その日、悪の組織のアジトの居間では、奇妙で、そして哀れで、どうしようもなく扇情的な光景が繰り広げられていた。
「……マスター。ごはん」
姪浜メイ(めいのはま めい)は、畳に胡座をかいて座る
彼女は人間だった頃の記憶や尊厳のほとんどを、改蔵による度重なる『
気弱で断れない性格は、絶対的な服従と依存へ。
内気な態度は、ただひたすらに快楽を乞う雌の態度へ。
その結果、彼女は『サキュバス怪人』という種族に生まれ変わったものの、戦闘能力は皆無。
ただ改蔵の魔力を受け入れ、愛されることだけに特化した『不良債権』となってしまったのだ。
「……マスター。ほしい。なかに、ほしい」
メイは改蔵の太ももに頬をすり寄せながら、無意識に腰を前後に揺すっていた。
ヘコ、ヘコ。
ヘコ、ヘコ。
それはまるで発情した小動物が、主人の足にマウンティングしているかのような動きだった。
彼女が身につけているのは、改蔵の古びたスウェットの上着だけ。
下は履いていない。
腰を振るたびに、スウェットの裾から白く柔らかいお尻がチラチラと覗き、ハートの形をした細い尻尾がピコピコと揺れている。
「おいメイ。邪魔だ。テレビが見えねえ」
改蔵は煎餅をかじりながら、メイの頭を適当に撫でた。
邪険にしているようで、その手つきはペットを愛でるように優しい。
「だって、マスター。きょう、まだ、もらってない」
メイは潤んだ瞳で見上げた。
その瞳孔はとろりと開ききっている。
彼女にとって改蔵の精気は食事であり、酸素であり、生きる意味そのものだった。
数時間摂取しないだけで、彼女は禁断症状に震える中毒者となる。
「朝やっただろ。マナとイスズと一緒に」
「たりない。あれは、みんなのごはん。わたしだけの、ほしい」
メイは改蔵のスウェットのズボンに顔を埋め、匂いを吸い込んだ。
くんくん。
雄の匂い。
魔力の匂い。
「あぁ……。マスターのにおい……。たべたい……」
彼女の股間は、すでに期待だけでじわりと湿り気を帯びていた。
床に直に触れている秘所が、ムズ痒く疼いている。
「はぁ……。お前は本当に燃費が悪いな」
改蔵は呆れたように溜息をついた。
だが、その表情は満更でもない。
役に立たない。
頭も悪い。
性欲しかない。
だが、この全肯定と全依存は、男の庇護欲とサディズムをこれ以上なく刺激するのだ。
「あらあら。メイちゃん、またおねだりですか?」
台所から、エプロン
手にはお玉を持っている。
「神主様。お昼ごはんにしようと思ったんですけど、マヨネーズが切れちゃってて」
「あん? マヨネーズか。買い置きねえのか」
「はい。昨日マナちゃんが夜食に全部使っちゃったみたいで」
イスズが困ったように笑う。
改蔵は少し考え、そして足元の『ペット』を見下ろした。
「よし。メイ」
「……? なあに? マスター。してくれるの?」
メイが期待に尻尾を振る。
「『おつかい』だ」
「……おつかい?」
メイが首を傾げた。
その単語の意味を理解するのに数秒かかった。
「コンビニに行って、マヨネーズを買ってこい」
「え……」
メイの動きが止まった。
彼女の小さな世界は、このアジトと改蔵の半径数メートルで完結している。
外の世界は怖い。
知らない人がいっぱいいる。
誰もマスターみたいに優しくない(と彼女は思っている)。
「やだ。こわい。いかない」
メイは改蔵の足にしがみつき、ぷるぷると首を横に振った。
「私が行きましょうか?」
イスズが提案するが、改蔵はそれを手で制した。
「いや、いい。こいつにも少しは『社会復帰』のリハビリをさせねえとな。いつまでも足元で腰振ってるだけじゃ芸がねえ」
改蔵はメイの顎を掴み、上を向かせた。
