※この作品はR-18です。

ヤッて改造! 〜悪の組織の黒幕です〜   作:ろくさん

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43話

 

 古びた木造アジトの朝は、清潔な消毒液の香りと、甘ったるい雌の匂いが混じり合う奇妙な空気で満たされていた。 六畳間の万年床。 そこは今朝も欲望の掃き溜めと化していたが、その光景はいつもと少し様子が違っていた。

 

 黒野改蔵(くろの かいぞう)は布団の上に仰向けになり、されるがままになっていた。 彼の右腕を抱きしめ、検脈のように手首を指で押さえているのは五十嵐イスズ(いがらし いすず)だ。 彼女はTシャツ一枚の姿で、その豊かな胸を改蔵の二の腕に押し付け、心配そうに顔を覗き込んでいる。

 

「神主様。脈が速いです。ドキドキしています。これは興奮状態ですね」

 

 左腕には小悪魔マナがしがみついている。 彼女は改蔵の腕に頬ずりしながら、うっとりとした表情で呟いた。

 

「体温も上昇中です。平熱より一度五分高い……。これは『恋の病』でしょうか。それとも単なる発情でしょうか」

 

 そして足元では、サキュバス怪人のメイが改蔵の足の指を一本ずつ丁寧に舐め上げていた。 彼女の舌使いは清拭というよりは、ただの味見だ。

 

「マスター。あし、きれいにする。ぺろぺろ」

 

 この過剰なまでの『看護ごっこ』の中心で、改蔵は苦笑いを浮かべていた。 その視線の先には、仁王立ちする新たな同居人がいたからだ。

 

 七瀬レン(ななせ れん)。 昨夜『医療怪人』へと変貌した彼女は、朝から完璧なメイクとナース(ただし改造済みで露出度は高い)で武装していた。 彼女の手にはバインダーとペンが握られている。

 

「皆さん。患者様をむやみに興奮させてはいけませんよ。安静第一です」

 

 レンは厳しい口調で言いながらも、その瞳は改蔵の下半身、布団をテントのように持ち上げている一点に釘付けになっていた。

 

「ですが……この腫れ方は異常ですね。朝特有の生理現象とはいえ、放置すれば鬱血して壊死する恐れがあります」

 

 彼女は真顔で恐ろしい診断を下した。

 

「壊死してたまるかよ。ただの朝立ちだ」

 

 改蔵が反論するが、レンは聞く耳を持たない。 彼女は膝をつき、改蔵の顔を覗き込んだ。

 

「患者さんは自分の病状を軽く見過ぎです。これは直ちに『排毒処置』が必要です。私がやりましょうか? それとも……」

 

 レンはちらりとイスズたちを見た。 その目は『助手』たちを試すような指導医の目だった。

 

「ここは私たちに任せてください! 専属看護師(自称)の名にかけて!」

 

 マナが対抗意識を燃やして叫んだ。

 

「そうです! 神主様の健康管理は、私たちが毎日やってきたんですから!」

 

 イスズも負けじと胸を張る。 その拍子にTシャツが揺れ、ノーブラの乳首が形を浮き彫りにする。

 

「ふふ。頼もしいですね。では、バイタルチェックを続けながら、適切な『マッサージ』をお願いします。私は記録を取りますから」

 

 レンの許可が出た瞬間、三人の女たちが一斉に改蔵に群がった。 マナが改蔵の上に跨り、イスズが顔を胸で包み込み、メイが股間に潜り込む。 いつもの乱交だが、今日はそこに『医療行為』という名目が加わり、背徳感が増していた。

 

「あ、ああんっ! 治療です! これも治療なんです!」

 

「んむっ! おおきくなった。なおしてあげる」

 

 アジトの朝は、今日も健全に不健全だった。

 

 ***

 

 一通りの『処置』を終え、賢者タイムの気だるさと朝食の満腹感が漂う頃。 マナの魔術スマートフォンが震えた。 サイトウからの通信だ。 ホログラムに映るサイトウは、心なしかいつもより顔色が良かった。 どうやら胃薬が効いているらしい。

 

『おはよう諸君。……ふむ。今日は随分と『清潔感』のある空気が漂っているな』

 

 サイトウがレンの姿を認め、感心したように頷いた。 レンはアジトの掃除も徹底しており、埃っぽかった土蔵は見違えるように整頓されていたのだ(ガラクタは端に寄せられただけだが)。

