※この作品はR-18です。

ヤッて改造! 〜悪の組織の黒幕です〜   作:ろくさん

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3話

 

「儀式」の翌朝。

 古びたアジトに差し込む光は、昨日と何も変わらない、長閑なものだった。

 居間の畳の上では、黒野改蔵(くろの かいぞう)が、大きめの茶碗で緑茶をすすっている。

 その傍らには、サポート担当の小悪魔、マナが、どこか誇らしげな顔で座っていた。

 

「いやあ、しかし、昨夜の儀式は見事でしたね、改蔵様」

「ん? ああ」

 

 改蔵の返事は気の抜けたものだ。

 彼の視線は、縁側で日向ぼっこをしている近所の三毛猫に注がれている。

 

「まさか、あれほどの魔力注入に『素材』が耐えきるとは。いえ、耐えるどころか、自ら魔力を受け入れ、完全に変態を遂げるなんて。さすが改蔵様のお見立て(と魔力)です」

「お前が連れてきたんだろ」

「そ、そうです! 私の『潜在的怪人因子(ポテンシャル)スキャナー』の性能の高さと、私の的確なスカウト能力の賜物でもあります!」

 

 マナが、小さな胸をぐいと反らせる。

 そのレオタード姿も、すっかりこの和室に馴染んでいた。

 

「で、その『傑作』はどこ行ったんだよ」

「それなら、あちらに」

 

 マナが指差したのは、居間の隣にある、あの埃っぽい土蔵だった。

 改蔵が視線を向けると、ガラクタの山にしか見えない空間の、その隅。

 何もないはずの壁際が、もぞりと動いた。

 

「……」

 

 壁とまったく同じ色、同じ質感だった『それ』が、ゆっくりと輪郭を取り戻していく。

 現れたのは、昨夜誕生したばかりの女怪人。

 元・縞田チアキ、今やその名を『怪人カメレオン』という。

 彼女は、自らの新しい身体をうっとりと見下ろしていた。

 

「……すごい」

 

 カメレオンの、湿り気を帯びた声が蔵に響いた。

 

「見える。全部見える。三百六十度、死角がない」

 

 左右別々の方向にギョロリと動く瞳が、蔵の中をくまなく観察している。

 彼女は、おもむろに自らの腕を、床に積まれた古い新聞紙の山に置いた。

 すると、驚くべきことに、腕の表面が瞬時に黄ばんだ紙の質感と、黒いインクのシミ模様に変化した。

 

「溶けてる。私、消えてる……!」

 

 その声は、恐怖ではなく、歓喜に打ち震えていた。

 昨日までの、退屈な『縞田チアキ』を演じていた自分は、もうどこにもいない。

 彼女は、望んだ通りの『変身』を手に入れたのだ。

 その恍惚とした姿に、マナは満足げに頷いた。

 

「フフフ。素晴らしい適応力です。これなら、すぐにでも実戦投入できますね」

「実戦ねえ」

 

 改蔵が、湯呑みの最後の一滴をすすった、その時だった。

 ビーッ! ビーッ! 

 マナの懐から、魔術スマートフォンがけたたましいアラート音を鳴らした。

 

「わっ!?」

「なんだなんだ」

「しゅ、首領からです! あ、いえ、四天王のサイトウさんからだ!」

 

 マナが慌てて画面をタップすると、ホログラムのように、しかめっ面の中年男性の顔が浮かび上がった。

 髪の毛が少し気になる、四十路のおじさん。悪の組織の幹部、サイトウだ。

 

『あー、マナ君か。聞こえるかね?』

「は、はいっ! サポート担当悪魔マナ、いつでも任務可能です!」

『いや、そんな畏まらなくていいから。それより、新人(怪人)が一体完成したと報告があったが、本当かね?』

「はい! まさに今、最終調整が完了したところです!」

 

 マナがビシッと敬礼する。

 その隣で、改蔵が鼻をほじっているのが、ホログラムの隅に映り込んでいる。

 

『……そ、そうかね。まあいい。首領が、至急、その新人の『威力偵察』を行え、とご下命だ。場所は、ここ。データを送る』

 

 ピロリン、と軽い電子音が鳴り、マナのスマホに作戦地域のマップが表示された。

 市内でも、特に人通りの多い駅前広場だった。

 

「威力偵察、ですか。つまり?」

『要するに、派手に暴れてこい、ということだ。ここのところ、ジャスティンジャーと聖剣姫の連携が良くてね。我々の戦線が膠着している。新戦力で奴らのド肝を抜いて、戦線をかき乱してやれ、と。まあ、現場は大変なんだがね……』

