※この作品はR-18です。

ヤッて改造! 〜悪の組織の黒幕です〜   作:ろくさん

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66話

 秋雨前線が本州に居座り、しとしとと冷たく、そして陰鬱な雨が降り続く午後。  古びた木造平屋のアジトは、カビと畳の湿った匂い、そしてどこか物憂げな空気に包まれていた。  だが、六畳間の居間の一角、本来なら来客用の座布団や季節外れの扇風機、あるいは万年床の替えシーツなどがしまわれているはずの『押し入れ』周辺だけは、異様な熱気と電子音、そしてスナック菓子のジャンキーな匂いに支配されていた。

 

 ブォォォォン……。  複数の冷却ファンが唸る重低音が、雨音に混じって響く。  半開きになった襖の隙間からは、極彩色のLEDの光が漏れ出し、薄暗い和室にサイバーパンクな彩りを添えていた。

 

「……ん。アクセスコード承認。バックドア、開放。……セキュリティ、ガバガバ」

 

 暗闇の中から、ボソボソとした独り言と、機関銃のような凄まじい速度のタイピング音が聞こえてくる。  そこには、複数のモニターの明かりに青白く照らされた、小森クルミの顔があった。  彼女は押し入れの上段、煎餅布団の上に陣取り、周囲をサーバー機材と空のポテトチップスの袋、そしてコーラのペットボトルで城壁のように固めていた。  頭にはピョコンと立った茶色の獣耳、お尻からはフサフサの巨大な尻尾。  完全に『巣ごもり』モードに入った、引きこもりリス怪人の姿だ。

 

「おーい、リス。飯だぞ。いつまで引きこもってやがる」

 

 黒野改蔵が襖をガラリと開けた。  突然の光に、クルミは眩しそうに目を細め、威嚇するように小さく唸った。

 

「……眩しい。網膜焼ける」

 

「うるせえ。ほら、今日の昼飯はチャーハンだ。冷めねえうちに食え」

 

 改蔵がちゃぶ台を顎でしゃくる。  そこには、山盛りのチャーハンから湯気が立ち上っていた。  クルミの鼻がピクピクと動く。  食欲中枢を刺激する胡麻油と焦がし醤油の香り。  彼女の手がピタリと止まった。

 

「……ん。食べる。腹減った」

 

 クルミはPCを脇に退け、ズルズルと這い出てきた。  その姿は、パーカーこそ羽織っているものの、下はパンツ一枚という無防備さだ。  巨大化した尻尾が邪魔でズボンが履けないというのもあるが、単にこのアジトの堕落した空気に染まりきっている証拠でもあった。

 

「いただきます」

 

 クルミはちゃぶ台の前に座り、レンゲでチャーハンを掬い、口いっぱいに頬張った。  両頬をパンパンに膨らませて高速で咀嚼する姿は、まさに冬眠前のリスそのものだ。

 

「よく食べますねぇ。あんなに細いのに、どこに入っていくんでしょう」

 

 五十嵐イスズがニコニコとお茶を淹れる。  彼女は今日も改蔵のTシャツ一枚という、アジトの正装(ユニフォーム)だ。  前屈みになってお茶を注ぐたびに、Tシャツの襟元から豊かな胸の谷間が覗き、裾からは健康的な太ももと、何も履いていない臀部のラインが露わになる。  彼女の存在そのものが、この部屋の湿度とフェロモン濃度を上げている要因の一つだ。

 

「おい、マナ。今月の電気代が跳ね上がってんだけど、どうなってんだ。先月の倍だぞ」

 

 改蔵が請求書をヒラヒラさせながら不機嫌そうに言った。  天井の梁からコウモリのようにぶら下がっていた小悪魔マナが、くるりと回転して着地する。

 

「仕方ありませんよ。クルミちゃんの機材、24時間フル稼働ですから。アジトの回線を勝手に改造して、軍事用レベルの通信速度を確保するために電力喰ってるんです」

 

「チッ。稼ぎのないニートが増えやがって。食い扶持くらい自分で稼げよな」

 

「ニートじゃない。……自宅警備員(サイバーガーディアン)

 

 クルミが口をもぐもぐさせながら、チャーハン粒を飛ばして反論する。

 

「それに、仕事ならしてる。……サイトウから依頼、来てる」

 

