※この作品はR-18です。

ヤッて改造! 〜悪の組織の黒幕です〜   作:ろくさん

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13話

 

 悪の組織のアジトの朝は今日も平和だった。 いや、平和を通り越して奇妙な『日常』がそこにはあった。

 

「アリスちゃーん。朝ごはんですよー」

 

 居間の隣、埃っぽい土蔵の暗がり。 その隅に、一体の『人形』が完璧な姿勢で座っていた。 格子アリス(こうし ありす)。 昨日、黒野改蔵(くろの かいぞう)との『儀式』を経て完璧な『人形怪人(ドール・モンスター)』へと変貌した少女。 彼女はTシャツ一枚という煽情的な姿の五十嵐イスズ(いがらし いすず)がにこやかに差し出すお(ほかほかの湯気を立てる卵粥)を、ガラス玉の瞳でただじっと見つめ返した。

 

「……」 「あのー、アリスちゃん? 食べないと、大きくなれませんよ?」

 

 イスズが本気で心配そうに小首を傾げる。 彼女にとってこの不気味な人形は新しくアジトに加わった『妹』のような認識らしかった。 カクン。 人形の首がぎこちない音を立ててイスズから改蔵へと転換された。

 

「……マスター。コノニンゲンガ、ワタシノ『カンペキ』ヲ、ミダシマス」 「あ?」

 

 改蔵は居間のちゃぶ台でイスズが作った絶品の朝食をかき込んでいたところだった。 その膝の上にはちゃっかり小悪魔マナが座り「あーん」などとやってもらっている。

 

「ガタガタ言うな。食わねえなら、そこにずっと座ってろ」 「りょうかい、シマシタ」

 

 アリスは再び、微動だにしない『完璧な人形』に戻った。

 

「もー、神主様! アリスちゃんが可哀想ですよ」 「いいんだよ、あれは。ああいう『仕様』だ」 「しようなのです、イスズ様! アリスさんはああして『存在』するだけで魔力を集積できる、特殊な怪人なのです!」

 

 マナが口元についたご飯粒を改蔵に取ってもらいながら、得意げに解説した。 その実、マナも、この感情のない新入りが少し不気味だった。

 

 改蔵のアジトは今や『癒し系世話人(イスズ)』と『色狂い小悪魔(マナ)』と『無機質な怪人(アリス)』という、混沌としたハーレム(?)状態となっていた。 その、奇妙な朝食の時間がけたたましいアラート音によって破られた。

 

 ビーッ! ビーッ! マナの魔術スマートフォンが激しく点滅している。 画面にはあの胃痛持ちの幹部、サイトウの顔が映し出された。

 

『あ、マナ君! よかった、繋がった!』 「はいっ! サポート担当マナ、いつでも任務可能です!」 『いや、その元気は結構なんだが……。首領から、例の、新しい怪人について至急『実地テスト』を行え、とご下命だ。なんでも、昨日のドリル怪人のデータがすこぶる良かったらしくてね。首領、期待しちゃってるんだよ、あの黒野君に』

 

 サイトウはホログラム越しに、疲れた顔で改蔵をちらりと見た。

 

「へえ。そりゃ光栄だ」

 

 改蔵は鼻をほじりながら答えた。

 

「で今度はどこで暴れりゃいいんだ?」 『それがだね……』

 

 サイトウは少し言いにくそうに、新しいマップデータを送信してきた。 そこに示されていたのは子供たちの笑顔が溢れる、巨大な『遊園地』だった。

 

『……どうも、あの辺りに、聖乙女ヒカリの『聖域結界』の、中継地点があるらしくてね。それを、破壊してほしい、と』 「遊園地、ですか」

 

 マナがわずかに眉をひそめた。

 

「フフ」

 

 その時、蔵の暗がりから、無機質な笑い声が漏れた。 アリスがいつの間にか、立ち上がっていた。

 

「ニンゲンノ、コドモ。イチバン、ウルサイ、イチバン、キタナイ」

 

 アリスはガラス玉の瞳を、爛々と(そう見えただけかもしれないが)輝かせた。

 

「イイデスネ。ワタシがミンナ、『ニンギョウ』ニ、シテアゲマス」 『ひっ……!』

 

 サイトウがその不気味な声に、小さく悲鳴を上げた。

 

『な、なんだか、今回のも、すごいのができたみたいだね……。じゃ、じゃあ、よろしく頼むよ! 転送座標、送っておくから!』

 

 一方的に、通信は切れた。 サイトウはもう、この支部の連中と、まともに関わることを諦めたようだった。

 

「だ、そうだ。アリスちゃんよ」 「はい、マスター」 「お前のデビュー戦だ。派手に『お掃除』してこい」 「りょうかい、シマシタ」

 

 アリスはカクン、とぎこちなく、しかし完璧な『淑女の礼』をした。

 