 

「おうサイトウさん。新しい『婦長』のおかげで快適だぜ」

 

 改蔵が爪楊枝をくわえながら答える。

 

『それは重畳。さて、本題だ』

 

 サイトウの表情が引き締まった。

 

『昨夜の『医療怪人』の誕生、データは確認させてもらった。素晴らしい数値だ。そこでだ、彼女には早速『初仕事』を頼みたい』

 

「仕事ですか? 患者さんなら、ここに(改蔵が)いますが」

 

 レンが小首を傾げる。

 

『いや、君にはもっと大規模な『治療』を頼みたいのだ』

 

 サイトウが地図データを送信してきた。 表示されたのは、都心のビジネス街だった。 高層ビルが立ち並び、無数のサラリーマンが行き交う日本の心臓部。

 

『ここには、過労、ストレス、睡眠不足に喘ぐ『社畜』たちが溢れている。彼らは病んでいる。だが休まない。無理をして働き続け、心を壊していく』

 

 サイトウの声に熱がこもる。 彼自身、中間管理職としてその辛さを誰よりも理解しているからだろう。

 

『彼らを『強制的に』休ませてやってほしい。悪の組織の慈悲として、社会という病巣を治療してくるんだ』

 

「強制治療、ですか」

 

 レンの目が怪しく輝いた。 彼女のポテンシャルである『管理欲』と『完治への執着』が刺激される。 無理をする患者。 医者の言うことを聞かない患者。 それらは彼女にとって、最も『躾け』がいのある対象だった。

 

「わかりました。私が全員、ベッドに縛り付けてでも健康にして差し上げます」

 

 レンは巨大な注射器を召喚した。 中にはピンク色の液体が怪しく揺らめいている。

 

「行ってこいレン。世の中の不健康どもに、俺たちの『愛』を注入してやれ」

 

 改蔵がニヤリと笑って送り出す。

 

「はい、院長(マスター)。行ってまいります」

 

 レンは優雅に一礼すると、マナが展開した転送ゲートへと足を踏み入れた。 白衣の天使が、街へと舞い降りる。

 

 ***

 

 平日のビジネス街。 昼休みが終わろうとする時刻、通りは死んだ目をしたスーツ姿の人々で溢れかえっていた。 彼らは時計を気にし、エナジードリンクを流し込み、足早に職場へと戻っていく。 その交差点の中心。 突如としてピンク色の消毒液の霧が噴き出した。

 

「な、なんだ!? ガス漏れか!?」

 

 甘い匂い。 霧の中から、妖艶なナース姿の怪人が現れた。 背中から伸びる包帯の触手。 身の丈ほどの注射器。 医療怪人レンだ。

 

「あらあら。皆さん、顔色が最悪ですよ?」

 

 レンの声が響き渡る。

 

「目の下のクマ、荒れた肌、猫背。典型的な『過労』の症状ですね。これは直ちに『入院』が必要です」

 

 彼女はニッコリと微笑んだ。 だがその目は笑っていない。 絶対的な管理者の目だ。

 

「な、なんだあの化け物は!」

 

「逃げろ!」

 

 サラリーマンたちが悲鳴を上げて逃げ出そうとする。 だが、レンはそれを許さなかった。

 

「いけません。患者さんが勝手に病室を出ては。安静にしていてくださいね?」

 

 シュルルルッ! 背中の包帯が生き物のように伸び、逃げ惑う人々を次々と捕獲していく。 包帯は彼らを優しく、しかし強固に拘束し、即席の『ミノムシ』のように吊り上げた。

 

「離せ! 会議があるんだ!」

 

「納期が! 納期が遅れる!」

 

 拘束された人々が口々に叫ぶ。 仕事への強迫観念。 それこそが病理だと、レンは診断した。

 

「重症ですね……。『仕事中毒』の末期です。荒療治が必要かしら」

 

 レンは巨大な注射器を構えた。

 

「特製の『鎮静剤』を投与します。これで頭を空っぽにして、ゆっくりお休みくださいね」

 

 ブスッ! 太い針が、包帯で巻かれたサラリーマンの尻に突き刺さる。 ピンク色の液体が注入される。

 

「あ、あがっ……! な、なにか、入って……気持ち、いい……?」

 

