エルヘブンの血筋に連なる存在にして偉大なる聖巫女“マーサ”の子息でもあるリュカは時折、修業の一環として己の正体を隠しながらも“グランバニア王国”の城塞都市にある“ルイーダの酒場”を始めとして、いくつかの“ドヤ街”の酒場で“霊能相談”や“霊感占い”等をかましつつ、一般国民の悩みや生活にダイレクトに寄り添うようにしていた。
その評判は上々であり彼が営む“龍の一族商会”は単に“見極めの術”を用いた霊能相談のみならず、除霊滅魔を履行して怪異現象を解決したり、建物の方角を占ったりと様々な要望に応える“
彼に連絡を取る手段は至って簡単であり、各酒場に設置されている“伝言板”の右から3列目の枠内に“自身の名前”と“会いたい日時”、そして“簡単な相談内容”とを書き記して放置、後はリュカ側からコンタクトを取る、と言う流れであったが、料金体系もさる事ながらこれらのサービスは世界を統べる神である“マスタードラゴン”や、死後に“天空の世界”に上がったマーサの霊魂からリュカが“霊力を用いる御役目と言うのは皆に奉仕するつもりでやりなさい”と繰り返し言いくるめられて来た事に拠る処置であった。
もっとも。
その為に時折、“ニートをしている若者”や“不倫をしている若妻”等の変な客が評判を聞き付けて連絡して来る事があり、青年国王を辟易させていたのである。
ちなみに基本的には、リュカはそう言った“迷惑客”の類いは“伝言板”の字面を拝見し、そこに込められた“念”を読み解いた段階で省くようにしていたのであるモノの、ところがごく稀に“マスタードラゴン”や“マーサ”から“この者の話は聞いてやれ”と言われたり、はたまた出生や身分を偽って応募して来る輩もいて悪質性が高い場合は予約を強制キャンセルしてお帰りいただくようにしていたのだ。
(参ったよなぁ、ある程度の善悪の判断は文字に込められた“思念”を読み解けば解って来るんだけれど・・・。具体的にどんな相手なのかは流石に面と向かい合わないと判別が利かないし、それに“人物鑑定”や“心を読む”技能なんかはかなり特殊で難しいモノだから、おいそれとは多用出来ないんだよね・・・)
青年国王がゲンナリしつつもお客の相手をこなして行くが、その日の来訪者と言うのは彼の度肝を抜くのに十二分な存在だった、朝から生憎の空模様だったこの時ばかりは、リュカは何処にも行かずに“グランバニア本城”にある“ルイーダの酒場”で仕事に勤しんでいたのだが、その際中に。
「・・・・・」
「・・・・・っっっ!?!?!?!?!?」
(ビ、ビアンカッ。どうして・・・!!?)
3人目のお客が帰り、4人目のお客を出迎える準備をしていると、遠くから自分が良く知っている人物の気配が伝わって来た為に“まさか?”と思って頭を上げた彼の目の前には、見紛う事無きリュカの最愛の花嫁の姿があったのだ。
流石に王族がおいそれとは来られない場所の為に、身形や髪型等は随所に変装を施してあるが、それでもやはり美しくも愛らしい
「・・・あなた」
「は、はい・・・っ!!?」
“ルイーダの酒場”に入って来て彼と同じテーブルの、反対側の席に着いたビアンカは、ちょっと拗ねたような表情で夫に告げた。
「後でどう言う事なのか、説明してよね・・・?」
「・・・・・っ。い、いや。説明って、これには訳が!!!」
「・・・ダメよ?」
動揺しつつも何とか愛妻に応対する夫に対してビアンカは、あくまで仏頂面を保ったまま声に怒気を含ませる。
「どうしてこんな大事な事を、私になんの相談も無しに自分だけでやってしまうのかしら・・・?」
「ええっ?い、いや。別に君に内緒にしていた訳じゃ・・・」
「お付きのメイドの子達が話していたのを聞いたの。そしたらあなたが
「・・・・・」
(マジかよ、誰だか知らないけど余計な事をしてくれたよな?その内に時期を見てちゃんと話すつもりだったのに・・・)
愛妻王妃に気圧されつつも内心でそんな事を考える青年国王だったが同時に“やっぱり見ている人は見ているな”と思った、正直に言って誰にも話さず、また気取られないように注意していたつもりだったのに。
「もうっ。あなたったら、こんな面白・・・っ。もとい大切な事をどうして教えてくれないのっ!!?それに私、あなたが居なくてすっごく寂しかったんだから・・・っっっ❤❤❤❤❤」