 

 サイトウは、ブツブツと胃薬の心配でもするように呟いている。

 

「了解しました! 我が軍団の精鋭、必ずや正義の度肝を抜いてみせます!」

『ああ、頼んだよ。あまり無理はさせないように。ああ、それと黒野君』

「あん?」

 

 不意に話を振られ、改蔵が間の抜けた声を上げた。

 

『君のおかげで、怪人の『質』は上がっていると、首領もご満悦だ。引き続き、頼むよ。期待している』

 

 それだけ言うと、サイトウのホログラムは、胃痛をこらえるような顔のまま、プツリと消えた。

 

「……だ、そうだ。おい、カメレオン」

 

 改蔵が、蔵に向かって声を張る。

 

「初陣だ。派手に暴れてこい、だとよ」

 

 蔵の暗がりから、カメレオンがぬるり、と姿を現した。

 その瞳は、獲物を狙う爬虫類のように、ギラギラと輝いていた。

 

「お任せください、マスター。私の『変身』……あの愚かな人間たちに、存分に見せつけて差し上げますわ」

 

 その声には、かつてのギャル大学生、縞田チアキの面影は、もはや微塵も残っていなかった。

 

 ***

 

 駅前広場は、平日の昼下がりにも関わらず、多くの人々で賑わっていた。

 買い物客、待ち合わせをする若者、鳩に餌をやる老人。

 誰も気付いていなかった。

 その広場の中心にある、平和の象徴だというブロンズの女神像。

 その表面が、まるで生き物のように、わずかに脈打っていることに。

 

(……フフフ)

 

 怪人カメレオンは、女神像に完璧に擬態しながら、眼下を行き交う人々を見下ろしていた。

(誰も、私に気付かない。私はここに『いる』のに、誰の目にも『映らない』)

(なんて、素晴らしい感覚!)

 彼女は、自らの能力に酔いしれていた。

『縞田チアキ』だった頃の、周囲の目を気にして、必死で自分を演じていた日々が、嘘のようだ。

 今は、私が見る側。観察する側。

 

(さて、と。まずは、手始めに)

 

 カメレオンの視界が、ベンチで談笑している女子高生グループを捉えた。

 昨日までの自分と、少しだけ重なる姿。

 カメレオンは、女神像の台座から、音もなくその長い尾を伸ばした。

 尾の色は、瞬時に石畳と同じ灰色に変わる。

 

「てか、昨日のドラマ見た?」

「見たー! マジやばくなかった?」

「ねー。あ、ちょっと、足元なんか……」

 

 女子高生の一人が、足元の異変に気付いた。

 だが、遅かった。

 しなやかな尾が、少女たちの足首を薙ぎ払う。

 

「「キャアアアッ!?」」

 

 けたたましい悲鳴。

 何の前触れもなく吹き飛ばされた少女たちを見て、広場の人々が一斉にそちらを向いた。

 

「え? なに?」

「今の……?」

 

 人々が何が起きたか理解できずにいる、その一瞬。

 カメレオンは、すでに女神像から離れ、広場に面した大型ビジョンの側面に張り付いていた。

 その体色は、巨大なアイドルの広告写真と、まったく同じ色合いに変わっている。

 

「フフフ。どこを見ているの?」

 

 カメレオンは、今度はビルの壁から、近くの街灯を尾で叩き折った。

 ガシャン! という轟音と共に、街灯が地面に倒れ伏す。

 ここでようやく、人々はパニックに陥った。

 

「怪人だ!」

「どこだ!? どこにいるの!?」

「いやあああ!」

 

 逃げ惑う人々。

 阿鼻叫喚の地獄絵図。

 カメレオンは、それをビルの壁から見下ろし、恍惚とした笑みを浮かべていた。

 

「そうよ、逃げなさい! どこにもいない私から!」

 

 カメレオンが、更なる破壊を行おうとした、その時だった。

 

「そこまでだ! 悪の組織の怪人!」

 

 五色の閃光と共に、広場の中央に、あのヒーローたちが降り立った。

 

「正義の五つ星! 正義戦隊ジャスティンジャー、見参!」

 

 赤、青、緑、黄、白。

 ポーズを決める五人の戦士。

 市民たちが、安堵の声を上げる。

 

「ジャスティンジャーだ!」

「助けに来てくれたんだ!」

 

 ジャスティンレッドが、周囲を警戒しながら叫んだ。

 

「怪人! どこにいる! 姑息な真似はやめて、姿を現せ!」

「……フフフ」

 

 カメレオンは、ビルの壁に擬態したまま、せせら笑った。

(愚かなヒーロー。私が、どこに『いる』か、だって?)

