秋の夜長。 窓の外では、コオロギやスズムシたちが涼やかな合唱を奏でているというのに、アジトの六畳間は、季節外れの熱気と湿気、そして鉛筆の芯の匂いと濃厚なオスのフェロモンに支配されていた。 ちゃぶ台は部屋の隅に追いやられ、中央の畳の上には、画用紙や消しゴムのカス、そして使い古されたスケッチブックが散乱している。 その混沌とした「アトリエ」の中心で、漫画家・鮫川ツムギは四つん這いになり、目の前の『究極のモデル』に食い入るような視線を向けていた。
「……はぁ、はぁ……。すごい。圧倒的な質量感……。デジタルじゃ描けない、生々しい質感だわ……」
ツムギの瞳孔は完全に開ききっていた。 彼女の目の前には、ステテコを脱ぎ捨て、全裸であぐらをかいた黒野改蔵が鎮座している。 その股間には、彼女が求めてやまない『究極の画材』が、血管を浮き立たせてそそり立っていた。 天井の裸電球の光を浴びてテラテラと黒光りするそのイチモツは、まさに暴力と生命力の象徴であり、スランプに陥った彼女の創作意欲を暴力的なまでに刺激する「ご神体」だった。
「どうだ、漫画家。俺の『Gペン』の具合は。……インクの出も悪くねえぞ?」
改蔵がニヤリと笑う。 剛直の先端からは、透明な先走りがトロリと垂れ、畳に小さなシミを作っている。
「Gペン……? いえ、そんな繊細なものじゃない……」
ツムギは顔を近づけ、鼻先が触れるほどの距離で観察した。 彼女のボサボサの髪が、改蔵の剛毛な太ももをくすぐる。 男の体臭と、独特の甘栗のような匂いが鼻腔を満たし、彼女の脳髄をクラクラと揺さぶる。
「これは……筆だ。極太の、荒々しい筆……! どんな線でも描ける、万能の筆……!」
彼女は恍惚とした表情で、先端から垂れる雫を指ですくい、自身の舌に乗せた。 ペロリ。
「……んッ! 濃い……! 味が……情報の味がする……!」
ツムギの身体が震えた。 ただの一滴で、脳内のシナプスが焼き切れるような刺激。 舌先から電流が走り、脊髄を駆け上がり、枯渇していたインスピレーションの泉に強烈な一撃を叩き込む。 「悪」の味がする。 社会の常識も倫理もねじ伏せる、純粋でドロドロとした欲望の味。
「味見は済んだか? なら、本番といこうじゃねえか。……お前のその真っ白な
改蔵はツムギのジャージのズボンと、ヨレヨレのパンツを一気に引き下ろした。 露わになったのは、日光を浴びていない青白い肌と、痩せぎすな臀部。 決して肉感的ではない。 だが、その不健康で生活感のない肉体には、どこか背徳的なエロスが宿っていた。 インドア生活特有の、柔らかく湿った肌の質感。
「うわぁ、お尻も真っ白ですねぇ。何も描かれていないキャンバスみたいです」
五十嵐イスズが、興味津々で覗き込む。 彼女の手には、ツムギのために用意した夜食のおにぎりが握られている。 改蔵のTシャツ一枚という扇情的な姿で、純粋な好奇心を向けていた。
「よし、イスズ。お前はチーフアシスタントだ。こいつが傑作を描けるように、しっかりとサポートしてやれ」
「はい! トーン貼りなら任せてください! ……貼り方わかりませんけど! 汗を拭いたり、応援したりします!」
イスズが無邪気に笑いながら、ツムギの背中に手を添えた。 その温かい手のひらの感触に、ツムギの緊張が少しだけ解ける。
「……引きこもりリス。お前もだ。データの記録係をやれ」
改蔵が押し入れに向かって声をかける。 少し開いた襖の隙間から、小森クルミがジト目でこちらを見ていた。
「……了解。ログ取る。……タイトル『変態漫画家、魔王に堕ちる』」
クルミはカタカタとキーボードを叩き始めた。 観客は揃った。 いよいよ、背徳のライブペインティングの始まりだ。
「行くぞ! インク注入だ!」
改蔵はツムギの腰を掴み、自身の腰を引き寄せた。 バックからの挿入。 乾いた秘所へ、亀頭を押し当て、強引にねじ込む。
ズプッ……ヌプンッ!
