真夏の太陽が容赦なく降り注ぐ午後。 古びた木造アジトの居間では、冷房代わりの扇風機がぬるい風をかき回していたが、それ以上に熱い「教育的指導」が行われていた。
「
前島マイ──いや、ラミア怪人となった彼女が、その太く長い蛇の尾で黒野改蔵の身体をグルグル巻きにしていた。 彼女の上半身はリクルートスーツのままだが、眼鏡の奥の瞳は黄金色に輝き、下半身の黒い鱗が濡れたように光っている。 彼女は改蔵の背後に回り込み、尾の締め付けを強めることで強制的に姿勢を
「ぐっ……! 苦しいぞ先生。これは体罰じゃないのか?」
「いいえ。愛の鞭ですわ。……それに、貴方の身体、締め付けると喜んで反応するじゃないですか」
マイは耳元で囁き、尾の先端で改蔵の股間をツンと刺激した。
「ここも、こんなに『起立』して……。不良生徒にはお仕置きが必要ですね」
「ハッ。上等だ。返り討ちにしてやるよ」
改蔵がニヤリと笑い、マイの
「改蔵様、本部からです! お楽しみ中すみません!」
マナがホログラムを展開すると、そこにはデスクワークで疲れ切ったサイトウの顔が映し出された。 背景では、何やら慌ただしく職員たちが走り回っている。
「……黒野君。昼間から盛ってるようだが、仕事だ」
「ちっ。間が悪いな。なんだ、また人員不足か?」
改蔵が不機嫌そうに答えると、サイトウは眼鏡の位置を直しながら言った。
「いや、今回は『実地試験』の要請だ。君が新しく作ったその『ラミア怪人』……こちらのセンサーでも強力な反応を感知している。上層部がその戦闘データを見たがっているんだ」
サイトウの視線が、改蔵に巻き付いているマイに向けられる。
「ほう。元教師か。規律と束縛を好む性質……今の荒れた世の中にはうってつけの人材だな」
「あら。教育委員会の方かしら? 分かっていらっしゃるわね」
マイが眼鏡を光らせて微笑む。
「そういうことだ。彼女を外に出してくれ。場所は……そうだな、彼女の『職場』だった高校周辺がいいだろう。そこで存分に力を解放し、ヒーローをおびき寄せてデータを取ってくれ」
「なるほどな。里帰りってわけか」
改蔵はマイを見た。 彼女の瞳が、獲物を見つけた蛇のように細められる。
「どうだ先生。久しぶりの登校だが」
「ええ。望むところですわ。最近の生徒たちは弛んでいますからね……。私が直々に、社会の厳しさと『逃げられない恐怖』を教えて差し上げます」
マイは長い尾をシュルリと解き、立ち上がった(というより鎌首をもたげた)。 その全身から、ゾクリとするような支配のオーラが溢れ出す。
「よし。行って来い。課外授業の時間だ」
「はいっ! 転送ゲート、開きます!」
マナが指を鳴らし、魔法陣を展開する。 マイは一礼し、優雅に、そして獰猛にゲートの中へと消えていった。
「……ふぅ。さて、俺たちは特等席で授業参観といくか」
改蔵は扇風機の前に寝転がり、マナとイスズ、そしてメイを手招きした。
「先生がいなくなって自習時間だ。……お前ら、サボる準備はできてるか?」
「はいっ! 不真面目なこと、大好きです!」
アジトに残された女たちが、待ってましたとばかりに改蔵に群がる。 外ではラミアによる恐怖の授業が始まろうとしているが、ここではもっと原始的な保健体育が始まろうとしていた。
ジリジリとアスファルトを焼く日差しが、校庭の砂埃を舞い上げている。 平和な午後の授業中、県立高校の正門が、何者かの圧倒的な質量によってへし折られた。 ズガァァァン! 轟音と共に鉄扉が吹き飛び、警報ベルが鳴り響く。 校舎の窓から驚いた生徒や教師たちが顔を出す。 彼らの視線の先、土煙の中から現れたのは、悪夢のような、しかし妖艶な異形だった。
