛭のように身体を張りつかせた雛乃は、
姉の、下ろした髪に隠れている耳を露にし、ゆっくりと輪郭をなぞる。
その触れ方が、妹がこれまで自分が何をしていたか、
そして何を欲しているかを知っていると雪乃に雄弁に伝えていた。
「姉様……おひとりで、慰めておられたのですか」
「だって……だって」
「はしたない」
自分をこうしてしまった妹に一刀両断に切って捨てられ、雪乃は声を詰まらせた。
ねじ伏せていた羞恥心が甦り、身を縮こまらせる。
人間としてはやや遅くに目覚めた、動物としてはごく自然な本能は、
その目覚め方が普通で無かった事もあり、自分がどうしようもないことをしている、
という罪悪感から雪乃を完全に解き放つことはなかった。
そして彼女の写し身、魂を分けた半身である妹の雛乃は、
そんな姉の心境を知りつつ、それを利用しようとしていた。
「どんなことを考えて……慰めておられたのですか」
硬くなった姉の心の表面を、雛乃は滑る。
心を覆う殻の、脆くなった箇所を探して。
白く細やかな指で耳朶に触れる。
深い愛を乗せて耳全体を擦ってやると、姉の身体が面白いように硬くなった。
怯えてしまった獲物を、あとは弄るだけ。
雛乃の心を構成しているのは、その裏側に底の無い淫欲を含んだ、純真な、純真すぎる想い。
それは水に浮かんだ球の表面に刻まれていて、波ひとつで激しく浮沈するため、
雛乃自身にもどちらが顔を出しているのか解らないことがある。
しかし少なくとも今は、どちらなのかは解っていた。
耳孔の中をもくすぐり、耳の裏側に舌を這わせ、雛乃は少しずつ姉を常世の闇に引き摺りこんでいく。
昏い輝きを宿した瞳で、姉の横顔を見据えながら、すぼめた唇から生温かい息を吹きかける。
肌をくすぐる甘美な風に、雪乃はぎゅっと目を閉じたまま罪を告白した。
「あ、の……雛……雛のことと、小蒔の……こと……」
「嬉しゅう……ございます」
自分を想って慰めていた姉に、妹は褒美を与える。
パジャマのボタンを、ひとつずつ。
見せつけるように外していっても、石像の如く固まった雪乃は抵抗しない。
ただ肩から足の間へ、一直線に伸びている腕をひときわ硬くするだけだった。
それだけでも片手で、しかも手探りでボタンを外す雛乃にはかなりの邪魔になったが、
とうとう全てのボタンを外すことに成功する。
寝る時はしないのか、それとも違う理由からか、雪乃は下着を着けていなかった。
これが、理由──
耳朶をくすぐり続けている指に、熱が伝わる。
恐らく耳だけでない、顔全体を真っ赤にしている姉を思い、雛乃は我知らず微笑んでいた。
一層身体を密着させ、姉の身体に半ば覆い被さる。
それでも、まだ残っている中途半端な理性が妨げさせるのか、
雪乃は胸を腕でしっかりと守り、すぐには雛乃の侵入を許そうとはしない。
一旦そこを諦めた雛乃は、可哀想に、いびつな形に凝ってしまっている肩へと標的を変えた。
襟許に繊手を移し、皮を剥くようにパジャマをはだけさせる。
雪乃は妹の意図に気付いたものの、動くことも出来ず、されるがままでいるしかない。
まずは左肩を支配下に収めた雛乃は、美しい曲線で構成されているうなじに唇を寄せた。
「あ……っ」
不意を衝かれた哀れな子兎は無防備な背中に今更気付いたが、時既に遅かった。
恭しく姉の身体に最初のキスを放った雛乃は、
一転して歯が当たるまで顔を押しつけ、唇の裏側で姉の肌を舐める。
溜まっていく唾液がある程度の量になったところで、歯の間から押し出すようにして擦りつけた。
泡立った唾液が、それ自身の重みで滑り落ちていく。
不快で、そしてたまらなく気持ちの良いぬめり。
