※この作品はR-18です。

ヤッて改造! 〜悪の組織の黒幕です〜   作:ろくさん

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41話

 古びた木造アジトの朝。 そこは今日も今日とて、濃厚な体液の匂いと甘ったるい嬌声に支配されていた。 六畳間に敷き詰められた万年床は、もはや布団の体をなしていない。 それは欲望の海であり、溺れるための沼だった。

 

「ん……ちゅぷ……。マスター。おっきくなってきた」

 

 黒野改蔵(くろの かいぞう)の股間で、サキュバス怪人のメイが蠢いている。 彼女は布団の中に潜り込み、改蔵の朝一番の『生理現象』を、その小さな口で丁寧に処理していた。 舌先で転がし、吸い上げ、喉の奥で受け止める。 彼女にとってそれは朝食であり、主への挨拶だった。

 

「……ふぅ。朝から熱心だな、メイ」

 

 改蔵は気だるげに天井を見上げた。 その右腕には、五十嵐イスズ(いがらし いすず)がしがみついている。 Tシャツ一枚の彼女は、豊満な胸を改蔵の二の腕に押し付け、幸せそうな寝息を立てていた。 左腕には小悪魔マナ。 彼女は改蔵の腕を抱き枕のように抱え込み、(尻尾)を絡ませている。

 

「神主様……おはようございます……」

 

 イスズがゆっくりと目を開けた。 その瞳はとろんと潤んでいる。 昨夜の『共同儀式』の余韻がまだ抜けていないのだ。

 

「おう。飯の時間だぞ」

 

「はいぃ……。すぐ作りますね……。でもその前に……」

 

 イスズは改蔵の腕から離れるどころか、さらに強く密着してきた。 Tシャツ越しの柔らかな感触が、改蔵の肌を愛撫する。

 

「朝の『中和』もしないと……。神主様の『陽』の気、ビンビンですから」

 

「んむっ! だめ! マスターのごはんは、わたしの!」

 

 布団の中からメイが顔を出し、抗議の声を上げた。 口元は白濁した液体で汚れている。

 

「あーもう! 朝から騒がしいですっ!」

 

 マナも飛び起きた。 ボサボサの金髪。はだけたレオタード。

 

「改蔵様! 私も混ぜてください! 『健康観察』はサポート役の義務です!」

 

「お前らなぁ……。まあいい、全員まとめて相手してやる」

 

 改蔵はニヤリと笑い、三人の女たちを抱き寄せた。 アジトの朝は、こうして理性のタガが外れた乱交から始まるのが常だった。

 

 ***

 

 一通りの『儀式』と、イスズ特製の朝食(今日は焼き鯖定食)を終えた頃。 マナの懐にある魔術スマートフォンが震えた。 サイトウからの定時連絡だ。 マナが口元の米粒を拭いながらホログラムを展開する。

 

『おはよう諸君。……相変わらず、精力が有り余っているようだな』

 

 画面の向こうのサイトウは、目の下に濃いクマを作っていた。 背景には書類の山と、救急箱が見える。

 

「おうサイトウさん。やつれてるな」

 

『誰のせいだと思っている……。まあいい。今日は緊急の相談がある』

 

 サイトウは咳払いを一つした。

 

『実はな、組織内で『健康被害』が深刻化しているんだ』

 

「健康被害? ヒーローにやられたか?」

 

『それもある。だがもっと深刻なのは……過労、ストレス、謎の感染症、そして腰痛だ』

 

 サイトウが悲痛な声で訴える。

 

『戦闘員たちは激務だ。加えて最近の怪人(君たちの作ったアレだ)の暴走に巻き込まれたり、後始末に追われたりで、心身ともに限界を迎えている。医務室は常に満床。軍医の手が足りない』

 

「へえ。ブラック企業だな」

 

『笑い事ではない! このままでは組織が内部崩壊する! そこでだ黒野君』

 

 サイトウが身を乗り出した。

 

『君に、優秀な『医療スタッフ』を確保してもらいたい。怪我を治すだけでなく、兵士たちのメンタルケアや健康管理まで任せられる、慈愛と管理能力に優れた人材を』

 

「医者かナースか。なるほどな」

 

 改蔵は顎を撫でた。 確かにこのアジトにも、医療担当はいない。 怪我をすればイスズが手当てをしてくれるが、彼女はあくまで素人だ(料理の腕はプロ級だが)。 マナの回復魔法もあるが、燃費が悪く効率的ではない。

 

「わかった。福利厚生は大事だからな。極上の『白衣の天使』を見繕ってやるよ」

 

『頼んだぞ。報酬は弾む』

 

 通信が切れる。 マナはすぐに魔術スキャナーを起動した。

 

「医療……奉仕……管理……」

 

 検索条件を入力していく。 『因子:治癒』『渇望:管理・支配』『職業:医療関係』。

 