と、脹れ面は相変わらずだったけど、少しだけ瞳を潤ませながらビアンカが紡ぐ言葉に対して、リュカは慌てて立ち上がると彼女の元に向かい、その身を横からソッと抱き締めた。
「・・・ゴメンね?ビアンカ。実は“マスタードラゴン”や母さんから、“時期が来るまでは誰にも話してはいけない”。“誰にも甘えてはいけない”って言われてたんだ。・・・それに“暫くは一人だけで頑張りなさい”って釘を刺されていたから!!!」
「ウッ、グス・・・ッ!!!」
夫の答えに、“リュカが悪戯に隠し事をしていた訳ではない”と一先ず安堵したビアンカは、少し涙目になりながらも彼に寄り添い、その身を擦り付ける。
「本当にゴメンね?ビアンカ。嫌な思い、させちゃったね・・・」
「もう・・・っ。だったらその、しょうがないし。許してあげるけど・・・!!!」
ちょっとだけ嗚咽を漏らしながらも、花嫁が納得した事を見て取った花婿はだけど、その後も暫くは彼女を抱き寄せたままジッとしていたのだが、それから10分近くが経過した頃だっただろうか。
「・・・あ、あのさ。ビアンカ、もう入っても良い?」
「・・・・・?」
「・・・・・っ!!!」
夫婦の背後から声がして、リュカがそちらを見るとルイーダの酒場の入り口に、一人の女性が佇んでいた、パッと見で歳の頃は三十路前後、と言ったところか、小太りで申し訳無いのだけれど、あんまり清潔感のある見た目をしてはいなかったのだ。
「・・・こちらは?」
「ウッ、グス・・・ッ。ゴ、ゴメンね?クリス、リュカ。この人は“山奥の村”の住人で、私の数少ない同性の友人なの。名前は・・・」
「・・・ひょっとしたら。あなたが“クリスティーナ・ニーバー”さん?」
ビアンカを侍らせつつも、リュカが名前を確認すると“彼女”は黙って頷くが、正直に言ってリュカはビアンカの知り合いで無ければ今回はキャンセルしようか、等と考えていた、字面から漂って来る“念”を読み解いた瞬間に理解したのだがクリスティーナは久方振りの女性ニート客であったのだ。
堪らずリュカはその場で“霊視”を行うモノの、その結果見えて来たのは想像していたよりも遥かに酷い状況だった、長年に渡る引き篭もり自堕落生活の為にすっかり心が
「リュカお願い、クリスの話を聞いてあげて?この子を何とかしてあげて欲しいの・・・」
「・・・・・っ。う、うん。まあやってはみるけど!!!」
ビアンカのこの言葉が無ければリュカは愛妻王妃共々、その場から急いで逃げ出していたかも知れなかった、穏和で優しい性格の彼ではあったけれども基本的にニート客や不倫客は嫌いであり、その話自体にもあまり興味が湧かなかったのだ。
「・・・取り敢えず、まずはそちらの席にどうぞ?クリスティーナさん」
「・・・・・」
自身はビアンカを抱き抱えた格好のまま席に着くと、リュカはそう言ってクリスティーナにも席を勧めたがこの時点でリュカは彼女の浄化を粗方完了しており、己が霊力の高まりを実感して安堵する。
「・・・どこから話せば良いんだろ。私ね?リュカさん、実は“ヒキニート”なんだよね」
少し過去のことを振り返りつつも“クリスティーナ・ニーバー”は己の身上を語り始めたモノの、その大半は案の定、両親の事や実家の事、そして自分の人生の事等についての愚痴に過ぎなかったのである。
それによると。
彼女は村の“神学校初等部”までは頭が良くてクラスでも人気者だったらしいのだが、“中等部”に入った辺りから段々と勉強に付いて行く事が出来なくなり、塞ぎ込んで行ってしまった。
それでも何とか高等部にも進学し、更にはいわゆる“Fラン”ではあったけれどもサラボナ近辺にある大学校にも入学、そして現役のまま卒業する事が出来たのである。
だが。
「私ね?そこまでで精神的に参っちゃったって言うかさ、人生に疲れちゃったんだよね。これ以上誰の為に頑張るのか、何の為に生きるのかが全く解らなくなっちゃってさ・・・」
「・・・・・。はあぁ、そうですか」
「大体私はね?別に生まれて来たくて生まれて来たんじゃないんだ。両親達がやることをやってその結果として生み出されて来た存在なんだよ、だから両親は私を最後まで養う義務があるわけ。解るでしょ?それなのにさあ・・・」
「・・・・・」