身を強張らせている以上、自分ではどうすることもできないうちに、
妹が残した徴は、妹自身によって綺麗にされる。
美しい輝きを残しつつ姉の身体を伝う体液が邪魔な布地に隠れる寸前、
べっとりと舌腹を押しつけて掬った雛乃は、それを口内には戻さずになすりつけた。
「んぅ……っ、ひ……な……」
肺の奥から押し出すような吐息。
それが止むまで待ってから、もう一度、今度は小刻みにくねらせて舐めあげる。
姉の薄い背肉に猫のように舌をいっぱいに伸ばして毛繕いをしてやりながら、
雛乃はもう一度隠されている膨らみに腕を伸ばした。
背中に気を取られていたからか、姉の腕の力は緩んでいて、
その隙間にするりと手を滑りこませる。
小さな丘陵を新たな領土に加えた侵略者は、じっくりと手にいれた土地を検分し始めた。
すっかり快楽に過敏になった桃色のしこりが、数度撫でてやることですぐに目覚めて主に忠誠を誓う。
未だ小ぶりな、これからも大きくならないかもしれない乳房を、雛乃はやんわりと揉みしだいた。
「あっ、ひ、な……」
声を漏らさないよう人差し指を咥えながら、姉が自分の名を呼ぶ。
これまでの一八年間では決して聞けなかった、か弱い声。
無防備で、自分にすがっているその声を聞いただけで、下腹が熱い疼きに満たされる。
ようやく取り戻した己が半身を、雛乃はもうどんな手段を用いても離すつもりは無かった。
肩甲骨の辺りに吸いつかせている唇と、小指の先ほどに膨らんだ乳首と、
両方に同じだけの愛情を注ぎながら、丹念な愛撫を施す。
「ん、ふっ…………ぅ……」
温く、鈍い快感の背中と、熱く、鋭い快感の胸先。
霞む意識の中で、妹の白い指だけが軌跡を描いていた。
幼い頃はずっと握っていた手を繋がなくなったのは、いつの頃からだろう。
大人になれば当たり前のことだと思っていたけれど、
今、身体をまさぐっている手は、たまらなく懐かしく、愛おしかった。
じわじわと身体を浸していく快楽に耐えかねた雪乃の足が、開く。
きちんと揃えられていた膝が力尽きたように離れ、
閉ざされていた淫らな門への道が開いた。
それにいち早く気づいた雛乃は、しかしすぐにはそこを目指さず、
まず半身を乗りだし、姉の左足を封じこめる。
そこから足を使って少しずつ下半身を開かせ、完全に足を絡めとってしまった。
卑しいくらいの動きを、洗練された所作でこなした雛乃は、
姉の太腿に自らの火照りを押しつけながら、手を姉の下腹へと添える。
「うぁ、雛……」
姉の手を払いのけ、遠慮無くさすり上げる。
ほのかな熱気が指先に伝わってきて、劣情をそそった。
自由になる手がひとつしかない事を残念がりつつ、姉の細い首筋に舌を這わせる。
「姉様は……どのようになさるのですか?」
答えがないことを知っていた雛乃は、少しずつ身体をずらして姉の自由を奪いながら、
全神経を指先に集めて姉の淫裂を感じ取ろうとしていた。
「このように……ですか?」
「ふっ……ん……」
白く、穢れなき手に相応しいしっとりとした動き。
しかしそれだけにもたらされる刺激はごく弱く、
雪乃は自分の指でした時よりも切なさに悶えてしまう。
しかも、雛乃は何回かなぞっただけで、ぴたりと動きを止めてしまった。
じれったいながらも高まりかけていたところを中断されて、雪乃は思わず不満を漏らす。
「ど……して……」
「姉様が、教えてくださらないから」
「……ぅ……だって……」
言葉に出さずとも、いや、考えさえしなくても、伝わる。
それが自分達ではなかったか。
雪乃はこれまでの絆にすがるように無言を保ったが、自慢の妹はそこにはいなかった。