「みなさーん。授業の時間ですよ」
拡声器を通したような、よく通る澄んだ声。 上半身は眼鏡をかけた知的な美女。 はち切れんばかりのブラウスと、乱れたリクルートスーツのジャケットを纏っている。 だが、その腰から下は、アスファルトを削りながら進む、太く長い大蛇の尾だった。 黒光りする鱗が太陽を反射し、ヌラヌラと輝いている。 ラミア怪人となった前島マイである。
「遅刻は許しませんよ。校門指導の時間です」
マイは眼鏡をクイッと押し上げ、ニヤリと笑った。 その瞳は黄金色の縦長の瞳孔に変わり、口からは二股の舌がチロチロと覗いている。 彼女は長い尾を鞭のようにしならせ、逃げ惑う生徒たちを捕獲し始めた。
「きゃああああ!」
「な、なんだこれ! 離せ!」
シュルルルッ! 黒い尾が生徒たちの胴体に巻き付く。 骨が軋むギリギリの強さで締め上げられ、生徒たちは悲鳴を上げた。
「静かに。先生の話を聞くときは、口を閉じること」
マイは捕らえた男子生徒の顔を覗き込み、うっとりとした表情で囁いた。
「君、私の授業中、いつも私のことを見ていたわね? そんなに先生のことが好きなら、もっと近くで教えてあげる」
「い、いやだ! 助けて!」
「ダメよ。逃げようとする悪い子は……こうしてあげる」
ギリリッ。 締め付けが強まる。 生徒は苦悶の表情を浮かべ、ぐったりと力を失った。 気絶したのだ。
「あらあら。貧血かしら? 保健室へ行く前に、もっと『愛』を注入してあげないとね」
マイは次々と生徒や教師を捕らえ、その長い胴体で簀巻きにしていく。 校庭は瞬く間に、蛇の巣のような阿鼻叫喚の地獄絵図と化した。 だが、マイにとってそれは至福の光景だった。 誰も私から逃げられない。 全員が私の支配下にある。 その万能感と加虐心が、彼女の怪人としての本能をさらに昂らせていく。
***
「いい締めっぷりだ。素質があったんだな」
アジトの居間。 黒野改蔵は、魔術モニターに映るマイの暴れっぷりを眺めながら、満足げに唸った。 だが、彼自身もまた、激しい『締め付け』の只中にいた。
「くっ……! マナ、きついぞ!」
「はいっ! 負けません! マイさんの締め付け力に対抗して、私も膣圧トレーニングの成果を見せます!」
改蔵の上には、小悪魔マナが跨っていた。 彼女は全裸になり、改蔵の剛直を根元まで飲み込みながら、内壁の筋肉を総動員して締め上げている。 モニターの中のマイが獲物を絞め殺そうとするタイミングに合わせて、マナもまた改蔵を搾り取ろうと躍起になっていた。
「んむぅぅぅ……! ぎゅっ、ぎゅぅぅぅっ! どうですか! 締まってますか!」
「おう。最高だ。ちぎれそうだぜ」
改蔵はマナの腰を掴み、下から突き上げる。 強烈な圧迫感。 吸い付くような粘膜の感触。
「神主様。私も……私も負けていられません」
背後から、五十嵐イスズが抱きついてくる。 彼女は豊満な胸を改蔵の背中に押し付け、太ももで改蔵の胴体を挟み込んだ。
「これなら、どうでしょう? 『太ももサンド』です」
イスズのむっちりとした太ももが、改蔵の脇腹を圧迫する。 柔らかさと弾力、そして体温。 前後からの挟み撃ちだ。
「ははっ。苦しいな。幸せで死にそうだ」
改蔵は笑った。 画面の向こうの暴力的な支配と、目の前の甘美な拘束。 二つの興奮がリンクし、脳髄を痺れさせる。
「マスター。わたしも、しめる」
