教室に入る前に、マリアはわずかに呼吸を整えた。
胸元を直し、服装の他の部分にも乱れがないか確かめる。
何故そうしたのかは、これから授業を行うのが自分の受け持つC組だからだ。
より正確に言うなら、この教室には──彼がいるからだった。
一週間前、事もあろうに教室でふしだらな行為に及んでいた、教え子である美里葵と緋勇龍麻。
その淫毒にあてられたのか、マリアは教師たる身分すら忘れて共に肉欲に溺れてしまったのだ。
点されたかつてないほどの淫楽の焔は、家に着くまで消えることがなく、
それどころか思いだしただけで容易に再び燃えあがってしまった為、
マリアは眠りにつくまで幾度か自分を慰めねばならなかったほどだった。
その羞恥たるや、とても翌日に彼と顔を会わせられるものではなかったが、
龍麻は平然と、マリアの芯に刻み込んだ淫らな楔そのものを忘れ去ったかのような態度を取っていた。
しかしそれでマリアは楔を消し去ることができたかというとそうではなく、
年下の男に女を意識させられてしまうことが更なる羞恥を呼び起こし、
彼女はほとんど授業にならないくらいの混乱をきたしていた。
家に帰るや否や自らの身体を慰め、満たされない淫欲に身悶える。
そんな生活を数日続け、ようやく理性が欲望に勝るようになったのが、まだ昨日のことだったのだ。
頬を軽く叩きたいのを抑え、息を吐き出すだけに留めて扉を開けると、
騒がしかった生徒達が慌てて席に戻っていく。
彼らが席に座り終え、教科書を取り出すまでのごく短い時間、
マリアは教室の一番後ろへ眼差しを向けた。
緋勇龍麻は、そこに座っていた。
隣の席である美里葵と机を並べて。
マリアはすぐに視線を逸らしたつもりだったが、龍麻はめざとく、
あるいは初めから見られることを知っていたとでもいうように、自分から軽く手を挙げた。
「すいません、教科書忘れちゃって」
「わざと忘れたんじゃねェのか?」
悪意のない京一の声に、口笛が何本か重なる。
龍麻はわざとらしく頭を掻いてみせ、更に冷やかしの音色が高まった。
心騒がせられるのを無理に封じこめ、マリアは教科書を開く。
「はい、それくらいにしなさい。仕方ないわね、美里サン、緋勇クンに見せてあげて。
それでは授業を始めます」
彼女の早急な口ぶりに気づいたのは、四十人を超える教室の中でただ一人だけだった。
五十分の授業の半分ほどが過ぎた頃、いつものように授業を進めていたマリアは、
異変に気づいて危うく教科書を取り落としそうになってしまった。
全員がノートを取っているか、教科書を見ているはずの教室で、
奇妙に動いている生徒がいたのだ。
奇妙に、と言ってもそれはマリアから見てであって、他のどの生徒も気づいていない。
しかしやや高い位置から見ているマリアには、美里葵が下唇を噛んでいるのが丸見えだった。
龍麻達の席は一番後ろであり、生徒は横にしかいない。
それを利用して、龍麻が葵の足に触れていたのだ。
恋人同士のように肩を寄せ合いながら、何気ない動作で内腿を撫で、その奥へも触れている。
葵も肩幅ほどに足を開いてそれを受け入れながら、長い髪で巧みに表情を隠していたが、
うっすらとその頬は朱に色付いていた。
思わず凝視してしまっていたマリアは、生徒達の視線によってそれに気付く。
「あ、そ、そうね、それでは次の人、訳してください」
適当に当て、もう一度、確かめる為と心にいい訳をして彼らを見た。
やはり龍麻の手は彼女のスカートの中に消えており、時折その肩が本当に微かに揺れている。
そして葵は懸命にノートを取るふりをしているが、その手先は震え、
快感を堪えているのがはっきりと見てとれた。
彼女の愉悦の表情は、ようやく忘れ去ることができたはずのはしたない情欲をマリアの裡に蘇らせた。
この場所で行われた性交、嗅覚に染み付いた淫臭、優美に踊る彼女の裸身。
