屈服させる手段としての媚薬登場です。
正直好きではないのですが、でもどうしても繋げられなくって。
玄関を開け、マリアの家の中に足を踏み入れた瞬間に、絵莉は小さな違和感を覚えていた。
正確には違和感、とも言えないくらいの引っかかり。
出迎えてくれたマリアにも、その隣にいる龍麻にもおかしな所は全くない。
にも関わらず、確かに何かが違っていた。
靴を脱ぎかけて止まった絵莉に、年来の友人であるマリアが不思議そうに訊ねる。
「どうしたの?」
「いえ……なんでもないわ」
絵莉は自らをたしなめるように五歳違いの友人に首を振って答え、家に上がった。
ジャーナリストと言う職業は、自分の五感、それに第六感を何よりも信じなければならない。
独立独歩で行くと決めた時から、それはもう骨の髄まで染み込ませたはずなのに、
この時の絵莉は遂に自分を信じきることができなかった。
食事が並べられたテーブルに座った絵莉は、龍麻と談笑を始める。
高校生にしては大人びた、人好きのする笑顔を持つこの少年が、絵莉は嫌いではなかった。
もちろん男女としての好悪ではないが、男に対するものとしてはその次に上位のものだ。
だからある事件を機に知り合った彼がマリアの教え子であり、
自分と龍麻が知己であることをも知ったマリアに招待された時、絵莉に断る理由はなかった。
「でも驚いたわ、あなたとマリアが知り合いだったなんて」
「こっちこそですよ。どこでお知り合いになられたんです?」
「ルーマニアよ」
まだ絵莉がルポライターの卵未満の状態だった頃。
見聞を広める為にヨーロッパ全土をあてもなく旅行していた彼女は、
かの国のトランシルバニア地方を訪れていた際、柄の悪い連中に絡まれたことがあったのだ。
お互いの言葉が通じないのを良いことに無法を働こうとする男たちに、
あわやという所まで追い詰められた彼女を救ってくれたのがマリアだった。
不思議な体術を使って男たちをあっという間に倒してしまった彼女に、
感謝と、好奇心を満足させる為に食事に誘い、一夜明けてみれば、
同じワインの壜から呑み交わす関係になっていたという訳だった。
「それがマリアったらね、私に付き合ってヨーロッパを回ってくれたのはいいんだけど、
どこ行ってもワインとチーズは手放さないのよ」
「あら、ヨーロッパの旅行スタイルはそうなのよ。知らないの?」
「それにしたって昼間っからアルコールを呑むなんて」
「アナタだって呑んでたじゃない」
マリアと龍麻は名ホストと呼ぶにふさわしく、軽やかな会話がいくつも泡となって弾ける。
自然と喉を潤す回数も増え、幾度目のことか、
深紫の聖水を喉に注ぎ入れた絵莉は、顎を上向けたままごくわずかに眉をひそめた。
もちろんマリアが認めた味に対しての不満ではない。
玄関に一歩入った時から感じていた気配が、脳を揺らした拍子に再びよぎったからだ。
二人に気取られないようグラスを戻し、食物に手を伸ばしつつその正体を探る。
しかし酒精を迎え入れてしまったからか、
インタビュー相手の小さな挙動をも見逃さない五感は、
膜のようなものがかかってどうにも役に立たなかった。
何かがおかしい、とグラスを戻す。
なんでもない動作のはずが、テーブルに置いたグラスはひどく大きな音を立てた。
「あ……ご、ごめんなさい」
揃って顔を向ける二人に笑顔で詫び、取り繕うように足を組む。
その拍子に、下腹が疼いた。
「……!」
信じられない思いで足を戻すと、下着は不快に湿っていた。
絵莉は混乱する頭で考える。
こんな状態になるまで何故気づかなかったのか。
いや、その前に、どうして酒を呑み、食事をしているだけで性的な興奮を抱いてしまっているのか。
絵莉はライターらしく己に訪れた変化を分析しようとしたが、
思考からは最低限の冷静ささえ失われようとしていた。
身じろぎしたことでたゆたっていた感覚が一気に目を覚まし、皮膚が火照り始める。
鼻ではなく、口で行う呼吸が心地良く、
腹に冷たい空気を流し入れると身震いするほど気持ち良くなってしまう。
そして脳に送りこまれる酸素はいっとき頭を冷やしてくれても、
