※この作品はR-18です。

ヤッて改造! 〜悪の組織の黒幕です〜   作:ろくさん

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29話

 

 日本の片田舎にある古びた民家。 その居間には今日も今日とて堕落とエロスの空気が充満していた。 ちゃぶ台を囲むのはTシャツ一枚の姿でかいがいしく世話を焼く五十嵐イスズ(いがらし いすず)。 主の膝の上を陣取る小悪魔マナ。 足元にまとわりつくサキュバス怪人(ペット)のメイ。 この完璧なハーレム生態系の頂点に君臨する黒野改蔵(くろの かいぞう)は満足げに朝の茶をすすっていた。

 

 だが今日の空気は少しだけ違っていた。 部屋の中央に異質な『覇気』を放つ存在が仁王立ちしていたからだ。

 

「……狭い。汚い。臭い」

 

 石川カスミ(いしかわ かすみ)。 いや今は悪の組織の第五の幹部『魔人ミスティ』。 彼女は昨日手に入れたボンテージ風の黒い魔力装束に身を包みアジトの惨状を冷ややかな目で見下ろしていた。 その背中には漆黒の翼のように広がった髪が揺らめいている。 全身から溢れ出る紫電のオーラは隠そうとしても隠しきれない。 まさに『魔人』の風格だった。

 

「あらあらカスミちゃん。そんな怖い顔しないでお茶でも飲みましょう?」

 

 イスズが空気も読まずに湯呑みを差し出す。

 

「気安く呼ばないで。私は『魔人ミスティ』よ。アンタみたいな家畜とは格が違うの」

 

 ミスティは手も触れずに念動力で湯呑みを弾いた。 ガシャン。 畳にお茶がこぼれる。

 

「あ……」

 

「おい」

 

 改蔵が低い声を上げた。 場の空気が一瞬で凍りつく。 ミスティは鼻で笑った。

 

「なによマスター。文句があるならもっとマシな『玉座』を用意することね。私がここにいてあげるだけでも奇跡なんだから」

 

 彼女は改蔵に対しても不遜だった。 昨夜あれだけ喘いで魔力をねだったくせに魔力が満タンになればこの態度だ。 だが改蔵は怒らなかった。 むしろその高慢さを楽しむようにニヤリと笑った。

 

「威勢がいいな新人。だが飯を粗末にするのは感心しねえ」

 

 改蔵はこぼれたお茶を指差した。

 

「片付けろ」

 

「は? 私が? 冗談でしょ」

 

「命令だ。俺の『魔力』で動いてる分際で飼い主に逆らうな」

 

 改蔵の瞳がギラリと光った。 『契約』のパスが強制力を発動させる。 ミスティの身体がピクリと反応した。 逆らえない。 身体の奥底に刻まれた『快感』と『服従』の記憶が彼女の膝を折らせようとする。

 

「くっ……! この……!」

 

 ミスティは屈辱に顔を歪めながら指先を動かした。 こぼれたお茶が魔法のように宙に浮き湯呑みに戻っていく。 そして湯呑みはイスズのお盆の上へと着地した。

 

「わあ! すごいですカスミちゃん! 超能力ですね!」

 

「フン! 魔法よ! さっさと行きなさい!」

 

 ミスティは顔を背けた。 改蔵は満足そうに頷いた。

 

「よし。躾はこんなもんだろ」

 

 その時マナの魔術スマートフォンが鳴り響いた。 サイトウからの通信だ。

 

『黒野君! 準備はいいかね!』

 

 サイトウの顔色はいまだかつてないほど悪かった。 それもそうだろう。 突如として現れた規格外の戦力(ミスティ)の扱いに組織全体が動揺しているのだ。

 

「おう。こっちの『女王様』はやる気満々だぜ」

 

『そ、そうか……。では作戦を伝える』

 

 サイトウがマップデータを送信してきた。 表示されたのは都心にある巨大な野外スタジアムだった。

 

『今日ここで『チャリティヒーローフェスティバル』が開催される。ジャスティンジャーをはじめとする多くのヒーローが参加するイベントだ』

 

「へえ。客がいっぱい入りそうだな」

 

『そうだ。そこに『魔人ミスティ』を投入する。目的は……』

 

「殲滅でしょ?」

 

 ミスティが割り込んだ。 彼女はホログラムの地図をぎらついた目で見つめている。

 

「全員まとめて血祭りにあげてあげるわ。私の『デビューライブ』に相応しいステージね」

 

『い、いや殲滅まではしなくていいが……我々の『武力』を世界に見せつけるのが目的だ』

 

 サイトウが気圧されている。

 

「わかってるわよ。派手にやればいいんでしょ。任せなさい」

 

