※この作品はR-18です。

ヤッて改造! 〜悪の組織の黒幕です〜   作:ろくさん

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9話

 静寂が、埃っぽい土蔵を支配していた。 中央の魔法陣の上では、黒野改蔵(くろの かいぞう)が、まるで燃え尽きた灰のように、大の字になって天井を虚ろに見つめている。 その絶倫をもってしても、初めて感じる、完全な『枯渇』。 傍らでは、サポート担当の小悪魔マナが、魔導書を抱えたまま、絶望に打ちひしがれていた。

 

「……うそ、です」

 

 マナの声は、震えていた。

 

「あれだけ、あれだけ完璧な『儀式』を、あらゆる『角度』から試したのに……」 「……」 「怪人にならない、なんて……! スキャナーの『エラー』は、ポテンシャルが高すぎるんじゃなくて、『ゼロ』だったってこと……!?」 「……」

 

 改蔵は、返事をする気力もなかった。 何時間、ぶっ通しでセックス(儀式)をし続けたか、もう覚えていない。 だというのに、目の前の『素材』は。

 

「あの……神主様? マナちゃん?」

 

 五十嵐イスズ(いがらし いすず)は、裸のまま、不思議そうに小首を傾げていた。 あれだけ改蔵の魔力を浴び続けたというのに、彼女の身体は、疲労困憊どころか、むしろ血色が良くなり、透き通るような白い肌は、内側から発光するようにツヤツヤと輝いている。 その豊かな胸も、心なしか、さっきよりハリが増しているようだった。

 

「儀式、これで、終わりですか?」

 

 イスズは、純真な瞳で、二人の顔を交互に見た。

 

「なんだか、私、とっても身体が軽いです! これが『神様の力』なんですね! 世界、平和になりましたか?」 「「……」」

 

 改蔵とマナは、顔を見合わせた。 この、どうしようもないほどの『純粋(バカ)』。 この、悪意が一切通じない『天然(おひとよし)』。 マナは、頭を抱えてうずくまった。

 

「な、なんてこと……! 組織への、報告……! 期待の『傑作』どころか、『不良債権』を、いえ、『浄化装置』を連れてきてしまった……!」 「おい」

 

 改蔵が、かすれた声を出した。

 

「……どうすんだよ、こいつ」 「ど、どうするって言われましても……!」

 

 マナが、涙目で見上げる。

 

「怪人にならない以上、組織には納品できません! かと言って、このまま解放しても……!」 「ああ。アジトの場所も、俺たちの顔も、全部見られてる」

 

 改蔵が、ゆっくりと身を起こした。 その目は、いつものスケベな光ではなく、純粋な疲労と、面倒くささで濁っている。 組織のルールに従うなら、口封じのために『処分』するのが手っ取り早い。 だが。 改蔵は、目の前で、ぽかん、と座っている、豊かな裸体を見た。 (……こいつを、殺す?) (……もったいねえ) 思考が、一瞬で、いつもの下品な結論にたどり着く。

 

「……なあ、巫女様よ」 「は、はいっ! 神主様!」

 

 イスズが、嬉しそうに返事をした。

 

「世界平和は、まだ、だ」 「ええっ!?」 「ああ。儀式は……成功した」 「ほ、本当ですか!?」 「ただし」

 

 改蔵は、ここで最大の『ハッタリ』をかますことに決めた。

 

「お前の『器』が、俺たちの想像を遥かに超えていた」 「私、の……?」 「そうだ。お前の『陰』の力……その『癒し』のポテンシャルは、あまりにも強すぎた」

 

 改蔵の言葉に、マナが、ハッと顔を上げた。 (そ、その手があった!)

 

「強すぎて、どうなったんですか?」

 

 イスズが、身を乗り出す。 その反動で、豊満な乳房が、ぽよん、と改蔵の目の前で揺れた。 改蔵は、ゴクリと生唾を飲んだ。

 

「お前の力は、怪人なんつー、ちっぽけな『器』には収まらなかった。お前は、怪人になるんじゃなく、俺の『陽』の魔力を、その身で『浄化』しちまったんだ」 「じょうか……」 「ああ。俺の『陽』の気は、強大すぎて、放っておくと、暴走して世界を滅ぼしかねん」

 

 改蔵は、堂々と大嘘をついた。

 

「ええええっ!? そ、そんなに大変な力だったんですか!?」 「そうだ。だが、お前が『受け止め』てくれたおかげで、魔力は『中和』され、世界平和のエネルギーとして、安定した」

 

 マナが、すかさず改蔵の嘘に便乗した。

 