「教えてください……姉様」
甘えているような、苛めているような、不思議な響きをその声は持っていた。
水飴のような粘りで心にまとわりついたそれは、硬かったはずの殻をとろとろに溶かしてしまう。
「……い、今触ってるところよりも……もう少し……上、の方……」
「ここが……気持ち良いのですか?」
「う、うん……そこ……あっ、雛……雛っ……」
親よりも強い縁に結ばれている妹は、ほんの少し囁いただけで、
最も気持ち良くなる場所を的確に探し当ててきた。
それは場所だけでない、触り方まで、自分の求めていたものと寸分違わぬ触れ方で。
指が通る度に、反応してしまう。
指が離れる度に、求めてしまう。
恥ずかしいと思っても、ひくつく腰を止めることは出来なかった。
すると。
「わたくしと、同じですね」
「ひな……と……?」
「はい……嬉しゅうございます。……お願いです姉様、わたくしにも……姉様の、指、で……」
自分の指で、雛乃に、触れる──心が、狂おしい歓喜の悲鳴を上げる。
雪乃は羞恥心も罪悪感もかなぐり捨てて、妹の秘められた場所へと手を伸ばした。
パジャマをくぐり抜けて、聖なる隙間へ。
手探りで捕らえた妹の秘所は、驚くほど濡れていた。
それは下着越しにでも肉を感じ取れてしまうほどで、
しかも雪乃が触れたことで一層激しさを増してきている。
「あふっ……! 姉様、そう……気持ち……いいです……」
腰を浮かせ、自ら押し付けてくる雛乃に、雪乃は精一杯応える。
「ああ……んっ、姉様……姉様っ……」
耳許にかかる妹の濡れた吐息に、指を止めることが出来ない。
「ねえ……さま……直に……触って……」
感極まったような雛乃のその願いを、雪乃は半ば待っていた。
不自由な姿勢で、自分のものを触る時には決して出来なかったことを、妹にする。
腕がつりそうになるのも構わず、下着の上端を探り当て、手を入れた。
下腹に広がる茂みは、指三本ほどの幅を持ち、自分のそれよりも随分と発育している。
しかしそれに羨ましさを感じる前に、指が秘裂に辿りついた。
指に当たる感触が、自分のそれとはどこか違うような気がして、確かめてみる。
雪乃にはそのつもりはないにせよ、形として焦らされることになった雛乃は、
両の腿をきつくすぼめてもどかしさに耐えねばならなかった。
「姉様……指を……挿れて……くだ、さい……」
「でっ、でも……! うあっ」
ためらいを見せる雪乃は、いきなり異物が入ってくる感覚に貫かれた。
我慢できなくなった雛乃が、一足先に姉の襞をこじ開けたのだ。
「雛……待って……ん……っ、あ……」
この一週間、妹によって躾られてきた濡唇が、ぬるりと蜜を吐き出す。
門をくぐる為の洗礼を受けた指は、半分ほど進んだ所でその旅を終えた。
「ひんっ……ひ、ひな……ぁ……」
刺激に敏感な入り口近くの内壁を、ぐるりとなぞられる。
体内に触れられる。
自分ではできなかった淫戯は、これまでしなかったことを後悔するほどの快楽だった。
雛乃の指は頬についたソフトクリームを掬うような、そんな動きで媚粘膜をかき回す。
そこから進もうとしない妹に、雪乃は自分も同じことを求められていると気付いた。
迷うには、切なすぎた。
妹を、というよりも自分が気持ち良くなりたくて、雪乃は指を動かす。
自分の膣に入っているのと同じところまで埋めると、導くように雛乃も動いた。
「ねえ、さま……うごかして……くだ、さい……」
消え入りそうな妹の声に、窮屈な体勢のまま頭を振って横を向く。
雛乃最初の余裕も失い、姉にしがみついて甘い嗚咽を漏らしていた。
乱れた前髪が額に貼りついて、えも言われぬ淫靡な表情を醸し出している。
