『黒い羊』の陰謀が鎮圧され、アビスも支配体制に完全に組み込まれた魔界は、かつてないほどの安定と繁栄を享受していた。しかし、魔王八雲の支配欲は、留まるところを知らない。彼の視線は、未だ魔界の支配下にない、広大な未開の地へと向けられていた。
️新たな舞台:灼熱の「黄昏の砂漠」
ある日、羅刹が八雲に提出した報告書には、魔界の東方に広がる「黄昏の砂漠(トワイライト・デザート)」に関する記述があった。そこは、灼熱の昼と極寒の夜が繰り返される過酷な環境であり、魔力も希薄で、魔界の支配が及んでいなかった。
「陛下。この黄昏の砂漠は、かつて魔界の『精霊の墓場』と呼ばれた地です。魔力は薄く、生命の痕跡も稀です」羅刹は冷静に報告した。
「ふむ…」八雲は、砂漠の地図に指を滑らせた。「魔力は薄いが、そこには『何か』がある。私の支配の領域を、広げるべき時が来た」
八雲は、その過酷な環境にこそ、新たな征服の喜びを見出していた。彼の精の力をもってすれば、どんな不毛の地も肥沃な支配の領土に変えられると信じていた。
新たな淫魔:渇きの女王「サーラ」
八雲が新たな支配に乗り出すことを決意した矢先、黄昏の砂漠の辺境から、一人の奇妙な旅の魔族が城を訪れた。彼は、八雲に貢物として、「砂漠の女王の血脈」を自称する一人の女を献上した。
その女は、灼熱の砂漠の太陽を思わせる金色の髪と、燃えるような琥珀色の瞳を持っていた。彼女の肌は、砂漠の砂のように微かにザラつき、それでいて官能的な滑らかさを併せ持っていた。彼女の身体は、極度の渇きを宿しているかのように、わずかに痩せ細り、それでいて豊満な胸と腰が、その生命力を物語っていた。
「私の主よ。この女は、『砂漠の淫魔』、サーラと申します。彼女は、『水』を媒介に精を吸収し、操るという、この魔界でも稀有な能力を持っています」旅の魔族は、跪いて説明した。
サーラは、その琥珀色の瞳で八雲をじっと見つめ、喉を鳴らすような官能的な声で囁いた。
「私の主よ。私は、永遠の渇きを抱える者。私の肉体は、貴方の『命の水(精)』を求めています。私の渇きを潤せば、私は貴方に、砂漠の全てを支配する力を捧げましょう」
羅刹、パールヴァティー、リリアーナ、そしてアビスも、その新たな淫魔から発せられる異質な魔力と、「水」を媒介とする精の吸収能力に、強い警戒感を覚えた。アビスとは異なる、静かで、しかし深い渇望を宿した淫魔の登場だった。
八雲は、サーラの枯れたように見えながらも官能的な身体と、その「渇き」に、新たな征服欲を燃え上がらせた。
(今までの女たちは、私の精を「受け止め、満たされる」者たち。だが、このサーラは、私の精を「命の水」として「渇望し、吸収する」者。この女を潤せば、この広大な砂漠も、私の精で満たされる…!)
魔王八雲の飽くなき支配欲は、新たな淫魔サーラとの出会いによって、黄昏の砂漠という新天地へと向かうこととなった。