重厚な土蔵の鉄扉が、ズズズという地響きのような音を立てて閉ざされた。 外界の音と光が完全に遮断されたその空間は、湿気とカビ、そして幾多の情事によって染み付いた濃厚な男女の体液の匂いが、空気に粘り気を与えるほどに澱んでいた。 床に描かれた魔法陣が、まるで生きている心臓の鼓動のようにゆっくりと明滅を繰り返し、薄暗い室内を怪しげな紫色の光で染め上げている。 そこは、数々の女たちが常識や倫理を捨て去り、己の奥底に眠る欲望の化身へと生まれ変わった『孵化場』。 だが、今日のゲストである天野ユキにとって、そこはただの薄汚れた、趣味の悪い三流セットに過ぎなかった。
「ふうん。ここが本番のスタジオってわけ? 随分とカビ臭くて、趣味が悪いわね」
ユキは魔法陣の中央に立ち、ハイヒールの踵を鳴らして周囲を見回した。 彼女はまだ、トップAV女優としてのプライドと余裕を崩していない。 薄暗がりの中でも自ら発光しているかのような圧倒的な美貌。 手入れの行き届いた黒髪が、紫の燐光を受けて艶やかに波打っている。 彼女が纏っているのは、撮影現場からそのまま着てきた私服のワンピースだが、その下には何も着けていないことを、彼女自身が一番よく知っていた。
「照明もカメラもない。あるのは煎餅布団一枚と、むさ苦しい男が一人。……これじゃあ、素人の企画もの以下よ。本当に私を満足させられるの?」
ユキは挑発的な視線を黒野改蔵に向けた。 改蔵は入り口で腕を組み、ステテコにランニングシャツという出立ちで、腹をボリボリと掻いている。 その姿は、華やかな芸能界に生きる彼女からすれば、道端の石ころのように粗野で、取るに足らない存在に見えた。
「文句が多い女優だ。カメラならあるぞ」
改蔵が顎で天井の隅をしゃくると、そこには赤い光が点滅しているレンズが見えた。 小悪魔マナが設置した、魔術的な記録用カメラだ。 それはあらゆる角度から被写体を捉え、毛穴の開きから体液の飛沫まで、全てを高精細に記録する。
「あそこで俺たちのプロデューサーたちが鑑賞してる。無様な演技を見せたら、笑い者だぞ」
改蔵がニヤリと笑う。 別室のモニター前では、マナとイスズ、そしてメイがポップコーン片手に、この「ドキュメンタリー」の成り行きを見守っているはずだ。
「笑わせないで。私が誰だと思ってるの? 天野ユキよ。カメラの前で恥をかいたことなんて、一度もないわ」
ユキは鼻で笑った。 彼女はゆっくりとワンピースの肩紐に指を掛けた。 するり。 布が肌を滑り落ちる音が、静寂の中でやけに大きく、官能的に響く。 露わになったのは、雑誌のグラビアや画面の中で数多の男たちを狂わせてきた、国宝級の裸体だった。 陶磁器のように白くなめらかな肌、華奢だが形の良い鎖骨、重力に逆らう豊かな双丘、くびれたウエスト、そしてすらりと伸びた脚。 完璧だ。 どこから見ても隙がない、神が作りたもうた芸術品のような肉体。
「さあ、始めましょうか。私のテクニックで、貴方みたいな粗野なオジサン、三分で天国に行かせてあげるわ」
ユキは優雅に膝をつき、四つん這いになって改蔵に近づいた。 その動き一つ一つが洗練されており、どの角度から見られても美しく映るよう計算し尽くされた『魅せる』動きだった。 彼女は改蔵のステテコに手を掛け、慣れた手つきで引きずり下ろした。 そこに鎮座していたのは、怒張した巨大な一物。 ドクン、と脈打つそれは、彼女の顔ほどの大きさがあった。
「……っ」
ユキの動きが一瞬、ピクリと止まった。 大きい。 写真で見た時も驚いたが、実物はその比ではない。 血管が浮き出たどす黒いそれは、もはや人間の器官というよりは、凶器の類だ。 そこから発せられる熱気と匂いが、直接彼女の脳髄を刺激する。 だが、彼女はすぐにプロの顔に戻った。 大きさなんて関係ない。 私の口と手にかかれば、どんな巨根も、どんな野獣も、赤子同然に手懐けられる。
