試行錯誤
「ここが、『聖域』……」
五十嵐イスズ(いがらし いすず)は、古びた土蔵の中に足を踏み入れ、感嘆の息を漏らした。 昨日、水玉リン(ドリル怪人)が壁に開けた大きな穴は、マナの応急処置的な魔術で塞がれていたが、室内に漂う埃っぽさとカビの匂いは隠しようがない。 だが、純真無垢なイスズにとって、その薄暗がりと静寂は、テレビでしか見たことのない『神聖な場所』そのものに感じられた。 床に描かれた、チョークの魔法陣。 それは、彼女の目には、神々を招くための、由緒正しい『五芒星』のように映っていた。
「はい。ここが、世界平和のための『儀式』を行う、祭壇です」
マナが、神妙な顔つきで説明する。 その実、内心では(チョロすぎる……!)と、素材の扱いやすさに冷や汗をかいていた。 改蔵は、面倒くさそうに腕を組み、壁に寄りかかっている。
「五十嵐イスズ様。いえ、『巫女』様」 「は、はいっ!」
イスズが、緊張した面持ちで背筋を伸ばす。
「これより、『神主』様と『巫女』様による、神聖なる『魔力供給の儀式』を執り行います」 「魔力供給……」 「はい。神主様(改蔵)の持つ、強大すぎる『陽』の魔力。それを、巫女様(イスズ)の『陰』の器で受け止め、中和し、世界平和のエネルギーへと昇華させるのです」 「わあ……なんだか、すごいです……!」
イスズの目が、期待にキラキラと輝いている。 彼女は、この時点で、自分が世界を救うヒロインにでもなったかのように思い込んでいた。 改蔵は、ため息を一つ。
「おい、マナ。前置きはそのくらいでいいだろ」 「あ、はい!」 「巫女様よ。儀式には、まず『禊(みそぎ)』が必要だ」 「みそぎ、ですか?」 「ああ。その服を、全部脱げ」 「えっ」
イスズの笑顔が、ぴしり、と固まった。
「ぜ、全部、ですか……?」 「そうだ。神聖な儀式なんだろ? 神様の前に、穢れた人間の服なんざ着ていけねえよ」
改蔵の、あまりにも適当な、しかし妙な説得力のある口ぶりに、イスズは「な、なるほど……」と、赤面しながらも納得してしまった。 (そ、そうですよね……! 巫女様は、神様に身も心も捧げるもの、ですものね!) (で、でも、神主様の前で……!) イスズは、恥ずかしそうにモジモジとしながらも、こくり、と小さく頷いた。
「わ、わかりました! 世界平和のためですものね!」
彼女は、意を決し、ふんわりとしたセーターの裾に、そっと手をかけた。 白いセーターがゆっくりと持ち上げられ、隠されていた豊かな膨らみが、重力に従ってぽよん、と大きく揺れた。 淡いピンク色のブラジャー。 イスズは、真っ赤な顔で、改蔵から視線をそらしながら、そのホックに手を回す。 パチン、という小さな音と共に、最後の支えが失われた。
「あ……」
開放された二つの豊満な乳房が、信じられないほどの存在感を放ちながら、姿を現した。 服の上からでもわかっていた。 わかっていたが、生で見るその『ポテンシャル』は、改蔵の想像を遥かに超えていた。 カメレオンやドリルとは、明らかに違う『質量』。 イスズは、震える手でスカートのジッパーを下ろし、残りの下着もすべて脱ぎ捨てた。
「……」
白く、柔らかそうで、肉付きのいい、完璧な癒し系の裸体。 それが、薄暗い蔵の中に、ぽつんと晒された。
「あ、あの……神主様……」 「……おう」
改蔵は、ゴクリと生唾を飲んだ。 下品な欲望が、一気に頭に血を上らせる。
「じゃ、じゃあ……俺も『禊』するわ」
改蔵もまた、自らのTシャツとスウェットを、乱暴に脱ぎ捨てた。 その、逞しい身体。 そして、マナとの度重なる『安定』作業で、すでに臨戦態勢となっている、規格外の『巨根』。 イスズは、それを見た瞬間、ひっ、と小さな悲鳴を上げた。
「な、なな……!?」 「『陽』の魔力の源だ」 「よ、陽の……!」
あまりにも立派すぎる『陽』の気に、イスズは腰が引けていた。 (あ、あれを、私の『陰』の器で……!?)
