※この作品はR-18です。

ヤッて改造! 〜悪の組織の黒幕です〜   作:ろくさん

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56話

 蒸し風呂のような熱気が籠もるアジトの居間。 黒野改蔵は、畳の上で身動きが取れずにいた。 物理的な拘束ではない。 精神的、かつ熱量的な拘束だ。

 

「……マスター。ねえ、マスター」

 

 改蔵の胸板の上には、灰田ミミが張り付いていた。 彼女は昨夜の『儀式』を経て地雷怪人へと変貌を遂げたが、普段は人間の少女の姿に戻っている。 だが、その内面にある『重さ』は、怪人化する前よりも遥かに増大していた。

 

「心臓の音、聞こえる。ドクン、ドクンって。……これ、あたしのこと考えてる音?」

 

 ミミは改蔵の胸に耳を押し当て、うっとりとした表情で呟く。 その身体は、夏の暑さとは無関係に、内側からの熱で火照っていた。 彼女の肌からは、かすかに火薬の匂いが漂っている。

 

「違うな。ただのポンプの音だ」

 

 改蔵が素っ気なく答えても、ミミは幸せそうに笑う。

 

「照れちゃって。可愛い。……ねえ、好きって言って。爆発しそうなくらい好きって言って」

 

 ミミの指先が、改蔵の首筋をなぞる。 その指先が触れた場所が、チリチリと焼け付くように痛む。 彼女の感情が高ぶると、周囲の温度が上がるのだ。 まさに歩く暖房器具。 この猛暑の中では拷問に近い。

 

「あーもう! 暑いですミミさん! 改蔵様の体温が上がっちゃうじゃないですか!」

 

 横で団扇を仰いでいた小悪魔マナが、たまりかねて抗議する。

 

「うるさいな。あんたは引っ込んでてよ。今、愛の充電中なんだから」

 

 ミミがギロリとマナを睨む。 その瞳孔の奥で、赤い光が明滅した。 危険信号だ。

 

「喧嘩すんな。……ミミ、お前そろそろ限界だろ」

 

 改蔵がミミの背中をポンと叩く。 彼女の背中からは、シューッという蒸気のような排気音が漏れ始めていた。 キャパシティオーバー。 愛されたいという欲求と、破壊したいという衝動が飽和状態になりつつある。

 

「……うん。なんか、ムズムズする。お腹の奥が、熱くて、痛い」

 

 ミミが苦しげに胸を押さえる。

 

「ガス抜きが必要だな。……マナ、仕事だ」

 

「はいっ! ちょうどサイトウさんからも『都心部での陽動および破壊工作』の要請が来ています!」

 

 マナが素早くタブレットを操作する。

 

「ミミさん、出番ですよ。貴女の中に溜まったその熱いエネルギー、街中で思いっきりぶちまけてきてください!」

 

「……ぶちまける?」

 

 ミミが顔を上げる。

 

「ああ。俺への愛を、世界中に見せつけてこい。一番派手な花火を打ち上げてな」

 

 改蔵がニヤリと笑うと、ミミの表情がパァッと輝いた。

 

「花火……! うん、やる! あたしの愛がどれだけ凄いか、世界中の奴らに分からせてやる!」

 

 ミミは跳ね起きた。 その瞬間、彼女の身体が光に包まれ、フリルと装甲が入り混じった怪人形態へと変化する。

 

「行ってきます、マスター! 特大のやつ、プレゼントするからね!」

 

「おう。期待してるぜ」

 

 マナが転送ゲートを開く。 ミミは改蔵に投げキッス(物理的な爆風付き)を送ると、勇んでゲートの中へと飛び込んでいった。

 

「……ふぅ。やっと涼しくなったな」

 

 改蔵は汗を拭い、寝転がり直した。 だが、すぐに左右から別の熱源が忍び寄ってくる。

 

「神主様。ミミちゃんがいなくなりましたし……私たちも『ガス抜き』が必要ですよね?」

 

「マスター。あいた。ここ、あいた」

 

 イスズとメイが、ミミが退いたスペースに滑り込んでくる。 どいつもこいつも、隙あらば密着しようとする連中ばかりだ。

 