「マナ。転送を」 「ははいっ!」

 

 マナが魔術スマホを操作する。 アリスの足元に、禍々しい紫色の転移魔法陣が浮かび上がった。

 

「いってらっしゃーい、アリスちゃん! ケガしないでね!」

 

 イスズがアホみたいに手を振っている。 アリスはそれを完全な『無』の表情で一瞥すると、光と共に、その姿をアジトから消した。

 

 ***

 

 その遊園地は子供たちの夢と希望、そして絶叫で満たされていた。 ジェットコースターから響く、楽しげな悲鳴。 カラフルな風船。甘いポップコーンの匂い。 その、中央広場。 巨大なメリーゴーランドの中心で一体、奇妙な『人形』が木馬に跨っていた。

 

 プラチナブロンドの縦ロール。豪奢なゴスロリ服。 それは昨日改蔵がビリビリに引き裂いたはずの服だったが怪人化した彼女は自らの魔力でその『完璧な姿』を、瞬時に再構築できるようだった。

 

「……」

 

 メリーゴーランドの音楽に合わせ、彼女はただ、上下していた。 最初は人々も、それを遊園地の新しい『アトラクション』か『パフォーマー』だと思っていた。

 

「わあ、あのお人形さん、すごい」 「本物みたい。ちょっと、怖いくらい」 「ママ! あれ、動かないよ!」

 

 数人の子供たちが物珍しそうに、アリスが乗る木馬の周りに集まってきた。 一人の、生意気そうな少年が手を伸ばす。 そしてアリスの、完璧な陶器の頬に、ベタベタと、アイスクリームがついた手で触れようとした。

 

「……キタナイ」

 

 その瞬間、世界から、音が消えた。

 

 カクン。 アリスの首がありえない角度で少年の方を向いた。 ガラス玉の瞳が少年を、じっと、見つめた。

 

「……あ」

 

 少年は金縛りにあったように、動けなくなった。 アリスはゆっくりと、木馬から降りた。 そしてその小さな手を、少年の頭に向かって伸ばした。

 

「ニンゲンハ、キタナイ」 「ヨゴレタコは『ニンギョウ』ニ、シテアゲマス」 「ひ……! た、助け……!」

 

 少年が叫び声を上げる、その寸前。

 

「そこまでだ! 怪人!」

 

 五色の閃光。 アリスの手が炎の剣によって弾かれた。

 

「正義の五つ星! 正義戦隊ジャスティンジャー、見参!」

 

 広場の中央に、ジャスティンジャーの五人が完璧なポーズで降り立った。

 

「な、なんだ!?」 「怪人!? どこ!」

 

 遊園地は一瞬でパニックに陥った。 市民が蜘蛛の子を散らすように逃げていく。

 

「また、攫われた人間か! なんて不気味な……!」

 

 ジャスティンレッドが聖剣姫キリハが使っていたのとは別の(量産型の)炎の剣を構え、アリスを睨みつけた。

 

「オホ。ジャマヲ、シナイデ」

 

 アリスは自らの『獲物』を邪魔されたことに、わずかな(そう見えただけの)不快感を示した。

 

「ニンゲンはミンナ、コワシテ、カザッテアゲル」 「何を言ってる! ジャスティンブルー、グリーン! 市民の避難を!」 「「ロジャー!」」

 

 レッド、イエロー、ホワイトの三人がアリスに立ち向かう。

 

「くらえ! ジャスティン・ファイヤー・スラッシュ!」

 

 レッドの剣がアリスの華奢な胴体を、真っ二つにしようと迫る。 だが。

 

 キイイン! 甲高い金属音。 剣はアリスの陶器の肌に、わずかな焦げ跡をつけただけで弾かれた。

 

「なっ! 硬い!?」 「ムダ」

 

 アリスの身体が人間には絶対に不可能な角度で反り返った。 ブリッジ。 いや、それ以上だ。 まるで関節がすべて逆方向に曲がったかのように。 そしてそのブリッジの体勢のまま、四つ足で凄まじいスピードでレッドに突進してきた。

 

「うわあああっ!?」

 

 レッドはその、あまりにも不気味な『エクソシスト』のような動きに、完全に、反応が遅れた。 ガッ! 陶器の手がレッドの強化スーツの胸ぐらを掴む。

 

「……オモイ」

 

 アリスはそのまま、レッドを、軽々と、持ち上げた。

 

「……トベ」

 

 小さな体躯からは想像もつかない怪力。 レッドの身体がおもちゃのように、メリーゴーランドの柱に叩きつけられた。

 

「ぐはあっ!」 「レッド!」

 

 イエローとホワイトが慌ててビームライフルを乱射する。 だがアリスはその銃弾の雨の中を、カクン、カクン、と、予測不可能なステップで平然と突き進んでくる。 感情がない。 恐怖も、痛みも、ない。 ただ、そこに『在る』だけの、完璧な『人形』が淡々と、ヒーローたちを『破壊』し始めた。

