※この作品はR-18です。

ヤッて改造! 〜悪の組織の黒幕です〜   作:ろくさん

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2話

「なんなのよアンタたち! 帰る!」

 

 縞田チアキ(しまだ ちあき)は、背後の玄関戸に手をかけた。 だが、ギシリとも動かない。 まるで、見えない力で縫い付けられてしまったかのようだ。

 

「ダメですよ」

 

 小さな小悪魔、マナが、チアキの前に回り込み、無邪気な笑顔で立ちふさがった。 その華奢な身体からは想像もつかない威圧感が、チアキの動きを縫い留める。

 

「せっかく、貴女の『願い』を叶えて差し上げようというのですから」 「願い……?」

 

 チアキの脳裏に、マナに言われた言葉が蘇る。 『変身したいんでしょう?』

 

「……ふざけないで。何かの新興宗教か、マルチの勧誘でしょ。警察呼ぶわよ」 「ちっ。話が早えのが一番なんだがな」

 

 奥の居間から、Tシャツ姿の男、黒野改蔵(くろの かいぞSう)が、面倒くさそうに頭を掻きながら現れた。 その手には、あの埃っぽい蔵から持ち出してきたのであろう、黒い革表紙の分厚い魔導書が握られている。

 

「マナ。こいつ、やる気ねえみたいだぞ。どうすんだ」 「もう、改蔵様は気が早すぎます!」

 

 マナは、改蔵をビシッと指差した。

 

「才媛たる私に任せておけば、万事オッケーなのです! まずは『素材』に、我々の偉大なる目的と、儀式の神聖さを理解していただくのが筋というものでしょう!」 「いや、どう見てもお前の目が一番据わってるが」 「据わっておりません! これは任務への情熱です!」

 

 マナは、ぷんぷんと頬を膨らませると、チアキに向き直った。

 

「チアキさん。貴女は『今の自分』に飽き飽きしている。違いますか?」 「なっ……」 「人気者のギャルを演じ、友人に話を合わせ、空気を読む。本当は、そんな自分を捨てて、まったく別の何かに『変身』したい。心の底からそう願っている」 「……!」

 

 図星だった。 誰にも、心の奥底の欲望を覗かれたような感覚に、チアキの血の気が引いていく。 この少女は、ただのコスプレイヤーではない。 本物の、悪魔だ。 チアキは、ゴクリと生唾を飲んだ。

 

「……アンタたちが、悪の組織だって言うなら。テレビで暴れてる、あの『怪人』も……」 「はい。アレも、我々の偉大なる同志です」 「じゃあ、私が……」 「ええ」

 

 マナは、うっとりとした表情で両手を広げた。

 

「貴女も、あの素晴らしい『怪人』になれるんですよ」

 

 ぞくり、と背筋が震えた。 恐怖。 そして、抗いがたいほどの、甘美な誘惑。 今の退屈な日常を捨て、まったく別の存在になれる。 それは、チアキが密かに抱き続けてきた、最大の欲望だった。

 

「……どうすれば、いいの」

 

 絞り出すような声に、マナは満足げに頷いた。 改蔵が、持っていた魔導書を適当なページで開き、チアキの目の前に突きつける。

 

「これ」 「え……?」

 

 そこに描かれていたのは、昨日マナに見せたものと同じ、魔法陣の中で裸の男女が抱き合う、扇情的な挿絵だった。

 

「こ、これ……セックス、じゃ……」

 

 チアキの顔が、カッと赤く染まった。

 

「だから! 神聖な『儀式』です!」

 

 マナが、なぜか自分のことのように必死で訂正する。

 

「改蔵様の持つ莫大な魔力を、貴女の身体の『核』……その、子宮に直接注ぎ込むことで、貴女の肉体と精神を再構築する! これこそが、黒野家に伝わる最強の怪人作成術なのです!」 「要するに、セックスだ」 「改蔵様!」

 

 改蔵のあっけらかんとした物言いに、マナが涙目で抗議する。 チアキは、目の前の男と、挿絵を、呆然と見比べた。 この、Tシャツの、気の抜けた男と。 セックス、を。

 

「……無理」 「ほう。せっかく『変身』できるって言ってるのにか?」 「そ、それは……! 魅力的だけど……! でも、いきなり知らない男と、こんな……!」 「ああ、そう」

 

 改蔵は、魔導書をパタンと閉じ、興味を失ったように踵を返した。

 

「じゃあ、帰れよ。俺も暇じゃねえんだ」 「えっ」 「改蔵様!? なに言ってるんですか! この高ポテンシャル素材を!」 「だってよ、こいつヤる気ねえんだろ? 無理やりヤっても、いい怪人にならねえよ」