足元では、サキュバス怪人のメイが改蔵の足に絡みついていた。 彼女は両手両足、そして尻尾まで使って、改蔵の右足にしがみついている。 まるでコアラだ。
「んーっ! ぎゅーっ!」
全員が、それぞれのやり方で改蔵を『独占』しようとしている。 マイの怪人化が、アジトの女たちの競争心と独占欲に火をつけたようだ。
「いいぞ。全員まとめてかかってこい。俺が全部受け止めてやる」
改蔵はマナの胸を揉み、イスズの太ももを撫で、メイの頭を小突いた。 アジトの熱気は、モニターの中の惨劇と同期して、最高潮へと達しようとしていた。
***
校庭の惨状は、極限に達していた。 数十人の人々が、巨大な蛇のトグロの中に囚われ、動けなくなっている。 中心に立つマイは、恍惚の表情で空を見上げた。
「あぁ……。気持ちいい。みんな私のもの。私がルール。私が法律」
彼女の眼鏡は汗で曇り、スーツははだけて下着が見えているが、そんなことはもう気にも留めない。 ただ、支配する快感に酔いしれていた。
「そこまでだ! 悪の女教師!」
凛とした声が響く。 校舎の屋上に、五色の影が現れた。 ジャスティンジャーだ。 彼らは颯爽と飛び降り、マイの前に立ちはだかった。
「学校を、生徒たちを解放しろ!」
レッドが叫ぶ。
「あら、保護者の方かしら? 授業参観にはまだ早いわよ」
マイは余裕の笑みを崩さない。 長い尾をするりと動かし、威嚇音を立てる。
「教育の場を汚すとは許せん! いくぞみんな!」
レッドが剣を抜く。 ブルーが銃を構える。 ピンクが鞭を振るう。 一斉攻撃。
「甘いわね。私の『愛の鞭』の方が速いわよ!」
マイが叫ぶと同時に、彼女の尾が鞭のようにしなり、空気を切り裂いた。 ヒュンッ! 音速を超える一撃。
「ぐあっ!?」
レッドが剣で受け止めるが、その重さに吹き飛ばされる。 蛇の尾は筋肉の塊だ。 ただの打撃ではない。 鋼鉄すらひしゃげさせる質量兵器だ。
「なんて馬鹿力だ……!」
「しかも速い!」
ブルーの射撃を、マイは滑るような動きで回避する。 蛇特有の予測不能な軌道。 地面を這い、壁を登り、立体的に襲いかかる。
「捕まえた!」
マイの尾が、空中にいたピンクの足首を捉えた。
「きゃあっ!?」
「こっちにいらっしゃい。特別指導よ」
マイはピンクを引き寄せると、その身体に巻き付いた。 ギリギリと締め上げる。
「あ……ぐぅ……! く、苦しい……!」
ピンクのスーツが軋む。
「かわいいピンク色ね。でも、もっと赤く染めてあげる」
マイはピンクの顔に自分の顔を近づけ、二股の舌でヘルメットのバイザーを舐めた。 ネチャリ。 粘液が視界を塞ぐ。
「や、やめて……!」
「嫌がらないで。貴女も縛られるの、好きでしょ? ヒーローなんて窮屈な仕事、辞めさせてあげる」
マイの力が強まる。 ピンクの意識が飛びそうになる。
「ピンク!」
レッドが叫び、特攻する。
「ジャスティン・ブレイク!」
剣にエネルギーを充填し、マイの胴体を狙う。 だが、マイはピンクを盾にした。
「なっ!?」
レッドが寸前で刃を止める。 その隙を見逃すマイではない。
「よそ見はいけないわね!」
シュルッ! 尾の先端がレッドを打ち据える。 さらにブルー、イエロー、グリーンも次々と薙ぎ払われる。 強い。 ラミアの膂力と、教師としての(歪んだ)洞察力が、彼女を強敵にしていた。
***
「おおー! やるじゃねえかマイ! ヒーローを圧倒してるぞ!」
アジトの改蔵が歓声を上げる。 だが、彼の腰使いもまた、クライマックスを迎えていた。
「んっ、んあぁっ! 改蔵様っ! すごいっ! 突き上げがっ!」