すぐに新たな熱が身体の奥底から心を包み、理性を燃やすのだ。
控えめな色の口紅を塗った唇を開き、絵莉は呼吸を繰り返す。
その瞳からは少しずつではあるが確実に輝きが失せ、べっとりとした色彩に染まっていった。
不意に龍麻が立ちあがる。
それは不意になどではなく、音一つ立てない、優雅なほどの動作だったのだが、
身体を内から支配する熱に苛まれる絵莉にはそう映ったのだ。
穏やかな、好意的であるはずの彼の笑みに何故か恐怖を感じ、絵莉は逃げだそうとする。
しかし、椅子という支えを失った身体はまるで意思が篭もらず、
頼りなく床にへたりこんでしまった。
「大丈夫ですか」
なおも後ずさりしようとする絵莉の許に膝をついた龍麻が、首筋を撫でる。
仕掛けられた罠に完全に陥った彼女は、それだけで哀れなほど反応した。
「んぅッ!」
雷を浴びたように絵莉の身体が跳ねる。
求めていない感覚を無理やりに呼び覚まされた絵莉は龍麻を見るが、
口は開くだけで言葉が出てこなかった。
寝室に連れてこられた絵莉は、ベッドに寝かされるのではなく、椅子に座らされた。
何故、と濁った頭で考える前に、驚くべきものが瞳に映る。
上半身を赤い縄で縛られた、長い髪の少女がベッドの上にいた。
下着こそ身に着けているものの、縄と対比を為すような黒絹の下着は極めて扇情的な、
大事な部分を隠すという本来の役目ではなく、そこを際立たせる為にあるようなデザインだ。
そして、それが覆う豊かな乳房は、麓から幾重にも縄を張り巡らされ、
元から大きな膨らみが更にくびり出されることで一層強調され、危ういまでの美を醸し出していた。
少女は部屋に入ってきた自分達に気づくと、下半身でバランスを取って必死に身体を起こす。
見るからに辛そうだったが、白く、丁寧に配置された眉目からは苦悶の趣は窺えなかった。
それどころかわずかに頬が緩み、この異常な状況を悦んでいるようにさえ見える。
彼女にとっても知り合いである少女の変貌した姿を見て、絵莉は掠れた声を出すのがやっとだった。
「葵……ちゃん……」
括られ、高校生離れした肢体を晒されているのは、龍麻の同級生である、美里葵という名の少女だった。
彼女も常識では理解できない『力』を持ち、龍麻と共に東京を護る闘いに身を投じている。
絵莉も何度も彼女と話したことがあるが、年齢以上の落ちついた物腰と、非の打ち所のない容姿に、
十歳近くも年の離れた彼女に対してわずかながら劣等感さえ抱いたのを覚えている。
その彼女が仮面の下にこのような本性を秘めていたとは、絵莉は衝撃を隠しきれなかった。
「今日は絵莉さんが来るから帰れって言ったんですけどね、どうしても帰りたくないって言うから」
まるで葵が縛られ、卑猥な姿をさせられた原因が彼女自身にあるかのように言う龍麻に眩暈がする。
この常軌を逸した場から逃げ出したいと願う絵莉だったが、身体は麻痺し、全く力が入らない。
「緋勇……くん……」
それが何故なのか、
と考える力も徐々に弱くなっていく絵莉の鼓膜に届く葵の声は既に蕩けきっており、
理性の欠片も感じられない。
凝った刺繍が随所に施された、妖艶な下着を身に着けたまま縛られている彼女は、
芋虫のように這いずりながら龍麻の許へと近寄っていく。
自立した女性、と肩肘を張っている訳ではないが、
フリーのルポライターという道を歩めばどうしても多少はそうならざるを得ない絵莉は、
ためらいなく全てを男に差し出している葵の姿に、吐き気がするほどの嫌悪を催していた。
胸のむかつきを堪える絵莉の鼻腔に、微かな臭いが漂う。
それは彼女達の臭いでも、龍麻の臭いでもなく、なにかもっと、
濃いもやのようにまとわりつく、危険な香りだった。
「この臭い……」
「香ですよ」
もはや逃れる術がないのを知っているのだろう、絵莉が訊ねると龍麻はあっさりと種を明かした。
ベッドの端に絵莉と向かい合って腰を下ろし、愉しそうに彼女の膝を撫でる。
葵と違って拘束されているわけではないのに、軽く触れる指先が絵莉を動けなくしていた。
「聞いたことはあるんじゃないですか?