それらがあまりに一度に記憶中枢を産め尽くしたので、
マリアの思考はややずれた方向へと進んでしまっていた。
以前から彼らはこんなことをしていたのか──違う。
いくらなんでも、こんなことをしていればすぐに気づく。
では。
龍麻は、自分に見せつけているのだ。
それに気づいたとき、マリアは下腹に強い疼きを覚えた。
一週間前に与えられた、記憶すら飛んでしまうような快感。
思い出すだけで動悸が早まり、性的な興奮を抑えることができない、彼のペニス。
あれから龍麻は何も、話しかけてさえこなかったが、
それがどんな意図をもって行われていたのか、ようやくマリアは知ったのだ。
教室に沈黙が流れる。
再び自分が授業を止めてしまっていると知り、慌ててマリアは口を開いた。
「そうね、それじゃ──緋勇クン」
彼の名を呼んでしまった瞬間、マリアは自分の心臓が音高く鳴ったのを聞いた。
それは彼と自分にとって、破滅に等しい行為だったのだ。
しかし龍麻は返事こそわずかに遅れたものの、何事もなく立ちあがり、淀み無く読み始める。
本場の発音には及ばないものの、充分に及第点を与えられる音読に、同じく的確な和訳。
龍麻はマリアの教え子の中でも最も優秀なグループに属していたから当然とも言えたが、
直前に及んでいた行為を周りに全く気取らせないのは異常と言えた。
「ハイ、良くできました」
どこまで彼が読んだのかすら把握しないまま、マリアは訳を止めさせる。
もちろん龍麻は何も言わず着席してマリアを安堵させたが、
完全に腰を下ろす寸前、鋭い眼光で彼女を射抜いた。
「……ッ」
怒っているのでも、脅しているのでもない、不思議な光。
その正体が解らないまま、マリアは光を取りこんでしまう。
それは奇妙な安らぎと、奇妙な興奮を同時に彼女にもたらした。
心の扉を叩き壊すが如き鼓動に苛まれながらも、
どうにか最後の授業を終えたマリアはそのままホームルームを始めた。
特に伝達事項もなくあっさりとそれを終えると、途端に教室が騒がしくなる。
それをマリアは少し疎ましく思いながら職員室に戻る前に雑事を片づけていると、
喧騒の中、龍麻と葵が教室を出ていった。
堂々と、しかし実に巧みに、二人は揃って姿を消す。
彼らが何をしようと自分には関係無い──そう言い聞かせ、マリアは職員室へと戻る。
しかし半分ほどの距離を戻ったところで、どうしようもない衝動が彼女を襲った。
ほとんど一瞬で思考の中枢にまで達したその衝動に抗えたのは、振り向くまでだった。
走り出す寸前の早足で、来た道を引き返す。
勢い良く開けた扉に、残っている生徒達が一斉に振り向いた。
今の自分の顔は、生徒達にどう見えているのだろうか。
そう自分を客観視する余裕すらマリアは失っていた。
「あれ先生、どうしたの」
「いえ……ちょっと忘れ物をしてしまって」
「へー、マリア先生でも忘れ物なんてするんだ」
無邪気に尋ねる小蒔に愛想笑いで応えてみせながら素早く教室を見渡す。
もちろん葵はいない。
そして、龍麻も。
安堵と落胆を同時に覚えつつ、マリアは平静を装って尋ねた。
「桜井サン、緋勇クンを見なかったかしら」
「ひーちゃん? そういえば、今日はすぐに帰ったみたいだけど……せんせー、探してるの?」
「いえ、大した用じゃないの。でももし見かけたら、ワタシの所に来るよう伝えて」
「はーい」
のんびりと答える小蒔に背を向け、教室を後にする。
小蒔は帰ったと言っていたが、まだ龍麻は学校のどこかにいるという確信がマリアにはあった。
探してどうするのか──
はっきりとした考えがある訳ではない。
美里葵も喜んでいるようであるし、他人の男女関係に口を出すなどくだらないにも程がある。
ただ、自分は──学校で、教室であのような行為をされたのが許せないだけなのだ。
だから彼らがまた同じことをしていたら、止めるだけ──