 

 ***

 

「うおおおお! アリスちゃん、すげえええ!」

 

 その頃、悪の組織のアジト。 改蔵は居間の魔術モニターに映し出される、その『異様な』戦闘シーンに、大興奮していた。

 

「あ、あの動き、キモすぎだろ! レッド、完全にビビってやがる!」

 

 改蔵は畳の上に、胡坐をかいていた。 その、背後から。 「わあ、神主様、楽しそうですね」 イスズがその豊かな胸を、改蔵の背中に、ぎゅうう、と押し付けていた。 ブカブカのTシャツ一枚。 その柔らかさと、暖かさが改蔵の背中から『浄化』の魔力として流れ込んでくる。

 

「おお、イスズ! いいぞ、もっと『中和』しろ!」 「はいっ! せーの、ぎゅーっ!」

 

 そして改蔵の、膝の上。 そこには小悪魔マナが向かい合わせで跨っていた。

 

「ひゃあっ! か、改蔵様! アリスさんも、すごいですけど! そ、そんなに、腰を、激しく『安定』させたら……!」 「うるせえ! 戦闘シーンが盛り上がってんだ! こっちも『儀式』を盛り上げねえと、アリスに失礼だろ!」 「そ、そんな理屈……! あ、あ、あああんっ!」

 

 改蔵は膝の上のマナを、激しく揺さぶりながら。 背中ではイスズの『癒し』の魔力を受けながら。 最前列、S席(ハーレム状態)で自らが作った怪人の、デビュー戦を、観戦していた。

 

「いけー! アリス! そのまま、ホワイトの関節も、逆に曲げちまえ!」 「あ、あ、あああっ! レッドが起きました! あ、アブナイです、アリスさん!」 「わあ、マナちゃん、すごい声。神主様も、なんだか、すごく『熱』くなってますよ?」

 

 イスズが能天気に、改蔵の背中でさらに『浄化』の力を強める。 モニターの中では激戦が続く。 アジトの中ではアホなエロコメディが繰り広げられていた。

 

「ハッハァ! これ、最強じゃねえか!? 戦闘観戦しながら、セックス(安定)と、おっぱい(浄化)だぞ!」 「あ、あ、あああんっ! だめ、改蔵様! そ、そんな、二つの儀式を、同時に、行うなんて……! 私の、魔力回路がショート、しちゃ……イク! イっちゃいますぅ!」 「おお、イッたかマナ!」 「わあ、マナちゃん、お疲れ様です! 神主様、次は私が『中和』する番ですか?」 「おう! イスズ、(膝の上)に来い!」

 

 改蔵がぐったりしたマナを畳に転がし、イスズを膝の上に乗せようとした、その時だった。

 

「「「「ジャスティン・ストームキャノン!」」」」

 

 モニターの中。 アリスの、不気味な攻撃パターンを、ようやく読み切ったジャスティンジャーたちが必殺の合体武器を、構えていた。

 

「あ」

 

 改蔵の手が止まった。

 

「……オホ」

 

 アリスはその巨大なバズーカ砲を、ガラス玉の瞳でじっと、見つめていた。 彼女は避けなかった。 『恐怖』という感情がないからだ。

 

「……キレイナ、ヒカリ」

 

 それが彼女の、最期の言葉だった。 虹色の、極太ビームがアリスの小さな身体を、直撃した。

 

「……ニンギョウはコワレナイ」

 

 轟音。 大爆発。 メリーゴーランドごと、遊園地の一角が吹き飛んだ。

 

「あ」

 

 改蔵の、膝の上でイスズがぽかん、と、その光景を見ていた。

 

「……あ、あ、あああああああああんっ!」

 

 改蔵はその、あまりにも壮大な『爆発』をオカズに、イスズ(未挿入)の、Tシャツの、豊かな胸の谷間に向かって思い切り、ブチかました。

 

「……っ、イグッ!」 「ひゃあっ!?」

 

 イスズの、Tシャツが改蔵の『魔力(物理)』でベットベトになった。

 

「あ、あ、あの……神主様……? これも、『中和』、ですか……?」

 

 イスズが真っ赤な顔で胸元の『それ』を見下ろしている。 改蔵はぜえぜえと、荒い息を吐きながら、答えた。

 

「……ああ。今日の、『儀式』はおしまいだ」

 

 モニターの中。 爆心地で気を失った、裸のアリスがヒーローたちに『被害者』として保護、回収されていくのが映し出されていた。 アジトには改蔵の魔力で汚された、イスズのTシャツと、燃え尽きたマナと、やりきった改蔵が残された。 悪の組織の黒幕は今日も世界平和(エロ)のために戦い続けていた。

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