※この作品はR-18です。

ヤッて改造! 〜悪の組織の黒幕です〜   作:ろくさん

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26話

 悪の組織のアジトの朝は混沌(カオス)に満ちていた。 五十嵐イスズ(いがらし いすず)がTシャツ一枚の姿で台所に立ち朝食の準備を整えている。 その香ばしい出汁の匂いが居間に充満していた。

 

「あーん。マスター」

 

 ちゃぶ台では黒野改蔵(くろの かいぞう)が王様のように胡坐をかいていた。 その両足には二匹のペットが絡みついている。 右足には小悪魔マナ。 左足にはサキュバス怪人(不良債権)のメイ。 二人は改蔵の膝を奪い合いながら改蔵に「あーん」で卵焼きを運んでいた。

 

「あ! メイさんずるいです! 今度はマナの番です!」

 

「やだ。マスターはマナのごはんじゃない。わたしの」

 

「こら! お前ら! イスズの飯がマズくなるだろうが!」

 

 改蔵が怒鳴る。 その背後からイスズがそっと熱い茶を差し出した。

 

「神主様。マナちゃんメイちゃん。ケンカはだめですよ。卵焼きはまだたくさんありますから」

 

 その声はまさに聖母(世話人)だった。 改蔵マナイスズメイ。 四人の奇妙な共同生活(ハーレム)は完璧な秩序(カオス)を持って成立していた。 だが一人。 その輪に加わらない存在がいた。

 

「……」

 

 広瀬ユウミ(ひろせ ゆうみ)。 『幽霊怪人(ゴースト・モンスター)』。 彼女は居間の天井の隅。 梁と天井が交わる一番暗い『影』の中に溶け込むように潜んでいた。 彼女の身体は半透明だ。 意識を集中させなければ誰にも見えない。 彼女はそこから階下の『地獄』を見下ろしていた。 うるさい。 うるさい。 うるさい。 食べる音。 笑う声。 肌が触れ合う音。 『生』の音が強すぎて吐き気がする。 だがユウミは奇妙な『安心感』も覚えていた。 (……誰も私に気づかない) (……私はここに『いない』) (……完璧) 彼女は自分が望んだ『幽霊』としての(スローライフ)をこのアジトで満喫していた。 このうるさい『生者』たちが自分の『盾』になってくれている。 ユウミは影の中で静かに息を潜めていた。

 

 その平穏を破ったのはいつもの『雑音』だった。 ビーッ! ビーッ! マナの魔術スマートフォンが激しく鳴り響いた。 ホログラムが展開しサイトウの疲れた顔が映し出された。

 

『あ! マナ君! やっと繋がった!』

 

「はいっ! サイトウ幹部! いつでも任務可能です!」

 

 マナが改蔵の膝の上でビシッと敬礼する。

 

『もう君のその元気さが怖いよ……。単刀直入に言う。首領が新しい怪人(幽霊)のテストを所望されている』

 

「えっ!?」

 

 マナが驚いて天井の隅を見上げた。 サイトウも釣られてホログラムの視線を上に向けた。

 

『……? 何かいるのかね?』

 

「い、いえ! なんでもありません! それで任務とは!?」

 

『うむ。ジャスティンジャーの連中が例の田舎町(ここ)の周辺に捜査網を敷き始めた。奴らの『目』を欺ける戦力が必要だ』

 

 サイトウが新しいマップデータを送信してきた。 それは正義の科学研究所の『支部』だった。

 

『ここは奴らの新型装備の保管庫だ。警備が厳重で我が軍の戦闘員では手も足も出ん。そこでだ』

 

 サイトウが改蔵を見た。

 

『その『幽霊』のステルス能力で内部に侵入。新型装備のデータを奪取もしくは破壊してほしい。できるかね?』

 

 改蔵は天井の隅の『影』を見上げた。

 

「……おい『幽霊』。聞こえたか」

 

「……」

 

 影がわずかに揺れた。 そこからノイズ混じりのか細い声が響いた。

 

「……いや」

 

「は?」

 

「……でたくない。ここが、あんぜん」

 

 ユウミは完全に引きこもっていた。 マナが慌てて説得する。

 