リラックス効果があったりする臭いって、雑誌とかでも取り上げられてますよね」
もちろん絵莉はその存在を知っていた。
存在、というほど大げさなものではなく、
香りと人間の精神についての研究は遥かな昔から広く行われており、
日本ではたまたま最近話題になっただけに過ぎない。
「映画とかじゃないんですから、嗅いだら誰でも淫乱になるとかそんな効果はないですよ。
せいぜい少し肌が火照って気分が良くなる、その程度です」
龍麻の手は太腿の半分も進まず、膝の近辺を行ったり来たりしているだけだ。
それがもどかしく、また、感覚を求めてしまいそうになり、絵莉は強引に意識を戻した。
「でも彼女は」
「葵はね、好きなんですよ。セックスが」
「なッ──」
「正確にはセックスそのものじゃないみたいですけど。
雰囲気とかそういうのに酔うのが好きみたいです。な、葵」
葵は答えず、ベッドに腰掛けた龍麻に肌を擦りつけ、快楽を享受しようとしている。
彼女に一顧だにくれないまま龍麻は己のズボンに手をかけた。
「ふッ……うんっ……」
それだけで葵は餌を求める犬のように龍麻の下半身に顔を埋め、下着の上から屹立を舐める。
龍麻はそれを止めず、彼女に奉仕させながら、ただ絵莉の膝の辺りを擦るだけだ。
その余裕に満ちた態度が、絵莉を息苦しくさせる。
それは龍麻の次の囁きで一層増した。
「あと……絵莉さんも。でしょう?」
「な──」
「さっきも言いましたけど、この香ね、そんなに効くはずないんですよ。
僕とマリア先生はちょっと理由ありですけど、少なくとも今の絵莉さんみたいになっちゃうことはないんです」
「何が……言いたいの」
絵莉の問いに龍麻は答えず、まだ口淫を続けていた葵を抱き起こすとベッドに軽く突き飛ばした。
乱暴に見える行為もベッドが柔らかい為か葵を怯えさせることはなく、
更に上着を脱いだ龍麻が彼女に覆い被さることで、甘い、期待に満ちた吐息を紡がせた。
「は……ん……」
耳を塞ぎたくなるような嬌声に、別の声が被さる。
それは縛られた葵を見た時よりも強い衝撃を絵莉にもたらすものだった。
「フフ……ワタシも忘れてはダメよ、龍麻」
「マ……リア……」
葵よりも更に妖艶な、濃紫のランジェリー姿のマリアが、ベッドに乗り、龍麻にしなだれかかっていた。
年上で、分別もあるはずの友人が晒す痴態に、絵莉の喉がひりつく。
女性二人に挟まれる格好になった龍麻はすぐに残りの衣服も脱がされ、彼一人が全裸になった。
身体を絡め、随所にキスを落としながら誘惑する二人に身を委ねる龍麻は、
恥ずかしげもなく性器を絵莉に見せつける。
逞しい筋肉に備わる雄大な牡は、否応無しに牝を惹きつけた。
まだ完全に勃起していないながらも、その兆候を見せ始めている屹立から、絵莉は視線を離せない。
理性でどう否定しても、あれを胎に迎えたい、全身を刺し貫かれたいという欲望が
臍の裏から染み出すのを止めることができないのだ。
香の催淫効果が自分をおかしくしているのだと唱えても、
それがどうしたのだ、といわんばかりの疼きに心を嬲られると、
覆すべき理性はみるみる弱くなっていった。
代わりに、奔放に牡を求める二人を羨ましいと思う感情が裡に芽生える。
一秒ごとに着実に高まっていく己の劣情を、絵莉は懸命に抑えた。
膝を閉じ頑なに情欲を拒む絵莉に、愛撫する手を止めた龍麻は、軽やかな笑みを湛えて彼女から離れた。
「しばらくそこで見ててください」
性的な興奮をしているとはとても思えない爽やかな表情と、その下腹に息づく屹立に、
絵莉は返事をすることも忘れてただ魅入っていた。
全裸になった龍麻がベッドに横たわると、待ちかねたように二人がその横に傅いた。
