緋山茜との出会いから数日後。八雲は、羅刹の時とは違う新たな魔性の誘惑に抗うことができずにいた。茜のラミア族としての魔力は、八雲の体内の精を根こそぎ吸い上げ、彼女の生命力を回復させるという、三只眼とは異なる渇望を持っていた。
茜は、八雲の「精の抑制魔術」の存在に気づいていたが、それを破ることは容易だった。八雲の无(ウー)としての体は、飢えた魔族からの要求に対して「奉仕」するよう、本能的に調教されてしまっていたからだ。
ある日の夜、茜は八雲の部屋に予告なく現れた。
「藤井くん。あなたの精の熱が、私を呼んでいるわ」
茜の深紅の瞳は、飢えた蛇のように八雲の体を捉えた。
「緋山……待て。俺は、もう……」
「『三只眼の道具』に戻りたくない、とでも言うの? ふふ。私の飢えは、あなたの無尽の精でしか満たされないのよ」
茜は、八雲の服を掴み、彼をベッドへと押し倒した。彼女の肌は、触れるだけで八雲の精の奔流を刺激するような、熱を帯びた魔性を放っていた。
壱の結合:乾いた蛇の渇望
茜の愛の行為は、羅刹の背徳的な解放とも、パールヴァティーの支配的な浄化とも違った。それは、生存本能に基づいた、純粋な精の収奪だった。
茜は、口を使って八雲の精を直接貪るという、ラミア族特有の貪欲さを発揮した。
ズブッ! ネットリ!
茜の口は、八雲の精の源に直接触れ、渇いた大地が水を吸うように、八雲の無限の精を吸い上げ始めた。
「んんーッ! あぁぁあああッ! 茜……ッ! 速い……! あああああッ!」
八雲の絶叫は、快感と、「精を奪われている」という生命力の危機感が混ざり合ったものだった。茜の貪欲な吸収は、彼の精の生成回路を極限まで活性化させた。
「ドクドク……ッ! ビュルルルル……!」
茜の体は、八雲の精を吸収するごとに、生命の輝きを取り戻していく。彼女の喘ぎ声は、快楽と、飢えが満たされる安堵感に満ちていた。
「あぁん、藤井くん! 止まらないわ……! この無尽の奔流……! 私の枯渇した命が、あなたで満たされる!」
茜は、八雲の精の奔流が落ち着く気配を見せないことに、狂喜した。彼女は、八雲の体を「自分の命を繋ぐために無限に精を供給し続ける泉」だと認識した。
弐の予兆:パイの激しい警戒
翌朝。八雲がリビングに降りてくると、綾小路パイが険しい表情で座っていた。彼女の瞳の奥は、完全に黄金色に染まりかけていた。
性魔パールヴァティーが、新たな侵略者の存在に、激しい怒りを覚えていたのだ。
「藤井八雲!」
パールヴァティーは、パイの口調で、しかし支配者の威圧感を込めて、八雲を問い詰めた。
「貴様、また不純な熱を帯びているわね。そしてこの粘着質な、蛇のような匂い……! これは、あの裏切り者の羅刹ではない! 別の魔族だわ!」
八雲の体から、昨夜の茜との激しい結合の魔力の残滓と異質な精の匂いが、パールヴァティーには隠し通せなかった。
「パイ……違うんだ。これは……」
「言い訳は聞かない!」
パールヴァティーは、八雲の胸倉を掴んだ。
「貴様は、私との愛の誓いを忘れ、またも別の女の淫らな快楽に溺れた! 私の『无(ウー)』は、私だけのものだ!」
パールヴァティーの嫉妬は、羅刹の時とは比べ物にならないほど激しい独占欲に根ざしていた。羅刹は宿敵だったが、茜は未知の侵略者であり、八雲の生命力をより危険な方法で奪っていると感じたからだ。
「貴様の中に、羅刹の知識が残っているようね。 私の『无(ウー)』を貪る、その卑しい魔族の正体を教えなさい!」
八雲は、パールヴァティーの激しい怒りと支配欲を前に、緋山茜の存在を隠し通せないことを悟った。八雲の无尽の宿命は、支配者と新たな飢えた魔族との間で、再び泥沼の三角関係に突入したのだった。