十二月三十一日。大晦日。 世間が慌ただしく新年の準備に追われ、除夜の鐘を待つ静寂へと向かう中、悪の組織の日本支部とも言うべき古びた木造アジトには、いつもとは違う穏やかで、しかし極めて濃厚な時間が流れていた。 ここ最近、立て続けに行われた怪人製造ラッシュもひと段落し、ターゲットとなる新たな素材も見つかっていない。 本部からの緊急指令もない。 それは黒野改蔵にとって、一年で最も平和に、そして心ゆくまで堕落して過ごせる安息日だった。
「……んぅ。神主様、もう起きちゃいますか?」
重たい布団をめくると、五十嵐イスズが眠たげな目を擦りながら顔を出した。 彼女は裸にエプロンという、いささか季節外れだが男の夢を詰め込んだような姿で、改蔵の腕にしがみついている。 その豊満な胸が、改蔵の二の腕にむにゅりと押し付けられ、温かな体温とミルクのような甘い匂いを伝えてくる。 台所からは、すでに出汁の良い香りが漂ってきていた。
「おう。大晦日だからな。一年の垢を落として、スッキリしねえとな」
「垢……ですか? お風呂、沸かしましょうか? 柚子湯にします?」
「いや、その前に『毒抜き』だ。今年最後の大掃除だな。俺のパイプに溜まったもんを、全部吐き出さねえと」
改蔵がニヤリと笑い、布団の中で屹立する自身の下半身を誇示すると、足元がモゾモゾと動いた。 サキュバス怪人のメイが顔を出す。 彼女はすでに改蔵の足の指を舐め回しており、口元を涎で濡らしていた。
「マスター。どくぬき。わたしがやる。おそうじ、とくい」
メイは待ちきれないといった様子で、改蔵の股間に顔を寄せた。 彼女にとって、一年の締めくくりなど関係ない。 ただ、目の前の主人が元気で、そして美味しそうであればそれでいいのだ。 ちゅぷ、とあどけない音を立てて先端を咥え込む。
「ずーるーいーです! 私も混ぜてください! 天井裏から監視するのも限界です!」
小悪魔マナが天井の梁から(なぜかそこにいた)舞い降りてくる。 黒いレオタード姿の彼女は、手にしたタブレットを見せつけた。
「今年の改蔵様の射精回数、魔力放出量、全てデータ化しました! しかし、年間目標値まであと三回分足りません! 年内にノルマを達成する必要があります! これは元・首席としての管理責任に関わります!」
「ハッ。几帳面なこった。いいぜ、朝から景気良くいこうか。ノルマ達成に協力しろ」
改蔵は三人の女たちを引き寄せた。 除夜の鐘ならぬ、朝の嬌声がアジトに響き渡る。 イスズの母性溢れる柔らかな肉体、マナの若々しくきめ細やかな肌、メイの本能的で奉仕的な舌。 それらを交互に味わい、愛で、突き上げる。 改蔵は、ゆったりと、しかし確実に果てた。 それは一年間の激務(性的な意味で)を労う、極上の儀式だった。
昼下がり。 改蔵はアジトの前の道を竹箒で掃き掃除していた。 一応、表向きは善良な市民として生活しているため、こうした近所付き合いも欠かせない。 空気は冷たいが、朝の運動のおかげで身体の芯はポカポカしている。 吐く息が白い。
「あら、黒野さん。精が出ますねぇ。年末だというのに感心だわぁ」
通りがかった近所のおばちゃんが、買い物袋を提げて声をかけてくる。
「へへ、どうも。今年も世話になりました。そっちも買出しですか?」
「ええ、孫が来るからねぇ。黒野さんのお宅も、最近なんだか賑やかみたいで。若い女の子が出入りしてるって噂ですよ? 羨ましいわぁ」
「いやぁ、親戚の子とか、迷子のペットとか預かってたら、いつの間にか増えちゃって。手のかかる連中ばっかりで困ってますよ」
