※この作品はR-18です。

リュカとビアンカ・純愛編   作:アロンの杖

10 / 16
狂慕と真愛

 ビアンカはリュカに初めてを捧げてくれた人であり、初めて“女の子”と言うモノを教えてくれた人であり、初めて“人を好きになるとはどう言う事なのか”と言う事を気付かせてくれた人だった、つまりはビアンカはリュカにとって、何があっても絶対に忘れる事の出来ない女の子と化していたのだ。

 

 まだまだ至らない所は多かったけれど、それでもリュカはそんなビアンカの事を真剣に愛していたのであり、今やそれは“純愛”とでも言って良い領域に突入していた、しかし。

 

 秘めているハズのそんな彼の熱烈な思いはしっかりと愛妻王妃に伝わっていた、女の子と言うのは自分の大好きな男性(ひと)の心理の移り変わりには非常に敏感なモノであり、当然ビアンカもそうでだから、最愛の夫の自分に対する“純然たる気持ち”を全身で受け止めてはますます強く美しく輝き続けていたのである。

 

(この果てしない宇宙の片隅で、広大な世界の只中に於いて本当に大好きな人に巡り会えたこと。そしてその人と共に生きて行けること、それはまさに奇跡なんだ・・・!!!)

 

 “ビアンカの事が愛しくて堪らない、どうにも自分を抑えられない”、“なんでだとかどうしてだとか、そんな事は関係ない。理屈じゃないんだこの気持ちは!!!”、“こんな自分に愛を教えてくれた人を、なんとしてでも守りたい”。

 

 その思いのみがリュカをして彼を奮い立たせ、どんなに疲れていようとも、またどんなに大変な時であっても常に物事に邁進する原動力となっていたし、もっと言ってしまえば彼女の存在そのものが一種の“生き甲斐”ともなっていたのだ。

 

 そしてそんな彼の一途でぶれない愛意はビアンカをして己の限界を遙かに超越させて行き、今では彼が向ける以上の激情と“確かなる気持ち”を逆にリュカに抱かせる事になっていたのであるモノの、元々。

 

 女性と言う生き物には物事に対する精神的リミッターが付随しておらず、だから例えばセックスの際なども自分の愛しい男性(ひと)に抱かれる官能と、そんな彼から与えられる快楽とを際限なく求めてしまう、と言う特性を持っていた。

 

 これは特に“誠意”と言うモノを知っている女性であればあるほどこの傾向が強く、その内の一人であったビアンカはだから、リュカの真剣にして真面目な情念に感動すると同時に嬉しくもなり、心を打ち振るわせていった、元からリュカに対してこれ以上無い程の凄まじい愛慕と恋情を抱いていたビアンカは日に日に彼への甘い熱意を深くて激しいモノとしていったのである。

 

 そんなある日のこと。

 

「リュカ、あなた・・・・」

 

「・・・あれビアンカ、どうしたの?」

 

 ビアンカとの間に生まれた次男である“レックス”に剣の稽古を付けていたリュカの元にビアンカがやって来た、最初は不安そうに、かつ寂しそうにキョロキョロしていた彼女だったが夫の姿を見るなりホッとした表情を浮かべ、それと同時に。

 

「・・・ううん、朝起きたらね?あなたがいなくなっちゃっていたから。だから思わず探し回ってしまったの!!!」

 

 青空色の“碧空眼”に切な気でいてしかし“比類無き熱烈さ”を秘めた眼差しで彼を見つめ、いそいそと下に降りて来た。

 

「もうっ。こんな所にいたのね?本当にお城の中をあちこち見に行ってたんだから・・・っっっ❤❤❤❤❤」

 

「あはは・・・っ。そ、そうなんだ。って言うか、ビアンカ?僕は今、ちょっと汗を掻いてしまっているから!!!」

 

 小走りで駆け寄って来ては笑顔を浮かべたままで自分に抱き着いて来る“天空の花嫁”に、リュカは今の己の身形(みなり)を鑑みて多少の躊躇(ちゅうちょ)を覚えるが、当のビアンカは全くと言って良い程そんな事は気にしておらず、平然と夫に飛び付いて来た。

 

「そんなの、別に気にしないもんっっっ❤❤❤❤❤それよりも・・・」

 

「・・・・・?」

 

 と、ビアンカは猫撫で声を発しつつ、頬を膨らませたまま少し拗ねたようにリュカに告げた。

 

「もうっ。勝手にいなくなっちゃダメッ!!!」

 

「う、うん。ごめんね?ビアンカ。だけどレックスとは前々から約束をしていて・・・」

 

 リュカからそんな話を聞いた直後に。

 

 ビアンカはそれまでとは打って変わって冷たい視線を我が子に向けた。

 

「レックス・・・。剣術の稽古なら一人でも出来るでしょ?一々お父さんに甘えないで!!!」

 

「ええっ!!?で、でも母さん。僕、どうしても解らない部分があって・・・」

 

「それならティミーに、お兄さんに聞けば良いでしょ?これ以上、リュカの手を煩わせないでちょうだい!!!」

 

 突然の事に驚き戸惑うレックスに対して“邪魔をするな”とでも言わんばかりの怒りの籠もった気迫を向けると、ビアンカはリュカに“行きましょ?”と素早く告げて彼を強引に城の中庭の方へと引っ張って行ってしまった。

