※この作品はR-18です。

性魔伝説パールヴァティー   作:坂本太郎

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第十六章:均衡の崩壊と、パイの疑惑

八雲が羅刹との秘密の逢瀬に夢中になって以来、羅刹の態度は大きく変化した。彼女は八雲の抵抗がなくなったことで、もはや「パイにバレないこと」という取引の条件を、軽視し始めていた。

 

以前は、パイの覚醒サイクルを乱さないよう、精の吸収量を厳密に制限していた羅刹だったが、今では八雲の無限の精と、彼が自分を貪る狂おしいほどの情熱に溺れていた。

 

羅刹は、八雲の『无(ウー)』としての能力を限界まで引き出し、満足いくまで精を貪るようになった。その結果、八雲はパールヴァティーの覚醒を待つ一週間のサイクルを無視し、羅刹との逢瀬を求め、自ら彼女の家へと向かうようになっていた。

 

(この熱……羅刹じゃないと、もう抑えられない……)

 

八雲の頭の中は、羅刹との背徳の快楽で満たされていた。パイへの罪悪感は、無限の快楽という麻薬によって、深く底に沈められていた。

 

しかし、その代償は、日常にすぐに現れ始めた。

 

綾小路パイは、八雲のわずかな変化に、敏感に気づき始めた。

 

まず、八雲の匂い。

 

「やっくん、最近、なんか甘い匂いがするね。香水かな?」

 

ある日、パイが八雲に抱きつきながら尋ねた。それは、羅刹の家で焚かれていたアロマと、羅刹自身の魔力が八雲の肌に残した魔性の香りだった。

 

「いや、違うよ。汗じゃないか?」

 

八雲は焦り、すぐにパイから離れた。彼は必死に誤魔化そうとするが、パイの疑念は深まる。

 

「汗じゃないよ。もっと、濃くて、綺麗な大人の女の人の匂いみたい……」

 

パイは、八雲の目をじっと見つめた。その純粋な瞳は、八雲の心を刺す。

 

そして、次に気づいたのは、八雲の肉体の変化だった。

 

「ねぇ、やっくん。最近、体がすごく熱いよ。手が、湯たんぽみたい」

 

パイは、八雲の手を握りながら言った。羅刹との度重なる秘密の逢瀬で、无(ウー)としての八雲の体温は常に高くなっていた。それは、羅刹が精を吸収するたびに、八雲の体が無限の精を急ピッチで生成し続けている証拠だった。

 

さらに決定的なのは、パイ自身の覚醒サイクルに異変が生じ始めたことだ。

 

羅刹が八雲の精を過度に貪ったことで、パールヴァティーが次に覚醒するタイミングが、一週間より早くなり始めたのだ。

 

「うぅ……やっくん、また、熱が上がってきたみたい……」

 

金曜日の夜。まだ覚醒サイクルに達していないはずのパイが、突然、激しい頭痛と熱に襲われた。その熱は、八雲の体内で生成される過剰な精が、パイの体内の魔力を刺激した結果だった。

 

「おかしい……まだ早すぎる。どうしてこんなに早く……」

 

八雲は青ざめた。この異常事態は、羅刹が取引の条件である「精の量の制限」を破っていることを示していた。

 

パイは、苦痛に顔を歪ませながら、八雲を睨みつけた。彼女の瞳が、一瞬、黄金の光を放った。

 

「……羅刹か、私の『糧』を、必要以上に横取りしているの?」

 

パールヴァティーの意識が、パイの苦痛と怒りによって、一瞬だけ表面に現れた。彼女の視線は、八雲の体内の魔力回路に、「見慣れない魔性の痕跡」が残っていることを捉えた。それは、羅刹の魔力の残滓だ。

 

パイの意識がすぐに戻り、恐怖に震えながら八雲に抱きついた。

 

「やっくん、今、私、変な声を出した? 怖いよ……」

 

八雲は、パイの体を抱き締めながら、背中に冷たい汗を感じた。

 

パールヴァティーは、羅刹の裏切りに気づき始めている。そして、八雲の体が、羅刹との背徳的な関係に溺れていることも、時間の問題だ。

 

八雲の二人の三只眼との三角関係は、もはや秘密の領域を超え、破滅的な修羅場へと向かい始めていた。

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