リュカはウンザリしながらそれを黙って聞いていた、こう言う人物に下手に反対意見をぶつけたり、何かを伝えようとしてもどうせ逆ギレして喚き散らし、面倒臭い事になるのは目に見えていたから呆れながらもクリスティーナの話に耳を傾けるだけに留めていたのである。
「私だって毎日を必死になって生きている訳だよ、私なりにね。解ってくれるかな?それなのに親父達は二言目にはやれ“就職しろ”だの“自立しろ”だの、うざったい事この上無いんだよね。人の気持ちも知らないで・・・」
「はぁ・・・」
(だったらいっそのこと、さっさと家から出れば良いのに・・・。大体あなただって勝手にその家に生まれて来て、今まで両親の庇護の元でのうのうと生きて来たんだろ?普通はお父さんとお母さんに“有り難う”と“ごめんなさい”を伝えるだろうに。素直さと謙虚さが無くなると、本当に“人間として可愛気”が無くなるな。マジで救いようが無くなる・・・)
等とリュカは顔には出さず、また“適当だとバレないように適当に相槌を打つ”だけの対応を繰り返していた、“これじゃあビアンカも手に負えなかったんだろうな”と思った、“なんでわざわざこんな人の身勝手な持論を聞かなきゃいけないんだろう”、“こんなのがいつまで続くのかな・・・”等とリュカが段々と疲れ果てて、ゲンナリして来たその時だ。
「ねえ、あのさ。私の事をどう思う?正直に教えてちょうだいよ、少なくとも私が言ってる事は間違ってはいないよねっ!!?」
等と言われて返答を迫られたリュカは半ば“どうだっていいや”と思いながらクリスティーナに自分の本意を語り始めようとして、まずは最初に“見極めの術”を施す事にしたのだが、その瞬間。
「・・・・・っ!!!」
(こ、この人は・・・っ!!?)
リュカの頭の中に“クリスティーナ・ニーバー”と言う女性に関する様々なイメージが一気に流れ込んで来て、その横から更に彼女を守っていた“守護霊”の声も聞こえて来るモノの、それを受けたリュカは。
改めてクリスティーナに向き直り、毅然とした態度と落ち着いた口調で彼女に応じた。
「クリスティーナさん、私の胸の内を明かす前にいくつか質問させていただきたいのですが・・・。こんな所に来る訳ですからあなたは一応、“神”や“霊なるもの”と言ったモノに興味はあるのでしょう・・・?」
「・・・ま、一応はね?それなりには」
「それならば結構です、では僕の私見を述べさせていただきますが・・・。僕が神様から教えていただいた話によれば人間は、生まれて来る前に己の人生の全てを見せられるのだそうです。例えばあなたは今世で“クリスティーナ・ニーバー”と言う人間として生を送っていますが、その場合は生まれる前に“クリスティーナ・ニーバー”と言う人物の人生を
「・・・はっ、有り得ないわ?そんなこと」
するとその話を聞いていたクリスティーナが鼻で笑い始めた。
「私がこんなクソみたいな人生を了承する訳が無いじゃん、こう言っちゃなんだけどさ・・・?私の人生、マジでゴミ溜めの中にいる“負け犬”のようなモンなんだよ?もし今の話が本当ならばどうして私は可愛い系のギャルとか陽キャに生まれて来れなかったのさ。言ってみなよ!!!」
「・・・それは多分、あなたに“カワイイ系陽キャギャル”として生きるに足る適性や実力が無かったんでしょうね。ああ言う人達ってどんな状況でも常に楽しい事を考えて自分を輝かせられる思考能力や立ち振る舞いに加えて、仮に壁や苦難にぶち当たってもそれを乗り越える為の努力ですらも楽しんでやれる位の根性と言うか、ガッツと言うか。とにかく強いパワーが必要になりますから、恐らくあなたにはそれらが無かったのでしょう」
「・・・・・」
「御自身で思い当たる節があるのですね?基本的に神様はその者の実力以上の試練を与えない、と言われています。つまりあなたが“カワイイ系陽キャギャル”に生まれられなかったのは、そう言う存在の趣味嗜好や生き様、意識の在り方なんかがあなたには無理だったから。それであなた自身が辞退したのか、はたまた違う人生を神様から用意されたのかのどちらかなんでしょう・・・」
「・・・じゃあ百歩譲ってその通りだとするけどさ?それなら一体、私は何の為に生み出されたわけ?こう言っちゃなんだけど、私なんていてもいなくても大して変わりは無いような気がするんだけど?」
「・・・クリスティーナさん。その答えを言う前にまずはお伝えしておきましょう、実はちゃんとした人生をあなたが送っていたのならば。あなたには既に恋人がいたハズなんです」