マリアが上半身を、縛めを解かれた葵が下半身を受け持ち、
己の肢体を存分に活用して牡を悦ばせようとする。
二人の物腰に迷いはなく、どちらが龍麻の寵愛を受けられるか競っているようにさえ絵莉には見えた。
マリアは首筋から鎖骨の辺りにかけてを、まるで吸血鬼のように口を吸いつかせ、
甘噛みしながら刺激していく。
「んっ……ふぅッ……」
鼻にかかった声を隠そうともせず唇をめくりあげさせて、
引かれた口紅に劣らないくらい鮮やかな舌を卑猥に這わせていた。
龍麻が尻に手をかけると、焦らすように腰を振り、淫靡に戯れる。
その仕種には余裕があり、龍麻と対等、あるいは手玉に取っているようにすら見えた。
一方の葵は一心不乱に屹立を口に含み、ただ彼に快楽を与えることのみを目指しているようだ。
「ふっ……んふぅっっ……うふんっ……」
それだけに彼女は己の全てを用いて奉仕しているらしく、
頬はいやらしくへこみ、唾液が卑猥な水音を立てている。
龍麻が髪を撫でると一度は止むものの、すぐに、
より大きな音を立てて屹立を喉の奥に含んでいくのだった。
絵莉にとっては初めて見ることとなるフェラチオを、葵は巧みにこなしている。
まだ二十歳にも満たない、それも優等生の彼女が行う姿はひどく扇情的で、
目の前で見る男女の交わりを、絵莉は乾ききった唇を舐めまわして鑑賞していた。
やがて胸板にキスを浴びせていたマリアも葵に合流し、二人で屹立を刺激し始める。
頬張っていた葵が口から屹立を抜くと、濡れ光ったそれにマリアが愛しげに口づける。
葵もまだ飽き足らないのか、反対側から同じように舐めあげ、
時に舌どうしを絡めてしゃぶっていた。
粘質の塊が軟体動物のように蠢き、間にある肉の柱に唾液を塗りたくる。
二人のあさましい姿はしかし、絵莉の心に銛のように撃ちこまれ、確実に理性を抉ってきた。
そのような行為に嫌悪すら抱いていたのが、気づけば口の中に唾が溜まっている始末だ。
幸いにして龍麻達は自分達の快楽に夢中で自分には気がついていないようで、
絵莉は口元を拭い、唇の端に滲んだ唾液をそっと拭った。
手の甲に付着した透明な液体を、塗り広げたいと思ってしまう。
汚いはずである唾を、思う存分になすりつけたいという淫らな欲に取り憑かれてしまう。
そしてそう考えると、新たな恥蜜が下着を濡らすのを、絵莉はもう堪えることが出来なかった。
凝視しているのを知ってか否か、龍麻は不敵な笑みを浮かべ、二人を屹立から引き離す。
すっかり硬くなり、不規則に脈打つ屹立に酔った眼差しを向けたマリアと葵は、
褒美をねだるように身体を起こし、龍麻に顔を近づけた。
物欲しそうに口を開ける二人それぞれと深いキスを交わした龍麻は、
まずマリアの方から味わうことにしたらしく、彼女の背後に回る。
「あッ……お……っ」
黒々とした隆起が白い身体の中に収まると、マリアが感極まったように吼えた。
腰だけを高く持ち上げて突っ伏し、身を強張らせる彼女の姿が、絵莉の網膜に焼きつく。
絵莉の知る限りでは近くに男の影はなく、自然にそうなのだと思っていた彼女が、
こうも性に溺れ、快楽に耽る姿は、葵の痴態以上に絵莉を慄かせていた。
そしてそれを見ていると、とめどなく蜜をあふれさせてしまう自分の身体にも、
絵莉は恐怖すら覚えるのだった。
膝立ちの龍麻がゆっくりと腰を動かし始める。
それは滑稽であり、卑猥であり、絵莉を惹きつけずにはおかない光景だった。
「うッ……ン……」
龍麻の動きに合わせ、糸を引くような喘ぎがマリアの口から零れる。
龍麻が肉づきの良い背中を撫でると、心地良さそうに身を震わせ、尻を振った。
もう幾度とない交わりで心得ている龍麻はすぐに抽送の速度を速める。
