「……何よこれ」
石川カスミ(いしかわ かすみ)の冷え切った声がカビ臭い土蔵に響き渡った。 彼女は目の前に広がる光景を軽蔑しきった目で見下ろしていた。 だらしないTシャツ姿の男。 その男に侍る小悪魔と
「ふざけないで」
カスミは履いていたハイヒールで埃っぽい床をガンと踏み鳴らした。
「私が求めたのは『力』よ。こんな……欲望にまみれた『豚小屋』で家畜になることじゃない」
彼女の言葉にはトップアイドルのオーラなど微塵もなかった。 剥き出しの野心と苛立ち。 それが彼女の本性だった。
「あらあら……。お客様、お茶をどうぞ?」
五十嵐イスズ(いがらし いすず)が空気を読まずにお盆を差し出した。
「いらない!」
パコーン! カスミはその手を乱暴に払いのけた。 湯呑みが床に転がり熱いお茶がこぼれる。
「あ……」
「気安く話しかけないで。アンタみたいな『能無し』と一緒にされるだけで反吐が出るわ」
カスミはイスズを睨みつけた。 その目は完全に敵意で満ちていた。
「……おい」
低い声がした。 それまでだらしなく寝転がっていた
「てめえ。俺の『女』に何してんだ」
「女? ハッ! ただの『肉便器』の間違いでしょ?」
カスミは鼻で笑った。 彼女は改蔵の凄みにも怯まない。 彼女は『本物』の力以外には価値を感じていなかった。 今の改蔵はただの薄汚い男にしか見えていない。
「私は『特別』なの。誰よりも輝いて誰よりも上に行く存在なの。アンタが『黒幕』なら私に相応しい『ステージ』を用意しなさいよ」
カスミは改蔵を指差した。 その態度はあまりにも傲慢。 だがその瞳の奥には燃えるような『渇望』があった。
「……ハッ」
改蔵の口元が歪んだ。 怒りではない。 歓喜だ。 (いいねえ。この『高慢ちき』) ドリル(リン)の時とも違う。 こいつは自分の価値を疑っていない。 自分こそが世界の中心だと信じている。 その『歪んだ自信』こそが最強の『ポテンシャル』だ。
「……マナ。準備だ」
「え? あ、はいっ! 儀式の準備を!」
「儀式? ああ例のセックスのこと?」
カスミは自らブラウスのボタンに手をかけた。
「いいわよ。それが『通過儀礼』なんでしょ? 受けてあげるわ」
彼女は躊躇いなく服を脱ぎ捨てた。 トップアイドルの衣装が汚れた床に落ちる。 156cmの小柄な身体。 だがその『張り』は凄まじかった。 瑞々しく弾けるような肌。 形の良いバスト。 引き締まったウエスト。 そして何よりも自信に満ちたその立ち姿。 彼女は裸になっても『見下ろして』いた。
「ほら。見なさいよ。これが『国民の妹』の身体よ。光栄に思いなさい」
「……上等だ」
改蔵もまた服を脱ぎ捨てた。 その目はギラギラと血走っていた。 目の前にいるのはテレビの向こう側の存在。 清廉潔白を売り物にするトップアイドルだ。 その『聖域』が今自分の目の前で無防備に晒されている。 改蔵の脳髄を背徳感が焼き焦がした。
「すげえ……。テレビで見るより何倍もエロい身体してやがる」
「当たり前でしょ。私は選ばれた人間なの。アンタみたいな薄汚い男が一生拝めないモノなのよ」
「違げえな」
改蔵はニヤリと笑い一歩踏み出した。
「今から俺が味わい尽くす『餌』だ」
「なっ……!」
改蔵はカスミの手首を掴むとそのまま強引に引き寄せた。 そしてその『国民の妹』の身体に顔をうずめた。
「ひゃっ!? ち、ちょっと! いきなり何よ!」
「うるせえ。まずは『検品』だ。トップアイドルの味を確かめさせろ」
改蔵はカスミの首筋を舐め上げその瑞々しい肌の感触を舌で確かめた。 甘い。 そして吸い付くような弾力。 これがトップレベルの素材か。 今まで抱いてきたどの女とも違う『価値』の味がする。
「や、やめ……! くすぐったい……!」
「ハッ! いい匂いさせやがって。毎晩高い美容液でも塗りたくってんのか?」
改蔵の手がカスミの身体を弄り回す。 豊満な胸を鷲掴みにしその弾力を確かめる。 引き締まった腰を撫で回しそのラインを堪能する。 まるで高級品を査定するかのような、だがどうしようもなく下品な手つき。
「さ、触るな! 私は道具じゃ……あんっ!」
カスミの口から甘い声が漏れた。 改蔵の指が彼女の敏感な部分を的確に刺激したからだ。
「へえ。テレビじゃ清純派ぶってるくせに感度は『汚れ』てんじゃねえか」