「ユウミさん! 任務です! 貴女の能力を世界に示す時です!」

 

「……いや。めだつ。こわい」

 

「こいつ……!」

 

 マナがギリギリと歯噛みした。 メイに続く第二の『不良債権』か。 だが改蔵はニヤリと笑った。

 

「ユウミ」

 

「……」

 

「『観戦』だ」

 

「……?」

 

「お前は戦わなくていい。あいつらのアジトに『忍び込んで』あいつらが慌てふためく様を『見て』こい」

 

 改蔵はユウミの『本質』を見抜いていた。 この女は『見る(観測する)』ことだけが快感なのだ。

 

「……みる、だけ?」

 

「そうだ。誰にも気づかれず誰にも触れられず。お前が一番得意なやり方でな。あいつらの『秘密』を覗き見してこい。面白そうだろ」

 

「……」

 

 影が再び揺れた。 『覗き見』。 その背徳的な響きがユウミの冷たい心にわずかな『興味』を灯した。

 

「……わかった。みる、だけ」

 

「よし! 行ってこい!」

 

 ユウミの半透明な姿が影に完全に溶け込んだ。 まるで最初から存在しなかったかのように。 彼女はアジトの壁をすり抜け任務地へと向かった。

 

 ***

 

「さてと」

 

 アジトに静寂が戻った。 イスズが心配そうに改蔵を見た。

 

「神主様。あの子ひとりで大丈夫でしょうか」

 

「さあな。だが面白えモンが見れそうだ」

 

 改蔵は寝室(六畳間)の万年床を指差した。

 

「イスズマナメイ! 『観戦』の準備だ!」

 

「「「はいっ!」」」

 

 三人の女たちが待ってましたとばかりに布団になだれ込んだ。 イスズがTシャツ一枚の姿で改蔵の背中に張り付き『浄化』の体勢を取る。 マナが改蔵の左側に陣取り『安定』の儀式を待つ。 メイが改蔵の右側に陣取り『奉仕』の準備を整える。 マナが空間に魔術モニターを展開させた。 完璧な『共同儀式(フォーサム)』の布陣だった。

 

「よしマナ! モニター映せ!」

 

「はいっ! ……あれ?」

 

 マナが首を傾げた。 モニターに映し出されたのは研究所の『外観』だけだった。

 

「か、改蔵様! ユウミさん! どこにも映りません!」

 

「は? ちゃんと追尾してんだろ?」

 

「はい! ですが彼女の『存在確率』が低すぎて魔術カメラが『観測』できていません!」

 

「なんだそりゃ! つまんねえ!」

 

 改蔵が文句を言ったその時だった。 モニターの映像が切り替わった。 研究所の『内部』。 廊下を歩く警備員の視点。 だが映像がノイズ混じりでぼんやりしている。

 

「……ここ」

 

 ユウミのか細い声がアジトに響いた。

 

「なにこれ?」

 

「ユウミさん! 貴女いまどこに!」

 

「……このひと。あるいてる。わたしいま、このひとの『なか』に、いる」

 

「「「ひっ!?」」」

 

 三人の女が同時に悲鳴を上げた。 改蔵もさすがに背筋が寒くなった。 (こいつ。警備員に『憑依』してやがるのか!)

 

「あ、あの! 神主様!」

 

 イスズが改蔵の背中にさらに強く抱きついた。

 

「な、なんだか怖いです! 早く『浄化』しないと!」

 

「お、おう! そうだな!」

 

「わ、私も『安定』しないと怖いです!」

 

「わ、わたしもマスターを『お守り』します!」

 

 四人は恐怖を振り払うかのように『儀式』を開始した。

 

 ***

 

 正義の科学研究所。 ベテラン警備員のヤマダ(45歳)は首筋に悪寒を感じていた。 (……なんだ? 今日は妙に冷えるな) 彼は深夜の巡回中だった。 ここは極秘の保管庫だ。 ジャスティンジャーの新装備や押収した怪人のサンプルが保管されている。 警備は完璧なはずだった。 だが彼は知らなかった。 今まさに『幽霊』が自分に『取り憑いて』いることを。