「そ、そうです! さすがです、改蔵様! そして、イスズ様!」 「わ、私……! 世界を、救ったんですか!?」 「ああ。とりあえず、『今日』の世界はな」

 

 イスズの顔が、ぱあっと、太陽のように輝いた。 「や、やりました! 神主様、マナちゃん!」 「「……(チョロい)」」 改蔵とマナの心が、完全に一つになった瞬間だった。

 

「ですが、イスズ様」

 

 マナが、神妙な顔つきで続けた。

 

「問題は、これからです」 「え?」 「神主様の『陽』の気は、無限です。今日、中和しても、明日には、また、世界を滅ぼすほどの魔力が、溜まってしまいます」 「そ、そんな……!」

 

 イスズの顔が、再び不安に曇る。

 

「だから、だ」

 

 改蔵が、イスズの柔らかな肩を、がっしりと掴んだ。

 

「巫女様よ。お前には、この『聖域(アジト)』に、永住してもらう」 「え、永住……ですか?」 「ああ。お前は、この聖域の『専属巫女』だ。毎日、俺の暴走しそうな魔力を、その身で『浄化』し続けるんだ。それが、お前の『使命』であり、『世界平和』への、唯一の道だ」

 

 壮大な、無茶苦茶な理屈だった。 だが、お人好しで天然で、今まさに「世界を救った(と思い込んでいる)」イスズには、それ以外の選択肢はなかった。

 

「……はいっ!」

 

 イスズは、改蔵の手を、両手でぎゅっと握り返した。 その瞳は、使命感に、キラキラと輝いていた。

 

「私、やります! 世界が平和になるまで、ずっと、神主様のおそばで、魔力を『浄化』し続けます!」 「……おう。話が早くて助かる」 「(や、やりました、改蔵様……!)」

 

 マナが、改蔵にだけ見えるように、小さくガッツポーズをした。 こうして、怪人作成は失敗したものの、アジトは、最も『ポテンシャル(意味深)』の高い、専属の『浄化装置(情婦)』を手に入れることに成功した。

 

 ***

 

「……で」

 

 話がまとまり、ひとまず蔵から居間に戻ってきた、三人。 イスズは、改蔵に「儀式用の『正装』だ」と言いくるめられ、なぜか改蔵のブカブカのTシャツを一枚だけ、素肌の上から羽織っていた。 その姿は、非常に、あけすけに、エロかった。

 

「あの、神主様。私、お腹が空いちゃいました」 「あ? ああ、そういや、もう夜か」

 

 改蔵も、さすがに疲労と空腹を感じていた。 台所(土間)を見やるが、あるのはインスタントラーメンの買い置きだけだ。

 

「イスズ様、申し訳ありません。この聖域は、俗世との関わりを断っておりまして、食事は、その……」

 

 マナが、言いよどむ。 その時、イスズは、土間にある小さな冷蔵庫を見つけ、勝手に開けていた。

 

「あ、卵が少しと、ネギがありますね。あと、乾麺も。神主様、マナちゃん、何か温かいもの、作ってもいいですか?」 「え?」

 

 改蔵とマナが、きょとんとする。

 

「私、こう見えても、料理は得意なんです。ちゃちゃっと、簡単な『にゅうめん』、作りますね」

 

 イスズは、そう言うと、Tシャツの裾がめくれるのも構わず、実に手際よく、調理を始めた。 トントントン、とネギを刻む小気味よい音。 出汁のいい匂いが、カビ臭いアジトにふわりと漂い始める。 改蔵とマナは、その光景を、ただ、呆然と眺めていた。 ((……飯だ)) ((……ちゃんとした、人間の飯の匂いだ))

 

 数分後。 ちゃぶ台に、湯気の立つ、温かいにゅうめんが三つ、並べられた。

 

「「……いただきます」」

 

 改蔵とマナは、恐る恐る、麺をすする。

 

「「……!」」

 

 うまい。 インスタントラーメンとは比べ物にならない、優しい出汁の味が、疲れた身体に染み渡っていく。

 

「ど、どうですか?」 「……うまい」 「お、おいしいです、イスズ様……!」

 

 マナが、涙目ですししと麺をすする。

 

「よかったあ!」

 

 イスズが、心の底から嬉しそうに笑った。 その笑顔は、まさに『癒し系』そのものだった。 改蔵は、決意した。 (こいつは、絶対に、手放さねえ)

 

 ***

 

 食後。 三人は縁側でぼんやりと月を眺めていた。 (イスズが淹れた、ちゃんとした緑茶を飲みながら) 平和な時間だった。 だが、その静寂をマナがもじもじと破った。

 