雪乃が思わず息を呑むと、目を閉じて淫楽に浸っていた雛乃の目蓋が、うっすらと開いた。
「……」
「……」
瞳以外の物は映せない間合で、じっとお互いを見つめ合ていた二人が、同時に動く。
「んっ……! 雛、そ、こ……!」
「あぁ……っ、姉様、それ……っ!」
喘いでいるのはオレか、雛か──
悶えているのはわたくしか、姉様か──
ひとつに溶け合った嬌声が、姉妹を果てに押しやる。
「んっ、あっ、雛……! 雛……、ん……あぁっっ……!!」
「はぁっ、いや……姉様、わたくし……も、ぅ……ん……っ!」
雪乃は、腰を浮かせながら。
雛乃は、身を沈めながら。
指を咥えた襞を痙攣させ、歓喜の涙をあふれさせながら、
二人は軽い失神のただ中へと落ちていった。
「姉様……」
身を起こした雛乃が、覆い被さってくる。
どんな罪の意識があったとしても、一瞬で全てが赦される、慈愛に満ちた口付け。
そして、深い──深い水底へ雪乃を誘う、背徳のキス。
一度全身の力を緩めた雪乃は、妹が自分の上に跨ってから、再び力を込めた。
肩が、胸が、乳首が、鼓動が、臍が、茂みが、太腿が、足先が、そして──唇が、触れる。
遠いどこかで鳴っている生命の音が、妹とひとつになった、と雪乃を幸福にした。
片方の手は心臓の裏側に、もう片方の手は豊かな黒髪に添え、妹に応える。
「ん……ふ……」
微かな鼻息。
その合間に、しっとりとした口付け。
何も考えず、ただ身体がしたいようにさせていると、やがて、顔が動きを止める。
より繊細な器官で相手を感じ取ろうと、二人の考えが同調したのだ。
「はっ……むっ……ん、ぅ……」
舌を根こそぎ奪いあうような、激しいキス。
しなやかな妹の裸身を抱き締めながら、雪乃は、まだ満たされていないと気付いてしまっていた。
姉が積極的に応じてくれたことを、頬を擦りつけて喜ぶ雛乃にくすぐったさを覚えつつ、
それが消えないうちに口を開く。
「……雛」
「……はい」
「……この間みたいに……してくれないかな」
雛乃の動きが止まる。
けれど、繋いだ手や息遣いからは、嫌悪の情は伝わってこなかった。
「よろしいの、ですか」
そして静かに紡ぎ出された言葉は、興奮と愛情とが深みを与え、雛乃らしからぬ震えがあった。
固く──ひとつの岩のように固く握り締めた手が、染み出した汗で離れていく。
雛乃の方から繋ぎなおされた掌を、雪乃はしっかりと繋ぎ留めた。
「オレ……おかしい……かな……」
「……そうだとしても……わたくしは、姉様から離れません……
ずっと、ずっと……一緒に……いさせていただきます」
「雛……」
雛乃になら、自分の全てを見せることができる。
心の水面が薙刀を振るう時のように静かなものになっていくのを感じた雪乃は、
身体を起こし、自分からパジャマを脱いだ。
そのことについて何か言われないかと不安だったが、
雛乃は自分を縛める道具を用意するのに夢中なようだった。
「手を……後ろにお願いします」
求めに応じて、両の手首を腰の少し上で組む。
通された縄は、たちまちに雪乃の身体と心を縛めていった。
「少し……きつすぎでしたか?」
「……いいよ……この……くらいで……いい……」
正直に言えば、まだ物足りないくらいだった。
手首だけでない、一度だけ目にしたことがある雑誌のように、身体中を縄で囲って欲しかった。
その物足りなさは、自分で手首を思いきり掴むことで紛らわせ、雪乃は妹の腕の中へと堕ちた。
自由を捧げた肢体を、雛乃は横にかき抱く。
下から見上げる妹の顔は、優しく、慈愛に満ちたものだった。
薄闇にぼんやりと浮かぶだけの顔を、今雪乃ははっきりと見ている。