「う、うるさい……! 生理現象よ……! さっさと『儀式』をなさいよ!」
カスミは顔を真っ赤にして睨みつけた。 だがその瞳はすでに潤み始めている。
「ああ。してやるよ。たっぷりとな」
改蔵はカスミを魔法陣の中央に押し倒した。 冷たい床にトップアイドルの肢体が横たわる。 改蔵はその上に覆いかぶさった。
「いくぞアイドル様。俺の魔力を骨の髄まで染み込ませてやる」
「来なさい。アンタの全てを私が吸い尽くしてあげるわ」
改蔵はカスミの挑発に応えその『聖域』へ自らの欲望を突き立てた。
「……っ!」
カスミの身体が大きく跳ねた。 裂けるような痛み。 そして灼熱の魔力の侵入。
「(……これが、魔力)」
「(熱い。重い。でも……)」
カスミは目を見開いた。 彼女の体内に入ってきた『異物』。 それは彼女がずっと求めていた『何か』だった。 観客の歓声よりもスポットライトの熱よりももっと直接的で暴力的な『エネルギー』。
「もっと……!」
カスミが叫んだ。
「もっとよ! こんなもんじゃないでしょ! 私を満たしてみなさいよ!」
「このアマ……! 言ってくれるじゃねえか!」
改蔵のスイッチが入った。 こいつはただのアイドルじゃない。 欲望の怪物だ。 ならばこちらも『全力』で応えるしかない。
「オラアアアアッ!」
改蔵の腰の動きが激しくなる。 ガツンガツンと打ち付けられる衝撃。 普通の人間なら気絶するほどの負荷。 だが改蔵は止まらない。 相手が現役アイドルだという事実が彼の興奮を極限まで高めていた。 一度では足りない。 二度でも足りない。 この『最高級品』が壊れるまで味わい尽くしたい。
「あ! あ! すごい! 力が! 湧いてくる!」
「ハッ! まだまだだ! アイドルなんだろ!? もっといい声で鳴け!」
「あ、あ、あんっ! 気持ちいい! 力が! 私が『最強』になっていく!」
一回戦が終わっても改蔵は止まらなかった。 魔力を注入し続けそのまま二回戦へとなだれ込む。 体位を変え角度を変えカスミの身体のあらゆる場所を開発していく。
「あ! 改蔵様!」
マナがモニターを見て絶叫した。
「魔力反応が! 桁違いです! 彼女の『野心』が底なしです! いくら注いでも溢れません!」
「わあ! カスミちゃんすごいです! 身体がピカピカしてます!」
イスズが目を丸くしている。 カスミの全身から紫色のオーラが立ち昇っていた。 だが改蔵はその光景さえも楽しんでいた。
「いいぞ……! その調子だ!」
「はあ、はあ……! すごい、すごいわマスター! もっと! もっと奥に!」
三回戦。四回戦。 改蔵の絶倫なスタミナとカスミの底なしの野心がぶつかり合う。 カスミのアイドルとしての『仮面』は完全に剥がれ落ちていた。 そこにいるのは力に酔いしれ快楽に溺れる一匹の『女』だった。
「この……! 色狂いが! 世間のファンが見たら泣くぞ!」
「知らないわよそんなの! 今は、アンタの魔力が、一番欲しいの!」
カスミは改蔵の首に腕を回しその唇を奪った。 濃厚なキス。 唾液と共に魔力を貪り尽くす。 もはや『儀式』という名の『捕食』だった。
「くそっ……! こっちが吸い尽くされそうだ!」
改蔵は最後の力を振り絞った。 この高慢なアイドルを、この貪欲な女を、完全に屈服させ『完成』させるために。
「いくぞカスミ! これが『特別』だ! 全部持ってけ!」
改蔵は渾身の力を込めた。 最後の一滴まで絞り出すような絶頂。
「イイイイイイイイイッ!」
「あ! あ! ああああああああああっ!」
二人の身体が光の奔流に包まれた。 土蔵が揺れる。 ガラクタが吹き飛ぶ。 何度も繰り返された交合の果てに少女の『野心』が臨界点を突破した。
「最終変態、開始します!」
マナの声が震えていた。 光の中でカスミの身体が変わっていく。 だがそれは『異形』への変化ではなかった。 彼女の肌はより白くより艶やかに輝きを増す。 ポニーテールの髪が重力を無視して逆立ち漆黒の翼のように広がる。 そして彼女の肢体を包むように黒い光が凝縮した。 光沢のあるボンテージのような衣装。 鋭利なハイヒール。 露出度は高いがその肌は鋼鉄よりも硬い『魔力装甲』で覆われている。
「……」
光が収まった。 そこに立っていたのは怪人ではなかった。 人の形を保ったまま人を超えた存在。 『魔人』。
「……フフフ」