 薬液が回ると、彼らの表情から苦悩が消え、とろんとした陶酔の表情へと変わっていった。 思考が溶ける。 義務感が消える。 ただ、心地よい眠気と快楽だけが残る。

 

「あー……。仕事とか、もうどうでもいいや……」

 

「部長のハゲ……」

 

 次々と『治療』され、堕落していく人々。 ビジネス街は一瞬にして、巨大な野戦病院(という名の阿片窟)と化した。

 

 ***

 

「うわぁ……。相変わらずエグいですね、うちの怪人は」

 

 アジトの居間。 魔術モニターを見上げながら、マナがドン引きしつつも感心した声を上げた。 画面の中では、レンが次々と人々を『治療』し、街の機能を麻痺させていく様子が映し出されている。

 

「ハッハァ! いいぞレン! その調子だ! 日本の経済を停滞させろ!」

 

 改蔵は畳の上で大笑いしていた。 だが、彼の状況もまた、ある意味で停滞していた。 いや、膠着状態と言うべきか。

 

「神主様。じっとしていてくださいね。体温を測りますから」

 

 右腕にイスズ。 彼女は自身の豊満な胸で改蔵の腕を挟み込み、体温計代わりの肌の触れ合いを楽しんでいる。

 

「改蔵様! 脈拍チェックです! ここが一番脈が取りやすいんです!」

 

 左腕にはマナ。 彼女は改蔵の手首ではなく、首筋に唇を寄せ、舌先で頚動脈の拍動を感じ取っていた。

 

「……マスター。しょくしん」

 

 そして股間にはメイ。 彼女はTシャツの中に潜り込み、直接『患部』を手で握り、その硬度と大きさの変化を指先で確認していた。 レンがいない間も、アジトでは『ごっこ遊び』が続いていたのだ。

 

「おいおい。お前ら、レンに影響されすぎだろ」

 

 改蔵は苦笑するが、満更でもない。 画面の向こうのサディスティックな治療と、手元の甘い看護。 この対比が彼の興奮を煽る。

 

「いくぞ。レンが頑張ってるんだ。こっちも『輸血(射精)』の準備だ」

 

「は、はいっ! 採血()ですね!」

 

 マナが目を輝かせる。 イスズが頬を染める。 メイが喉を鳴らす。 アジトの熱気が再び上昇し始めたその時だった。

 

「待て! そこで何をしている!」

 

 モニターから凛とした声が聞こえた。 ジャスティンジャーだ。 レッド、ブルー、イエローの三人が、ビルの屋上から飛び降りてきた。

 

 ***

 

 ビジネス街の惨状を見て、ジャスティンレッドは怒りに震えた。 人々が包帯でぐるぐる巻きにされ、虚ろな目で笑っている。 これは許されざるバイオテロだ。

 

「貴様! 人々に何を注射した!」

 

 レッドがレンに詰め寄る。 レンは手を止め、心外だというように眉をひそめた。

 

「あら、ヒーローさんたち。あなたたちも診察希望ですか? でも、順番を守ってくださいね」

 

「ふざけるな! そのふざけた治療を直ちに中止しろ!」

 

 レッドがジャスティンソードを抜く。 だがレンは、それを『凶器』を持った錯乱患者を見るような目で見つめた。

 

「まあ……。刃物を振り回すなんて、危険ですね。『暴力依存症』かしら? それとも『正義中毒』? どちらにせよ、隔離が必要です」

 

 レンの背中から、無数の包帯触手が噴き出した。 それは生き物のようにうねり、ヒーローたちに襲いかかる。

 

「くっ! 速い!」

 

 ブルーが銃で撃ち落とそうとするが、包帯は柔軟に衝撃を吸収し、絡め取ろうとする。

 

「あなたたちが一番の重症患者ですよ。怪我をしても戦い続け、心身を削って正義を叫ぶ。……かわいそうに。ボロボロじゃないですか」

 

 レンの言葉は、図星だった。 連日の怪人との戦いで、彼らの疲労はピークに達していたのだ。

 

「私が楽にしてあげます。戦わなくていいんですよ。全部、私に任せて眠りなさい」

 

 触手の一本がイエローの足首を掴んだ。

 

「きゃあっ!?」

 

「イエロー!」

 