歩を進めるうち、マリアはそう自分を説得していた。
それが全くの欺瞞であると知っていたのは、彼女の身体のごく一部だけだった。
ほぼ学校中の生徒が溢れかえっている校舎の中で、人気が無い場所。
考えを巡らせたマリアは、一箇所該当する場所を見つけると、足早にそこに向かった。
階段を昇り、静かに扉を開け、足音を立てないよう注意しながら彼らを探す。
すると彼女の、人のそれよりは鋭敏な聴覚が何かを捉えた。
それは聞き覚えのある、嬌声だった。
マリアは耳を澄ませ、声の源を探ると、足音を殺して近づいて行った。
建物の影に、彼らはいた。
壁に手をつき、身体を折っている葵の背後から、龍麻が被さっている。
制服こそ脱いでいないが、彼らが何をしているのかは一目瞭然だった。
再び目にする彼らの交わりに、マリアの網膜は機能に異常をきたしてしまう。
空も、周りの風景も全てが消えうせ、彼ら二人の姿のみが映像として脳に送りこまれた。
マリアは彼らから姿を隠すのも忘れ、みっともなく腰を合わせて情事に耽る二人を見やっていた。
葵の膣を味わっていた龍麻は立ち尽くす彼女に気付くと、気さくに手を挙げた。
「あぁ、マリア先生」
平然と呼びかける。
葵を犯すことは、既に彼にとって日常であるのだった。
引いていた腰を葵に密着させ、小さく円を描かせる。
マリアが来たと知って葵は顔をそむけたが、快感には抗えないのか、
あられもない声が口を衝いていた。
「んっ……あっ、は……ぁ……」
とろとろに溶けた淫蕩な喘ぎは、およそ普段の彼女から想像できないものだ。
生々しい光景を見せつけられたマリアの、心に微かな変化が芽生える。
しかしマリア本人はまだそれに気づくことはなく、
太陽の下で見る男女の交わりを息苦しさを覚えつつ見ているだけだった。
肺が多量の酸素を求め、口を開かせる。
ほとんど無意識にマリアが胸元を軽く押さえると、
龍麻は上半身を前傾させ、葵の舌を貪りながら言った。
「この間マリア先生がこの格好でされるの見てから、葵も気に入っちゃったみたいで。な、葵」
龍麻の声にも葵は快楽を享受するばかりで答えなかったが、
龍麻が制服の中に手を突っ込み、胸を激しく掴むと返事を絞り出した。
「あっ! え、えぇ……凄く……気持ちいい……わ……」
壁に手をつき、足を開いて男を咥える葵は、心底龍麻に酔っているようだ。
大人としての知性と理性を充分に身に着けていると思われる彼女が肉欲に溺れるのは、
マリアにとって非常に衝撃的だった。
龍麻が腰をぶつける度、日本人特有の艶やかな黒髪が踊る。
日光を受けて美しく輝く葵の髪と、龍麻のひどく間抜けで、そして卑猥な動きは、
何故か自分も同じように犯されたのだとマリアに想起させた。
「緋勇……くん……私……」
葵の嗚咽が高まる。
一際強く龍麻が腰を突き出した時、葵の背中がしなやかに反りかえった。
大きく震える肢体が、今まさに精を受けているのだと見る者に伝えていた。
前のめりに倒れそうになる葵を支え、壁にもたれかからせた龍麻は、ようやくマリアの方を向く。
まだ勢いを保ったままのペニスが、マリアの目に飛び込んできた。
白濁に汚れている赤黒い器官からは、危険な臭気が漂っていた。
なまじ人間よりも嗅覚が優れているマリアは、その臭いを思いきり嗅いでしまう。
思考を奪い、肌を熱くさせるただれた香り。
それはマリアに、何故龍麻を探していたのか、という答えを示していた。
「ワタ……シ……」
「ほら、もう少しこっち来ないと誰かに見つかっちゃいますよ」
からからになった喉から、必死に何かを言おうとすると、龍麻が腰を抱き寄せる。
龍麻はあらゆる意味で、他人を掌握する術に長けていた。
容姿、言動、眼光。
それらに加え、龍麻はタイミングを計るのが実に巧みだった。