「ああん? サイトウから? 聞いてねえぞ」

 

 クルミが油で汚れた指をパチンと鳴らすと、押し入れの中のメインモニターに、サイトウの顔が映し出された。  いつものホログラムではなく、クルミの独自回線を経由した高画質映像だ。

 

『聞こえるかね! 黒野君! まったく、君のアジトの回線はセキュリティが堅すぎて繋ぐのに苦労したぞ! まるで要塞だ!』

 

 サイトウが憤慨している。  どうやらクルミが勝手に構築したファイアウォールに弾かれ続けていたらしい。

 

『緊急の作戦だ。敵対組織「正義の科学研究所」が、新型の対怪人兵器を開発したらしい。その設計データおよび、怪人の弱点に関する解析データを奪取し、メインサーバーをダウンさせろ!』

 

「ハッキングか。おあつらえ向きだな」

 

 改蔵がクルミを見る。  クルミはチャーハンを飲み込み、不敵に笑った。  その瞳に、ゲーマー特有の好戦的な光が宿る。

 

「……余裕。3分で終わらせる。RTA(リアルタイムアタック)する」

 

「よし。行ってこい。現場のサーバー室に直接プラグインして、派手にぶっこ抜いてこい」

 

「行かない」

 

 クルミが即答した。

 

「は?」

 

「外は雨だし。寒いし。……ここからやる。リモートワーク」

 

 クルミは最後の一口を飲み込むと、再び押し入れの中へと潜り込んだ。  タオルケットにくるまり、尻尾を抱き枕にして、PCを開く。  その手つきは、完全に休日のゲーマーだ。

 

「引きこもったまま世界を救う(壊す)。それが今のトレンド。高みの見物ってやつ」

 

「……だそうだ。サイトウ、いいか?」

 

『むぅ……成果が出るなら手段は問わんが……。本当に大丈夫なのかね? 相手のセキュリティも世界最高峰だぞ?』

 

「見てて。私の『森』に引きずり込んであげる。迷い込んだら最後、二度と出られない」

 

 クルミの指が走り出した。  カチャカチャカチャ……ッターン!  エンターキーを叩く音が、宣戦布告の号砲のように響く。

 

 ***

 

 数分後。  都心にあるハイテクビル、正義の科学研究所。  最新鋭のセキュリティで守られたサーバー室で、悲鳴が上がっていた。

 

「な、なんだこれは!? データが消えていくぞ!」 「ウイルスか!? ファイアウォールが機能しません! 侵入経路不明!」 「画面が……リスだらけに!?」

 

 研究所の全てのモニターがジャックされ、画面いっぱいに「ドングリを頬張るリス」のイラスト(クルミのマウス書き・ヘタウマ画)が表示されていた。  重要な兵器データは次々と「ドングリ」アイコンに変換され、外部へと転送されていく。  所員たちが必死にキーボードを叩くが、操作を受け付けない。

 

「ちょろい。セキュリティホール、ガバガバ。草生える」

 

 アジトの押し入れで、クルミは冷ややかな目で画面を見つめていた。  彼女にとって、これは戦いですらない。  ただのパズルゲーム、いや、クリックゲーだ。

 

「……ふぁ。退屈。もっと骨のある奴いないの?」

 

 クルミがあくびをする。  尻尾が退屈そうにゆらゆらと揺れている。  その様子を、背後から改蔵が見下ろしていた。

 

「おいおい。随分と地味な絵面だな。もっと派手に爆発とかしねえのか?」

 

「電子戦は静かなの。……あ、逆探知してきた。迎撃する」

 

 クルミは淡々と作業を続ける。  その横顔は無表情で、熱気がない。  改蔵はつまらなそうに鼻を鳴らした。  これでは「悪の組織の作戦」としての興奮が足りない。

 

「暇だな。……おい、イスズ。マナ。メイ」

 

「はい、神主様」

 

 改蔵の呼びかけに、三人の女たちが集まってくる。

 

「こいつが指先だけで戦ってる間に、俺たちは『全身』運動といこうじゃねえか」

 

 改蔵がニヤリと笑う。  彼はあぐらをかいたまま、ステテコを寛げた。  ムワッとした男の匂いが、狭い押し入れの中に充満する。

 

「えっ? ここでですか? クルミちゃん、仕事中ですよ?」

 

