※この作品はR-18です。

ヤッて改造! 〜悪の組織の黒幕です〜   作:ろくさん

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37話

 古びた木造アジトの朝は、今日も今日とて暴力的なまでの『愛』と『欲望』に満ちていた。  お盆を過ぎても衰えを知らない朝日が障子の桟を通り抜け、六畳間に敷き詰められた万年床を照らし出す。  そこには、肉色の海が広がっていた。

 

「……ん」

 

 黒野改蔵は、重たい瞼を持ち上げた。  身体が重い。物理的に重い。  彼の胸板の上には、輝くようなピンクブロンドの髪と、長くふさふさしたウサギの耳を持つ少女が、へばりつくように眠っていた。  月村ウナ。  先日、組織の本部所属となった『ウサギ怪人』だ。彼女は本来、本部のエネルギー管理課に勤務しているはずだが、「向こうは堅苦しくて退屈」と言って、ここ数日はアジトに入り浸っていた。  彼女は眠っている間さえも、改蔵の体温と匂いを独占しようと、手足をタコのように絡みつかせている。

 

「……ふふ。マスター。わたし、ここにいるよ。みて、みて」

 

 ウナが寝言のように呟き、改蔵の首筋に顔を埋めた。  その吐息がくすぐったい。  彼女の強烈な『承認欲求』は、睡眠欲さえも凌駕しているようだった。

 

「おい、起きろウサギ。重てえぞ。仕事はどうした」

 

 改蔵が身体を揺するが、ウナは「有給ぅ……」とさらに強くしがみついてくる。  その時、布団の裾の方から、不満げな声が上がった。

 

「……マスター。あし、かえして」

 

 サキュバス怪人のメイだ。  彼女は改蔵の足の間で丸くなり、抱き枕のように改蔵の右足を抱え込んでいた。  新入りのウナに『特等席(胸の上)』を奪われたことが、未だに面白くないらしい。  尻尾のハートが不機嫌そうにバタンバタンと揺れている。

 

「あらあら。皆さん、朝から元気ですね」

 

 枕元から、聖母のような声が降ってきた。  五十嵐イスズだ。  彼女はすでに起きており、改蔵のYシャツ一枚にエプロンという新妻のような(ただし下は履いていない)格好で、朝食のお盆を運んできたところだった。  ふわりと、味噌汁と焼き魚の香ばしい匂いが漂う。

 

「今日の朝ごはんは、スタミナ満点のニラ玉と、あさりのお味噌汁ですよ。昨日の夜、凄かったですから……栄養つけてくださいね」

 

「おお、気が利くな」

 

 改蔵が身体を起こそうとすると、左腕にしがみついていた小悪魔マナも目を覚ました。

 

「はっ! 朝ですか! 改蔵様! おはようございます!」

 

 マナは飛び起きるなり、習慣のように改蔵の頬にキスをした。

 

「んーっ! ……ふぅ。今朝の魔力も上々です! バイタル安定! 今日も世界征服日和ですね!」

 

「ずーるーいー! マナちゃんだけ!」

 

 ウナが抗議の声を上げ、負けじと反対側の頬に吸い付く。  左右からのキスの嵐。  足元からの甘噛み。  そして目の前には、湯気の立つ朝食と、それを微笑ましく見守る爆乳の聖女。  これ以上ないほどの『理想郷(ハーレム)』。  改蔵は、この堕落しきった日常を心底愛していた。

 

 騒がしい朝食を終え、全員で食後のお茶(ウナは改蔵の膝の上、メイは背中、マナは肩揉み)を楽しんでいた時だった。  土間の引き戸が、遠慮がちに叩かれた。

 

 コン、コン。

 

「……ん? 誰だ?」

 

 改蔵が眉をひそめる。  このアジトに客など来るはずがない。  あるとすれば、サイトウからの緊急連絡か、あるいは通販で頼んだ精力剤の配達か。  だが、扉の向こうから聞こえてきたのは、聞き覚えのある、おっとりとした声だった。

 

「あのぉ……。改蔵さん? いらっしゃいますかぁ?」

 