 レッドが助けようと踏み込む。 だが、それが隙だった。 レンの巨大注射器が、レッドの目の前に突き出された。

 

「麻酔の時間です」

 

 プシュッ! 注射器の先端から、ピンク色の霧が噴射された。

 

「うわっ!?」

 

 霧を吸い込んだレッドの動きが鈍る。 強烈な鎮静作用。 膝から力が抜けていく。

 

「ダメだ……力が……」

 

 レッドが片膝をつく。 レンはその前に立ち、優しく彼のヘルメットに手を置いた。

 

「いい子ですね。大人しくしていれば、痛くしませんよ」

 

 彼女はレッドの腕を取り、スーツの隙間に注射針を当てた。

 

「さあ、お薬の時間で……」

 

「そこまでだ!」

 

 鋭い斬撃が、レンとレッドの間を切り裂いた。 聖剣姫キリハだ。 彼女はビルの壁を蹴り、神速で間合いに割り込んだのだ。

 

「チッ。また新しい患者? 今日は忙しいわね」

 

 レンが飛び退く。 キリハは剣を構え、冷たい瞳でレンを射抜いた。

 

「私は病気じゃない。貴様のその歪んだ奉仕精神こそが、病巣だ」

 

「あら、怖い顔。眉間のシワ、美容に悪いですよ?」

 

 レンは余裕の笑みを崩さない。 だが、キリハの剣気は本物だった。 このままでは、治療どころか自分が解体されてしまう。

 

 撤退か。 レンが判断しようとしたその時、上空からドローンが現れた。 悪の組織の紋章が入った偵察機だ。 そこからサイトウの声が響き渡る。

 

『そこまでだ医療怪人! 撤退せよ!』

 

「サイトウさん? まだ診察の途中ですが」

 

『十分だ! 君の能力と適性は確認した! 君には前線で戦うよりも、もっと重要な任務についてもらいたい!』

 

 サイトウの声は必死だった。 こんな有能なヒーラーを、戦闘で失うわけにはいかない。 組織の慢性的な医師不足を解消する切り札なのだ。

 

『君を悪の組織・医療局長として正式採用する! 給与は弾む! 福利厚生も完備だ! だから帰ってきてくれ! 負傷兵たちが君を待っている!』

 

「医療局長……」

 

 レンの目が輝いた。 それはつまり、もっと多くの、もっと重症の患者たちを、自分の裁量で好き放題に治療できるということだ。 組織ぐるみの巨大な病院ごっこ。

 

「わかりました。そのオファー、お受けします」

 

 レンは包帯を回収し、捕らえていた人々を解放した(ただし薬の効果で全員寝ている)。

 

「今日はここまでにしておきます。お大事に」

 

 彼女はキリハにウインクを残し、ドローンの転送ビームに乗って消え去った。

 

 ***

 

 数時間後。 アジトの土間。 レンが帰還した。 彼女は少し疲れた様子だったが、その表情は充実感に満ちていた。

 

「ただいま戻りました。院長(マスター)

 

「おう。随分と暴れてきたみたいだな」

 

 改蔵が出迎える。 その後ろには、事後の気だるさを纏った三人の女たちがいた。

 

「サイトウさんから連絡がありました。明日から本部で勤務だそうです」

 

「へえ。出世したな」

 

「ええ。でも……」

 

 レンは改蔵に近づき、その胸に手を当てた。

 

「私の『主治医』としての本分は、あくまで貴方です。本部の仕事は片手間で片付けます。だから……」

 

 彼女は改蔵を見上げた。 その瞳は、病的なまでの執着と愛情で潤んでいた。

 

「定期検診は、欠かしませんからね? 毎日、いえ毎晩、貴方の健康状態をチェックしに来ます。貴方の身体の隅々まで、異常がないか、私がこの手で、この舌で、確かめさせていただきます」

 

 拒否権はないようだった。

 

「おう。望むところだ。専属のナースってわけか」

 

 改蔵は笑い、レンの腰を抱き寄せた。

 

「そうです。貴方は一生、退院できませんからね」

 

 レンは嬉しそうに、改蔵の胸に顔を埋めた。 アジトに最強の医療スタッフが加わった。 これで怪我も病気も怖くない。 ただし、彼女の『過剰医療(セックス)』に耐えられる体力があればの話だが。 改蔵は、明日からの激務(夜の)を予感し、武者震いした。

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