改蔵は爽やかに頭を掻いた。 その言葉とは裏腹に、表情は全く困っていない。 むしろ、その状況を楽しんでいる男の顔だ。
「まあ、お優しいこと。良いお年をね」
「おう、良いお年を」
改蔵は手を振った。 その背中側、アジトの窓からは、全裸のマナとイスズが「神主様ー!」「改蔵様ー!」と手を振っているのが見え隠れしていたが、幸いおばちゃんは気づかずに去っていった。 平和だ。 この平穏な日常の皮一枚下で、世界征服を企む怪人たちが肉欲に溺れているとは、誰も思うまい。
夕刻。 空が茜色に染まり、遠くから年越し蕎麦の出前のバイク音が聞こえる頃。 アジトの玄関が勢いよく開いた。
「お疲れ様です院長! 今年の業務、全て完了させてきました!」
白衣の上に厚手のコートを羽織った七瀬レンが飛び込んできた。 彼女の手には、重箱に入った高級おせち料理(恐らく組織の経費)と、怪しげな液体の入った瓶が握られている。
「レンか。本部の仕事はどうした。医療局長が職場放棄か?」
「部下に丸投……いえ、適切に業務配分してきました。年越しはやはり、主治医がそばにいて管理しなければなりませんから。患者の健康状態を見守るのは私の義務です」
レンはコートを脱ぎ捨てると、その下は極小面積のナース服だった。 冬の寒さなどものともしない露出度だ。
「それに、これ。特別調合の『年越し精力剤・改』です。これを飲んで、除夜の鐘を百八回突く勢いで頑張りましょう。私の身体で臨床実験済みですから、効果は保証します」
「百八回も突いたら死んじまうよ。……ま、もらえるもんはもらっとくか」
改蔵が苦笑しながら瓶を受け取ると、今度は庭の方から「ぴょーん!」という甲高い声が聞こえた。 次の瞬間、ピンク色の影が弾丸のような速度で飛び込んでくる。
「改蔵様ぁ〜っ! 会いたかったですぅぅぅ!」
ドスッ! 勢い余って改蔵の胸に飛び込んだのは、ウサギ怪人のウナだ。 彼女はバニーガールのようなハイレグアーマーに身を包み、長いウサギ耳をピコピコと動かしている。 その目は潤んでおり、今にも泣き出しそうだ。
「ウナか。相変わらず速いな。入り口から入れ」
「だってぇ! 寂しかったんですもん! ウサギは寂しいと死んじゃうんですよ!? 改蔵様が構ってくれないから、私、干からびそうでした!」
ウナは改蔵にギュッとしがみつき、その頬にスリスリと顔を擦り付けた。 野性味よりも、愛玩動物のような人懐っこさと、強烈な依存心が前面に出ている。
「お餅! お餅持ってきたんです! 一緒に食べましょう? ね? ね?」
ウナが差し出したのは、つきたての餅が入った重箱だった。
「お前がついたのか?」
「はいっ! 改蔵様のこと考えながら、ペッタンペッタンしました! ……本当は、改蔵様にペッタンされたいですけど……」
ウナは顔を赤らめ、もじもじと脚を擦り合わせる。 彼女の発情期は年がら年中だ。
「あらあら。発情したウサギが入り込んだわね。毛が落ちるから、あっちに行ってなさい」
冷ややかな声と共に、今度は玄関からサングラスをかけた美女が現れた。 国民的アイドル、石川カスミこと魔人ミスティだ。 彼女は変装を解き、艶やかな黒髪をファサリと払った。 そのオーラだけで、古びたアジトが一瞬にしてステージのような輝きを帯びる。
「カ、カスミちゃん!? テレビに出てたんじゃ!?」
台所から出てきたイスズが、お玉を持ったまま驚いて声を上げる。
「紅白? 録画よ録画。あんな退屈な場所より、こっちの方が重要だもの。私の『充電器』はここにしかないんだから」