「あ! ノドカちゃん!」

 

 イスズがぱあっと顔を輝かせ、パタパタと玄関へ走った。  引き戸が開かれると、そこには一人の女性が立っていた。  渡辺ノドカ。  かつて『牛怪人』へと変貌し、その『癒し』と『豊穣』の能力でヒーローたちを戦意喪失させた女子大生だ。  彼女は今、人間の姿に戻っていた。  だが、その胸の『質量』だけは、怪人化した時の影響か、あるいは改蔵の魔力による育成の成果か、以前にも増して圧倒的な存在感を放っていた。  薄手のサマーニットの上からでもわかる、重力に逆らう巨大な果実。  動くたびにたゆん、と重々しい音を立てそうだ。

 

「お久しぶりですぅ。……あ、皆さん、お揃いで。ウナちゃんもいるんですね」

 

 ノドカは、アジトの惨状(半裸の美女たちが男に群がっている図)を見ても、動じることなくニコニコと微笑んだ。  彼女もまた、この『共犯者』の一人なのだ。

 

「おうノドカ。久しぶりだな。どうした、また『重く』なったか?」

 

 改蔵がニヤリと笑いながら、彼女の胸元に視線を送る。  ノドカは頬を赤らめ、恥ずかしそうに、けれど嬉しそうに自分の胸を抱いた。

 

「はいぃ……。その、最近また、胸が張ってきちゃって……。肩こりも酷くて……」

 

 彼女はモジモジしながら、上目遣いで改蔵を見た。

 

「大学の講義中も、服が擦れて気になっちゃって……。だから、その……また、神主様に『軽く』していただきたいなぁって……」

 

「メンテナンス希望ってわけか。いい心がけだ」

 

 改蔵は立ち上がった。  ステテコ姿だが、その股間はすでに期待で膨らんでいる。  一度『契約』した怪人は、定期的に魔力を補充し、そして過剰になったエネルギーを排出(搾乳)しなければ、その能力や精神の安定を保てない。  特にノドカのような『豊穣』タイプは、放っておくと魔力が乳房に蓄積し続け、日常生活に支障をきたすほど感度が上がってしまうのだ。

 

「よし。昼間っからだが、『儀式』といくか」

 

「わぁい。お願いしますぅ」

 

 ノドカが靴を脱ぎ、上がり込んでくる。  その時だった。  マナの懐にある魔術スマートフォンが、けたたましいアラート音を鳴らした。

 

「えっ!? なんですか!?」

 

 マナが慌てて画面を確認する。  サイトウからの連絡ではない。  アジト周辺に展開していた探知結界が、至近距離での『高ポテンシャル反応』を感知したのだ。

 

「か、改蔵様! 異常反応です!」

 

「ああん? 敵襲か? ジャスティンジャーか?」

 

「いえ、違います! 変身前の一般人です。でも……この反応、すごく近いです! アジトのすぐ外……ううん、この周辺をウロウロしています!」

 

「誰だ?」

 

「解析します! ……えっと、因子は『姉妹愛』……? それに『焦燥感』と……強烈な『発育コンプレックス』!?」

 

 マナが首を傾げる。

 

「……あのぉ」

 

 ノドカがおずおずと手を挙げた。

 

「もしかして、私の妹かもしれません……」

 

「妹?」

 

 改蔵とマナの声が重なった。

 

「はいぃ。実は、私が最近、大学も休みがちで、夜も帰らなかったりすることが増えたので……妹のホノカが、すごく心配しちゃってて」

 

 ノドカは困ったように眉を下げた。

 

「『お姉ちゃんが悪の組織に騙されてるんじゃないか』って、探偵ごっこみたいに私を探し回ってるんです」

 

「……ほう」

 

 改蔵の目が光った。  悪の組織に騙されている。  あながち間違いではない。いや、大正解だ。  だが、騙されているのではなく、喜んで堕ちているのだが。

 

「妹ってのは、お前みたいなデカいのが、もう一人来るのか?」

 

 改蔵は下卑た期待を込めて尋ねた。  姉妹丼。  男のロマンだ。  だが、ノドカはふるふると首を横に振った。

 