 ミスティは翼を広げた。 その風圧だけでアジトの障子がガタガタと揺れる。

 

「行ってくるわマスター。指をくわえて見てなさい。私が『本物』の輝きを見せてあげる」

 

「おう。期待してるぜ」

 

 改蔵の言葉を背にミスティの姿が黒い閃光となってアジトから消えた。 転移魔法すら使わず自らの魔力で空間を跳躍したのだ。

 

「……行ったか」

 

 改蔵はニヤリとした。

 

「よしマナ。モニター出せ。特等席で拝ませてもらおうじゃねえか」

 

「はいっ! 観測準備完了です!」

 

「わあ! 応援しましょう!」

 

「……マスター。あし、あきました。ここ、いいですか」

 

 いつものメンバーがいつものように万年床になだれ込んだ。 アジトの『共同儀式(観戦)』が始まる。

 

 ***

 

 野外スタジアムは数万人の観客で埋め尽くされていた。 色とりどりのペンライト。 地響きのような歓声。 ステージ上ではジャスティンジャーがポーズを決め司会のお姉さんが子供たちを煽っている。

 

「みんなー! 正義の味方を応援してねー!」

 

「「「ジャスティンジャー!」」」

 

 平和な休日。 正義の祭典。 だがその空は突如として暗転した。

 

 ドオオオオオオン! 

 

 雷鳴。 晴天の空に紫色の稲妻が走った。 スタジアムの照明が一斉に爆ぜガラスが砕け散る。

 

「きゃあああああ!」

 

「な、なんだ!?」

 

 パニックになる観客たち。 その視線が一点に集まる。 スタジアムの最上部。 照明塔の上に一人の『影』が立っていた。 漆黒の翼。 ボンテージ風の衣装。 そして見下すような冷酷な笑み。

 

「ごきげんよう愚民ども」

 

 ミスティの声はマイクを使っていないのにスタジアムの隅々まで響き渡った。 魔力による拡声だ。

 

「退屈な茶番は終わりよ。ここからは私の『独壇場(オンステージ)』だわ」

 

「貴様! 何者だ!」

 

 ジャスティンレッドが叫んだ。 ミスティはフフンと鼻で笑うと指先を弾いた。

 

 バチイイイッ! 

 

 紫電の鞭がレッドの足元を薙ぎ払った。 ステージが爆発しジャスティンジャーの五人が吹き飛ぶ。

 

「うわあああっ!?」

 

「名乗る必要なんてないわ。強いて言うなら……そうね。『絶望』とでも呼んでおきなさい」

 

 ミスティは照明塔からふわりと飛び降りた。 重力を無視した優雅な着地。 彼女がステージに立つだけで空気が重くなる。 圧倒的なカリスマ。 観客たちは悲鳴を上げることさえ忘れその美しくも恐ろしい姿に見入っていた。

 

「さあ踊りなさいヒーロー。私のバックダンサーとしてね!」

 

 ミスティが両手を広げた。 無数の黒い光弾がジャスティンジャーに襲いかかる。 それは一方的な蹂躙の始まりだった。

 

 ***

 

「うひょー! 派手にやってんじゃねえか!」

 

 アジトの六畳間。 改蔵はモニターに映るミスティの暴れっぷりに大興奮していた。 彼の身体はすでに三人の女たちによって『拘束』されている。 右腕にはイスズ。 左腕にはマナ。 そして股間にはメイ。 いつものフォーメーションだ。

 

「あ、あんっ! すごいですミスティさん! ジャスティンジャーが手も足も出ません!」

 

 マナが改蔵の腕に顔を擦り付けながら実況する。

 

「わあ! カスミちゃんキラキラしてます! アイドルみたいです!」

 

 イスズが改蔵の肩に胸を押し付けながら天然な感想を漏らす。

 

「……んむ。マスター。おいしい」

 

 メイは改蔵のイチモツを口に含み一心不乱に奉仕を続けている。 戦闘の激しさと呼応するように改蔵の『陽』の気も高まっていく。

 

「オラオラ! いいぞミスティ! もっとやれ! 客を沸かせろ!」

 

 改蔵の興奮がメイの口内を刺激する。 メイが喉を鳴らしてそれを受け止める。 モニターの中ではミスティがジャスティンソードを素手で受け止めへし折っていた。

 

「そんなナマクラで私に傷がつくと思って? 舐めないで」

 

 バキィッ! 鋼鉄の剣が飴細工のように砕ける。

 

「ぐはっ! ば、化け物め……!」

 

 レッドが膝をつく。 他の四人はすでに戦闘不能だ。 たった一人で戦隊を壊滅寸前まで追い込んだ。

 