カスミは自分の手を見つめた。 指先から紫色の稲妻が迸っている。 彼女は軽く手を振った。 それだけで蔵の壁が衝撃波で吹き飛んだ。
「素晴らしい……!」
カスミの声が響く。 それは低く威厳に満ちていた。
「これよ! これが私が求めていた『力』!」
彼女は改蔵を見下ろした。 その目はもう『男』を見る目ではなかった。 『
「よくやったわ下僕。褒めてあげる」
カスミはボンテージ姿のまま改蔵の顔を踏みつけた。 そのヒールが改蔵の頬に食い込む。
「お前の名前は今日から『魔人ミスティ』だ」
改蔵は踏まれながらもニヤリと笑った。
「魔人ミスティ……。悪くないわ」
ミスティ(カスミ)は高らかに笑った。 その背後には圧倒的なカリスマと恐怖のオーラが渦巻いていた。 まさに『女王』の誕生だった。
ビーッ! ビーッ! その時マナのスマホが鳴った。 サイトウからの通信だ。
『な、なんだ今のエネルギー反応は! アジトが吹き飛ぶかと思ったぞ!』
「サイトウさん! 成功です!」
マナが泣きながら報告した。
「最強の戦力が完成しました! 『魔人ミスティ』です!」
『魔人だと!?』
ホログラムのサイトウがミスティの姿を見て絶句した。 その美しさと禍々しさ。 そして何よりもスカウターが計測不能を示すほどのエネルギー値。
『こ、これは……! 四天王クラス……いやそれ以上か!?』
「あら。おじさん」
ミスティがサイトウのホログラムを覗き込んだ。
「四天王? 笑わせないで。私が『一番』よ」
『なっ……!』
「今日から私が『頂点』に立つわ。文句ある?」
ミスティの威圧感にサイトウが後ずさる。
『す、すごい……! 首領に報告だ! ただちに幹部として登録する! 君は今日から『第五の四天王』だ!』
「五人目なのに四天王? 馬鹿みたい」
ミスティは鼻で笑った。 だがその表情はすぐに歪んだ。
「……っ」
彼女の身体がガクリと膝をついた。 全身の魔力が急速に『枯渇』していく感覚。
「あ、あれ……?」
ミスティの強気な表情が崩れる。 身体が熱い。 だるい。 そして何よりも。 猛烈に『疼く』。
「ま、マナちゃん! カスミちゃんの様子が!」
イスズが駆け寄る。 マナがモニターを見て叫んだ。
「魔力消費が激しすぎます! 彼女の『器』は強力ですが燃費が悪すぎます! 常に『最大出力』で稼働している状態です!」
「な、なによこれ……! 力が入らない……!」
ミスティはその場に崩れ落ちた。 ボンテージの隙間から汗が噴き出している。 彼女の瞳が再びとろりと潤み始めた。
「……ほしい」
「え?」
「魔力が……足りない……! なにこれ……おかしくなりそう……!」
彼女は這いつくばり改蔵の足元にすがりついた。 さっきまでの女王の威厳はどこへやら。 そこにはただの『中毒者』がいた。
「マスター……! 早く! 早く『注入』して!」
「ハッ! やっぱりそうなるか」
改蔵は起き上がりミスティを見下ろした。
「お前は強すぎるんだよ。だから俺の『魔力』がなきゃ存在を維持できねえ」
「う、うるさい! いいから早く! お願いします! ください!」
ミスティは改蔵のスウェットを引き裂く勢いで脱がせた。 そしてその『供給源』に貪りついた。
「あ、あ、あんっ! おいしい! すごい! 魔力が!」
「……やれやれ」
改蔵は苦笑いした。 最強の魔人。 だがその実態は魔力切れを起こすとただの『色狂い』になるポンコツだった。 サイトウとの通信はまだ繋がっていた。
『あー……黒野君? 彼女、大丈夫かね?』
「ああ。ちょっと『充電』が必要なだけだ」
改蔵はミスティの頭を撫でながら言った。 ミスティは「あへぇ」と情けない声を漏らしながら一心不乱に改蔵に奉仕している。
「サイトウさん。こいつは『定期メンテ』が必須だ。アジトから離せねえな」
『……わかった。彼女は『遊撃幹部』という扱いにしよう。必要な時だけ出撃させあとは君に任せる』
サイトウは何かを察したように通信を切った。
「ふふ。カスミちゃん可愛いですね」
イスズがしゃがみ込みミスティの背中をさすった。
「うるさい! 触んな! ……あ、でも、そこ気持ちいいかも」
ミスティはイスズの『癒し』にも反応してしまった。 こうしてアジトにまた一人『厄介な住人』が増えた。 プライドは高いが燃費は最悪。 最強の魔人ミスティ。 彼女の『覇道』は改蔵の『股間』に繋がれていた。