「いえ、ホノカは私と違って、その……未発育というか……小さいんです」

 

「小さい?」

 

「はい。でも、とっても元気で、可愛くて……。あ、そうだ。写真、ありますよ」

 

 ノドカがスマホを取り出し、画面を見せた。  そこに写っていたのは、ノドカとは似ても似つかぬ少女だった。  ツインテール。  吊り上がった勝気な目。  そして、小柄で華奢な体躯。身長は百五十センチもないだろう。  だが。  改蔵の目は、その『一点』に釘付けになった。

 

「……おい」

 

「はい?」

 

「どこが『小さい』んだよ」

 

 写真の少女は、確かに背は低かった。全体的に幼い、いわゆる『ロリ』体型だ。  だが、その胸部装甲だけは、姉の遺伝子を色濃く受け継いでいた。  華奢な肋骨の上に、ボールのような球体が二つ、主張激しく乗っかっている。  身体のバランスを無視したかのような、不釣り合いなほどの『巨乳』。  ロリ巨乳。  奇跡のアンバランス。

 

「え? でも、私よりはずっと小さいですし……」

 

 ノドカが自分の爆乳を見下ろして天然なことを言う。  比較対象がおかしいだけだ。

 

「マナ。今のスキャナーの反応、こいつか?」

 

「は、はい! 間違いありません! 今、アジトの裏手の路地を歩いています!」

 

 マナが興奮気味に報告する。

 

「素晴らしいです! この『姉への執着』と、自身の身体への『コンプレックス(姉と比べた時の劣等感)』! 非常に強力なエネルギーを感じます! 『自分も姉さんのようになりたい、でもなれない』というジレンマが、歪んだ魔力を生んでいます!」

 

「へえ。姉ちゃんを探して三千里、か」

 

 改蔵はニヤリと笑った。  姉を助けに来た妹が、ミイラ取りがミイラになる。  しかも、敬愛する姉の目の前で、同じ男に堕とされる。  最高のシチュエーションじゃないか。

 

「ノドカ。お前の妹、迷子になってるみたいだぞ」

 

「ええっ! 大変! 迎えに行かないと!」

 

「ああ。迎えに行ってやれ。マナ、案内してやれ」

 

 改蔵はマナに目配せをした。  マナは即座にその意図を理解し、邪悪な(可愛い)笑みを浮かべた。

 

「はいっ! 私が『親切に』ご案内して差し上げます! 姉妹水入らずの時間をプレゼントしなきゃですね!」

 

 ***

 

 アジトの裏手。  人がすれ違うのがやっとの細い路地を、一人の少女が歩いていた。  渡辺ホノカ。  高校二年生。ノドカの自慢の妹だ。  彼女はスマートフォンの地図アプリを睨みつけながら、苛立ちを隠せずにいた。

 

「もう! お姉ちゃんってば、どこ行っちゃったのよ!」

 

 彼女は、姉のノドカが心配でたまらなかった。  おっとりしていて、人を疑うことを知らない姉。  昔から、変な男に言い寄られたり、妙な勧誘に引っかかりそうになったりするのは日常茶飯事だった。  そのたびに、しっかり者のホノカが追い払い、守ってきたのだ。

 

「最近、肌ツヤ良くなってるし……胸もなんか大きくなってるし……絶対、男よ。悪い男に騙されて、変な薬とか飲まされてるんだわ」

 

 ホノカの勘は鋭かった。  姉のスマホのGPS情報をこっそり共有設定にしていた彼女は、信号が途切れたこの付近を重点的に捜索していたのだ。

 

「あんな巨乳だけの天然女、私がついててあげないと、すぐ悪い大人に食べられちゃうんだから!」

 

 ホノカは自分の胸元をギュッと握りしめた。  彼女自身も、年齢にしては規格外の発育をしている。  ブラウスのボタンはパツパツで、走れば大きく揺れるほどだ。  だが、姉のあの『暴力的な質量』の前では、自分などペチャパイも同然だと思っていた。  背も低いし、子供っぽい。  (……お姉ちゃんばっかり、大人の女って感じで……)  姉への憧れと、嫉妬。  そして、姉を守らなければという歪んだ庇護欲。  複雑な感情が、彼女の足を前へと進ませる。

