表向きの顔:失墜した元財務官僚たち
『黒い羊』の組織は、表向きは影の公爵に連座して失脚した、魔界の元財務官僚や情報技術者たちが中心となって構成されていました。彼らは八雲の効率的かつ中央集権的な統治によって職と権益を奪われた者たちであり、「情欲に溺れる八雲とその女たち」を標的にすることで、失地回復を目指していると見られていました。
しかし、これは真の目的を隠すための仮面に過ぎませんでした。
真の顔:ヴァルグリドの残党と「精の選別」
羅刹の情報網とアビスの魔力分析によって、彼らの真の正体が明らかになりました。
『黒い羊』を操っているのは、かつて八雲によって討伐された伝説の淫魔の女王ヴァルグリドに心酔していた、秘密裏の信奉者たちでした。
彼らは、八雲が「精の無限吸収」という危険な能力を持つアビスを制圧し、支配下に置いたことに激しく憤慨していました。
陰謀の動機: 彼らの思想は、「精の強さ」による選民思想でした。彼らは、八雲がアビスという究極の受け皿を持つことで、「精の絶対的な強さ」を証明しすぎたことに危機感を覚えました。
真の目的: 八雲を『不正に塗れた、公私混同の支配者』として失墜させ、その支配を瓦解させた後、アビスを奪還すること。そして、アビスの「無限の吸収力」を使い、魔界全体で精の弱い者を淘汰し、精の強い者だけが残るという「精の選別」社会を実現することでした。
⛓️さらに背後の影:復讐の念に燃える者
『黒い羊』のリーダー格である元財務官僚アズガルドは、単なる思想犯ではありませんでした。彼は、八雲が討伐したヴァルグリドの直系の眷属であり、極度の復讐心に燃えていました。
アズガルドは、アビスの卵を八雲に献上した旅の魔族も兼任していました。彼の計画は二段構えでした。
第一段階(失敗): アビスを八雲に契約させ、精を吸い尽くさせて消耗死させること。(この段階は失敗)
第二段階(実行中): 八雲が消耗した後、女たちへの不信を利用して統治を内部から崩壊させ、八雲を無力化すること。
アズガルドの最終的な目的は、八雲の身体を完全に破壊し、その後に精の吸収能力を最大限に高めたアビスを、彼自身の新たな主として迎えることでした。
羅刹が行政文書の裏に感じた「悪意」は、魔界の支配者を滅ぼそうとする、純粋な憎悪と復讐の炎だったのです。この情報は、八雲とその女たちにとって、単なる情報戦ではない、支配の存続をかけた絶望的な戦いであることを意味していました。