「いいかメイ。これは『命令』だ」
「……っ!」
「命令」という言葉に、メイの身体がビクリと反応する。
彼女の因子である『服従』の本能が、拒否を許さない。
「でも……でも……」
「ちゃんと買ってこれたら、『ご褒美』をやるぞ」
「……ごほうび?」
メイの
「ああ。お前が欲しがってる『濃いやつ』をな。たっぷりと、お前の腹の中に注ぎ込んでやる」
「……!」
メイの瞳が、カッと見開かれた。
ご褒美。
濃いやつ。
たっぷり。
その甘美な響きが、彼女の恐怖を凌駕した。
「……いく」
メイは立ち上がった。
足は震えているが、その目には決意の
「いきます。マスターのため。ごほうびのため。メイ、がんばる」
「よし。いい子だ」
改蔵は財布から千円札を一枚抜き出し、メイの手に握らせた。
「お釣りはやる。好きなもん買っていいぞ」
「わかった。いってくる」
メイはスウェットの上着の裾をギュッと握りしめ、アジトの玄関へと向かった。
その背中は、戦場に向かう兵士のように悲壮で、そしてどうしようもなく小さかった。
「……神主様。大丈夫でしょうか」
イスズが心配そうに見送る。
「大丈夫だろ。コンビニはここから歩いて五分だ。迷う要素もねえ」
改蔵は再び煎餅をかじった。
だが、その目は少しだけ玄関の方を気にしていた。
***
外の世界は、メイにとって刺激が強すぎた。
真昼の太陽。
アスファルトの照り返し。
どこかの家の犬の鳴き声。
全てが彼女を萎縮させる。
「……うぅ。まぶしい。あつい」
メイは日陰を選んで歩いた。
格好は、改蔵のスウェット(上)に、イスズが貸してくれたショートパンツ。
足元はサンダル。
近所のコンビニに行くには十分だが、彼女の醸し出す『捨てられた子犬』のようなオーラが、すれ違う人々の視線を集めてしまう。
(見ないで。見ないで)
彼女はうつむき、千円札を命綱のように握りしめて歩いた。
頭の中にあるのは、ただ一つ。
『マヨネーズ』。
そしてその先にある『ご褒美』。
(マヨネーズ、かえば、マスターが、してくれる)
(いっぱい、だしてくれる)
(あたま、なでてくれる)
その想像だけで、彼女の足取りは少しだけ軽くなった。
いや、股間が熱くなって、足がもつれそうになった。
コンビニに到着した。
自動ドアが開くウィーンという音さえ、彼女には威嚇音に聞こえた。
店内に入る。
冷房の冷たい空気が肌を撫でる。
明るすぎる照明。
たくさんの商品。
「……マヨネーズ、マヨネーズ」
メイは商品棚をさまよった。
どこにあるかわからない。
店員に聞くなんて、怖くてできない。
彼女は店内を三周して、ようやく調味料コーナーを見つけた。
「あった」
赤いキャップのボトル。
彼女はそれを、聖杯でも扱うかのように両手で恭しく手に取った。
これで任務完了だ。
あとはレジに行くだけ。
だが、そこで彼女の目にあるものが飛び込んできた。
レジ横のホットスナックコーナー。
そこで回っている、フランクフルト。
太く、茶色く、テラテラと脂光りする棒状の物体。
「……あ」
メイの足が止まった。
彼女の脳内で、その形状が『何か』と結びついてしまった。
(……マスターの)
似ている。
色も、形も、大きさも。
メイはガラスケースに張り付いた。
涎が出そうだった。
お腹が空いたわけではない。
別の場所が空いたのだ。
(……ほしい)
(あれ、くわえたい)
彼女の思考回路はショート寸前だった。
マヨネーズを買うという任務と、目の前の『疑似餌』への執着。
「お釣りで好きなものを買っていい」という改蔵の言葉が蘇る。
「……これも、かう」
メイは決断した。
彼女はマヨネーズを抱え、レジへと向かった。
レジには強面の男性店員がいた。