「・・・・・っっっ!?!?!?!?!?」
リュカの言葉に流石のクリスティーナも驚愕してしまい、二の句が継げなくなってしまった、それほど今、目の前にいる青年から言われた内容は彼女にとって衝撃的なモノだったのである。
「・・・わ、私に?私なんかに恋人が出来る訳がないじゃん。適当な事を言わないでよ!!!」
「いいえ、クリスティーナさん。あなたがもし“最初の試練”をちゃんと乗り越えて自分に自信を持てていたのならば、中等部か高等部かは解らないんですけどその辺りで最初の恋人が出来ていたみたいです」
「・・・・・っ!!?」
(“最初の試練”ってなんなんだろう?いいや、そんな事より・・・)
リュカが更に語り掛けるが、すると目に見えてクリスティーナが動揺し始めた。
「失礼ですけど、クリスティーナさん。あなたは子供の時から太っていた
「あ、う・・・」
「それだけではありません、彼氏や恋人が出来なかった事であなたは生きる意義や目的を見失ってしまった。何の為に自分は頑張るのか、と言う“夢”や“生き甲斐”を見出せなくなってしまって。それで尚更勉強やスポーツに打ち込む事もしなくなってしまった、そうですね?」
「・・・・・っ。な、なんでそんな事が解るのさ?なんだか見てきたかのように言うけど」
「・・・僕達には“見極めの術”と言う、その人物の本質や人生全体を垣間見る事の出来る能力があります。それにあなたの守護霊にも今までの事を色々と聞きました、それで解ったんですよ?」
そこまで言うと一息入れた後で、リュカは続けた。
「クリスティーナさん、あなたの人生にはあと3回の“出会いのチャンス”があります。どんな人間にも全部で5回は愛する人と結ばれる為のチャンスが与えられているんですよ?・・・まあ逆に言えばあなたはその内の2回を無駄にしてしまった事になりますが」
「・・・・・っ。マ、マジなのっ。それって!!?」
「あなたは取り敢えず、まずは痩せる事です。そして身形を整える事、そうすれば必ず自信を持つ事が出来るようになりますから・・・。自分に自信がある人と言うのは善人でも悪人でもとても強くて逞しく、または愛らしくて美しく見えるモノです。要するに女として魅力的になるんですね、そうなれば就職するのも夢ではありません!!!」
「・・・そ、そうかな?だけど就職かぁ、自慢じゃないけど私さ。今まで一度も働いた事が無いから」
「それならそれで、“アルバイト”や“作業補助”からでも良いじゃないですか。今の世の中、働き方は人の数だけ存在しています。別にいきなり正社員を狙う必要はありませんよ・・・」
“大丈夫”とリュカは言った、“あなたにはまだまだ可能性の光りが残されていますから”と。
「まずは地に足を着けて、一生懸命に生きて下さい。ちなみに“一生懸命に生きる”とは自分の能力や感性、経験を最大限に発揮してその瞬間その瞬間を生き切る、と言う事です。そうするとこの世の中で色々な経験が出来て知見が広がり、魂が活性化して活き活きとして行きます。つまりは魂が喜ぶんです」
「・・・・・」
「そして“魂が喜ぶ”とは“魂が輝く”と言う事です。魂が輝いている人と言うのは周りの注目を集めます、凄く眩いオーラを纏い始めるからです。そうなれば自ずとあなたに出会いがやって来るでしょう・・・」
「・・・そ、それ。それ本気で言ってるのっ!!?」
「僕の見立てではそうですし、あなたの守護霊も“そうだ”と言ってくれています。今が勝負の時なのですが、その為には今から3年以内に社会に出る事が必要なのです。もしそれが出来たなら・・・」
「・・・・・っ。よっしゃあっ!!!」
全くゲンキンなモノでその話を聞いたクリスティーナは、すっかり有頂天になってしまった。
「やる、やるよ?私はやる。必ず社会復帰を果たして見せるわっ!!!」
「その意気ですクリスティーナさん、頑張って下さい。あと今回はお代は結構ですから次に来た時に払って下さいね?・・・もし僕の言葉が当たっていたら、で結構ですから」
「・・・え、え。良いの?」
「はいクリスティーナさん。次回からは盗んだお金では無くて、ちゃんと自分で働いて得た
「あ、あの。いや、これは・・・っ。あははは!!!」
都合が悪そうにするクリスティーナに対してリュカが更に続けた。