「随分と元気ね。野獣みたいな匂い。……でも、すぐにふニャふニャにしてあげる」
ユキは改蔵のモノを両手で包み込むように持ち、舌先で亀頭を弾いた。 そして、根本から先端までを舐め上げ、深く咥え込んだ。 ジュルッ、チュプ、レロレロ……。 巧みな舌使い。 吸い付き、転がし、喉奥で締め付ける。 バキュームのような吸引力と、繊細な舌の動き。 彼女のテクニックは確かに超一流だった。 男優たちが数分で陥落し、撮影が巻いて終わるのも頷ける。 だが。
「……おい」
改蔵の声が降ってきた。 快楽に溺れる声ではない。 不機嫌そうな、低い声だ。 ユキが顔を上げると、改蔵はつまらなそうな、冷めた目で見下ろしていた。
「何? もうイキそうなの? 早いのね」
「違うな。……退屈だ」
「え……?」
改蔵はユキの頭を無造作に掴み、強引に引き剥がした。 ポンッ、と間抜けな音がして口が離れる。
「マニュアル通りの舌使い。計算された角度。カメラ写りを気にした目線。……あくびが出るぜ。お前、頭の中で『今、自分がどう見えてるか』ばかり考えてんだろ? ここは撮影現場じゃねえんだよ」
「……なんですって?」
ユキの表情が凍りついた。 図星だったからだ。 彼女は常に、自分が一番美しく見える角度を意識していた。 相手に快楽を与えることよりも、美しく演じることを優先していた。 それがプロの仕事だと思っていたからだ。
「俺が求めてんのは『演技』じゃねえ。『本能』だ。綺麗に整ったフェラなんざいらねえ。涎まみれになって、無様に食らいつくのがいいんだよ」
改蔵はユキを押し倒した。 ドサリ。 畳の上に背中を打ち付けられ、ユキは小さく呻いた。 その衝撃は、彼女がこれまで経験した撮影のどのシーンよりも乱暴で、リアルだった。
「ちょっと! 乱暴にしないで! 私の身体は商品なのよ!」
「黙れ大根役者。ここではお前は商品じゃねえ。ただの肉だ。ここからは俺の
改蔵はユキの両脚を強引に広げた。 股関節が悲鳴を上げるほど大きく開かれ、秘所が露わになる。 そこは、まだ乾いていた。 口では強気なことを言っていても、身体は冷え切っている証拠だ。
「ほら見ろ。カサカサじゃねえか。これで『感じてます』なんて顔しても、説得力ゼロだぞ。プロ失格だな」
改蔵の無骨な指が、乾いた秘肉を容赦なく擦った。 ザラリとした指の感触が、デリケートな粘膜を刺激する。
「っ……! 痛い……! やめて! ローションを使ってよ! 傷がついちゃう!」
「甘ったれんな。お前の身体から絞り出せ。足りない分は、痛みで補え」
改蔵は指をねじ込んだ。 一本、二本。 そして三本。 乱暴にかき回し、内壁をこじ開ける。 ユキは必死に痛みを逃そうと腰をよじるが、改蔵の剛腕には敵わない。
「演技じゃ濡れねえか? なら、本能を引きずり出してやるよ」
改蔵の手が、ユキの性感帯を正確に探り当てた。 クリトリスを執拗に弾き、Gスポットを抉るように突く。 痛みと快感が混ざり合った強烈な刺激。 それは、今まで彼女が知っていた「気持ちいいふりをするための合図」ではなく、脳髄を焼き切るような直接的な信号だった。
「あ、んぐっ! そ、そんな乱暴に……っ! ひっ!」
「声が出てるじゃねえか。もっと鳴け。台本通りの喘ぎ声なんかいらねえんだよ!」
改蔵はさらに激しく指を動かす。 ユキの脳内で、理性の堤防が決壊しそうになる。 今までの撮影現場ではあり得ない暴力的な愛撫。 誰も彼女を気遣わない。 誰も彼女を「天野ユキ」として扱わない。 ただの『女』として、肉塊として扱われる屈辱と、そして底知れぬ興奮。
(なに、これ……。熱い……。お腹の奥が、熱い……!) (痛いのに……嫌じゃない……。もっと、もっと触って……!)