 イスズが驚くが、その顔は満更でもなさそうだ。

 

「構わん。どうせ暇なんだろ? ……おいリス、お前もキーボード叩きながら参加しろ」

 

「は……?」

 

 クルミが振り返ると、そこにはすでに準備万端の改蔵と、やる気満々の女たちがいた。  狭い押し入れの前。  改蔵の剛直が、モニターの明かりを受けてそそり立っている。

 

「マルチタスクだ。手は止めるなよ? 任務失敗したらお仕置きだ」

 

 改蔵はクルミのパーカーを捲り上げ、背後からその小さな身体に覆いかぶさった。

 

「ちょ、重い! 狭い! 作業の邪魔!」

 

「邪魔じゃねえ。燃料補給だ。PCの熱暴走より、お前の身体を熱くしてやるよ」

 

 改蔵はクルミの獣耳を甘噛みし、パーカーの隙間から胸に手を入れた。  貧相な胸だが、感度は抜群だ。  指先で蕾のような突起を弾く。

 

「んぅっ……!?」

 

 クルミの指が一瞬止まる。  だが、画面上では敵のエンジニアたちが必死の抵抗を試みており、ウイルス駆除プログラムが展開され始めていた。

 

「あ、危ない……! 迎撃プログラムが……! 集中できないっ! マウスずれる!」

 

「集中しろ。ほら、マナ。こいつの下半身、空いてるぞ。メンテしてやれ」

 

「はいっ! お手伝いします! 冷却ファンより涼しくしてあげますね!」

 

 マナがニヤニヤしながら、クルミのパンツを引き下ろした。  フサフサの尻尾を持ち上げる。

 

「あらあら、可愛いお尻。……ここ、もう濡れてますよ? PCの排熱のせいですか? それとも……」

 

「やっ、見ないで! ……んあっ!」

 

 マナの指が、クルミの秘所を弄る。  愛液が糸を引く。  クルミはビクンと身体を震わせたが、手は必死にキーボードを叩き続けた。

 

「くっ……! このウイルス、しつこい……! エンターキー……!」

 

「ほら、俺のエンターキーも叩いてみろ」

 

 改蔵が、クルミの顔の横に剛直を突き出した。  眼前に迫る男の象徴。  獣臭さと、強烈な魔力の波動。

 

「……バカ! 変態! ……んちゅ」

 

 クルミは文句を言いながらも、反射的に舌を出して先端を舐めた。  美味しい。  魔力の味が、脳の処理速度を加速させる。  舌先で転がしながら、手は高速でコードを打ち込む。  上と下、そして口。  全ての入力デバイスが塞がれていく。

 

「イスズ、メイ。お前らもだ」

 

「はいっ! クルミちゃん、頑張ってくださいね~」

 

 イスズが改蔵の背中に抱きつき、その豊かな胸を押し付ける。  メイが改蔵の足に絡みつき、足指を舐める。  狭い押し入れの前が、酒池肉林のコクピットと化した。  熱気でモニターが曇りそうだ。

 

「いくぞ、リス! 敵のサーバーと、お前の中。どっちが先に陥落するか勝負だ!」

 

 改蔵はクルミの腰を掴み、背後から一気に貫いた。  押し入れに手をつかせ、バック(後背位)での結合。

 

 ズプンッ! 

 

「ぎゃっ!? い、いきなりぃぃぃ!?」

 

 クルミが悲鳴を上げ、尻尾がピンと立つ。  PCの画面が激しく揺れ、危うく変なキーを押しそうになる。   「入った! ……くぅ、やっぱりキツいな! 押し入れみたいに狭くて快適だ!」

 

「あ、あ、あ、動かないで……! カーソルがずれる……! 誤送信しちゃうぅぅ!」

 

「ずれるなら、もっと奥までハッキングしてやるよ! ファイアウォール(処女膜)はもう突破済みだろ!」

 

 改蔵は激しく腰を打ち付けた。  パン! パン! パン!  肉のぶつかる音と、激しいタイピング音が重なり、奇妙なリズムを刻む。  クルミの身体が前後し、画面との距離が安定しない。

 

「あひぃぃぃ! 脳みそ揺れるぅぅ! データ飛んじゃうぅぅ! んあっ、そこ、Gスポット!」

 