「……たく。お前らもかよ」

 

 改蔵は苦笑しながらも、二人を受け入れた。 外では爆発的な愛のショーが始まろうとしているが、ここではもっと湿度の高い愛の営みが始まろうとしていた。

 

 ***

 

 都心の繁華街。 かつてミミが座り込んでいたあの広場の上空に、黒い雷雲のようなゲートが開いた。 そこから降ってきたのは、一人の少女……いや、兵器だった。

 

「あはははは! 見て! 私を見て!」

 

 ドォォォォン! 着地と同時に衝撃波が発生し、周囲のガラス窓が一斉に砕け散る。 噴煙の中から現れたのは、地雷怪人となったミミだ。 彼女は両手を広げ、空に向かって叫んだ。

 

「愛してる! 愛してるってば! ねえ、聞こえてる!?」

 

 彼女が腕を振るうたびに、手首のグレネードランチャーから光弾が乱射される。 ズガガガガッ! アスファルトがめくれ上がり、信号機がへし折れる。 逃げ惑う人々、鳴り響くサイレン。 その阿鼻叫喚の中心で、ミミは踊るように破壊を撒き散らしていた。

 

「ほら、綺麗でしょ! 花火みたい!」

 

 彼女は自分の胸を叩いた。 ボンッ! 胸部装甲が自爆し、強烈な爆風を生む。 だが、次の瞬間には煙の中から無傷の身体が現れる。 再生能力。 彼女は自分自身を爆弾として使い捨て、何度でも蘇る「歩く弾薬庫」なのだ。

 

「痛い! でも熱い! 生きてるって感じがするぅ!」

 

 痛みと破壊の快感に酔いしれながら、ミミは街を火の海に変えていった。 彼女にとって、これは侵略ではない。 自分という存在を、世界に刻みつけるための、あまりにも過激な自己表現だった。

 

 ***

 

「ヒャハハ! 派手にやってるじゃねえか!」

 

 アジトの居間。 改蔵は魔術モニターに映る大爆発を眺めながら、酒をあおっていた。 画面が白く染まるたびに、アジトの窓ガラスもビリビリと共振する。 まるで特等席で花火大会を見ている気分だ。

 

「改蔵様! 音量が大きすぎます! 近所迷惑ですよ!」

 

 小悪魔マナが耳を塞ぎながら抗議するが、その顔は紅潮している。 爆音の振動が、直接肌に伝わってきて心地よいのだ。

 

「いいんだよ。祭りは賑やかな方がいい」

 

 改蔵はマナを引き寄せ、そのレオタードの中に手を滑り込ませた。

 

「ひゃうっ! い、いきなり……!」

 

「ミミのやつが外で頑張ってるんだ。俺たちも応援してやらねえとな」

 

「応援って……こんなことですかぁ?」

 

「ああ。熱気には熱気で返すのが礼儀だろ」

 

 改蔵はマナを押し倒した。 その横では、五十嵐イスズが心配そうに、しかし熱っぽい瞳でモニターを見つめている。

 

「ミミちゃん……あんなに爆発して、大丈夫なんでしょうか。お腹空かないかしら」

 

「あいつの燃料は『感情』だ。キレてる間は無敵だよ」

 

 改蔵はマナの秘所を弄りながら、イスズにも手招きした。

 

「ほら、お前も来い。爆音をBGMに一発やるぞ」

 

「は、はい……。不謹慎ですけど……興奮しちゃいます」

 

 イスズが着物の裾を乱して這い寄る。 足元ではサキュバス怪人のメイが、すでに改蔵のズボンを下ろしてスタンバイしていた。

 

「マスター。はやく。どかんってして」

 

 アジトの中もまた、外の惨状に負けないほどの熱量で満たされ始めていた。

 

 ***

 

 広場の惨状を見かねて、ついに正義の味方が到着した。 ジャスティンジャーの五人だ。

 

「そこまでだ! 爆弾魔!」

 

 レッドが叫び、瓦礫の上に降り立つ。

 

「街を破壊して何が楽しい! 人々を傷つけるな!」

 

 ピンクが鞭を構える。

 

「あ? 誰あんたたち」

 