ユキの身体が小刻みに震え始めた。 乾いていた秘所から、じわりと愛液が滲み出してくる。 それは演技ではない、本物の生理現象だった。 蜜の匂いが漂い始める。
「やっと湿ってきたか。だが、まだまだ足りねえな。もっとビショビショにしてやる」
改蔵は自身の剛直を握り、濡れ始めた入り口にあてがった。 亀頭が、狭い入り口をこじ開けようとする。 その圧倒的な直径に、ユキの身体が防衛本能で強張る。
「ま、待って……! それは無理……! 大きすぎる……! 準備ができてない……!」
「本番スタートだ。NGはなしだぞ」
ズプンッ! 改蔵は容赦なく、一気に腰を沈めた。 裂けるような痛みと共に、巨大な楔がユキの最奥へと侵入する。
「あ、あ、がぁぁぁぁぁっ!」
ユキは絶叫し、改蔵の背中に爪を立てた。 あまりの大きさに、内臓が押し上げられる感覚。 子宮が直接ノックされる衝撃。 息ができない。 視界が白く明滅する。
「入ったな。……どうだ、本物の『異物感』は。男優の竿とはわけが違うだろ」
改蔵がユキの耳元で囁く。 汗と獣の匂い。 その圧倒的な存在感が、ユキの中身を塗り替えていく。
「く、苦しい……! 抜いて……! 壊れちゃう……! お腹、裂けちゃう……!」
「壊れちまえ。お前のそのつまらねえプライドごと、粉々になっちまえ」
改蔵は腰を動かし始めた。 最初はゆっくりと、やがて激しく。 ガン、ガン、ガン、と骨盤がぶつかる音が蔵に響く。 ユキの身体は、嵐の中の小舟のように揺さぶられた。 テクニックも何もない。 ただひたすらなピストン運動。 だが、その圧倒的な質量と熱量が、ユキの演技力を物理的に粉砕していく。
「あ、あ、ああっ! おおきいっ! すごいっ! 奥までっ!」
カメラを意識した喘ぎ声など出せるはずもない。 喉から絞り出されるのは、獣のような唸り声と、無様な悲鳴だけ。 顔は涙と涎でぐちゃぐちゃになり、美しい黒髪は汗で顔に張り付いている。 化粧も崩れ、トップ女優の面影はない。
「そうだ! その顔だ! 今のお前、最高にいい顔してるぜ! どんな名演技より美しいぞ!」
改蔵はユキの顔を覗き込み、ニヤリと笑った。
(見られてる……。こんな酷い顔……。私、女優なのに……) (でも……気持ちいい……。頭がおかしくなるくらい……!)
羞恥心。 だが、それ以上に身体を支配するのは、突き上げられるたびに脳髄を焦がす快楽だった。 満たされなかった穴が、物理的に、精神的に埋め尽くされていく。 演技じゃない。 嘘じゃない。 これが、私が欲しかった『本物』。
「もっと……! もっと奥まで! 突き刺して! 私の中身、全部かき回して!」
ユキは自分から腰を浮かせ、改蔵を求めた。 両脚を改蔵の腰に絡め、逃がさないように締め付ける。 その瞳孔は開ききり、完全に理性が飛んでいた。 彼女の中で眠っていた『渇望』が、魔力となって溢れ出す。
「いいぞ。貪欲になれ。お前の中の『渇き』を全部見せろ! 吸い尽くしてみろ!」
改蔵の魔力が、結合部を通してユキの中に流れ込み始めた。 それは彼女の潜在能力である『
「改蔵様! ユキさんの数値が急上昇しています! 限界突破です!」
別室のマナが、モニターを見ながら叫ぶ。
「彼女の『全身で快感を感じたい』『男の全てを吸い尽くしたい』という捕食欲求が、魔力と反応して具現化しています! 適合する怪人因子は……『イソギンチャク』です!」
「イソギンチャクか! 触手プレイがお望みってわけだな! いいぜ、たっぷり可愛がってやる!」
改蔵はラストスパートに入った。 ユキの膣内が、まるで無数の舌のようにうねり、改蔵を締め付け、吸い付いてくる。 異常な吸着力。 まるで掃除機のように、改蔵の精気を根こそぎ奪おうとしている。
「あ、あ、あぁぁぁ……! くるっ! 中に! 熱いの出してぇ! 全部ちょうだい!」
「全部くれてやる!