「ではクリスティーナさん。改めて話を元に戻しますけど、今世あなたが生まれてきた理由と言うのは主に二つあります。まず一つ目は“弱く生きる事を宿命付けられた人々の悲哀”を存分に味わう事、二つ目がそれを優しさと力に変えて皆を導いて行く事です」
「・・・わ、私が皆を!!?」
「はいそうです、凄い失礼な言い方になりますけど・・・。あなたには最初は確かに“敗北者”や“失敗者”としての役割が与えられていますが。ですけどそれだけじゃ無いんです、後半に目を向けるとあなたは今の
「・・・まあ、それはさっき聞いたけど。だけどなんで?」
「これからの時代、本来の自分の役割を忘れて生き様が見出せず、腐ってしまう人がもっとたくさん出て来ます。だけど人間には生きている限り、どんな時でもチャンスがあるのだ、と言う事を。努力すればどんなに悲惨な状況下からも必ず這い上がる事が出来るのだ、と言う事をそんな人々に直に見せ付ける必要があるのです。解りますか?クリスティーナさん。あなたにはその“先駆け”としての使命が与えられているみたいですよ・・・?」
「・・・先駆け」
「そうです、クリスティーナさん。あなたは己を見失って腐ってしまった人々を正しく導いて救わなくてはならないんです。その為にはその人達の苦しみや悲しみを存分に味わい、自身で経験する必要があった。ですけど“闇の役目”はそこで終わりです、あなたはこれから“光”になるんですよ・・・?」
「・・・・・っ。私が、みんなを?そして光に!!?」
「クリスティーナさん、これだけは覚えておいて下さいね?いま確かに、世の中はメチャクチャに乱れ切り、
「・・・・・?」
「神々はまだ人間を、見捨ててはいません。それを忘れないで下さい・・・」
そこまで告げると。
セッションの時間が来たために、リュカはクリスティーナを帰路に就かせた。
「・・・ねえリュカさん。あのさ?」
「・・・・・?」
帰り際、クリスティーナがまたリュカに尋ねて来た。
「私ね?今までの人生で誰からも愛された経験が無いんだ、だから愛って何なのかがイマイチ良く解らないんだよね」
「・・・・・」
「ただ私はね?これでも自分自身だけはちゃんと愛してるつもりなんだけど。ほら、良く言うじゃん?“自分を愛せない人間は他人を愛する事も出来ない”って。だからさ、自分自身だけは大事にしているつもりなんだけど。だけどなんで私は誰からも愛されないのかなぁ・・・」
「・・・クリスティーナさん。あなたが誰からも愛されないのは、あなたが真の意味で自分自身を愛していないからですよ」
しみじみと告げるクリスティーナにリュカが如才なく答える。
「“自分を本当に愛してる人”と言うのは他人もちゃんと愛せるモノです、そうすると他人からも愛が返って来るのです。それが出来ていないのは申し訳無いのだけれど、あなたが自分を愛していない証拠ですよ・・・」
「ええっ?嘘だぁ、だって私は・・・っ!!!」
「今は解らない事の方が多いでしょうけれど・・・。一生懸命に生きるようになれば、その内に解って来ますよ。それも理屈では無くて感覚、つまり“心”でね」
そこまで言うと、リュカは黙ってクリスティーナを宿まで見送った。
“運命の人”が何人いるのか、または彼等彼女に巡り会える回数と言うのは、人によって異なります。
通常は1人に付き3人が“運命の人”として用意されており、彼等彼女と巡り会える(結ばれる)機会は一生に付き5回までは用意されているそうです(つまり本人が意図的に拒絶し続けなければ大体の確率で誰かと結ばれる事になります)。
これらは全て生まれる前に(即ち“あの世にいる間に”)決められるそうです←ちなみに基本的に人間は人間同士でしか結ばれません(“異種姦”とかが好きな方はさぞガッカリされるでしょうけどね?)。
もちろん中には1人の人だけを“運命の人”と決めて生まれて来る方もいらっしゃいますし(相手の事が本当に大好きで、大切にしている場合にはそう言う事もあるそうです)、また複数人の“運命の人”がいたとしても、その中でも一番大好きになった人の事が忘れられずに一生涯、その人への思いを秘め宿したまま生き続ける方もおられるのだとか(人生をどう言う風に運用するのか、と言うのは各人に任されているそうです←即ち“必ず誰かと結婚しなければならない”と言う訳でも無いそうです)。