カスミは改蔵の元へ歩み寄ると、当然のようにその膝の上に座った。 香水のいい香りが漂う。
「ねえマスター。私、魔力がカラカラなの。一年の締めくくりに、特濃のやつを注いでくれない? ファンサービスだと思って」
彼女の上目遣いは、完璧に計算されたアイドルのそれであり、同時に魔力を渇望する魔人の目だった。 その手はすでに、改蔵のズボンの上から股間を愛撫している。
「お前ら……。大集合かよ」
改蔵は溜息をつきつつも、口元を緩めた。 マナ、イスズ、メイ、レン、ウナ、カスミ。 六人の美女、いや六体の魔物たち。 部屋は一気に酸欠になりそうなほどの熱気とフェロモンで満たされた。 誰もが改蔵を求め、改蔵に愛されることを望んでいる。
「いいぜ。全員まとめて面倒見てやる。こたつに入りな。宴会の始まりだ」
テレビでは有名歌手が歌い、コタツの上にはミカンと蕎麦、そして高級おせちとウナの餅。 だが、コタツの中では、もっと乱れた宴が繰り広げられていた。 温かいコタツ布団の下は、無法地帯だ。
「んっ……! ウナ、くっつくな! 狭いんだよ!」
「やだぁ! 離れません! 改蔵様の匂い、スーハースーハーするんですぅ! あぁん、いい匂い……!」
ウナは改蔵の足に頬ずりし、その太ももを甘噛みしている。
「静かにしなさい駄ウサギ。マスターの心拍数が上がっています。……ふふ、いい硬さですね。血管の浮き具合も良好です」
レンが聴診器を当てるふりをして、手で直接感触を確かめている。 ゴム手袋の冷たい感触と、指先の熱が改蔵を刺激する。
「ちょっと! 私が先よ! アイドルのスケジュールは分刻みなの! ここ一番大事な場所なんだから!」
カスミが他の手を押しのけ、ベストポジションを確保しようとする。 彼女の太ももが改蔵のそれに絡みつく。
「みなさん、お蕎麦伸びちゃいますよぉ……あんっ! 神主様、そこは……!」
イスズが困りながらも、改蔵の手によって着物の裾をまくり上げられ、豊満な太ももを露わにされている。
「マスター。あし、おいしい。ちゅぱ」
メイはマイペースに足指をしゃぶり続けている。 マナは「全員の接触率を記録します! 現在、コタツ内部の湿度が急上昇中です!」と言いながら、自らも改蔵の背中に張り付き、耳元で喘いでいる。
年越しの瞬間。 テレビのアナウンサーがカウントダウンを始める。 街の光景が映し出され、人々の歓声が聞こえる。 だが、アジトの空気は、それとは比較にならないほど張り詰めていた。
『あと十秒! 九! 八!』
コタツの中の動きが激しくなる。 誰の手が、誰の口が、改蔵の分身を捉えるか。 今年最後の争奪戦だ。
『七! 六! 五!』
「いくぞ! 誰でもいい、受け止めろ! 今年の全部出してやる! 来年の分まで持っていけ!」
改蔵の咆哮。
『三! 二! 一!』
「おめでとうございまーす!」
ドピュッ! ドピュルルルッ! 新年の幕開けと同時に、改蔵の魔力が誰かの胎内(恐らく運良くポジションを確保したウナの寂しがり屋の子宮と、こぼれ球を拾ったレン)に解き放たれた。
「ひゃうっ! 来たぁ! 改蔵様の熱いの! 寂しくないっ! 全然寂しくないですぅぅ!」
ウナが長い耳をピンと立て、涙を流して絶頂する。
「ああんっ! ハッピーニューイヤー! 中で! 花火が!」
「素晴らしい脈動! 新年早々、最高記録更新です!」
アジトの居間は、拍手と喘ぎ声、そして甘い匂いで満たされた。 外では除夜の鐘がゴーンと厳かに鳴り響いているが、ここでは肉と肉がぶつかる音と、粘着質な水音がその余韻をかき消していた。