 

「あら。お困りですか?」

 

 不意に、頭上から声がした。  ホノカが顔を上げると、塀の上に金髪の少女が座っていた。  黒いレオタード。背中の羽。  明らかに不審者だ。

 

「……誰? コスプレ?」

 

 ホノカは警戒心を露わにした。  だが、少女……マナは、にっこりと微笑んで塀から飛び降りた。

 

「私はマナ。迷子の子猫ちゃんを導く者です」

 

「はあ? 意味わかんない。どいてよ」

 

 ホノカは強気に言い返した。  だが、マナの次の言葉が、彼女の足を止めた。

 

「お姉さんを、探しているんでしょう? 渡辺ノドカさんを」

 

「っ!? なんで、姉さんの名前を!」

 

「知っていますよ。だってお姉さんは、今、私たちの『お家』で、とっても幸せそうにしていますから」

 

「お家……!?」

 

 ホノカの顔色がさっと変わった。  やはり、姉は拉致されているんだ。  幸せそう、なんて嘘だ。  きっと洗脳されているか、脅されているに違いない。

 

「姉さんを返して! どこにいるの!」

 

 ホノカがマナに詰め寄る。  マナは動じず、クスクスと笑った。

 

「返してほしければ、ついてきなさい。すぐそこですよ」

 

 マナが手招きをし、路地の奥へと歩き出す。  罠かもしれない。  いや、間違いなく罠だ。  でも、姉がそこにいるなら。

 

「……上等じゃない。乗り込んでやるわよ! 私がお姉ちゃんを救い出すんだから!」

 

 ホノカは拳を握りしめ、マナの後を追った。  その瞳には、姉を救い出すという決意の炎が燃えていた。  その炎こそが、改蔵が待ち望んでいた『最高のスパイス』だとも知らずに。

 

 ***

 

 案内されたのは、古びた民家だった。  「ここが……アジト?」  ホノカは拍子抜けした。  もっとこう、怪しげなビルとか、地下施設を想像していたのに。  ただのボロ家だ。表札には『黒野』とある。

 

「どうぞ。お姉さんがお待ちですよ」

 

 マナが玄関の引き戸を開ける。  ギイ、という音と共に、家の中の空気が流れ出してきた。  それは、甘く、熱く、そしてどこか淫靡な匂いだった。  蚊取り線香の匂いに混じって、濃厚なフェロモンが漂っている。

 

 ホノカは意を決して、土間に足を踏み入れた。

 

「お姉ちゃん! いるんでしょ! 迎えに来たよ!」

 

 大声で叫ぶ。  靴も脱がずに、奥の部屋へと踏み込む。  そして、彼女は見た。

 

「あ、ホノカちゃん。いらっしゃい」

 

 居間のちゃぶ台の前。  姉のノドカが、正座をしてお茶を飲んでいた。  無傷だった。  拘束もされていない。  ただ、その格好が異常だった。  男物の、ブカブカのYシャツを一枚着ているだけ。  ボタンは胸の大きさのせいでほとんど留まっておらず、はち切れんばかりの谷間が露わになっている。  そして下は、明らかに何も履いていない。  白い太ももが艶めかしく輝いている。

 

「お、お姉ちゃん……? その恰好、なに……?」

 

 ホノカは絶句した。

 

「あ、これ? 神主様にお借りしてるの。楽でいいわよぉ。自分の服だと、胸がきつくて……」

 

 ノドカは、とろけるような笑顔で答えた。  その表情は、ホノカが知っている姉のものとは少し違っていた。  もっと艶っぽく、そしてどこか『満たされた』女の顔。

 

「ようこそ、妹さん」

 

 部屋の奥から、野太い男の声がした。  万年床の上。  黒野改蔵が、ステテコ姿であぐらをかいていた。  その周りには、ウサギの耳を生やした女や、半裸の女たちが侍っている。  まさに酒池肉林。