わずかな心の隙を見つけ、あるいは作りだし、そこにするりと忍びこむ。
今も、言葉を求めて自らの思考の中をさ迷うマリアに、力強い感触を与え、
考える必要など無いのだと彼女に教えたのだった。
事実、マリアは強引な牡性に惹かれ、抗うことを忘れつつある。
こうなることは充分に予想していたのに、逞しい腕に抱かれ、
下腹部から漂う鼻をつく臭いを吸った途端、どう対処したら良いか解らなくなっていた。
それをマリアは、形良く尖った鼻を膨らませ、肺の奥まで導きいれる。
眉をしかめつつも、吸いこむことを止めはしなかった。
この腕の中にいることが正しいのだ、と考え始めたマリアの頭に、龍麻の囁きがこだまする。
「結構遅かったですね。三日くらいで来ると思ってたんですけど」
自分が男を、彼を求めてここに来ることを予想していたという龍麻に、マリアは俯くしかなかった。
事実そうだとしても、そのような態度は龍麻には一切見せていなかったはずなのに。
それをマリアが口にすると、龍麻の喉の奥から小さな笑いがこぼれた。
「判りますよ、そりゃ。前よりもずっと歩き方がセクシーになって。
新しい恋人でも出来たんじゃないかって、学校中で噂になってますよ」
「う、そ……」
そんなに自分はだらしなかっただろうかと、マリアは涙が出そうになった。
すると龍麻は、そんなマリアを慰めるように髪を撫でる。
「ええ、嘘です。でも……マリア先生が来るのは、俺には判ってましたよ」
甘美な声で告げる龍麻の手が、腰から尻へと移っていく。
マリアは咄嗟に彼の手首を掴んだが、それ以上動きを妨げることはなかった。
「こんな所でするのも……興奮しませんか」
耳朶に触れた龍麻の唇が、力を奪う。
そこから伸びた舌が与える、生温い滑りを耳の裏に感じた時、マリアは遂に全身を彼に委ねた。
急に体重を預けられて龍麻は驚いたが、よろめきもせず支える。
真意を確かめようと首筋を弱くついばむと、彼女の口から漏れたのは恍惚に満ちた吐息だった。
肉の詰まった尻を揉みしだいても、もうマリアは悦びに腰をくねらせるだけだ。
一週間待った甲斐があったとほくそ笑んだ龍麻は、
無遠慮にスカートの上から尻を撫で回していた手を動かし、邪魔な布を捲くりあげた。
「あれ?」
あるべきものを見出せず、龍麻は戸惑う。
極上の質感を持つ臀部から、その谷間へと指を落とした。
そこにはごくわずかな、ほとんど紐のようであったが、一応あるべきものはあった。
「これって……Tバックってやつですか」
高校生離れした肢体を持つ葵でも、さすがに履いているのを見たことは無い下着に、
さすが大人の女性だと龍麻は感心した。
同時にこんな形で欲望を紛らわせていたのだと知ると、彼女が可愛らしく思えてくる。
「この前のも凄かったけど、これはもっと凄いですね」
心底感心したように呟く龍麻に、ほのかな朱が指していたマリアの顔が、
引いている口紅と同じくらい深い紅に染まった。
龍麻に女を目覚めさせられたあの日以来、過激さを増していった下着。
もちろん誰かに見せることなどなかったものの、こうして龍麻に知られると、
彼に見せる為にずっと履き続けていたのではないかとすら思うマリアだった。
スカートを完全に捲くりあげた龍麻は右手でしっかりと尻を押さえ、
紐の内側に左手の指を入れると、縦になぞっていく。
「ん……っ」
二人のセックスを見て昂ぶっている身体は、わずかな刺激で簡単に濡れ始めた。
膝が折れ、龍麻にしがみつかないと立っていられなくなってしまう。
陰唇を開いていく彼の指に無上の悦びを感じながらも、既にマリアはそれだけでは足りなくなっていた。
「あ、ん……ねぇ……」
快い冷たさを感じさせる普段の声はとうになく、媚をねっとりと含んだ音色で求める。
それは声だけで背筋に快感を生じさせるほどのもので、龍麻はたまらずマリアに後ろを向かせた。