「ぎぃっ!? ……あぐっ……! お、おっきい……! 裂けちゃう……!」
ツムギが声を詰まらせ、スケッチブックに爪を立てた。 痛い。 身体が裂けるようだ。 処女ではないが、これほどの質量を受け入れた経験はない。 内壁が悲鳴を上げ、拒絶しようと収縮する。 だが、その痛みこそが、彼女が求めていた『リアル』だった。
「これだ……! この重量感……! 侵入してくる異物感……! 想像だけじゃ描けなかった、肉の圧力……!」
彼女は痛みで涙を流しながらも、右手で鉛筆を動かし始めた。 ガリガリガリガリッ! スケッチブックに、荒々しい線が刻まれていく。 腰を突き上げられるリズムに合わせて、線が歪み、走り、形を成していく。 それは無意識のオートマティスム(自動記述)。 身体が感じる衝撃を、そのまま紙に叩きつけているのだ。
「ほらほら、筆が止まってるぞ! もっと滑らかに描け! 腰を使え!」
改蔵が腰の動きを激しくする。 パン! パン! パン! 肉がぶつかる音が、アジトに響く。 ツムギの青白い肌が、衝撃で波打ち、徐々に赤く染まっていく。 汗が噴き出し、ジャージが肌に張り付く。
「あ、あ、あ……ッ! 描ける……! 線が……走る……ッ! 神が……降りてきた……ッ!」
ツムギの脳内で、映像が氾濫していた。 改蔵の魔力が神経を通じて流れ込み、彼女の想像力を強制的に拡張していく。 今までボンヤリとしていた『最強の悪役』のイメージが、明確な輪郭を持って浮かび上がってくる。 それは、目の前の男の顔をしているようで、もっと抽象的な『欲望』そのものの形をしていた。
「すごい……神主様の動きに合わせて、絵が完成していきます! 線が生き物みたいです!」
イスズが感心して見守る中、改蔵はさらに深く、激しく攻め立てた。 ツムギの膣内は、経験の少なさゆえに狭く、そして締め付けが強い。 だが、それ以上に特徴的なのは、彼女の『貪欲さ』だった。 膣壁が、改蔵のモノを「取材」するかのように、うねり、吸い付き、形を記憶しようと絡みついてくるのだ。 一本一本の血管の浮き沈みまで、全てを感じ取ろうとする執念深さ。
「くぅ……! さすが漫画家だ。観察熱心なマンコしてやがるぜ! 全部コピーする気か?」
「もっと……! もっと奥まで……! インクを……ネタをちょうだい……! まだ……まだ足りない……!」
ツムギは涎を垂らしながら懇願した。 彼女の目はもうスケッチブックを見ていない。 白目を剥きかけながら、脳内のスクリーンに映し出される、極彩色の妄想世界を見つめていた。 快楽と創作意欲が混ざり合い、
「あはっ、あははっ! すごい、すごいよぉ! ストーリーが……溢れてくる! ネームが……止まらないぃぃぃ!」
ツムギは狂ったように腰を振り、自ら改蔵の剛直を飲み込んでいく。 ズボズボと卑猥な水音が響く。 愛液が溢れ出し、改蔵の結合部を濡らし、畳に滴り落ちる。
「改蔵様! ツムギさんのバイタル、危険域に突入しています! 妄想エネルギーが臨界点を超えそうです!」
天井からマナが叫ぶ。 彼女の持つタブレットが、警告音を鳴らしている。 ツムギの全身から、黒いモヤのようなものが立ち昇り始めていた。 それは彼女の『闇』であり、『インク』の原料となる負の感情だ。
「よし! 仕上げ(フィニッシュ)だ! 締切に間に合わせてやるよ! 特濃のベタ塗りをお見舞いしてやる!」
改蔵はツムギの腰をガシリと掴み、根元まで叩き込んだ。 子宮口をこじ開けるような、強烈な一撃。 最深部にある『感性』のスイッチを押す。
「アガッ……!? オ、奥ぅぅぅッ!? 突き破られるぅぅぅ!?」
「受け取れぇぇぇッ! これが俺の『原稿』だぁぁぁッ! 一滴残らず魂に刻み込めぇぇぇッ!」
ズドォォォォン!
ドピュッ! ドピュルルルッ! 改蔵の魔力が爆発し、ツムギの胎内へと注ぎ込まれた。 それは精液という名の、純度100%の魔力インクだ。 熱い。 焼けるように熱い塊が、彼女の子宮を満たし、溢れ、全身の血管を駆け巡る。
「イグゥゥゥゥッ! いっぱい……! インク……溢れるぅぅぅ! 傑作ができちゃうぅぅぅ!」
ツムギが絶叫し、背中をのけぞらせた。 その瞬間、彼女の身体から噴き出した黒いモヤが、実体を持って彼女を包み込んだ。
バシャァッ!