輪郭も、瞳も、鼻も、唇も、昼間と同じくらいはっきりと。
雛乃も同じなのか、二人はしばしの間、まばたきもせずに見つめあう。
やがて目を閉じたのは、どちらが先か判らなかった。
息遣いが、近づいてくる。
唇をひそやかに触れあわせた双子の姉妹は、全く同時に舌を伸ばしてお互いの口腔を濡らし始めた。
全身を妹に委ねきって、雪乃はキスに専念する。
雛乃は火照りを帯びてくる姉の身体を幾度か抱きなおしながら、舌を重ね続けていた。
雛乃が舌の交わりを全く中断しないために、雪乃の口内は次第に妹と自分の唾液にまみれていく。
それは雪乃に、頭の中が煮えたぎるほどの恍惚をもたらしてはいたが、
雛乃がいきなり口を塞ぎ、奥まで彼女の桃色の塊が入って来た時、
ひときわ激しい悦楽となって襲ってきた。
「んぷ……あ……っうう……ぁ……」
顎が外れそうなくらいに開けた口を閉じるのも忘れ、
ただの淫悦の塊と成り果てた舌を、ただより強い快感を求めて蠢かせる。
ぬるい、どろりとした液体が幾筋も喉元を通り、腹の中へ落ちていくのが、
どうしようもなく気持ち良かった。
以前一度だけ口にしたことがある、強い酒を呑んだ時のように、
熱い滴が身体の中心におさまる。
背徳の興奮で酔った雪乃は、積極的に妹の唾液を求め、喉を鳴らして飲み下した。
直接注ぎこまれたものも、舌に乗せられたものも、だらしなく口を開いて全てを啜る。
それは雪乃の口の中がどろどろになってしまうまで続き、その後も、
長い、いつ果てるとも知れないキスでお互いを求めあった。
「あぁ……」
動かし疲れた舌を犬のように出して、雪乃は余韻に浸っている。
勝気な表情も失せ、快楽に蕩けきっている姉に笑顔を向けた雛乃は、
頭を抱いたまま、自らのパジャマのボタンを外した。
ちょうど胸元の位置でそれを見ていた雪乃は、
美しい丸みを帯びた丘陵が何物にも隠されていないことに驚いた。
「雛も……しないのか?」
「これは……今日は姉様の部屋にお邪魔しようと思っていたからです」
恥ずかしがりもせず答えた雛乃は、姉よりも幾分大きな椀状の膨らみに、姉の唇を触れさせる。
更に何か言おうとして、言葉を封じられた雪乃は、
お返しとばかりに口の中にあるしこりを軽く吸いたてた。
「あっ……」
いつも落ちついている雛乃が、急に胸を吸われたことでこぼした声は耳に快かった。
目を閉じ、感覚を研ぎ澄ませてもう一度吸う。
挟むのも難しかった突起が、すぼめた唇をこじ開けるようにみるみる膨らんできて、
雪乃は少し可笑しさを感じてしまった。
その微細な空気が伝わったのか、雛乃がくすぐったげにむずかる。
そうしているうちにもぷっくりと膨らんだ果実を、そっと吸ってみた。
「ん……ぁ」
雛乃が身体を揺する都度、口の中の果実も取り残されまいと暴れる。
手が使えない雪乃がそれを逃がさないようにするには、
どうしてももっと大きく、奥で咥えるしかなかった。
薄く色付いた円状の裾野の辺りから食む。
乳首を舌に乗せ、今度はさっきよりも少し強く吸った。
「ね、姉様……そんな、……に……吸わないで……くだ、さい……」
雛乃はそう言いながらも、雪乃の頭を抱いている手を離さず、耳をくすぐって続きを促す。
撫でる指に呼吸をなだめられた雪乃は、舌で転がしつつゆっくりと、弱く吸うことにした。
「ねえ……さま……」
うっとりとした雛乃の声はどこか夢を見ているような響きがある。
それは優しく雪乃にも同じ夢を見るよう誘いかけてきて、双子の姉は抗い難く旅立った。
「ん……っ……」
規則正しい雛乃の呼吸を子守唄にした雪乃は、少しの間本当に眠ってしまっていたようだった。