(私は、どこにでも『いる』のよ)

 

 ***

 

「お、始まった始まった」

 

 一方、悪の組織のアジト。

 居間の畳の上では、改蔵が胡坐をかき、マナが展開した魔術モニター(空間投影)を眺めていた。

 モニターには、駅前広場の様子が、複数のアングルでくっきりと映し出されている。

 テーブルの上には、改蔵がどこからか出してきた緑茶と、湿気ったせんべいが置かれていた。

 どう見ても、日曜の昼下がりにヒーロー番組を見る親子の図だ。

 

「がんばれー! カメレオンさーん!」

 

 マナが、小さなこぶしを握りしめて応援している。

 

「お、いきなりジャスティンジャーかよ。派手なデビュー戦だな」

「見てください、改蔵様! まったく気付いていませんよ、あの五人組!」

 

 モニターの中では、ジャスティンジャーが、警戒しながらも的を見つけられずにいる。

 その背後。ビルの壁から、カメレオンの尾が、ゆっくりとレッドに狙いを定めていた。

 

「あ、やべ、レッド後ろ」

「いけー! そこです!」

 

 バシッ! 

 尾の一撃が、ジャスティンレッドの背中を強かに打ち据えた。

 

「ぐあっ!?」

 

 不意の一撃に、レッドが地面を転がる。

 

「レッド!?」

「どこからだ!?」

 

 仲間たちが慌てて駆け寄る。

 

「ハッハァ! やるじゃねえか、あいつ! いいぞー!」

 

 改蔵が、せんべいをかじりながら囃し立てる。

 マナも、自分のことのように喜んでいた。

 だが、改蔵は、せんべいを置くと、テレビ観戦に飽きたように、マナの小さな身体に手を伸ばした。

 

「ひゃっ!?」

 

 その手が、マナの黒いレオタードの股間部分に、なんのためらいもなく差し込まれた。

 

「か、改蔵様!? い、今、大事な戦闘中継です! カメレオンさんの初陣が!」

「分かってるよ。だからこその『契約の安定』だろ?」

 

 改蔵は、マナの小さな耳に、悪魔のように囁いた。

 

「昨日あれだけ魔力を『儀式』で使ったんだ。今日こうして、怪人が『実戦』で魔力を使ってる。大元の俺様が、魔力切れになったらどうすんだよ」

「あ……!」

「サポート担当悪魔として、マスターの魔力を常に『安定』させとくのが、お前の『義務』なんじゃねえのか?」

「そ、その通りです……!」

 

 マナの空色の瞳が、とろりと潤んだ。

 首席才媛だった頃の理性が、「義務」と「快感」によって、再び上書きされていく。

 

「さ、さすが改蔵様です……! なんて、合理的で、的確なご判断……! あ、あぁん!」

 

 改蔵は、マナをそのまま畳の上に押し倒した。

 レオタードがたくし上げられ、小さな身体が露わになる。

 改蔵は、モニターから一切目を離さないまま、自らの巨根を、慣れた様子でマナの秘所に突き立てた。

 

「ひぅうんっ!」

 

 マナの背中が小さく跳ねる。

 

「ほら、観戦の続きだ。しっかり応援しろよ」

「は、はいぃっ! が、がんばえー! カメレオンさ、あんっ!」

 

 アジトの中では、世界で最も不謹慎な、戦闘観戦(という名のセックス)が始まった。

 

 ***

 

 モニターの中では、戦局が動いていた。

 

「くそっ、どこだ!」

 

 ジャスティンブルーが、ビームライフルを乱射する。

 だが、弾丸はすべて、誰もいない壁や地面を抉るだけだ。

 

「フフフ。無駄よ」

 

 カメレオンは、今度は広場の噴水の水の中に潜み、水流に擬態していた。

 水の中から伸びた尾が、イエローとグリーンを同時に薙ぎ払う。

 

「「うわあああっ!」」

「ダメだ、レッド! まったく読めない!」

 

 ジャスティンジャーは、完全に翻弄されていた。

 

「いけいけー! カメレオンさん、押してます!」

「あんっ! も、もっと、です! あ、改蔵様!」

 

 アジトでは、改蔵の腰の動きが、戦闘の激化と比例するように、速度を上げていた。

 マナの嬌声が、ジャスティンジャーの苦戦する声と、奇妙なハーモニーを奏でる。

 