 

(……ここが、にんげんの、アジト)

 

 ユウミは警備員ヤマダの意識の隅で息を潜めていた。 最高の気分だった。 誰にも見られない。 誰にも触れられない。 自分の足で歩く必要さえない。 この『乗り(ヤマダ)』は快適だ。

 

 ヤマダがIDカードを厳重なセキュリティゲートにかざす。 ピー。 重い扉が開いた。 最深部の保管庫だ。

 

(……すごい。たくさん、おもちゃが、ある)

 

 ユウミ(ヤマダ)の視界にジャスティンジャーの新しい武器が映る。 マナから指示された『ターゲット』だった。

 

(……これ、どうするんだっけ) (……データ、ぬきとり?) (……めんどくさい)

 

 ユウミは『任務』に興味がなかった。 彼女はただこの『覗き見』を楽しんでいただけだ。 (……あ。あの、ひかる、ボタン) (……おしたら、どうなるんだろ) ユウミの『ゴースト』としての好奇心が動いた。 彼女はヤマダの身体からそっと抜け出した。 半透明な姿になる。

 

「……ん?」

 

 ヤマダは急に身体が軽くなった気がした。 そして目の前の光景に凍りついた。 保管庫のコンソール。 その『自爆スイッチ』のカバーがひとりでに開き中のボタンがゆっくりと押されていく。 指紋認証も何もかも無視して。

 

「ひ、ひいいいいいいっ!?」

 

 ヤマダは腰を抜かした。 ポルターガイストだ! 

 

 ジリリリリリリ! 研究所内にけたたましい警報が鳴り響いた! 

 

『緊急事態! 緊急事態! 保管庫Bの自爆シークエンスが起動!』

 

「……あ」

 

 ユウミは自分の『イタズラ』が思った以上の騒ぎになったことに少しだけ驚いた。 (……まずい。みつかる) 彼女は慌てて壁をすり抜け逃げ出した。

 

 ***

 

「ハッハァ! やったぞあいつ!」

 

 アジト。 改蔵はモニターに映る大混乱の様子に大爆笑していた。 その声が響く六畳間の万年床。 彼はもはや座ってすらいない。 畳の上に仰向けに寝転がり両手両足をだらしなく広げていた。 まさに『王様』の休息。 だがその『王様』は一人ではなかった。 彼は三人の女と激しく『儀式』の真っ最中だった。 部屋の熱気はモニターの向こうの爆炎よりも熱い。

 

「あ、あんっ! すごいですユウミさん! ヒーローのアジトを! 混乱させてます!」

 

 声の主は小悪魔マナ。 彼女は改蔵の逞しい胸板の上に四つん這いで跨っていた。 レオタード姿の小さな身体が改蔵の腹筋の動きに合わせてわずかに揺れる。 彼女の場所は『特等席』だった。 改蔵の『陽』の気の(股間)を見下ろしつつモニターも完璧に見える。 彼女は観測(任務)快感(安定)を同時に行っていた。 改蔵が笑うたびにその胸が跳ねマナの秘所を小さく刺激する。

 

「わあ! 神主様! 警報が! 警報が鳴ってます!」

 

 もう一つの楽しそうな声。 五十嵐イスズだった。 Tシャツ一枚の彼女は改蔵の頭の横に正座していた。 そしてその豊かな『浄化』の(むね)を改蔵の顔面に柔らかく押し付けていた。 まるで極上の『枕』のように。 改蔵の視界の半分はモニター。 もう半分はイスズの胸の谷間だった。 改蔵が笑うたびにその頬がイスズの柔らかさに埋もれる。

 

「私の『浄化』も間に合いません! 神主様が熱すぎます!」

 

 イスズが改蔵の顔をむにゅむにゅと胸で圧迫しながら嬉しそうに悲鳴を上げた。 彼女は改蔵の『暴走』する魔力をその豊満な身体で受け止め『浄化』していた。

 

「マスター! マスター! もっと! わたしにも『魔力』を!」

 