「はッ……あッ、うんッ」
屹立が根元まで浸かる極上の感触と共に彼女の尻肉が揺れる様に更なる興奮を誘われて、
マリアの上体を引き起こし、豊満な胸を掴む。
握り潰され、醜く形を変える左の乳房と、
後ろから突かれる度に重たげに揺れる右の乳房が、絵莉の視覚を奪った。
「うんッ……ああっ、龍麻……いい……わ……ッ」
背中を反らせ、はしたなくも快感を口にする友人の姿に、鼓動が踊る。
女としてほぼ理想のプロポーションを有するマリアが、柔肉を震わせて悶える光景は、
絵莉の脳に直接淫欲となって訴えかけてきた。
ほとんど無意識に手が動く。
熱く潤っている源に触れそうになって、慌ててスカートの端を掴んだ。
それは龍麻に見られる羞恥よりも、歯止めが効かなくなりそうな恐怖に根ざすものだったが、
二人の交わりはいよいよ狂熱の度合いを高め、絵莉をも巻きこもうと弄ってくるのだ。
容赦無く腰を振りたてる龍麻に、マリアはすぐに追い詰められたようだった。
バランスを崩しそうになりながらも、一段と背を反らせ、その一方で尻を突き出し、
より深く屹立を咥えこもうとしている。
「う……あ……ッ、あんッ」
彼女が好んで着けている深い赤の口紅は妖しく濡れ光り、
一時たりとも留まることなく形を変え続け、蟲惑的な音階を奏でていた。
そしてその下方にある、大きく開かれ、ペニスを深く咥えこんでいる淫唇からは、
泡立った蜜がかき混ぜられ、捏ねられる音が。
力強い抽送に堪えきれなくなったマリアがくずおれる。
龍麻はその上からのしかかるようにして屹立を撃ちこみ、とどめの一撃を放った。
「あぁッ、龍麻……ッ、駄……目っ、あぁァッ……!!」
腹の奥まで貫くように激しく突きこむと、深奥がびくびくと震える。
それはすぐに屹立全体を包みこむ蠕動となり、
龍麻は精を放ってしまわないよう堪えながら脊髄を走る快感を味わった。
媚肉の痙攣が薄れていくと共に、マリアの身体も弛緩していく。
ずるりと抜けた屹立がまだ力を失っていないことに満足気な笑みを浮かべ、
龍麻は一旦ベッドの上にあぐらを掻いた。
すると一息つく暇もなく、
お預けを食らっていた葵が全身から欲情した牝の匂いを放ちながら擦りよってくる。
「緋勇くん……」
「ちょっと待てって」
それを無情にも突き放した龍麻は、ベッドから下り、絵莉を抱えあげた。
抵抗しない彼女を、絶頂の余韻に浸るマリアの横に寝かせる。
鮮やかな手つきで服を脱がせ、下着姿にさせた龍麻は、しかしまだ彼女に襲いかかろうとはしなかった。
「葵、絵莉さんの上に跨がれよ」
命令に葵は頬を染めはしたものの、唯々として従う。
濃縮された牝の匂いを全身から放ちながら、絵莉の上に四つんばいで跨った。
「葵……ちゃん……」
汗を薄く額に貼りつかせた葵の、絵莉は名を呼ぶ。
長い黒髪を火照った皮膚にまとわりつかせて呼びかけに応えた葵の表情は、
ただ女として後ろから貫かれるのを待ち焦がれる、蕩けきったものだった。
熱い吐息を吐き出し、小さくではあるが腰さえ振って龍麻を誘う。
下から見上げる絵莉にも気づいていないかのように振る舞っていた葵の表情が一変したのは、
絵莉が息を吸った瞬間だった。
「あぁ……っ」
か細い叫びが頭上から聞こえる。
彼女の身体から発散される熱が激しさを増し、絵莉はたまらず喘いだ。
その眼前で、葵の顔が上下に揺れる。
苦しそうに眉根を寄せる表情には朱が差し、決して苦痛によるものではないと絵莉に伝えていた。
女だけが感じることの出来る悦び。
マリアに続いて至近でその、甘く歪んだ顔を見せられて、絵莉はほとんど屈してしまっていた。
後ろから突かれ、勢いを受け止めきれなくなった葵がバランスを崩し、絵莉の上にのしかかってくる。