マナが狂乱する。 彼女の子宮口が、改蔵の侵入を許し、限界まで広げられている。
「そろそろだ。いくぞマナ!」
「は、はいっ! 注いでください! 全部!」
改蔵はイスズの太ももの拘束を振りほどき、マナの腰を両手で固定した。 そして、全身の魔力を一点に集中させる。
「オラアアアアッ!」
「あ、あ、あああああああんっ!」
ドピュッ! ドピュルルルッ! 大量の魔力が、マナの胎内へと放出される。 マナは白目を剥き、身体を弓なりに反らせて絶頂を迎えた。 その余波で、アジト全体に魔力の衝撃波が走る。
「はぁ……はぁ……」
事後。 改蔵はマナの上に覆いかぶさったまま、荒い息をついた。 モニターの中では、まだマイが暴れている。 だが、改蔵の勘が告げていた。 『潮時』だと。
「マイの奴、調子に乗りすぎたな。あいつのエネルギー源は『抑圧』だ。解放しすぎると、ガス欠になるのが早い」
改蔵の予言通り、画面の中のマイの動きが、ふと鈍った。
***
「はぁ……はぁ……」
マイは肩で息をしていた。 身体が重い。 尾の動きが鈍い。 さっきまで溢れていた万能感が、急速に冷めていくのを感じる。 魔力切れだ。 普段抑圧していた感情を一気に爆発させすぎた反動が来ていた。
(身体が……動かない……)
その隙を、歴戦のヒーローたちは見逃さなかった。
「今だ! 隙ができたぞ!」
レッドが叫ぶ。 五人が散開し、マイを包囲する。
「みんな! 力を合わせるんだ! ジャスティン・バズーカ!」
五人の武器が合体し、巨大な砲身となる。 エネルギーがチャージされる。
「いけない……。逃げなきゃ……」
マイは尾を動かそうとしたが、鉛のように重くて動かない。 彼女は悟った。 終わるのだと。 この甘美な夢が。 支配の時間が。
(……ああ。でも、楽しかったな) (言いたいこと言って、やりたいことやって……) (あの人……校長先生。ありがとね)
マイは眼鏡を外し、ふっと微笑んだ。 その笑顔は、怪人のものではなく、憑き物が落ちた人間そのものだった。
「ファイヤアアアア!」
極太のビームが、マイを飲み込んだ。
「きゃあああああっ!」
閃光。 そして爆発。 黒い大蛇の姿が光の中に溶けていく。
***
煙が晴れると、そこには一人の女性が倒れていた。 リクルートスーツはボロボロになり、あちこちが破けている。 だが、その脚は人間のものに戻っていた。 前島マイだ。 彼女は気を失っている。
「確保! 怪人化は解けたみたいだ」
レッドが駆け寄り、マイの脈を確認する。
「命に別状はない。ただの気絶だ。……この人も、被害者だったんだな」
ピンクが優しくマイに上着をかける。 怪人としての記憶は、もう残っていないだろう。 彼女はまた、真面目で不器用な教育実習生に戻るのだ。 ただ、少しだけ『何か』が吹っ切れたような、穏やかな寝顔をしていた。
「……ふん。卒業おめでとうさん」
アジトの改蔵は、モニターの電源を切った。 少し寂しいが、これもまた運命だ。 彼女は彼女の場所へ帰ったのだ。
「さて、と」
改蔵はまだ熱い身体を起こした。 周りには、マナ、イスズ、メイが、情事の余韻に浸りながら転がっている。
「俺たちの『授業』は、まだまだこれからだぞ?」
「えぇ〜っ!? まだやるんですかぁ?」
マナが嬉しい悲鳴を上げる。
「当たり前だ。マイの分まで、お前らを可愛がってやるよ」
改蔵はニヤリと笑い、今度はイスズの方へと手を伸ばした。 外では夕暮れのチャイムが鳴り響いている。 教育実習生の短い反乱は終わったが、悪の組織の夜は、これからが本番だった。