 

 改蔵は、そのまま居間の方へ戻ろうとする。 その背中を、チアキは、ただ見つめることしかできなかった。 帰れ。 その言葉は、チアキにとって、救いであるはずだった。 なのに。 (……今、帰ったら。私はまた、明日も『縞田チアキ』を演じなきゃいけない) (退屈な講義。中身のない会話。カラオケ。合コン) (……ずっと、このまま?) (でも、もし) もし、この男に抱かれたら。 私は、『私』じゃなくなれる。

 

「……待って!」

 

 チアキは、叫んでいた。 改蔵の足が止まる。 チアキは、震える唇を必死で動かした。

 

「……や、やる。私、やるわ」 「……」 「だから……私を、『変身』させて……!」

 

 決意の言葉。 それを聞いた改蔵が、ゆっくりと振り返る。 その顔には、先ほどの気の抜けた表情はなかった。 獲物を前にした獣のような、獰猛で、どうしようもなくスケベな笑みが浮かんでいた。

 

「……ハッ。ようやく決心がついたか」

 

 マナが、喜び勇んでチアキの手を引いた。

 

「さあ、こちらです! 儀式の間にご案内します!」

 

 ***

 

 連れてこられたのは、昨日改蔵がマナを召喚した、あの埃っぽい土蔵だった。 ガラクタが山積みになった薄暗い空間。 その中央に、チョークで描かれた魔法陣が、昨日の儀式のせいか、淡い紫色の残光を放っている。

 

「ここで……?」 「はい! さあ、服を脱いで、魔法陣の中へ」 「えっ、ふ、服……?」

 

 マナに促され、チアキは戸惑う。 流行のファッションに身を包んだ、抜群のプロポーション。 それを、ここで、この男の前で、すべて晒せと。

 

「……ぐずぐずすんなよ」

 

 改蔵が、チアキの逡巡を待たず、そのTシャツの裾を掴んだ。

 

「ひゃっ!?」

 

 ビリ、という荒々しい音と共に、チアキの服が引き裂かれる。 抵抗する間もなく、スカートも、その下の薄い布地も、すべてが剥ぎ取られていった。 小麦色の健康的な裸体が、薄暗い蔵の中に晒される。

 

「あ、あ……!」 「いい身体してんじゃねえか。さすが『高ポテンシャル』だ」

 

 改蔵もまた、自らのTシャツとスウェットを脱ぎ捨てた。 その姿に、チアキは息を飲んだ。 服を着ている時はわからなかったが、男の身体は、意外なほどに引き締まっていた。 そして、なによりも。 その股間に鎮座する、圧倒的な『巨根』。 チアキが、友人たちと興味本位で見たAVの中でさえ、これほどの存在感を放つものはなかった。 あれが、私の中に。

 

「さあ、儀式の開始です!」

 

 マナが、興奮した様子で魔導書を開き、蔵の隅で詠唱のようなものを始めた。 どうやら、儀式の補助と、記録が彼女の役目らしい。 その瞳が、期待で爛々と輝いているのを、チアキは見逃さなかった。 (こいつ、絶対楽しんでる……!)

 

 改蔵は、怯えるチアキを魔法陣の中央に押し倒した。 冷たい床の感触に、チアキの身体がビクリと跳ねる。

 

「じゃ、いくぞ。神聖な『魔力注入』だ」 「ま、待って! 心の準備が……!」 「んなもん、怪人になってからしろ!」

 

 改蔵は、チアキの抵抗をものともせず、その逞しい巨根を、まっすぐに突き立てた。 経験の少ない、狭い秘所が、無理やりこじ開けられる。

 

「いっ……! ああああっ!」

 

 裂けるような痛み。 チアキの叫びが、蔵の高い天井に響き渡った。 だが、改蔵は止まらない。 儀式を遂行する機械のように、ただ、正確に、その腰を打ち付け始めた。

 

「痛い! や、やめて……! 無理……!」 「うるせえ。お前が望んだんだろ、『変身』を」

 

 ガツン、ガツン、と容赦のない衝撃が、チアキの子宮の奥をえぐる。 痛み。屈辱。 もう、縞田チアキとしてのプライドはズタズタだった。 だが、数分と経たないうちに、チアキは異変に気付いた。 痛みが、薄れていく。 いや、違う。 痛みを、別の感覚が、上回り始めたのだ。

 

「あ……? なに、これ……?」

 

 改蔵の巨根が打ち込まれるたび、熱い「何か」が、身体の奥に流れ込んでくる。 それは、精液とは明らかに違う、魔力の奔流。 紫色の光が、魔法陣から立ち上り、二人の身体を包み込んでいく。

 