どれくらいの間かは判らないが、その間もずっと乳頭を離さなかったことに、
恥ずかしさがこみあげる。
口の中のしこりはもっと吸って欲しいとでも言うように硬く張りつめていたが、
名残惜しさを振り切って一度顔を上げた。
ずっと見ていたのか、すぐに雛乃と目が合う。
黒い瞳が輝いているように見えるのは、情欲に潤んでいるからだろう。
整った唇から恍惚の吐息を漏らした妹が、姉の身体をしっかと引き寄せて口付けを交わした。
柔らかな唇と、まだ硬さがある唇は、磁石のように吸いつきあって離れない。
顔の一点から湧き起こる感覚を全身に行き渡らせていると、
雪乃の心は幼い頃に戻っていく。
今とあまり変わりはないけれど、もっと透明で、本当にひとかけらの混じり気もなしの想いへ。
「……オレさ」
雛乃の口調は歌うようでもあり、寝言を言っているようでもある。
「オレさ、ずっと……雛のことはオレが護るって自分に言い聞かせてきたんだけどさ、
でも……こうやって、雛に頼るのも……すげぇ……気持ちいいな」
「姉様……」
よほど嬉しかったのか、雛乃が思いきり抱き締めてくる。
柔らかくて温かい乳房に押し潰されて、雪乃は嬉しさと恥ずかしさに同時に見舞われた。
その、自分よりも大きな丘が、震える。
姉と心を交わらせた雛乃が、小さく達したのだ。
「雛……?」
頭を両腕で大事に抱きかかえられている雪乃には、妹に何が起こったのかすぐには判らない。
すると、身体が横たえられ、衣擦れの音が聞こえてきた。
次に五感が捉えるのは、妹の裸身。
自分と同じく、全てを脱ぎ捨てた雛乃が、身体を重ねてきたのだった。
「ねえ……さま……」
「あ……っ、ひ、な……」
うっすらと上気した肌と、腫れている二つの突起。
それらが触れ合うだけで、喘ぎが口を衝いた。
手が使えないことにもどかしさを感じると、すぐに雛乃が舌を這わせ、
そのもどかしさを更に高めてくるのだ。
鎖骨から、右の乳房へ。
微妙に強弱をつけ、それでいて敏感な場所は巧みに避ける雛乃の舌技に、
雪乃の官能は支配されてしまう。
丘を登りきった舌は、その頂には触れず、円状の動きで雪乃を弄ぶ。
それだけならまだ耐えようもあっただろうが、時折鼻先でしこりきっている乳首を刺激されると、
たまらず胸を突きだしてしまった。
「……」
雛乃は顔を上げたものの、何も言わずただこちらを見ている。
全てを知っていながら、無邪気を装う瞳。
軽く唇を噛んだ雪乃だったが、胸先が送りこんでくる命令は、思考全てを奪うほど強かった。
「頼、む……よ……も、もっと……もっと、し……て……」
からむ喉を整え、声を振り絞って哀願すると、すぐに生温かい液体が、
妹と較べて小さい、少しコンプレックスを抱く胸の頂にかけられた。
撫でるような感触のそれは、肌の細胞のひとつひとつに染みこむような遅さで、
ゆっくりとなだらかな坂を滑り落ちていく。
それが麓に辿りつく頃、頂に新たな重みを感じた。
今度はそれが滑り落ちる前に、噛まれる。
「ぅあッ……!」
突然襲った鋭い快感に、雪乃はたまらず身体をしならせた。
腕が使えていたら、大切な妹の頭を弾き飛ばしてしまっていたかもしれない、
それほど強い刺激だった。
しかし、自ら望んで拘束されている今の雪乃は、
雛乃の荒々しい愛撫をただ受け入れるしか許されなかった。
「あッ……くッ……!」
二度、三度と、少しずつ位置を変えながら、雛乃は姉の柔蕾を噛む。
殻を割るように強く歯を当てて引っ張り上げ、乱暴に離した。
「い……た……ッ」
姉の声には本心から痛みを訴えている響きがあったが、動きは緩めない。