「あっ、うぁっ、は、ぁ……い、い……ひゆ……く、ん……」
龍麻は全く動きを緩めることはなく、絵莉の耳元にねっとりとした喘ぎが溜まりを作る。
更に彼女の肌が帯びている熱と、振動までもが伝わってきて、
絵莉は自分が犯されているような錯覚に陥っていた。
彼女の、自分よりは当然、マリアと較べても遜色ない乳房が胸にのしかかってくる。
柔らかな重みは下着越しにさえその先端が硬くしこっていることを伝え、
自分のそれも既にそうなっていると教えてきた。
「やっ、んぅっ、はっ、んあっ」
小刻みな嗚咽が鼓膜を叩き、飛び散る涎が耳朶を濡らす。
そして下腹では淫蜜が秘所に慈雨となって降り注ぎ、叢を肌になでつけた。
身動きもままならない状況下で、絵莉は葵の腰に手を添える。
そこには龍麻の手があり、触れたことで気づいた龍麻がもっと深く腕を回すよう促してきた。
同時に伝わる二人の温もりに、絵莉は理性を包んでいた最後の芯が溶かされていくのを感じていた。
「んっ、緋勇、く、ん……っ、あっ、うぅ……っ」
葵の声が高く、大きくなる。
それはすぐに腰の辺りから響いていた水音をかき消すほどの声量になり、
彼女が果てようとしているのだと絵莉は判った。
強くなる彼女の匂いを深く吸いこみながら、その時を待ち構える。
「っは、あ……ひ、ゆう……く……イ、く……っ……」
背中が震え、彼女の身体に溜まっていた熱が弾ける。
絵莉がそう感じた瞬間、葵は二度、大きく跳ねた。
「ひっ、あ……ああっ……!!」
小さな痙攣を幾度か繰り返しながら、葵の身体が弛緩する。
その震えが伝わってきただけで、絵莉は自分も達したような気になっていた。
二人を続けて果てさせた龍麻はまだ余裕を見せている。
そして絵莉は、例え性的な快楽を愉しむことに抵抗があったとしても、
これだけ焦らされて耐えられる訳がなかった。
「緋勇……君……わた……し……」
内側から噴き出す欲求は、身体を食いつくさんばかりに蝕んでいる。
しかしそれを口にすることはできず、唇をわななかせるだけの絵莉に、
龍麻は心得たように跨ってきた。
絵莉の眼前に、白く濁った薄膜に包まれた屹立が突きだされる。
卑猥に震える赤黒い異物から醸し出されている、頭がおかしくなりそうな臭い。
「さっき……ずっと見てましたよね。二人がフェラチオしてる時」
龍麻は気づいていたのだ。
マリアと葵が一心にしゃぶっていた時、まばたきもせずに見ていたことを。
「……ぁ……」
屹立が近づいてくる。
強くなる臭い。そして、欲望。
「絵莉さん……臭いに弱いんですよね。それと、少し潔癖症なのかな。
だから、心の奥底では汚されることに興味があるみたいですね」
龍麻の言っていることは、多分本当なのだろう。
舌を唾液で湿らせた絵莉は、そう思って口を開けた。
「うッ、むッ……!」
屹立はあくまでもゆっくりと入ってきたが、それ自体の大きさと、
鼻の奥を突く臭いに気が遠くなりそうだった。
咳きこむのだけは堪えて、圧迫感に耐えていると、熱い器官が舌に触れる。
気持ち悪い。
それが、気持ち良い。
初めて含む男性の器官への抵抗が薄れると、絵莉は恐る恐る舌を伸ばした。
苦く、硬く、柔らかく、熱く、冷たい。
いくつもの情報が舌を通して一度に流れこんでくる。
「……っ、もう少し、優しくお願いします」
龍麻が苦しそうに告げる。
少年の言う通り速度を緩めて舐め上げると、口の中のものが気持ち良さそうに震えた。
「んッ……んふっ……」
形に沿い、舌を蠢かせる。
先端だけで探っていたのも次第に腹の方を使って巻きつかせるようにして、絵莉は夢中で頬張った。
鼻で息を吸うと流れこんでくる異臭が惹きつけて離さなかった。