 クルミは涙目で画面を睨みつけた。  快感で指が震える。  頭の中が真っ白になりかける。  でも、負けたくない。  この快楽の嵐の中で、任務を完遂してみせる。  それがハッカーとしての、そしてこのアジトの住人としての意地だ。

 

「あと少し……! 防火壁、最終層突破……! データのダウンロード、完了まで……あと10秒……!」

 

「こっちも限界だ! ダウンロード(射精)準備!」

 

 改蔵のピストンが加速する。  マナとイスズも、クルミの身体を支えながら、一緒になって声を上げる。

 

「いけぇー! クルミちゃん! 負けないで!」 「マスター! 出して! 全部出して!」

 

 モニターのプログレスバーが99%を示す。  改蔵の剛直が、極限まで膨張する。

 

「3……2……1……! エンターッ!」

 

 クルミが最後のキーを「ッターン!」と叩き込むと同時に、改蔵が最深部を突き上げた。

 

「ダウンロード完了ぉぉぉぉぉッ!」

 

 ズドォォォォン! 

 

 ドピュッ! ドピュルルルッ!  改蔵の魔力が、クルミの胎内へ、そしてネットワークを通じて世界中へ(?)解き放たれた。  敵のサーバーがダウンする音と、クルミの絶頂の声が重なる。

 

「イグゥゥゥゥッ! お腹いっぱいぃぃぃ! 任務完了ぉぉぉぉ!」

 

 クルミはガクガクと痙攣し、PCの上に突っ伏した。  画面には『MISSION COMPLETE』の文字と、大量のドングリマーク、そしてなぜかハートマークが表示されていた。

 

 ***

 

 夕方。  雨は上がり、雲の切れ間から西日が差し込んで、アジトを茜色に染めていた。  部屋には、事後の気だるい空気と、栗のような甘い匂いが漂っている。

 

『……見事だ。敵のサーバーは再起不能。データも完璧だ』

 

 モニターの向こうで、サイトウが感心したように頷いている。  彼は背景に映る、乱れた布団や半裸のクルミの姿には、あえて触れないようにしているようだ(大人の対応である)。

 

『その能力、実に素晴らしい。ぜひ本部で活かしてほしい。専用のサーバールームと、幹部としての高給を用意するぞ。こんなボロ家より、ずっと快適なはずだ』

 

 本部へのスカウト。  エリートコースだ。  冷暖房完備、最新機材使い放題。  引きこもりのハッカーにとっては夢のような環境のはずだった。  だが、クルミは気だるげに布団から顔を出した。  その顔は、事後の紅潮と満足感で緩みきっていた。  改蔵の腕枕に頭を乗せ、尻尾を改蔵の足に絡ませている。

 

「……やだ。行かない」

 

『な、なぜだ!? 待遇は保証するぞ!』

 

「本部の回線、ここより遅いし。……それに」

 

 クルミは、台所で夕飯(今夜は鍋だそうだ)の支度をするイスズと、自分の髪を撫でてくれる改蔵を見た。  ここには、美味しいご飯がある。  暖かい布団がある。  そして何より、濃厚な魔力(データ)を直接注入してくれる、太くて速い回線(改蔵)がある。  どんなスーパーコンピュータよりも、このアナログで野蛮な接続の方が、今の彼女には心地よかった。

 

「ここのご飯と、ネット環境が最高だから。私はここから出ない」

 

 クルミはピシャリと言い放ち、押し入れの襖を閉めようとした。

 

『ちょ、待っ……!』

 

 ピシャッ。  通信が切れる。

 

「……ふん。生意気なリスだ。出世を棒に振るとはな」

 

 改蔵はニヤリと笑い、ビールを開けた。  押し入れからは、再びファンの回る音と、カチャカチャというタイピング音が聞こえてくる。  時折、「……んふ。このデータ、エロい。保存しとこ」という呟きと共に。

 

 こうして、小森クルミは『アジトの押し入れ』を永住の地と定めた。  彼女はこれから、この狭くて暗い場所から、悪の組織の電子戦を一手に引き受けることになる。  そして、夜な夜な改蔵が「夜食」という名の魔力を差し入れに来るのを、尻尾を振って待つのだった。  アジトの秋の夜長は、ファンの音と共に更けていく。

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