まるで頭から巨大なインク壺を被ったかのように、ツムギの全身が黒く染まる。 ドロドロとした液体が、彼女の皮膚を覆い、新たな形へと凝固していく。 ボサボサの髪は筆の穂先のように鋭く固まり、一本一本が意思を持ったように蠢く。 薄汚いジャージは黒いインクの被膜となって身体に密着し、ボンテージのような艶めかしい光沢を放ち始めた。 指先は鋭利なペン先へと変化し、抱えていたスケッチブックは黒いオーラを纏い、魔導書のように輝き出す。
「はぁ……はぁ……。あはっ……あはははは!」
ツムギが狂ったような笑い声を上げた。 彼女はゆっくりと立ち上がる。 その姿は、もはや薄汚い漫画家志望の少女ではない。 全身から創作意欲と狂気を撒き散らす、インクの魔人。 『スケッチ怪人』の誕生である。
「見える……。見えるぞ……! 世界が……全部、線の集合体に見える! 3Dのポリゴンが見える!」
ツムギは自身の身体を見下ろした。 改蔵の「インク」で満たされた下腹部が、熱く脈打っている。 そこから無限のエネルギーが、尽きることのない創作意欲が湧いてくる。 スランプ? なにそれ。 今の私なら、森羅万象すべてを描き尽くせる。
「先生……! これなら描けます! どんな不道徳な絵も! どんな破廉恥な妄想も! ……全部、現実にできる!」
ツムギは輝くスケッチブックを開いた。 そこには、白紙のページが無限に続いている。 彼女はペン先のような指を走らせ、空中に線を描いた。 キュッ、キュッ、キュッ! 空中に描かれた線が、黒い光を帯びて浮かび上がり、そのまま実体化する。 彼女が描いたのは──
「うにゅ?」
ヌルリとした質感の、ピンク色の触手だった。 二次元の絵なのに、三次元の質量を持って、紙から飛び出し、ウネウネと動き出す。
「きゃっ!?」
触手は近くにいたイスズの太ももに巻き付き、ぬめぬめと這い上がった。 先端が割れ、いやらしくイスズの肌を吸い上げる。
「あらあら、元気な触手さんですねぇ。くすぐったいですぅ。……あ、そこはダメです」
イスズは困ったように笑うが、触手は遠慮なく彼女のスカートの中に侵入し、無防備な秘所を狙う。
「成功だ……! 私の妄想が、現実になった……! これぞ究極のメディアミックス……!」
ツムギは感動に打ち震えた。 今までは紙の上にしか存在しなかった世界が、今、ここにある。 自分の妄想で、他者を、世界を侵食できる快感。
「ほう。実体化能力か。便利なモンを手に入れたな」
改蔵は事後の一服をしながら、感心したように言った。 煙草の煙が、インクの匂いと混じり合う。
「はい……! マスターのおかげです! この力があれば……私の脳内にある『理想のハーレム』も、『地獄の責め苦』も、全部現実にできる!」
ツムギの目がギラギラと輝く。 彼女の創作意欲は、リミッターを外れて暴走しようとしていた。 描きたい。 もっと、もっと描きたい。 この街をキャンバスにして、私の世界で塗り潰したい。
「いいぞ。その調子だ。……だが、まずはその触手をどうにかしろ。イスズが感じちまってるだろ」
見れば、イスズは触手に責められ、少しトロンとした目で「んあっ……」と声を漏らしていた。 メイも羨ましそうに尻尾を振っている。
「あっ、すみません! ……つい、手近な『素材』で試したくなって……。質感チェックです」
ツムギが指を鳴らすと、触手はポンッと煙になって消えた。 イスズは少し残念そうに、粘液で濡れた太ももをさすっている。
「改蔵様。これなら、明日の『出撃』に使えそうですね。サイトウさんからの『街を混乱させろ』というオーダーにも完璧に応えられます」
マナがニヤリと笑う。 ツムギはバッと顔を上げ、改蔵を見た。
「マスター! 私に描かせてください! この街を……私の妄想で、エロスで、混沌で塗り潰したいんです! それが私の連載デビュー作です!」
彼女の欲望は、もはや原稿用紙の中だけでは収まりきらなくなっていた。 リアルを侵食し、世界を自分の作品に変える。 それこそが、究極の創作活動であり、悪の組織の怪人としての本分。
「おう。好きにしろ。街中をインクまみれにしてこい。ただし、原稿落とすなよ?」
改蔵が許可を出すと、ツムギは歓喜の声を上げた。
「はいっ! ……締切なんて、もう怖くない! 明日は最高の『ライブドローイング』をお見せします! 読者アンケート1位、間違いなしです!」
ツムギはスケッチブックを抱きしめ、恍惚の表情で笑った。 彼女のジャージ(インクの被膜)の下から、まだ改蔵の白いインクがタラリと垂れ落ち、畳に新たなシミを作っていた。 そのシミは、まるでこれから始まる狂宴のプロローグのように、妖しく黒光りしていた。
アジトの夜は更ける。 押し入れからは、クルミの「……新キャラ『触手っ娘』爆誕。属性過多」という呟きと、激しいタイピング音が聞こえてくる。 明日の朝には、この静寂が狂騒へと変わることになるだろう。 スランプを脱出した漫画家の妄想は、誰にも止められないのだから。