「……あ、出ました!」

 

 マナが声を弾ませた。 画面上の地図、市内にある総合病院の一角に、強い光点が明滅している。

 

「すごい反応です! 純粋な『奉仕の心』と、その裏返しにある強烈な『完治への執着』! 非常に高いポテンシャルです!」

 

「へえ。どんな奴だ」

 

「データによりますと……明るく優しい性格で、病棟の人気者だそうです。でも……少し『抱え込みすぎ』な反応も出ていますね」

 

「なるほどな。患者のために尽くしすぎて、自分が壊れかけてるってか」

 

 改蔵はニヤリとした。 激務に追われる聖女。 その自己犠牲の精神。 それを解放してやれば、どんな化け物が生まれるか。

 

「よしマナ。往診の時間だ」

 

「はいっ! スカウトに向かいます!」

 

 マナがビシッと敬礼する。 少女たちを連れてくるのは、彼女の重要な任務だ。

 

「マスター。おみやげほしい…」

 

 メイが改蔵の足元でねだる。

 

「おう。注射器の一本でも持って帰ってきてもらえ。マナ、行ってこい」

 

「はいっ! 極上のナースを連れ帰ります!」

 

 マナは黒い煙に包まれ、一人アジトから姿を消した。

 

 ***

 

 市内最大の総合病院。 消毒液と微かな死臭が漂うその場所は、戦場と何ら変わりなかった。 ナースステーションでは、コール音が鳴り止まない。 廊下をストレッチャーが走り抜け、待合室では患者たちの怒号と咳き込む声が響いている。

 

「七瀬さーん! 302号室の点滴、まだー?」

 

「はい! 今すぐ行きますね!」

 

 七瀬レン(ななせ れん)は、廊下を小走りで向かった。 彼女は、この病棟で一番人気の美人ナースだ。 首の後ろで束ねた艶やかな黒髪。 清潔感のあるナース服。 158cmの小柄な身体には、白衣の上からでもわかるほど豊かな胸と、引き締まったウエスト、そして安産型のヒップが詰め込まれている。 どんなに忙しくても、彼女の顔から笑顔が消えることはない。

 

「お待たせしました、田中さん。点滴交換しますね」

 

 レンは病室に入り、笑顔で老人に語りかけた。

 

「おお、レンちゃんか。待ってたよぉ。レンちゃんが来ないと血管が痛くてなぁ」

 

「ふふ、もう、大袈裟ですよ。はい、チクッとしますよー」

 

 手際よく針を刺し変える。 その間も、老人はレンの手を握ったり、いやらしい視線を胸元に向けたりしている。 セクハラまがいの言動。 わがままな要求。 医者の理不尽な指示。 だが、レンは決して嫌な顔をしなかった。

 

「……はい、終わりました。お大事になさってくださいね」

 

 レンは完璧な笑顔で病室を出た。 扉を閉め、ふう、と小さく息を吐く。

 

(……田中さん、またお薬飲んでない) (鈴木さんは隠れてタバコ吸ってるし……) (どうしてみんな、自分の体を大切にしないのかな)

 

 彼女の中にあるのは、怒りではなかった。 深い悲しみと、無力感。 そして、強烈な『焦り』だった。

 

(治してあげたい) (みんな、元気になってほしい) (どうすれば、もっと完璧に管理できるの?) (どうすれば、みんな私の言うことを聞いて、健康になってくれるの?)

 

 彼女の『優しさ』は、もはや強迫観念に近い領域に達していた。 患者が苦しむ姿を見たくない。 そのためなら、どんなことだってする。 たとえ自分の身を削ってでも。

 

「レンちゃーん! 急患だよー!」

 

 先輩ナースの声が響く。 レンは瞬時に顔を上げた。

 

「はい! 今行きます!」

 

 彼女は再び笑顔を貼り付け、走り出した。 だが、その身体は限界に達していた。

 

 休憩時間。 レンは病院の裏手にある小さな公園のベンチに座り込んでいた。 もう一歩も動けない。 西日が眩しい。 意識が朦朧とする。

 

「……大丈夫ですか?」

 

 不意に、頭上から声が降ってきた。 レンが重いまぶたを開けると、そこには一人の少女が立っていた。 黒いレオタードに、悪魔の羽。 非現実的な姿。

 

「……あら? 患者さんですか? 迷子になっちゃいました?」

 

 レンは職業柄、反射的にそう尋ねた。 自分の疲労よりも、目の前の少女の薄着を心配するような声色だった。

 

「いいえ。お迎えに来ました。七瀬レンさん」

 

 少女マナが、にっこりと微笑んだ。

 

「貴女、とっても疲れていますね。誰かのために頑張りすぎて、自分がボロボロになっています」

 

「……そんなことないですよ。これが私の仕事ですから」

 

 レンは健気に笑おうとした。 だが、マナはレンの隣に座り、その手を優しく取った。

 