「ハッ! ざまあねえな、ジャスティンジャー! いいぞ、もっとやれ、カメレオン! あ、ほら、ブルーがまた転んだぞ、だっせえ!」

「きゃー! すごいです! あ、あそこ! レッドの背中が、またガラ空き、です! ああんっ!」

 

 改蔵の激しいピストンと、モニター内のカメレオンの縦横無尽な攻撃が、完璧にシンクロする。

 このまま、怪人が勝利するのではないか。

 マナがそう思い始めた、その瞬間だった。

 

「そこかっ!」

 

 モニターに、鋭い女の声が響いた。

 銀色の閃光。

 噴水の水が、真っ二つに切り裂かれた。

 

「ぎゃあっ!?」

 

 水しぶきと共に、擬態が解けたカメレオンが、広場の石畳に叩きつけられた。

 その腹部には、一筋の切り傷が走っている。

 

「なっ!? なぜ、わかった……!」

 

 カメレオンが驚愕に見上げた先。

 そこに立っていたのは、フリフリの衣装とはおよそ不釣り合いな、鋭い剣聖の眼差しを持つ少女。

 聖剣姫キリハだった。

 

「気配がダダ漏れだ。そんなもので私を騙せるとでも?」

 

 キリハは、聖剣をカメレオンに突きつけた。

 

「あいつは…」

「ああっ! キリハです!」

 

 マナが、素っ頓狂な声を上げた。

 

「な、なんであんな強いんですか、あの魔法少女(の皮を被った剣士)! 反則です!」

「あー、こりゃダメだ。終わったな」

 

 改蔵が、舌打ちした。

 

「あいつ、気配探知までできんのかよ。カメレオンとは相性最悪だ」

「そ、そんなぁ! せっかくの怪人さんが……!」

 

 マナが涙目になった、その時。

 改蔵の動きが、頂点に達した。

 

「お、こっちも、いくぞ……!」

「えっ、あ、ああっ!」

 

 モニターの中。

 キリハが、聖剣を天に掲げる。

 

「聖剣・一閃!」

「や、やめ……!」

 

 カメレオンの悲鳴。

 閃光が、カメレオンの身体を包み込む。

 

「あぁ! 負けちゃったー……!」

 

 マナが、絶叫した。

 

「ぅッ、イグウウウウウウッ!」

 

 改蔵の魔力(物理)が、マナの子宮の奥深くに叩き込まれるのと、カメレオンが聖剣の一撃を受けて爆散(擬態能力の霧散)したのは、まったくの同時だった。

 

 ***

 

 爆炎が晴れた広場。

 そこには、気を失い、裸で倒れている一人の女性、縞田チアキの姿があった。

 

「け、怪人が、人間に戻ったぞ!?」

 

 ジャスティンレッドが、驚きの声を上げる。

 キリハは、ふん、と鼻を鳴らし、聖剣を鞘に収めた。

 

「悪の組織の仕業か。また攫われた人間だな。面倒をかける」

「き、キリハ君! すまない、助かった!」

「ジャスティンジャーは、その女を回収して研究所に送れ。何かわかるかもしれん。私は帰る」

 

 キリハは、ヒーローたちに後処理を押し付け、さっさと転移魔法で消えていった。

 

「……」

 

 回収され、担架で運ばれていくチアキ。

 その表情は、なぜか、とても満足げに微笑んでいるように見えた。

 

 ***

 

「……ふう」

 

 アジト。

 改蔵は、畳の上で一服し、マナは、ぐったりと四肢を投げ出して脱力していた。

 

「まあ、初陣にしちゃ上出来だろ。キリハが出張ってきたのが、運の尽きだ」

「うぅ……。せっかくの、カメレオンさんが……」

 

 マナは、まだ少し悔しそうだ。

 

「で、でも……改蔵様」

 

 マナは、とろんとした目で改蔵を見上げた。

 

「魔力の補給(セックス)、ありがとうございました……。とっても、『安定』しました……」

「おう。そりゃよかった」

 

 改蔵は、立ち上がり、縁側に出て大きく伸びをした。

 長閑な田舎の風景は、何も変わらない。

 

「さて、と」

 

 改蔵は、ニヤリと笑った。

 

「次の『素材』、探しに行くか」

「はいっ!」

 

 マナが、ガバッと起き上がる。

 その瞳には、新たな任務(と快感)への期待が、ギラギラと輝いていた。

 悪の組織の黒幕による、エロエロスローライフは、まだ始まったばかりだ。

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