これまで自分が特に臭いに敏感だと思ったことはなく、
嗅がされた香のせいで感覚がおかしくなってしまっているだけなのかも知れなかったが、
今の絵莉にはどうでも良いことだった。
それ自体と、二人分の愛液を吸って得も言われぬ香りを纏う屹立を味わいたい。
口腔いっぱいに含み、舌を絡めたい。
絵莉が上目でそれを伝えると、すぐに屹立が奥に入ってきた。
「うむぅッ、うう……」
顎が押し広げられ、舌の逃げ場がなくなる。
しかし、それは待ち望んだ感覚だった。
口を開いて空間を作り、懸命に舌を這わせる。
「うっ、そう……上手です、絵莉さん」
龍麻が褒める都度、その部分を再び舐める。
それだけでなく、より奥に塊を導きいれようと吸い上げると、龍麻の呻き声が聞こえた。
「そ、れ……凄い……です」
今度は吸い上げつつ円を描くように舌を動かしてみる。
それは絵莉にフェラチオのやり方を教えようとしていた龍麻でさえ予想していなかった責めで、
思わず前のめりになってしまうほどの悦楽だった。
「んッ……むぐっ」
深く突きこまれた絵莉は当然咽んだものの、屹立を吐き出そうとはしない。
その彼女の態度に、龍麻の欲望は急速に凝縮していった。
「このまま……出しちゃってもいいですか」
絵莉が答えられないことを知って龍麻はそう訊ねる。
まだ葵やマリアのように己を曝け出すことに抵抗があるらしい絵莉は、
彼女が望んでいることであっても、容易に頷いたりはしない。
ならば、答えられないのだから仕方がない、本当は嫌なのだという逃げ道を与えてやればいいのだ。
今もぎこちないながらも夢中で舌を巻きつかせてくる絵莉は、
本当は精液を口の中に出されたい、穢らわしいものに汚されたい、という欲望があるのは間違いない。
だから龍麻は、絵莉が嫌がるように首を振ろうとした瞬間に精を放った。
「……ッ!!」
マリアと葵には放たなかった濃い精液は、龍麻が意図した通り、口腔だけでなく顔中を汚した。
マリアや葵とはまた違う理知的な美貌が己の欲望に染まる様は、龍麻をこの上なく満足させる。
絵莉は衝撃が大きすぎるのか、視線もうつろにさ迷わせるだけだ。
その顔を、悪臭に惹きつけられるように寄ってきたマリアと葵が舐める。
白濁を拭きとろうとすれば必然的に顔全体を舐めることになり、
彼女の顔はたちまちべとべとになっていった。
生臭い臭いに新たな異臭も混じり、絵莉の嗅覚はほとんど麻痺している。
しかし、それらの臭いに嫌悪を抱くことはもはやなかった。
丁寧に粘液を掬い取ったマリアが、その残滓を舌に乗せ、絵莉の唇に運ぶ。
「ん……」
そのまま舌を弄んでも、絵莉はされるがままになっていた。
妙齢の女性二人が舌を交え、更に葵もそれに加わり、
付着した白濁を舐め掬っている倒錯の光景は、龍麻を興奮させずにはおかない。
たった今精を放ったばかりだというのに、屹立は萎える気配もなく新たな快感を求め脈打っている。
一気に絵莉の下着を脱がせ、すらりと伸びた足を開かせた龍麻は、暴れる己を掴むと、彼女の膣へと収めていった。
「うっ……ンっ……」
絵莉の膣は、葵よりも遥かにきつく、処女のようであった。
奥まで屹立を沈めるのにさえ一苦労しながら、龍麻はその狭隘さに歯を食いしばらねばならない。
彼女の過去の男性遍歴など興味はなかったが、
これが彼女にとって久方ぶりのセックスとなるのは間違いなく、
ならば可能な限り快楽を享受させてやらねばならないと思った。
「はっ……あ……」
香と目の前で繰り広げられた性の宴が効を奏しているのか、
絵莉は痛くはないようだったが、男根を挿入されて気持ちよい訳でもないらしく、
その中間の表情をたゆたわせている。