「貴女の『癒しの手』を、もっと有効に使える場所があります」

 

「……有効に?」

 

「はい。そこには、貴女の管理を待っている、哀れな子羊たちがたくさんいます。貴女が『全力』で治療しても、壊れないくらい元気な人たちです」

 

 レンの瞳が揺れた。 全力で治療できる。 遠慮なく、自分の理想の『看護』ができる。

 

「……そんな場所、あるんですか?」

 

「ありますよ。私たちが保証します」

 

 マナはレンの手をギュッと握った。

 

「私たちの『アジト』に来れば、貴女の願いは叶います。貴女の『愛』を受け止めてくれる人がいます」

 

 レンはマナの手を見つめた。 温かい。 誰かに手を握られたのは、いつぶりだろう。 いつもは自分が、患者の手を握って励ます側だった。

 

「……行ってみたい、です。私、もっとみんなの役に立ちたいから」

 

 レンは立ち上がった。 その顔には、純粋な希望の光が宿っていた。 彼女は知らない。 その純粋すぎる奉仕の心が、悪の組織にとって最高の『劇薬』になることを。

 

「では、搬送します!」

 

 黒い煙が二人を取り囲む。 病院のサイレンが遠ざかり、レンは新たな『職場』へと旅立った。

 

 ***

 

 アジトの土間。 転送されたレンは、目を丸くして周囲を見渡した。

 

「あらあら……。随分と年季の入ったお家ですね」

 

 彼女はにこやかに微笑んだ。 埃っぽい床も、カビ臭い空気も、彼女にとっては『不潔』ではなく『ケアが必要な場所』と映ったようだ。

 

「あ、マナちゃんお帰りなさい! お客様ですか?」

 

 奥からイスズがTシャツ一枚で現れる。

 

「マスター。おみやげ?」

 

 メイがほぼ全裸で這い出してくる。

 

「……!」

 

 レンは驚いた。 だが、それは嫌悪感ではなかった。 彼女は慌ててイスズとメイに駆け寄った。

 

「まあ! なんて薄着なの! 風邪ひいちゃいますよ!」

 

 レンはイスズの手を取り、メイの額に手を当てた。

 

「体温は……少し高めですね。顔も赤いし、息も荒い……」

 

 彼女は心配そうに眉を下げた。

 

「あなたたち、どこか具合が悪いの? ちゃんとご飯食べてる? 睡眠は?」

 

「え、ええと……。私たちは元気ですよ?」

 

 イスズが困惑する。

 

「だめですよ無理しちゃ! 顔色に出てるもの! すぐにベッドに横になって!」

 

 レンの『お世話焼きスイッチ』が入ってしまった。 彼女にとって、目の前の人間はすべて『守るべき患者』なのだ。

 

「おうマナ。戻ったか」

 

 そこへ、奥の居間から改蔵が顔を出した。 Tシャツ一枚でスウェット姿。 寝癖だらけで、あくびをしている。 そして何より、その股間は朝の儀式の影響か、スウェットの上からでもわかるほど大きく膨らんでいた。

 

「……!」

 

 レンの視線が、改蔵に釘付けになった。 目の下のクマ。 だらしない筋肉。 そして、異常なほど充血した下半身。

 

「あ、あらあら……! あなた、大変!」

 

 レンは小走りで改蔵に近づき、その手を取った。

 

「こんなになるまで放っておいて……! 苦しいでしょう? 痛いでしょう?」

 

 彼女は改蔵の股間を、慈愛に満ちた瞳で見つめた。 いやらしい目ではない。 重症患者を見る、真剣なナースの目だ。

 

「……おう。痛くて仕方ねえよ。ナースさん、治してくれるか?」

 

 改蔵がニヤリと笑う。 レンは、にっこりと微笑んだ。 病棟で患者たちを癒してきた、完璧な天使の笑顔だ。

 

「もちろんです。患者さんの苦しみを取り除くのが、私の仕事ですから」

 

 レンは持っていた鞄を置くと、テキパキと準備を始めた。 聴診器を首にかけ、なぜか持っていた体温計を口にくわえる。

 

「すぐに『処置』しますね。特別に『集中治療室(奥の部屋)』で、私がつきっきりで看病してあげますから」

 

 彼女は改蔵の手を引き、優しく、しかし力強く奥の土蔵へと誘導し始めた。

 

「マナちゃん。あの方、とっても優しいですね……」

 

 イスズがポカンとしている。

 

「はい! 素晴らしい『奉仕精神』です! ですが……その優しさが『過剰』すぎて、ちょっと危ない予感がします!」

 

 マナはガッツポーズをした。 明るく優しい白衣の天使。 だがその愛は、重く、深く、そして逃げ場のない『管理』へと繋がっている。 新たな『儀式(診察)』が、今始まろうとしていた。

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