※この作品はR-18です。

性魔伝説パールヴァティー   作:坂本太郎

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第二十七章:素人の宣戦布告と、魔性の反撃

八雲の異変の原因を黒崎羅刹だと断定した綾小路パイの心は、幼馴染への愛情と、無意識の奥底で目覚め始めた性魔の独占欲に突き動かされていた。

 

翌日の放課後。パイは八雲に「先に帰っていて」と伝え、昇降口で羅刹が一人になるのを待った。

 

羅刹が靴を履き替えようとした瞬間、パイは彼女の背後から声をかけた。その声には、普段の屈託のなさはなく、強い緊張感が張り詰めていた。

 

「黒崎さん。あなたに、話があるの」

 

羅刹は、優雅に振り返った。その涼やかな瞳は、パイの強い視線を前に、 面白みの色を湛えている。

 

「あら、綾小路さん。どうしたのかしら? 藤井くんと一緒じゃないのね」

 

「とぼけないで! あなたが、やっくんをこんな体にしたんでしょう!」

 

パイは、羅刹の前に進み出た。羅刹は、パイのその言葉に、勝利を確信したような笑みを浮かべた。

 

「ふふ。何のことを言っているのかしら? 私はただの転校生よ。まさか、私が三只眼だとでも言うつもり?」

 

羅刹の返答は、パイが図書館で得た知識を正確に予測していた。

 

「……っ!」

 

パイは、羅刹の確信犯的な態度に怯んだが、必死に言葉を絞り出した。

 

「あなたが、やっくんから精(いのち)を奪っているんでしょう! やっくんの体は、もうおかしい! あの熱も、あの匂いも、全部あなたのせいだわ! もう、やっくんに近づかないで!」

 

パイの言葉は、愛する幼馴染を守りたいという純粋な決意に満ちていた。しかし、その知識は、図書館で得た「素人の知識」に過ぎない。

 

羅刹は、顔を近づけ、パイの耳元に囁いた。

 

「あら。あなたがそんなに詳しいなんて、驚きだわ、綾小路パイ」

 

そして、羅刹は、一瞬だけ、パイの瞳の奥を覗き込んだ。

 

「性魔(三只眼)の知識なんて、どこで仕入れたのかしら? まさか、あなたの体の奥底に眠っている『誰か』に、教えてもらったわけじゃないでしょうね?」

 

羅刹の言葉は、パイの核心を突いた。パイの全身が、戦慄で凍りつく。

 

「な、何を……」

 

「あなたが必死に隠している『もう一人のあなた』。そう、パールヴァティーのことよ」

 

羅刹は、パイの最大の秘密を、あえて人間のパイに突きつけた。

 

「藤井くんがこんな体になったのは、私のせいだけではないわ。彼を『无(ウー)』という無限の精の器に変質させたのは、あなた自身でしょう? あの夜、路地裏で彼を貪り、『宿命の契り』を交わしたのは、あなたの中の性魔よ」

 

羅刹の言葉は、真実であり、パイにとっては理解不能な悪夢だった。八雲の異変の原因が、自分自身にあるという事実。

 

「嘘よ……! わたしは、そんなこと……!」

 

パイは首を振り、耳を塞ごうとする。羅刹は、その混乱をさらに深めさせた。

 

「あなたは知るべきよ。あなたが無意識でいる間にも、あなたの性魔(パールヴァティー)は、この无(ウー)を貪り続けている。彼があなたに精を供給するのは、あなたが覚醒し、街で暴れ回るのを防ぐため。私が彼の精を奪うのは、無限の性の器である彼の暴走を止めるための、止むを得ない『治療』なのよ」

 

羅刹は、優雅にパイの髪に触れた。

 

「今のあなたが、彼を救う唯一の方法は、私に彼の精を分け与えさせること。そうすれば、あなたの無様な嫉妬で彼が無駄に傷つくこともない。さあ、邪魔をしないで。私は、今夜も彼を解放してあげる必要があるのよ」

 

羅刹は、パイの純粋な「八雲を救いたい」という気持ちを逆手に取り、パイを「邪魔な存在」として定義した。

 

パイは、自分の体の中に自分とは別の存在がいるという恐怖と、八雲を苦しめているのが自分だという絶望的な事実に、全身の力が抜けていくのを感じた。

 

「う……あ……」

 

パイは、その場で膝から崩れ落ちた。羅刹は、勝利の笑みを浮かべ、崩れ落ちたパイの横を通り過ぎた。

 

「残念だったわね、綾小路さん。素人が魔性の世界に立ち向かうなんて、無謀よ。私は、今夜もあなたの无(ウー)を、優しく満たしてあげるわ」

 

羅刹は、パイに最大の屈辱を与え、その場を後にした。

 

地面に這いつくばるパイの瞳の奥で、激しい怒りと自己嫌悪が混ざり合い、黄金の光が、嵐の予感のように、激しく瞬いた。パイの心と体のコントロールは、再びパールヴァティーへと傾き始めていた。

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