 そして三つ目のくぐもった熱い声。 サキュバス怪人(ペット)のメイ。彼女は改蔵の足の間。 その『儀式』の『本体』に直接食らいついていた。 腰をヘコヘコと動かし、ハートの尾を揺らしながら改蔵の『陽』の気の全てをその小さな口で受け止め『奉仕』している。 改蔵の理性を焼き切る直接的な快感だった。

 

 マナが胸の上で『安定』を。 イスズが顔の横で『浄化』を。 メイが股間で『奉仕』を。 三人が三様のやり方で改蔵の魔力を貪り『共同儀式』を成立させている。 まさに地獄絵図(ハーレム)だった。

 

「オラ! いいぞユウミ! もっとやれ!」

 

 改蔵が興奮して叫ぶ。 その振動がマナの身体を直撃しメイの奉仕のリズムを狂わせる。

 

「ひゃあっ! か、改蔵様! 揺らさないでください!」

 

「んんっ! マスター! 『魔力』が濃すぎます!」

 

「神主様! モニターが見えません!」

 

 イスズの胸が改蔵の視界を完全に塞いだ。 改蔵は笑った。 (ああもう! 最高かよ!)

 

 改蔵の『陽』の気も最高潮だ。 (このままイってやるか!) 改蔵が『儀式』のクライマックスを迎えようとしたその時だった。

 

「……あら?」

 

 モニター(の隙間)に一人の女性が映り込んだ。

 清楚なシスター服。 だがその目には『焦り』が浮かんでいた。 聖乙女(ホーリーメイデン)ヒカリだった。

 

「もう! なんなのよ今日は!」

 

 ヒカリはイライラしていた。 彼女は今日この研究所の所長(有望な独身貴族)と『お茶』の約束があったのだ。 それなのにこの警報騒ぎ。 (私の『婚活』の邪魔をするのはどこのどいつよ!)

 

「……ん? なんだか空気が淀んでるわね」

 

 ヒカリは自爆シークエンスが作動した保管庫の前に立った。 彼女は『聖女』としての高い霊能力でユウミの『気配』を察知した。

 

「……なるほど。『幽霊』の仕業ね」

 

「ひっ!?」

 

 壁の中に隠れていたユウミがビクリと震えた。 (みつかった?)

 

「まったく! こんな不浄なモノを放置するから私の『運気』も下がるのよ!」

 

 ヒカリは任務のためではない。 自らの『良縁』のために。 懐から聖水を取り出し祈りを捧げ始めた。

 

「清めたまえ! 祓いたまえ! 我が聖域に巣食う不浄なるモノよ! ホーリー・ブレス!」

 

 ヒカリが聖水を保管庫の扉に叩きつけた。 眩い『聖』の光が爆発的に溢れ出す! 

 

「ぎゃあああああああああああああっ!」

 

 壁の中にいたユウミに聖なる光が直撃した。 悪魔の魔力(ベース)と人間の(ユウミ)で構成された『幽霊怪人』。 純粋な『聖』の力は彼女にとって猛毒だった。

 

「あ、あつい! やけて! きえちゃう!」

 

 ユウミは半透明な姿を維持できなくなり壁の中から床へと叩き出された! その姿は完全に『実体化』している! 

 

「あ! ユウミさん!」

 

 アジト。 マナが絶叫した。

 

「あ、あああんっ! ヒカリです! またあいつです! あいつだけはダメです!」

 

「くそっ! あの婚活女! 相性最悪か!」

 

 改蔵が舌打ちした。

 

「わあ! 神主様! ユウミちゃんが光ってます! 私たちの『儀式』もクライマックスです!」

 

 イスズが空気を読まずに叫んだ。

 

「イグウウウウウウウウウウッ!」

 

「「「きゃあああああああああんっ!」」」

 

 改蔵と三人の女たちの絶叫がアジトに響き渡った。 モニターの中では実体化したユウミ(半裸)が駆けつけたジャスティンレッドに『被害者』として保護されていた。

 

「……あ。消えられ、ない」

 

 ユウミは人間の腕に抱きかかえられ『存在』させられる屈辱に白目を剥いて気絶した。 アジトでは改蔵が燃え尽きていた。 今日も世界平和(ハーレム)は守られた。

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