「うるさいわね!」
羅刹の代わりに、パールヴァティーが前に出た。彼女は、八雲の体に背中を預け、敵魔族と対峙した。
「『无(ウー)』の精を浪費しているのは、貴様も同じでしょう、羅刹! さっさとあの男の結界を破るわよ!」
パールヴァティーは、八雲の腰に手を回し、精の交換を強要した。
「私の无(ウー)。羅刹を助けるという背徳的な目的のために、無尽の精を解放しなさい!」
八雲は、パールヴァティーの要求に応じ、体内の精力を一気に高めた。彼の肉体は、二人の三只眼の命令系統に組み込まれていたため、「羅刹を救う」という新たなミッションに対し、瞬時に無尽の精を生成した。
八雲の精力がパールヴァティーの体に注ぎ込まれると、彼女の魔力が爆発的に増幅した。
「んんーッ! 最高の活力よ! ドゴォン!」
パールヴァティーが放った黄金の魔力波が、敵魔族の結界を打ち砕いた。
「貴様ら……なぜ三只眼同士が共闘する!」
敵魔族は驚愕するが、すぐに体勢を立て直した。
「羅刹の『无(ウー)』など、私には関係ないわ。ただ、私の无(ウー)の価値を下げる貴様らの存在が、目障りなだけよ!」
パールヴァティーの魔力と、八雲の無尽の精が、羅刹の命と、悠真の精を懸けた戦いを開始した。
補足:穏やかな愛の記憶
八雲は、羅刹の危機と、悠真の救出という使命の中で、パイと過ごした穏やかな夜を思い出した。
(俺は、もう支配されるだけの存在じゃない。パイとの愛が、俺に意志を与えてくれた)
八雲の心に宿った「愛する幼馴染を守りたい」という意志が、彼の无(ウー)としての力を、ただの道具ではなく、戦いの力へと昇華させた。この力こそが、羅刹とパールヴァティーが共闘できる、唯一の希望だった。
第三十五章:休戦の契りと、命の供給
パールヴァティーの魔力波は敵魔族の結界を破ったものの、敵魔族の魔力は八雲の『无(ウー)』の精を凍り付かせるような冷たさを持ち、パールヴァティーの猛攻を巧みに防御していた。
「無駄だ、三只眼よ! その程度の力、精を浪費した貴様らに、私を討つことはできん!」
敵魔族はそう叫び、さらに強大な冷気の結界を展開した。
「くっ……強すぎるわ! 私の魔力が、精の絶対量で押し負けている……!」
パールヴァティーは、自らの魔力だけでは敵を打ち破れないことを悟った。彼女の瞳は、八雲の隣で、疲弊しきった羅刹に向けられた。
羅刹は、魔力の枯渇により、もはやパイと同じ人間の姿に戻りかけていた。
「このままでは……悠真も、私も……」
羅刹は、絶望に打ちひしがれていた。
その時、パールヴァティーは、支配者としてのプライドを一時的に押し殺す、極めて重大な決断を下した。
「羅刹! 聞きなさい!」パールヴァティーは、低い声で命じた。
「貴様に、精を分け与えることを許可する。ただし、命を繋ぎ、敵を討つためだけだ! 貴様の衰弱した魔力と、私の支配的な魔力、二つが合わされば、この冷気は打ち破れる!」
羅刹は、信じられないという表情でパールヴァティーを見つめた。独占欲の塊であるパールヴァティーが、八雲の精の共有を自ら許可するなど、あり得ないことだった。
「さあ、急ぎなさい! 藤井八雲の精の熱を、私と貴様で奪い取る!」
命を繋ぐ結合
パールヴァティーの命令は、絶対だった。八雲は、羅刹の手を取り、敵魔族に見つからないよう、本殿の廃墟の陰へと身を寄せた。
「羅刹……これで、最後だ。俺の精を、すべて命に変えろ」
八雲は、羅刹の憔悴しきった顔を見て、敵対関係を超えた使命感を抱いた。
羅刹は、八雲の温かい精の熱を肌で感じ、涙を流した。
「ああ、藤井くん……貴方への借りは、命で返すわ……!」
二人の体は、時間がない中で、本能のままに結合した。その結合は、これまでの背徳的な快楽や屈辱とは違い、生命を繋ぐための切迫した儀式だった。
羅刹は、八雲の精の源に触れた瞬間、その無尽の熱に全身が歓喜した。乾ききった大地に、生命の奔流が流れ込むようだった。
ドチャッ! ズルルッ!
八雲の腰が、羅刹の極度の渇望に応えるかのように激しく動く。
「んんーッ! あぁぁあああ! 最高の精! 命が満ちるわ……! 藤井くん……あなたの熱が、私を生き返らせる!」
羅刹の喘ぎ声は、快楽というより、生命力回復の絶叫だった。彼女は、八雲の精を一滴残らず吸い上げるために、貪欲に結合を深めた。
八雲の体内では、羅刹の切実な命の要求に応えるため、無尽の精が瞬時に生成され、羅刹へと注ぎ込まれ続ける。
「はぁ……ッ、羅刹……! お前の命……俺が繋ぐ……! ビュッ、ビュッ……!」
羅雲の射精音は、命の奔流となり、羅刹の体内に魔力を再構築し始めた。
数秒の結合の後、羅刹の体は劇的に変化した。憔悴していた肌に艶が戻り、瞳の黄金色が強烈に輝き始めた。彼女の魔力は、短時間で完全に回復したのだ。
羅刹は、八雲から離れると、服を整え、パールヴァティーの元へ向かった。
「感謝するわ、パールヴァティー。借りなど、すぐに返す」
羅刹は、敵魔族に向かって、完全な羅刹三只眼の姿で立ち上がった。その姿は、先ほどまでの哀れな敗者ではない、強大な魔性の女王だった。
「さあ、パールヴァティー。宿敵同士の最悪の共闘を、見せてあげるわよ!」
「フン。無様ね、羅刹。借りを作るなんて」
パールヴァティーは、八雲の隣で、嫉妬と皮肉を込めながらも、羅刹との共闘を受け入れた。八雲の無尽の精という共通の燃料を得て、二人の三只眼は、宿命の共闘を開始した。