白く豊かな尻が、眼前に晒される。
形に少しの崩れもない美しい双臀の間に、申し訳程度に走っている細い紐を引っ張ると、
蜜をたっぷり吸った下着が粘り気のある水音を奏でた。
その音にすら感じてしまうのか、切なげにマリアが尻を振る。
欲望を露にすることにためらいを感じなくなっている彼女は、
ただ外見だけを見ているだけでは絶対に知り得ない美を放っていた。
教師にさっきまでの葵と同じ格好をさせた龍麻は、
張り詰めた、完全な調和の取れた肉付きの足に感嘆しながら、その内側を撫でる。
ひくりと震えた淫口を、下着をずらして露出させると、屹立をその入り口にあてがった。
「あ……」
熱く潤ったマリアの膣は、吸いこむような蠕動で屹立に絡みついてくる。
龍麻は腰の辺りに満ちる、思うがままに彼女を犯したいという願望を抑えて少しずつ己を沈めていった。
マリアの期待に満ちた喘ぎが、屹立が沈むにつれ甲高いものに変わっていく。
そして彼女の背中は、体内へと押し入って来る異物の圧力に耐えかねたようにしなっていった。
「ぁ……っはぁ……」
時間をかけた挿入が終わると、マリアはそれだけで感極まった嗚咽を漏らした。
体内に埋まる牡の器官は、腹に重ささえ感じさせる。
身体の中心から生まれる鈍い衝動が、脳を麻痺させていく。
以前に同じ体位で犯された時の背徳感はもうなく、純粋な快感のみがマリアを支配していた。
そこにまた一つ、新たな快感が加わる。
龍麻が、葵のそれよりも更に大きな乳房を掴んだのだ。
汗ばんだ掌はやや強く握り、わずかな痛みをマリアは覚えたが、
それ以上に男の欲望を満たさせているという充足感の方が勝った。
それは彼の指が細やかな動きで乳首を刺激し始めた時に一層強まり、
マリアは身体と精神の両方からの愉悦にむせび泣いた。
「あ……ン……ッ」
ペニスが動き始める。
粘膜をこそぎ取られ、瞬くような火花が瞼の裏で散った。
入り口近くまで戻っていった屹立が、勢いをつけて戻ってくる。
「んあぁッ」
心が求めるままに淫声を紡いだマリアは、その予想外の大きさに慌てて口を塞いだ。
しかし龍麻は、そんなマリアを見て緩急をつけた抽送を行う。
「あッ、んん……っ……ッあぁッ」
声を出してはならない、という理性と、もっと快感を貪りたい、という葛藤にマリアは悶える。
しかしそれも、粘液が糸を引くような抽送から一転、
腰ごと叩きつけるような抽送を受けると、すぐにどうでも良いと思えてしまうのだ。
淫らな穴を掻き回す肉棒に、いつしかマリアはすっかり溺れていた。
「あ……?」
柔らかなウェーブのかかった髪を乱して喘いでいたマリアだったが、突然愉悦が止んだ。
気だるい理性が戻ると共に、膣の疼きが襲ってくる。
「どうしました?」
屹立を引き抜いた龍麻は、熱く火照ったそれを、マリアの尻の谷間にあてがい前後させた。
自分で選んだ下着のせいとはいえ、ほとんど素肌に触れる肉塊は、
余すところ無くその昂ぶりを伝えてくる。
中断された快感と、滑った塊が与える刺激に、もうマリアは耐えられなかった。
「お願……い……止めない、で……」
腰を動かし、自分から導き入れようとする。
龍麻はそんなマリアの上半身を起こし、壁に押しつけた。
片足が高々と持ち上げられ、だらしなく口を開けている、粘液で濁った淫唇がさらけ出される。
牡を求めてひくついているそこは、龍麻の眼前で新たな蜜を物欲しそうに垂らした。
白く泡立った滴はひどく淫靡に滑らかな腿を伝う。
屹立でそれを掬った龍麻は、身体を寄せ、彼女の求める場所へと己を近づけていった。
「あッ……あ……っ」
淫らに開いた陰唇にあてがわれたペニスは、しかし中には入ってこず、
入り口をぬらぬらと滑るだけだ。
「い、や……」
焦らされ、気が狂いそうになったマリアは、たまらず龍麻を見た。