 ミミは興味なさそうに首を傾げた。 ガシャリ、と首元の装甲が音を立てる。

 

「邪魔しないでよ。あたし今、愛を叫んでるの。世界中に届くように」

 

「それが愛かよ! ただの暴力だろ!」

 

 ブルーが銃を撃つ。 ビーム弾がミミに直撃する。 ドォォン! 煙が上がる。

 

「やったか!?」

 

 グリーンが身を乗り出す。 だが、煙の中からミミの声が響いた。

 

「……痛いじゃん」

 

 無傷ではない。 肩の装甲が吹き飛び、皮膚が焼け焦げている。 だが、その傷口から赤い泡のようなものが溢れ出し、瞬く間に組織を修復していく。

 

「でも、気持ちいい。もっとやって。もっと壊して」

 

 ミミがニヤリと笑う。 その瞳孔が開く。

 

「お返しだよ。受け取れぇぇぇ!」

 

 彼女は背中のミサイルポッドを一斉発射した。 ヒュルルルル……! 無数の小型ミサイルが、意思を持ったようにヒーローたちに襲いかかる。

 

「散開しろ!」

 

 レッドの指示で五人が飛び散る。 ズガガガガガッ! 広場が更地になるほどの爆撃。

 

「くそっ! なんて火力だ!」

 

 イエローが盾で防ぐが、衝撃で吹き飛ばされる。

 

「あはははは! 逃げろ逃げろ! 爆風鬼ごっこだよ!」

 

 ミミはガントレットを打ち合わせ、自身の腕を起爆させた。 ボンッ! 腕が吹き飛ぶ推進力で加速し、ブルーに肉薄する。

 

「なっ!? 自分の腕を!?」

 

「すぐに生えるもん!」

 

 ミミは再生しかけのドロドロの腕で、ブルーの顔面を殴りつけた。 同時に、その拳の中で手榴弾を炸裂させる。

 

「至近距離爆破!」

 

 ドゴォォォン! 

 

「ぐあぁぁぁっ!」

 

 ブルーが火だるまになって転がる。 狂っている。 自分のダメージを顧みない特攻スタイル。 痛みを感じないわけではない。 痛みすらも「生の実感」として快楽に変えているのだ。

 

「こいつ……ヤバいぞ! 普通の怪人じゃない!」

 

 レッドが焦る。 倒しても再生し、近づけば自爆する。 攻略法が見当たらない。

 

「どうする!? このままじゃ街がなくなるぞ!」

 

「持久戦は不利だ! 一気に決めるしかない!」

 

 ヒーローたちが追い詰められていく。 その様子を、ミミは恍惚の表情で見下ろしていた。

 

「いい気味。リア充ヒーローなんて、みんな爆発しちゃえ」

 

 彼女の胸の奥で、黒い感情がさらに膨れ上がる。 もっと。 もっと激しく。 あたしの中の虚しさを、爆炎で埋め尽くして。

 

 ***

 

「おおーっ! いけえミミ! ぶっ飛ばせ!」

 

 アジトの改蔵は、マナと繋がりながら歓声を上げた。 ドパンッ、ドパンッ! 激しいピストンが、爆発音とシンクロする。

 

「ああっ! 改蔵様っ! そんなに突いたらっ! 私も爆発しちゃいますっ!」

 

 マナが涙目で喘ぐ。 彼女の子宮口が、改蔵の剛直によって何度もノックされている。

 

「爆発しろ! 一緒に弾けろ!」

 

 改蔵はマナの腰を固定し、さらに速度を上げた。 背中からはイスズが抱きつき、耳元で甘い吐息を吹きかける。

 

「神主様……ミミちゃん、すごいエネルギーですね……。私、あんな風に激しくはなれませんけど……」

 

「お前にはお前の良さがある。この包容力は最強の防具だ」

 

 改蔵はイスズの手を取り、自分の胸に当てさせた。 激しい鼓動。

 

「マスター。わたしも。わたしも」

 

 メイが下から改蔵の睾丸を優しく愛撫する。 三者三様の愛し方。 だが、画面の中のミミだけは、一方的で破壊的な愛を撒き散らしている。

 

「あいつ、そろそろ限界だな」

 