痛がらせないように気をつけながら、龍麻は少しずつ動き始めた。
しっとりと吸いつくような具合ではなく、ただ狭いだけが男にとっての快楽となる絵莉の媚肉の路だったが、
龍麻は年上の女性を犯しているという興奮に満たされ、深く酔いしれていた。
身体を前傾させ、絵莉の顔を覗きこむ。
マリアと葵によって唾液を顔中に塗りたくられた顔は化粧も落ち、
見るも汚れていたが、代わって悦びに目覚めた女の顔が浮かび上がりつつあった。
「ひっ……緋勇……君……」
力なく名を呼ぶ声も、マリアに散々に舌をねぶられた後ではろれつが回っておらず、
普段の知性を感じさせるものではない。
その証拠に、龍麻が軽く突き上げてやると、一瞬ではあるが快楽に顔を歪ませるのだ。
彼女の態度はもはや拒んでいるのではなく、単にどう感じて良いのか判らないだけなのだと悟った龍麻は絵莉の片足を持ち上げ、肩に乗せた。
「いやッ、こ、んな……格好……」
自分の足を見せられ、男のものを受け入れ、繋がっている自分の姿を想像させられる。
そしてそれまでよりも深くに攻め入ってくる屹立に、快感を植えつけられる。
絵莉には膣そのものの快感よりも、その他の部分から責めた方が良いのではという龍麻の考え通り、
体位を変えると絵莉は目覚ましい反応を見せた。
屹立を咥えこんでいる隘路が一段と狭くなり、ひくりと締まる。
ふくらはぎにキスしてやることで、その締めつけは更に強烈なものになった。
「ふッ、うンッ……やめ、て……いや……よ……」
絵莉が嫌がっていないのは明白で、
もしかしたら自分を昂ぶらせるためにわざと言っているのではとすら龍麻は思ってしまう。
それほど絵莉の肉壷は潤いを増し、突きこまれる屹立を温かくもてなすようになっていた。
刻々と高まりつつある射精感に、龍麻は絵莉のもう片方の足も抱え上げる。
しっかりと抱きかかえた足を支えにして、深く、大きく、渾身の力で腰を打ちつけた。
「あッ、駄目……ッ、こん、な……ッ、あ、あ……ッッ!」
押しこまれる快楽の波に耐えかねた絵莉の身体が痙攣を始める。
彼女が達したのを感じ取った龍麻は、遠慮なく堪えていた欲望を彼女の中に放った。
たまらない解放感と共に、己の液体が彼女の体内に注がれていくのが判る。
絵莉の両足を離さず、射精の余韻にまでじっくり浸ってから、
龍麻はようやく彼女を解放したのだった。
射精したのは二度とはいえ、三人の女性を満足させた龍麻はさすがに疲れ、ベッドに寝転がる。
軽く目を閉じ、牡の征服感に浸ろうとすると、下腹に熱いものを感じた。
「絵莉……さん……」
頭を持ち上げて見ると、たった今達したばかりの絵莉が力を失っている屹立に舌を這わせていた。
快感どころか鈍い痛みさえ覚えて、龍麻は慌てて制する。
しかし、絵莉は淫靡な笑みを浮かべただけで離れようとはしなかった。
「ふふッ……この臭い、もう病みつきになっちゃったみたい」
後は会話も惜しいとばかりに異臭漂う屹立にためらいなく顔を近づけ、口に含む。
「この歳で目覚めさせられちゃったんだもの、覚悟しておきなさい」
為す術なくうろたえる龍麻の耳元で、マリアが囁く。
その口調はどこか突き放すようであり、龍麻は三人の女性を篭絡したという優越感も忘れて彼女を見た。
「それにワタシも……美里サンも、多分もうアナタから離れないわよ」
髪をかきあげたマリアは龍麻の頬に手を添え、自分の方を向かせる。
彼女の告げた事実の恐ろしさに龍麻が気づいたのは、魔性の唇に思考を塞がれた後だった。
転載にあたって「無く」とか「気付く」とかを開いたり、いくつか気になったところを修正していますが、
この辺りの作品はまあまあの部分を書き直したくなりますですハイ。