もう片方の柔蕾にも手を添え、痛みと快感を同一のものとして知覚させていく。
「う……あぅッ……ぁ……」
噛む力は少しずつ弱め、指先は円舞を踊るように刺激を強める。
「うぅ……ひ、な……ぁ……んッ……」
激しく上下していた躰が落ち着きを取り戻す頃、叫びは甘い嗚咽に変わっていた。
それでも責めを受けていた乳頭にはまだ痺れが残っているはずで、
雛乃はうって変わって優しい、柔らかさに満ちたキスを与える。
「や、ぅ……ぁ、ぁっ……っふぅ……」
切なさが癒され、痛みが麻痺していく。
あっと言う間に心を塗りかえられた雪乃は、長く引く快感の余韻のために、
雛乃が身体を起こしたことにしばらく気付かなかった。
片足が持ち上げられ、もう潤みきっている裂口が夜の空気に晒される。
薄暗闇ということもあり、何より言葉も出ないほどの快感に翻弄されている雪乃は、
こんな恥ずかしい格好でさえも、既にただ気持ち良いとしか感じなかった。
その足の間に身体を押し込めた雛乃は、自らの秘唇を姉のそれにあてがう。
敏感な粘膜は触れ合っただけでひくりと反応し、歓喜の蜜を垂らして吸いついた。
「ひッ、ひな……ッ! うぁッ、や、ぅあああっ!」
「は、ふぅ……っ、ねえさま……ね、え、さ……」
姉の足をしっかりと抱えた雛乃は、眉を寄せながら腰を淫靡に蠢かせる。
始めは蜜を吐き出す淫口を円を描くように振り立て、
次第にその動きを小さなものにし、淫口の上に息づいている女芯同士を擦りたてた。
「あ、あ……ッ、雛……ッ、雛、ひなぁ……っっ」
「ねえさまの……熱い……とても……んふぅっ! ん、んぁっ……」
最も敏感な突起をしたたかに刺激され、雛乃の意識が途切れ出す。
小さな神経の塊は、ぶつかると頭の中で弾けて肢体の隅々まで快感の種を運び、
気も狂わんばかりに雛乃を犯すのだ。
もはや雛乃は楚々としたたたずまいもかなぐり捨て、
自らを淫悦の底へと苛むべく姉と自分の淫らな棘を潰しにかかった。
雪乃はと言えば、とうに快感に押し流され、ただ無意識に腰をくねらせているだけだ。
足を一杯に開き、充血しきった柔肉を押し付け、一瞬でも恍惚を逃すまいとしている。
姉の淫裂からとめどなく滴る熱い愛液が鼠蹊部一帯をぬるぬるに覆い、
更に雛乃を追い詰めていく。
「ねえさま……わたくし……も、ぅ……だめ……だめ……で、す……」
「あぅぅッ、オ、レも……ッ、っあああぁ……ッ!!」
内側から押し寄せる快楽の波に抗いきれなくなり、奔流を解き放つ。
一握の汚れも無い白い裸身が快楽に歪み、雛乃は細い嗚咽を放ちながら果てていった。
それにわずかに遅れて、雪乃も絶頂を迎える。
うわ言のように、それでもかろうじて雛乃の嗚咽に答えながら、肉の薄い身体を強張らせる。
その、身体の内側で起こった収縮を全身で解き放ち、
お腹を頂点としたなだらかな曲線を描いて達していった。
深く、心地良い疲労に包まれた雛乃は、閉じてしまいそうな目蓋を懸命に支えて姉の手を解く。
家族が起きてしまうのではないかという嬌声で悶えていた雪乃は、
一足先に眠りの国に旅だってしまったようだった。
「姉様……」
健やかな寝息を立てている姉に情愛を込めてそっと頬擦りする。
それが雛乃に残された最後の力だった。
「……」
このまま眠ってしまったら明日……少しだけ大変かもしれない。
そう思ったが、火照った肌の温もりは離れることを拒否していた。
目を閉じると、ほとんど瞬時に夢の国の使者が迎えに来る。
「おやすみなさい……わたくしだけの、姉様」
呼吸が寝息に変わる寸前に衝いたその声はしかし、唇を出ることは叶わなかった。