 改蔵は冷静に分析した。 ミミの再生能力は、彼女の魔力(感情エネルギー)を源にしている。 あれだけ派手に自爆と再生を繰り返せば、いずれガス欠になる。 花火は、儚いからこそ美しいのだ。

 

「最後まで見届けてやるか。あいつの『愛』の結末をな」

 

 改蔵はマナの最奥を突き上げ、射精の構えに入った。

 

 ***

 

 広場は焦土と化していた。 ミミは肩で息をしていた。 再生速度が落ちている。 吹き飛んだ腕が戻るのに、数秒かかるようになっていた。

 

「はぁ……はぁ……。なんか、身体が重い」

 

 ミミはよろめいた。 胸の奥の熱が、急速に冷めていくのを感じる。 寂しい。 急に、猛烈な寂しさが襲ってきた。 あんなに爆発させたのに。 あんなに壊したのに。 やっぱり、あたしの心は空っぽのままだ。

 

「……ねえ。誰か」

 

 ミミは手を伸ばした。 その手は煤で汚れ、震えている。

 

「あたしのこと、見てよ。抱きしめてよ」

 

 その隙を見逃すほど、ヒーローたちは甘くなかった。

 

「今だ! 再生が遅れている!」

 

 レッドが叫ぶ。 五人がボロボロの身体を起こし、武器を合体させる。

 

「これで終わりにする! ジャスティン・バスター!」

 

 巨大な砲口がミミに向けられる。 エネルギー充填。

 

「……あ」

 

 ミミは逃げなかった。 逃げる気力がなかった。 ただ、ぼんやりとその光を見つめた。 綺麗だな、と思った。 あたしの爆発より、ずっと真っ直ぐで、眩しい光。

 

(……マスター。見ててくれたかな) (あたしの花火、綺麗だった?)

 

 彼女は目を閉じた。 最後くらい、誰かに届いてほしかった。

 

「ファイヤアアアア!」

 

 極太のビームが放たれた。 閃光が広場を包み込む。 爆音。 そして、静寂。

 

 ***

 

「……終わったか」

 

 アジトの改蔵は、果てた後の脱力感の中で呟いた。 マナの中にたっぷりと注ぎ込み、今は賢者タイムの真っ只中だ。 モニターの中では、煙が晴れ、変身の解けたミミが倒れているのが映し出されていた。 ボロボロの服。 傷だらけの身体。 だが、その顔はどこか憑き物が落ちたように穏やかだった。

 

「確保! 命に別状はない!」

 

 レッドがミミに駆け寄る。 彼女は手錠をかけられ、連行されていく。 怪人としての記憶は失われているだろう。 だが、あふれんばかりの感情を爆発させた経験は、彼女の心の澱を少しは軽くしたかもしれない。

 

「……更生施設行きか。まあ、あいつにはその方がいいかもな」

 

 改蔵はタバコに火をつけた。 孤独な広場で腐っていくより、管理された場所で規則正しく生きる方が、案外彼女には向いているのかもしれない。 あるいは、そこで新たな「重たい愛」を見つけるかもしれない。

 

「神主様。ミミちゃん、さようならですね」

 

 イスズが改蔵の背中を拭きながら言う。

 

「ああ。短え付き合いだったが、退屈はしなかったぜ」

 

 改蔵は煙を吐き出した。 少し寂しいが、これが悪の組織の日常だ。 出会いと別れ。 そして、欲望の消費。

 

「改蔵様……。また、新しい子を探しますか?」

 

 マナが気だるげに身を起こし、尋ねる。

 

「そうだな。夏はまだ続く。次はもっと……そうだな、元気のいいやつがいいな」

 

 改蔵は笑った。 湿っぽいのは終わりだ。 次に行こう。 このアジトは、いつでも欲望を受け入れる準備ができているのだから。

 

「その前に、もう一回戦どうですか? まだ日が暮れてませんよ」

 

 マナが悪戯っぽく微笑む。

 

「……たく。お前らも底なしだな」

 

 改蔵は苦笑しながらも、再びマナを引き寄せた。 外では蝉が鳴いている。 地雷少女の爆発は終わったが、このアジトの熱狂は、まだまだ冷めそうになかった。

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