怖い。
でも、ご褒美のために。
「……これと、あれ。ください」
メイは震える指でフランクフルトを指差した。
声が小さすぎて、店員が「はい?」と聞き返す。
「ひっ! ……あ、あの、これと、あの、おおきいぼう……ください……」
涙目で訴える。
店員は怪訝な顔をしながらも、商品を袋に入れ、会計をしてくれた。
メイは千円札を出し、お釣りとレシートを適当にポケットに突っ込み、逃げるように店を出た。
帰り道。
メイの足取りは速かった。
早く帰りたい。
早くマスターに会いたい。
袋の中のフランクフルトの熱が、太ももに伝わってくる。
それが改蔵の体温のように感じられ、彼女の焦燥感を煽る。
(かえったら、すぐ)
(すぐ、してもらう)
(もう、がまんできない)
彼女は小走りで路地を抜けた。
途中、石につまづいて転びそうになったが、マヨネーズだけは死守した。
膝を擦りむいたが、痛みよりも性欲が勝っていた。
***
「ただいま! マスター! ただいま!」
バン! と引き戸が開く。
メイがアジトに転がり込んできた。
肩で息をし、汗だくで、髪は乱れている。
だが、その手にはしっかりとコンビニの袋が握られていた。
「お、帰ってきたか」
改蔵が漫画から顔を上げた。
イスズと、別室で作業をしていたマナも顔を出す。
「メイちゃん! おかえりなさい! 一人で偉かったですね!」
「無事でしたか? 心配しましたよ」
メイは皆の言葉など耳に入っていなかった。
彼女は一直線に改蔵の元へ這い寄り、袋を差し出した。
「マスター! マヨネーズ! かった! 買ってきた!」
「おう。よくやったな。偉いぞ」
改蔵が袋を受け取り、中身を確認する。
マヨネーズと、フランクフルトが入っていた。
「ん? フランクフルトか。お前、腹減ってたのか?」
「ちがう」
メイは首を横に振った。
そして、潤んだ瞳で改蔵を見上げ、自分のスウェットの裾をまくり上げた。
下着をつけていない秘所は、愛液でぐっしょりと濡れ、太ももまで滴り落ちていた。
「にてたから……。マスターのと、にてたから……。みてたら、がまん、できなくなっちゃった……」
「……」
改蔵は絶句した。
イスズが「あらあら」と口元を押さえ、マナが「なんてあさましい……」と顔を覆う。
この駄犬は、コンビニでフランクフルトを見て発情して帰ってきたのだ。
「マスター。ごほうび。やくそく」
メイは改蔵の膝に手を置き、腰をヘコヘコと擦り付け始めた。
もう限界だった。
ご褒美をもらわないと、死んでしまう。
「……はぁ。しょうがねえ奴だな」
改蔵は苦笑いした。
呆れた。
だが、可愛い。
ただのおつかいでここまで発情して帰ってくる女など、世界中探してもこいつくらいだろう。
その一途すぎる欲望と、ダメすぎる生態が、改蔵の嗜虐心を心地よく刺激する。
「よくやった。褒めてやるよ」
改蔵はメイの頭を鷲掴みにした。
「えらいぞメイ。ちゃんと『お仕事』できたな」
「んぅ……! マスター……!」
「約束通り、たっぷりくれてやる。お前の大好きな『濃いやつ』をな」
改蔵はメイを引き寄せ、そのまま布団の上に押し倒した。
「わぁ……っ! いただき、ますっ!」
メイは歓喜の声を上げ、自ら脚を広げた。
そこには恥じらいも躊躇もない。
あるのは、主人の愛液を待ちわびる『器』としての歓びだけだ。
「神主様……。マヨネーズ、使うのは後にしてあげてくださいね?」
イスズが苦笑しながら、台所へと戻っていく。
マナは「私もデータ取らせていただきます!」とスマホを構える。
「いくぞメイ。おつかいのご褒美だ」