翌朝。 元旦の光が障子の隙間から差し込む。 アジトには、静謐な空気が……あるはずもなかった。 改蔵は目覚めると同時に、再び強い拘束感に襲われた。 全裸の女たちが、折り重なるようにして彼の上で眠っている。 まさに酒池肉林。 男の欲望の終着点であり、始発点。
「……ん。おはようございます、神主様」
一番に目を覚ましたイスズが、ふわりと微笑んだ。 彼女の身体はほんのりと桜色に染まっている。
「おう。明けましておめでとう」
「おめでとうございます。……あの、神主様」
イスズはもじもじしながら、改蔵の耳元で囁いた。 その豊満な胸を押し付け、上目遣いで訴える。
「『姫始め』……まだ、ですよね?」
その言葉が合図だったかのように、マナが、カスミが、レンが、ウナが、メイが、次々と目を覚ました。 全員の目が、ギラギラと改蔵の一点を見つめている。 昨夜あれだけ出したというのに、改蔵の分身はすでに朝の元気を取り戻し、天を衝く勢いで屹立していた。 レン特製の精力剤の効果か、それともこの環境が彼をそうさせるのか。
「……ははっ。お前ら、食欲旺盛だな。お雑煮より先に、俺を食う気か?」
「当然です! 新年の初搾りは、縁起物ですから! その年の魔力運が決まるんです!」
マナが真っ先に反応する。
「今年も私の管理下で、健康的に射精していただきます」
レンがゴム手袋をはめる。
「一番速いのは私ですぅ! ウサギは速いんです!」
ウナが跳ね起きる。
「いくぞ! 今年もよろしく頼むぜ! 全員まとめてかかってこい!」
改蔵が叫ぶと同時に、女たちが殺到する。 我先にと改蔵の剛直を奪い合う、仁義なき戦い。 だが、その混戦を制したのは、やはり彼女だった。
「だーめーでーす! 最初は私! 『原点』にして『頂点』、マナちゃんがいただきますっ!」
マナは小柄な身体を活かして他のメンバーの隙間をすり抜け、改蔵の腰の上に舞い降りた。 そして、躊躇なく、一気にその身を沈めた。
「ん、くぅぅぅぅっ! 確保おおおおっ!」
ズプンッ! 湿った音と共に、マナの秘所が改蔵を根元まで飲み込んだ。
「ああっ! ズルい!」
「マナちゃん、抜け駆けなんて!」
カスミやイスズが声を上げるが、時すでに遅し。 マナは勝利の笑顔で改蔵を見下ろした。
「へへっ。やっぱり一発目はお前か」
改蔵も、どこか嬉しそうにマナの腰を掴んだ。 このアジトの始まり。 全ての元凶であり、最高のパートナー。
「はいっ! 改蔵様の『一番』は、今年も来年も、ずっと私です! さあ、注いでください! 新年のお祝いを、たっぷりと!」
マナが激しく腰を振る。 締め付け、吸い付き、貪る。 そのひたむきな愛欲に、改蔵の本能が応える。
「おう! 受け取れマナ! 明けましておめでとう!」
ドピュッ! ドピュルルルッ! 新年最初の一撃。 濃密な魔力が、マナの子宮の最奥へと勢いよく解き放たれた。
「あ、あ、ああんっ! 熱いっ! 改蔵様の、一番搾りぃぃぃ!」
マナは身体を反らせ、白目を剥いて絶頂した。 胎内がドクドクと脈打ち、注がれた魔力を一滴残らず飲み干していく。
「あーあ。取られちゃった」
「まあいいわ。二番手は譲らないから」
周りの女たちも、悔しがりながらも次々と改蔵に群がっていく。 アジトの朝は、騒がしく、そして温かい。
改蔵は腰を振る速度を上げ、新たな年への期待に胸を(そして股間を)膨らませた。 今年もまた、いや昨年以上に、最高にエロくてバカバカしい一年が始まろうとしていた。 悪の組織の黒幕にとって、休息などない。 あるのは果てしない欲望の追求のみである。