 

「……アンタが、黒幕?」

 

 ホノカは改蔵を睨みつけた。  恐怖で足が震える。  目の前の男は、だらしない格好をしているが、その全身から発せられるオーラは、まるで肉食獣のそれだった。

 

「お姉ちゃんを、どうするつもり! 洗脳したの!? 返しなさいよ!」

 

 ホノカは叫んだ。  改蔵は、ニヤリと笑い、立ち上がった。  その巨体が、ホノカに影を落とす。

 

「返すも何も、こいつは自分の意志でここにいるんだぜ?」

 

「嘘よ! お姉ちゃんは、そんなふしだらな人じゃない!」

 

「ふしだら、か。違いねえ。……ノドカ、妹に『証拠』を見せてやれ」

 

 改蔵はノドカに目配せをした。  ノドカは、頬を染めて恥ずかしそうに、しかし嬉しそうに立ち上がった。

 

「ホノカちゃん。私ね、ここで『メンテナンス』してもらってるの」

 

「メンテ……ナンス……?」

 

「うん。胸が、苦しくて、重くて……。でも、神主様に『軽く』してもらうと、とっても気持ちいいの。……ほら」

 

 ノドカは、Yシャツのボタンを一つ外した。  ボロン。  重力から解放された巨大な果実が、弾むように溢れ出た。  その先端は、興奮で赤く色づいている。

 

「な……っ!」

 

 ホノカは言葉を失った。  大好きだった清楚なお姉ちゃんが。  こんな男の前で、雌の顔をして、自分から肌を晒している。

 

「ショックか? 妹」

 

 改蔵が一歩近づく。  ホノカは後ずさりしようとしたが、いつの間にか背後にはマナが立っており、退路を塞がれていた。

 

「だが、お前も『同類』だろ?」

 

「え……?」

 

「お前の中にある『欲望』。姉ちゃんみたいになりたい、姉ちゃんを超えたいっていう、ドロドロしたコンプレックス。匂うぜ?」

 

 改蔵の手が、ホノカの小さな顎を掴み、上を向かせた。  至近距離。  男の汗と、タバコの匂い。

 

「離して! 変態!」

 

「いい身体してるじゃねえか。姉貴とは違う、未完成の魅力がある。……特にこの、『生意気な乳』はな」

 

 改蔵の大きな掌が、ホノカの胸を鷲掴みにした。  ブラウスの上からでも分かる弾力。  小さい体に凝縮された肉感。

 

「ひゃっ!? さ、触らないで!」

 

「お姉ちゃんを助けたいんだろ? なら、お前も『こっち側』に来いよ」

 

「……っ!」

 

「姉妹仲良く、俺に可愛がられるってのも、悪くねえぞ? お姉ちゃんと同じこと、してほしくないか?」

 

 悪魔の囁き。  ホノカの頭の中で、警鐘が鳴り響く。  逃げなきゃ。  でも、身体が動かない。  この男の圧倒的な『雄』の気配に、本能がすくみ上っていた。  そして、心のどこかで、囁く声があった。  (もし、私がこの人のものになれば)  (お姉ちゃんと、同じになれる?)  (お姉ちゃんと、ずっと一緒にいられる?)  (私だって、子供扱いされたくない……!)

 

「さあ、選べ。逃げ帰って姉ちゃんを見捨てるか。それとも、姉ちゃんと一緒に『堕ちる』か」

 

 改蔵の手が、ホノカのブラウスのボタンにかかる。  プチッ。  ボタンが弾け飛ぶ音が、静寂に響いた。  姉のノドカが、後ろで優しく、蕩けるような笑顔で手招きしている。

 

「ホノカちゃん。怖くないよ。……一緒に、気持ちよくなろう?」

 

 ホノカの瞳から、涙がこぼれた。  それは絶望の涙か、それとも覚悟の涙か。  運命の選択が、彼女の目の前に突きつけられていた。  アジトの夏は、姉妹の情事という新たな熱気を孕んで、さらに温度を上げていくのだった。

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