怜悧な美貌が呆けたように崩れ、肉欲を求めるさまに、龍麻は思わずぞくりとした。
もう少し焦らそうかという考えも吹き飛び、我慢できなくなった屹立を彼女にねじ込む。
「うぁ……ッ、あぁ……ぁ」
挿入したマリアの口から零れた、腹の底からの熱い呼気が龍麻を灼いた。
興奮を誘われた龍麻は、壁に押しつけるようにして更に彼女の奥を抉った。
「あッ、んぅ……」
柔らかな肉の壁は、ただ締め上げるだけでなく、絶妙の加減で搾るようにまとわりついてくる。
葵のそれともまた一味違った蜜壷の感触に、
ともすれば果ててしまいそうになるのを堪えて龍麻は抽送を始めた。
「はぁ……ッ、あ……ぁぁ……」
奥まで屹立を沈める度顔にかかる、情欲に染まりきった呼気は、むろん龍麻にとって不快なものではない。
艶めかしく動く、濃い赤の口紅を引いた唇に誘われるまま、龍麻はマリアの口を吸い上げた。
「んッ、ううん……う……ふ……」
前回と違い、マリアの舌は積極的に応じてくる。
巻きこみ、絡め、ねぶってくる動きは、別の生き物のようでさえあった。
劣勢を感じた龍麻は、もう片方の足も持ち上げ、マリアの身体を磔にしてしまった。
「あッ、うぅッ……」
更に屹立が沈みこんでくる。
自重を支えることも叶わず、ただ龍麻にしがみつき、
貫くペニスの勢いを和らげるのがせめてもの彼女にできることだった。
しかしそんな努力も、ただ一度突き上げられただけであえなく潰えてしまい、
腹の中を満たす感触に心を捧げてしまう。
「あぁッ、い、い……ッ、龍麻、もっと……ッ」
生徒を名で呼んだことにも気づかず、胎を犯す愛しい屹立を受け入れることに全神経を注いだ。
身体が、子宮が揺らされ、快感が高みへと駆け上っていく。
体を二つに裂かれるような感覚の中、以前味わった、強烈な愉悦が再び訪れた。
龍麻の腕の中で仰け反ったマリアは、息も付けぬほどの陶酔に見舞われる。
「うあぁぁッ……!!」
口元を抑えることも忘れ、身体の悦びをそのまま声に変える。
龍麻でさえ少し危惧を覚えたほどの大きな声は、途切れることなく屋上に響いていた。
「そんなに……気持ちいいんですか?」
「ええ……いいわッ、だから、龍麻、もっと……ッ」
勢い良く揺らされるマリアの足先からハイヒールが脱げ落ちる。
解放された指先を折り曲げ、マリアは全身で快楽を享受していた。
「先生……そろそろ、俺」
「いいわ、ワタシも……もう……ッ」
龍麻が限界を告げると、マリアも腕に力を込めて応える。
腰を包む甘い痺れを抑えきれなくなった時、龍麻は思いきり彼女の中に屹立を撃ちこんだ。
「あァッ……! はぁぁァ……ッ!!
ペニスが膨れ上がり、膣を満たす。
その感覚にマリアが酔いしれた瞬間、熱い体液が身体の奥に向かって吐き出された。
子宮に直接注がれたような錯覚すら抱くおびただしい量の精液が、幾度かに分けて注ぎ込まれる。
その度に拡げられる隘路は悦びにさざめき、歓喜の涙が結合部から流れた。
マリアは教え子に抱えられ、気の遠くなるようなエクスタシーを迎えたのだった。
波のように起こる絶頂の余韻に小刻みに身体を震わせ、
朦朧としているマリアの脳裏に龍麻の声が入ってくる。
「マリア先生……今日、先生の家に行ってもいいですか? 明日休みだし」
悪魔の囁きを断る術は、彼に抱えられたままのマリアにはなかった。
奥まで貫いている猛りが、ただひたすらに愛しかった。
龍麻は訊ねておきながら、答えを待たず葵に話しかける。
「葵も来るだろ?」
葵はまだぐったりとしていたが、緩んだ顔を上げてぼんやりと頷いた。
マリアを降ろし、葵を立ちあがらせてやりながら、
二人を見た龍麻は、尽きることのない欲望が早くも下腹に集まっていくのを感じていた。
この頃は「視点がころころ変わるのがエロ小説の醍醐味だ」的なことを考えていましたが、
さすがにちょっと読みにくいですね今読み返すと。