「あ、ああっ! あつい……! なにか、入ってくる……!」

 

 マナが、興奮に声を震わせた。

 

「始まりました! 魔力注入による、肉体の再構築です!」 「あぁん! すごい、魔力……! 改蔵様、もっと、もっとその娘に!」

 

 なぜか、マナまでが恍惚の表情を浮かべている。 改蔵の腰の動きは、一切衰えない。 絶倫。 その言葉が、チアキの頭をよぎった。 この男の魔力(スタミナ)は、無限だった。

 

「どうだ、チアキ。『今の自分』が、溶けていく感覚は」 「あ……あああっ!」

 

 改蔵の言う通りだった。 熱い魔力が、身体中を駆け巡る。 血液が沸騰し、骨がきしみ、筋肉が組み変わっていく。 『縞田チアキ』という存在を構成していた、すべての情報が、快感と共に消し飛んでいく。

 

(私……私が、消えちゃう……!)

 

 恐怖。 だが、それ以上に。

 

(……気持ちいい)

 

 そうだった。 私は、これを望んでいた。 私を、消してほしかった。

 

「あああああっ! もっと! もっと、私を壊して! 変えて!」

 

 チアキは、もはや痛みなど感じていなかった。 自ら腰を動かし、改蔵の魔力を貪るように受け入れ始めた。 抵抗から、歓喜へ。 『素材』は、快感に溺れながら、自ら怪人への変貌を受け入れた。

 

「ハッ! そうこなくっちゃな!」

 

 改蔵の腰使いが、さらに一段、激しさを増す。 蔵の中は、魔力の光と、二人の交合の音、そしてマナの興奮した実況の声だけで満たされていた。

 

「あ、あ、あああっ! もうダメ! 消える! イク! イっちゃうううう!」

 

 チアキの絶叫と同時に、改蔵もまた、儀式の完了を告げる咆哮を上げた。 膨大な魔力が、最後の仕上げとして、チアキの子宮の奥深くに叩き込まれる。 ビクンッ! チアキの身体が、大きく弓なりにしなった。 そして、異変が起きた。

 

「ぎ……! ぎぎぎぎぎ……!」

 

 チアキの身体が、快感の痙攣とは違う、異常な動きで震え始めた。 彼女の健康的な小麦色の肌が、まるで液晶テレビのノイズのように、赤、青、緑、と激しく明滅し始める。

 

「おお……!」

 

 改蔵が、満足げにその姿を見下ろす。 マナが、魔導書を片手に叫んだ。

 

「最終変態、開始します! ポテンシャル、『変身願望』、因子、『カメレオン』に確定!」

 

 チアキの身体が、魔力光に包まれる。 しなやかだった手足の指が、枝を掴むかのように変形していく。 背骨がしなり、尾てい骨から、長くしなやかな「尾」がずるりと伸びてきた。 顔立ちも、整っていたギャルのそれから、爬虫類のように、しかしどこか妖艶な輪郭へと変わっていく。 大きな瞳は、左右別々の方向を向くことができる、怪異なものへ。

 

 やがて、光が収まった。 魔法陣の中に倒れていたのは、もはや縞田チアキではなかった。

 

「……」

 

 ゆっくりと、その『生物』が立ち上がる。 身体のラインは、チアキの抜群のプロポーションを引き継いだまま、妖艶な女性型を保っている。 だが、その肌は、周囲のガラクタの山とまったく同じ、埃っぽい茶色と灰色に『擬態』していた。 左右非対称に動く大きな瞳が、改蔵とマナを捉える。

 

「……すごい」

 

 その唇から漏れたのは、チアキとは似ても似つかぬ、少し低く、湿り気を帯びた声だった。 彼女は、自らの手を見た。 色が変わる。 蔵の暗闇に、壁のしっくいの白に、自在に溶け込んでいく。

 

「私……本当に、消えれる……!」

 

 彼女は、恍惚とした表情で、自らの新しい身体を抱きしめた。

 

「儀式は成功です! 改蔵様!」

 

 マナが、興奮して飛び跳ねている。 改蔵は、ニヤリと笑った。

 

「上出来だ。お前の名前は、今日から『カメレオン怪人』だ」

 

 女怪人は、コクリと頷いた。 そして、ぺろり、と爬虫類のように長い舌で、自らの瞳を舐めた。

 

「カメレオン……いい響き。我が名は、怪人カメレオン。これより、マスターの望むままに、この世界に溶け込みましょう」

 

 悪の組織の黒幕(怪人作成担当)による、記念すべき怪人第一号。 それは、自らの変身願望を叶え、世界そのものに擬態する、恐るべき女怪人の誕生の瞬間だった。

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