 

「・・・・・っっっ!!!!!ち、ちょっと。父さん?」

 

「あ、あははっ。ゴメンね?レックス、また後で練習には付き合うから・・・!!!」

 

 愛する妻の誘いを断れず、さりとて我が子に不憫さを覚えたリュカは取り敢えずそう行ってビアンカと共に中庭へと消えて行った。

 

「・・・あ、あの。あのね?ビアンカ。何処に行こうとしているの?」

 

「何処って・・・。もうっ、あなたったら決まっているじゃないの。二人っ切りになれる場所、もう絶対に逃がしてあげないのっっっ❤❤❤❤❤」

 

「・・・に、逃げるって。僕は逃げたりなんか」

 

「うふふ、ダ~メ。リュカったら私の愛が良く解っていないみたいだから、二人っ切りになって。抱いて、キスして。いっぱいいっぱい思い知らせてあげるね・・・?」

 

 手を引かれて戸惑いながら自身に付いてくる夫に対して、その瞳に超慕と狂愛の光を秘め宿しながらもビアンカは応えた。

 

「大好きよ?リュカ。誰よりも何よりも愛してる・・・。例えあなたが死んでしまったとしても、私も一緒に死んであげるの。誰よりも何よりも大切なのっっっ❤❤❤❤❤」

 

「・・・・・っっっ!!!!?そ、それはまあ。有り難う」

 

「うふふふっ。もうっ、リュカったら・・・っっっ❤❤❤❤❤」

 

 程なくして中庭に着き、“サンチョの家”の裏手に密かに形成させた“旅の扉”に夫婦共々飛び込むと、ビアンカは“我慢できない”とでも言うかのようにリュカに抱き着き、愛しそうにその身を擦り寄わせた。

 

「あなた、大好きよ・・・?もう私達、ずっと一緒だからっっっ❤❤❤❤❤」

 

 愛妻王妃のその言葉と同時に周囲の景色が歪んで視界が暗転し、次の瞬間にはリュカ達はもう、“グランバニア王国秘密離宮”の最上階に到着していた。

 

「・・・あ、あのね。ビアンカ?」

 

「・・・リュカ」

 

 少し困惑気味の夫に対して心底嬉しそうな、それでいて妖艶な笑みを浮かべたままでビアンカが語り掛けた。

 

「あなたは私のモノなんだから。絶対に逃がしてあげないんだもん、もう絶対に私のモノ・・・!!!」

 

 リュカの逞しい筋肉体を抱擁しつつも、ビアンカは自分の真意を告げた。

 

「・・・リュカ、私に愛を教えてくれた人。初めて“人を好きになる”と言う事を教えてくれた人、そして私だけの人っっっ❤❤❤❤❤」

 

「・・・・・」

 

「愛してるわ?リュカ。私はね?ずっとずっと、あなただけのモノだから・・・っ!!!」

 

 そう言ってビアンカは、リュカを伴い奥の居間へと姿を消した、リュカにとってのビアンカがそうであったように、ビアンカにとってもまたリュカは、彼女が初めて恋して。

 

 心の底から追い求めて、胸を高鳴らせて不安になって。

 

 そして愛を感じて祈りを捧げた人、“何があっても忘れられない人”であり、自らの命と引き換えにしてでも守るべき大切な人。

 

 純潔を捧げて運命を共にし、心と体と魂を重ね合わせて一つになった存在だった。

 

(ああリュカ、愛しいリュカ。あなたは解っているのかしら?あの時に私達は、確かに“愛”に触れたのよ?あの瞬間から、ううん。もっともっと前からあなたは私の全てなの、最後の最後で私が帰るべき場所なのよ・・・っ!!?)

 

 ビアンカはリュカの事になると自然と心が打ち震え、極めて情熱的な女性となるが、それはリュカが彼女の心に魂に、知らず知らずの内に燃え盛る火を点けてしまうからに他ならなかった、彼への思いと欲望に際限が無い性分のビアンカは、その時もずっとずっとリュカだけを求め続け、一途に彼に尽くし続けるモノの、そんな彼女の“真摯にして純朴なる確かさ”は、逆にリュカの男の子の部分を呼び覚ます結果になってしまったのだ。

 

「ビアンカ・・・」

 

「・・・・・っ!!!」

 

 リュカと二人きりになった後、彼を居間のカウチ・ソファに座らせてその上から撓垂れ掛かり、その身を寄せていたビアンカは夫の目に男の愛意と気概が宿った事に気が付いた。

 

 それは普段の彼からは決して見る事の無い、ギラ付いた男の光である。

 

(リュカ、ちょっと怖い・・・。けど、凄く格好良いかもっっっ❤❤❤❤❤)

 

「来いよ、ビアンカ・・・」

 

 内心で戸惑いながらも胸を高鳴らせて行く“天空の花嫁”を抱き抱えると、リュカはそのまま密かに、かつ素早く“時空間断絶用”と“侵入者探知用”の“光の結界”を重ね掛けした挙げ句に“時の涙滴”を発動させる、そうしておいてー。

 

 彼女と共に何食わぬ顔で颯爽と“秘密離宮”の最奥部にある王族専用の大浴場“テルメ・ロマエ”へと向けて歩を進めていった・・・。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。