「ハッ! つまらないわね。アンタたちじゃ『前座』にもならないわ」

 

 ミスティは退屈そうに髪をかき上げた。 その姿は確かに『最強』だった。 だが。

 

「……ん?」

 

 アジトでマナがモニターの数値を見て眉をひそめた。

 

「あ! 改蔵様! まずいです!」

 

「どうした」

 

「ミスティさんの魔力残量が! 急激に低下しています!」

 

「はあ?」

 

「彼女……飛ばしすぎです! 開幕から全力全開の魔力放出を続けていたせいでエネルギー切れ(ガス欠)寸前です!」

 

 モニターの中。 ミスティの動きがふと止まった。 紫電のオーラが不規則に明滅し始める。

 

「……っ!?」

 

 ミスティが胸を押さえてよろめいた。 顔から余裕が消え脂汗が滲み出る。

 

「な、なによこれ……身体が、重い……」

 

 膝が震える。 立っていられない。 圧倒的な力の代償。 彼女の燃費の悪さは致命的だった。

 

「今だ! 奴に隙ができた!」

 

 レッドがその機を見逃さなかった。 彼は最後の力を振り絞り立ち上がった。

 

「みんな! ストームキャノンだ! 残ったエネルギーを全部回せ!」

 

「「「「ロジャー!」」」」

 

 ボロボロのヒーローたちが合体バズーカを構える。 ミスティは動けなかった。 魔力が枯渇し指一本動かせない。

 

「う、嘘でしょ……こんな、ところで……」

 

 彼女の野心が恐怖に塗り替えられる。 スポットライトを浴びて輝くはずのステージが処刑台に見えた。

 

「チャージ完了! ファイヤアアアア!」

 

 虹色の極太ビームが発射される。 直撃コースだ。

 

「きゃあああああああっ!」

 

 ミスティが悲鳴を上げた。 その時。

 

「ちっ! しょうがねえな!」

 

 アジトで改蔵が舌打ちした。 彼はメイの頭を掴み強引に引き剥がすとマナに向かって叫んだ。

 

「マナ! 『強制送還』だ!」

 

「は、はいっ! 緊急転送シーケンス起動!」

 

 マナが魔術スマホを操作する。 モニターの中でビームがミスティに直撃する寸前。 彼女の足元に魔法陣が展開された。

 

 シュンッ! ミスティの姿が掻き消える。 ビームは無人の照明塔を粉砕し夜空に花火のような爆発を描いた。

 

「……逃げられたか」

 

 レッドが悔しそうに拳を握る。 だがスタジアムは歓声に包まれた。 ヒーローの勝利だ。 辛くも守られた平和。

 

 だがアジトの平和はこれから乱れるところだった。

 

 ドサッ! 土間の床にミスティが転がり落ちてきた。 ボンテージはボロボロ。 髪は乱れ全身から汗が噴き出している。 さっきまでの女王の威厳は見る影もない。

 

「はあ……はあ……」

 

 彼女は這いつくばりながら涙目で改蔵を見上げた。 その瞳は『渇望』で濁りきっていた。

 

「ま、マスター……」

 

 震える声。 それは助けを求める声ではなかった。 薬切れのジャンキーの声だ。

 

「魔力……魔力を、ください……! 空っぽなの……! 死んじゃう……!」

 

 彼女は這いずり改蔵の足にしがみついた。 プライドもへったくれもない。

 

「早く! 早くして! 中に入れて! 満たして!」

 

「……まったく。世話の焼ける『女王様』だぜ」

 

 改蔵は呆れながらもその乱れた姿に興奮を隠せなかった。 高慢な女がなりふり構わず懇願する姿。 最高にそそる。

 

「ほらよ。ガス欠なんだろ? たっぷり『給油』してやるから口開けろ」

 

 改蔵はスウェットを下ろした。 ミスティは待てない獣のようにそれに食らいついた。

 

「んぐッ! んんーッ! おいしい! 魔力が! 染み渡る!」

 

「ひゃあああ! 目の前で! また目の前で!」

 

 マナが顔を覆う。 イスズが「あらあら」とタオルを持ってくる。 メイが「ずるい」と頬を膨らませる。

 

「いいかミスティ。お前は俺がいなきゃ『輝けない』んだよ」

 

 改蔵は奉仕するミスティの頭を鷲掴みにし腰を振った。 魔力が彼女の体内に流れ込み枯渇した野心に火を灯す。

 

「んうッ! はい! そうです! 私はマスターの『所有物』です! だからもっと! もっと力を!」

 

 最強の魔人はアジトの土間でただの『魔力中毒者』に成り下がっていた。 この燃費の悪さがある限り彼女の世界征服はまだまだ遠そうだった。

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