改蔵はユキの子宮口をこじ開け、膨大な魔力を解き放った。 ドピュッ! ドピュルルルッ! 白濁した熱流が、ユキの胎内を灼熱で満たす。
「イィィィィィィィッ! あつぃぃぃぃ!」
ユキの身体が弓なりに反り、激しく痙攣した。 その瞬間、彼女の身体に異変が起きた。 白かった肌が、桜色に紅潮し、そして半透明のゼリー状の質感へと変化していく。 美しかった黒髪が、一本一本意志を持ったようにうねり出し、太く、長く、ぬめるような触手へと変わる。
「あ……あぁ……。気持ちいい……。身体中が……感じる……」
ユキが恍惚の声を漏らす。 彼女の全身が、性感帯そのものへと作り変えられていく。 皮膚が粘液を帯び、触れたもの全てを吸着し、快楽に変える身体へ。 そして、股間の結合部は、もはや人間の器官の形状を留めていなかった。 無数の柔突起が生まれ、改蔵の一物を逃さないように雁字搦めにしている。
「最終変態、完了します!」
光が収まると、そこには異形の怪人が横たわっていた。 人の形は保っているが、その肌は濡れたようなピンク色で、背中や髪からは無数の触手が伸びている。 『イソギンチャク怪人』。 全身で獲物を捕らえ、精気を吸い尽くす魔性の捕食者。
「はぁ……はぁ……」
ユキはゆっくりと身を起こした。 その動きは軟体動物のように滑らかで、関節の存在を感じさせない。 彼女は自分の変化した手足を見ても、悲鳴を上げなかった。 むしろ、うっとりとした表情で、自分の触手を改蔵の身体に這わせた。 ペタリ、ヌチャリ。 吸盤のような吸い付き。
「どうだ、トップ女優。新しい衣装の着心地は」
改蔵が息を整えながら尋ねる。 ユキは妖艶に微笑んだ。 その笑顔には、以前のような作り物の冷たさはなく、底なしの欲望が渦巻いていた。
「最高よ。……今の私なら、どんな演技も必要ないわ」
ユキの触手が、改蔵の手足や胴体に絡みつく。 全身で抱きしめ、全身で味わう。 彼女の皮膚に触れているだけで、改蔵の魔力が吸い取られていくような感覚がある。
「だって、触れるもの全部が気持ちいいんだもの。貴方の肌も、汗も、熱も……全部、私が美味しくいただいてあげる」
ユキは改蔵を押し倒した。 今度は彼女が上だ。 無数の触手が改蔵を拘束し、逃げ場を奪う。 立場が逆転した。 狩られる側だった彼女は、今や最強の狩人となっていた。
「さあ、第二幕の始まりよ。今度は私が主役。……貴方が干からびるまで、カットはかけないわよ?」
彼女は改蔵の上に跨り、人間離れした柔軟な腰使いで動き始めた。 その瞳は、獲物を絶対に逃さない捕食者の色をしていた。 アジトの夜は、粘着質で、終わりのない快楽の宴へと沈んでいく。 スクリーンの中のトップ女優は消えた。 ここにいるのは、ただ快楽を貪るだけの、美しくも恐ろしい魔物だけだった。