改蔵が腰を沈める。 ズプッ、ヌゥゥゥ……。 重く、湿った音がして、改蔵の剛直がメイの秘所へと侵入していく。 コンビニからの帰り道、ずっと期待で濡らし続けていたメイの蜜壺は、抵抗なく、しかし吸い付くような圧力を伴って、主人の楔を根元まで飲み込んだ。
「あ……っ! ああっ! マスター! おかえりなさい! 私の中に、おかえりなさい!」
メイの身体が大きく跳ね、そしてビクビクと痙攣しながらきつく締め付ける。 彼女の細い手足が改蔵の胴体に絡みつき、逃がさないと言わんばかりに密着する。 尻尾の先のハートマークが、喜びで激しく揺れていた。
「ただいま。……まったく、締まりがいいな。待ちくたびれて干からびてたんじゃねえのか?」
「ううん……じゅぷ、じゅる……。ずっと、待ってた……。マスターのこと考えて、ずっと、濡らして、待ってたの……」
メイは恍惚とした表情で、改蔵の胸板に頬ずりした。 外の世界は怖かった。 店員も怖かった。 でも、今は違う。 改蔵と繋がっているこの瞬間だけが、彼女にとっての『安全地帯』であり『至福』だった。
「よし。偉いぞ。ちゃんと一人で行けたな」
改蔵が腰を動かし始める。 ご褒美だ。 いつものような一方的な搾取ではなく、彼女を慈しみ、満たすためのピストン。 グリ、グリと、メイの敏感な内壁を抉るように、そして愛撫するように。
「んぁっ! ほめられた……! マスターに、ほめられたぁ……!」
メイの脳髄が痺れる。 頭を撫でられる快感と、内側を突き上げられる快感が同時に襲ってくる。 彼女にとって、これ以上の喜びはこの世に存在しない。
「マヨネーズも買えた。フランクフルトも(余計だが)買えた。立派な『おつかい』だったぞ」
「はいぃ……っ! がんばりました……! だから、いっぱい……いっぱい『濃いの』ください……!」
「おう。約束だもんな」
改蔵の腰の動きが激しさを増す。 パン、パン、パン、と肉がぶつかる音が、静かな昼下がりのアジトに響き渡る。 メイの身体は小さく軽い。 改蔵が突くたびに、その身体が畳の上で揺さぶられ、白い乳房がプルプルと震える。
「あ、あ、あああっ! すごい! ごほうび! マスターの、硬い! 熱い!」
メイは白目を剥きかけながら、それでも必死に腰を振り、改蔵を迎え入れた。 サキュバスの本能が、改蔵の魔力を貪欲に吸い上げようと、膣内の
「(……しあわせ)」 「(わたし、ここにいていいんだ)」 「(マスターの『オナホ』で、いいんだ)」
その歪んだ、しかし純粋な幸福感が、彼女の感度を限界まで高めていく。
「メイ。いくぞ。たっぷりと飲め」
「あ! きます! マスターのが、きますぅ!」
改蔵はメイの腰をガッチリと掴み、最奥へと渾身の一撃を叩き込んだ。
「オラアアアアッ!」
「ん、イグッ! イグウウウウウウウッ!」
ドピュッ! ドピュルルルッ! 改蔵の魔力が、白濁した熱流となってメイの子宮に解き放たれる。 それは彼女が夢にまで見た、極上の『ご褒美』。 コンビニで買ったフランクフルトなど比ではない、本物の熱量。
「あ、あ、あぁぁぁぁ……! 熱いっ! お腹、熱いよぉ……!」
メイの身体が弓なりに反り、激しく痙攣する。 彼女の胎内が、注がれた魔力を一滴も漏らすまいと収縮し、改蔵を搾り上げる。 背中の小さな翼がパタパタと羽ばたき、尻尾がピンと立つ。
アジトの昼下がり。 だめな子のための、特別で濃厚なご褒美タイムが終わった。 彼女は役には立たない。 戦力にもならない。 だが、だらしなく舌を出して気絶しているその愛らしい顔を見れば、誰も彼女を追い出そうとは思わないだろう。
「……ごちそうさま、でした……」
薄れゆく意識の中で、メイは幸せそうに呟いた。 このアジトにとって、彼女はなくてはならない『愛すべき駄犬』なのだった。