「あ、あの……改蔵様」 「ん?」 「その……お食事、大変おいしかったですし、アジトも綺麗にしていただいて、助かるのですが……」

 

 マナは、改蔵の袖を、くい、と引いた。

 

「わ、私のことも、忘れないでください……」 「……ああ?」 「『神主』様の魔力は、私にとっても、重要な『契約の安定』のための、エネルギー源なんです……! イスズ様だけに『浄化』されてしまっては、私、魔力不足で、消滅してしまいます……!」

 

 マナが、潤んだ瞳で、必死に訴えかける。 その理屈は、半分本気(セックスしたいだけ)で、半分本当(魔力供給は必要)だった。 改蔵は、ニヤリと笑った。

 

「……そうか。そりゃ、大変だ」 「はいっ! 大変なんです!」 「あの、どうかしたんですか? マナちゃん」

 

 イスズが、心配そうに二人の顔を覗き込む。 改蔵は、イスズの柔らかな肩と、マナの小さな肩を、同時に抱き寄せた。

 

「ひゃっ!?」 「えっ!?」

 

「巫女様よ」 「は、はいっ! 神主様!」 「どうやら、『緊急事態』だ。マナの『契約』が、不安定になっている」 「ええっ! マナちゃん、大丈夫!?」 「だ、大丈夫じゃ、ありません……! 早く、改蔵様の『魔力』を、注入しないと……!」

 

 マナが、ここぞとばかりに改蔵の胸にすり寄る。 イスズが、オロオロとし始めた。

 

「わ、私、何をすれば……!」 「ああ。お前にも、手伝ってもらう」 「えっ!?」 「マナの『器』は、小さい。俺の『陽』の気を、一人で受け止めきれん。だから、お前が、俺の背中から、溢れそうになる魔力を『浄化』するんだ」 「せ、背中から、ですか?」 「そうだ。これは、俺と、マナと、お前の、三人でしかできない、高度な『共同儀式』だ。世界平和のために、やるぞ」 「は、はいっ! わかりました! がんばります!」

 

 イスズは、またしても、その無茶苦茶な理屈を、何の疑いもなく信じ込んだ。

 

 ***

 

 万年床が敷かれた、六畳間。 月明かりが、三人の裸体を、ぼんやりと照らしていた。

 

「あ、あ、あああっ! 改蔵様! やっぱり、改蔵様の『魔力』は、最高、ですぅ!」

 

 改蔵の逞しい身体の下で、マナが、水を得た魚のように、小さな身体をくねらせ、喘いでいる。 首席才媛だった頃の理性を、完全に快感で溶かし尽くしている。 そして、その改蔵の、逞しい背中。 そこに、イスズが、言われた通り、ぎゅっと抱きついていた。

 

「わ、わあ……! 神主様の背中、あったかいです……!」 「そうだ! そこから、俺の暴走しそうな魔力を、吸い取るんだ! 浄化しろ!」 「は、はいっ! すううううっ!」

 

 イスズは、言われた通り、改蔵の背中に、自分の豊かな(ボイン)を、ぎゅうう、と押し付けた。 ぽよん、という、凄まじい弾力と、柔らかさ。

 

「お、おお……!?」

 

 改蔵の身体に、背中から、今までに感じたことのない『癒し』の感覚が流れ込んでくる。 前面では、マナの『攻撃的』な快感が。 背面では、イスズの『守備的』な快感が。 『陽』の気が、マナに注がれ、同時に、イスズに吸い取られ、浄化されていく。

 

「(……すげえ。これ、無限にイケるんじゃねえか……?)」

 

 改蔵の絶倫さが、イスズの『浄化』能力によって、さらにブーストされていく。

 

「あ、あああんっ! 改蔵様! いつもより、魔力が、濃いです! あ、だめ、私、もう、イっちゃ……!」 「わ、わあ! マナちゃん、すごい声! 神主様、私も、なんだか、身体が、ぽかぽか、してきましたぁ!」

 

 イスズは、背中から抱きついているだけだというのに、改蔵から流れ込む『浄化』されたエネルギー(おこぼれ)だけで、気持ちよくなってしまっていた。

 

「よっしゃあ! 三人同時、『世界平和』だあああっ!」 「「あ(い)ああああああああんっ!」」

 

 三人の絶叫が、長閑な田舎のアジトに、高らかに響き渡った。 こうして、アジトの日常に、怪人ではない、最強の『世話人兼情婦(浄化装置)』が、正式に加わった。 黒幕の、エロエロスローライフは、さらに混沌と、快適さを増していくのだった。

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