「さあ、巫女様! 祭壇(魔法陣)の中央へ!」
マナに背中を押され、イスズは、ふらふらと魔法陣の中央へと進み出た。 改蔵が、その華奢な肩を掴み、床に押し倒す。
「ひゃあっ!?」
冷たい床の感触と、目の前に迫る『陽』の気に、イスズの頭は真っ白になった。
「い、いくぞ、巫女様。神聖なる『儀式』だ。神様の力を、全身で受け止めろよ」 「は、はいっ! 世界平和の、ため……!」
イスズが、ぎゅっと目を閉じた、その瞬間。 改蔵は、一切の躊躇なく、その豊かな『ポテンシャル』の秘所へ、自らの『力』を突き立てた。
「いっ……! ああああああっ!」
裂けるような、初めての痛み。 イスズの絶叫が、蔵の中に響き渡った。 涙が、その大きな瞳から、ぼろぼろとこぼれ落ちる。
「い、痛い! 痛いです、神主様!」 「我慢しろ! これが『神の試練』だ!」
改蔵は、容赦なく腰を動かし始めた。 『素材』の処女性など、彼にとってはどうでもいい。 彼にあるのは、ただ、この極上の『器』を『怪人』に作り替えたいという、本能的な欲望だけだった。
「あ、あ、あっ! な、なにか、熱いものが……!」 「おおっ!」
改蔵は、驚きの声を上げた。 今までとは、明らかに感覚が違う。 チアキやリンの時は、魔力を一方的に『注入』する感覚だった。 だが、イスズの身体は、まるで乾いたスポンジが水を吸うように、改蔵の魔力を、凄まじい勢いで『吸引』していく。
「あ、あああっ! すごい、です! 神様の力が、私の中に……!」
痛みは、すぐに、未知の快感へと塗り替えられていった。 イスズの身体が、ビクン、ビクンと、快感に震え始める。 その反応が、改蔵の欲望を、さらに煽った。
「ハッ! いいぞ、巫女様! もっと、俺の『陽』の気を受け入れろ!」 「は、はいっ! あ、あ、あああっ! おおきい! 神主様の、ちから、すごいですぅ!」
蔵の隅で、マナが、興奮した様子で魔導書に何かを書き込んでいる。
「始まりました! 魔力注入、第一段階! ポテンシャル、『癒し』、因子、『ボイン』……あれ?」
マナのペンが止まった。 モニターに映るイスズの魔力パターンが、一向に『怪人』のものへと変化しない。 一方、蔵の中央では、儀式がクライマックスへと向かっていた。
「あ、あああああっ! 神主様! なんだか、私、私……!」 「どうした!?」 「あふれ、ちゃいそうですぅ! イク! イっちゃ、ああああんっ!」
イスズの無垢な絶叫。 それと同時に、改蔵もまた膨大な魔力をその『器』の奥深くへと叩き込んだ。
「……ッ、オオオオオッ!」
激しい魔力の奔流。 紫の光が、二人を包み込む。 カメレオンの時も、ドリルの時も、この光が収まった後、彼女たちは『変態』した。 改蔵は、荒い息を吐きながら、イスズの身体から、ゆっくりと身を引いた。
「……」 「……」
光が、収まっていく。 床にはぐったりと脱力し、真っ赤な顔でぜえぜえと喘ぐイスズの姿があった。 その豊満な裸体が。
「……はふぅ。す、すごかったです、神主様。なんだか、身体が、ぽかぽかします……」 「……」
改蔵とマナは、顔を見合わせた。 なにも、変わっていない。 肌の色も、手足の形も、髪の毛も。 ただ、さっきよりも心なしか肌のツヤが良くなっている気がする。 それだけだった。
「……おい、マナ」 「は、はいっ!」 「……変身してねえじゃねえか」 「そ、そんなはずは! あれだけの魔力を注入したんですよ!?」
マナが、慌ててイスズの身体に駆け寄り、ぺたぺたと触り始めた。
「あ、あの……マナちゃん? くすぐったい、です……」 「おかしい! おかしいです! 魔力は、確かに全量注入されたはず! なのに、因子が、発現してない……!」
マナが完全にパニックに陥っている。 イスズは何が起きているのかわからず、不思議そうに小首を傾げた。 その仕草で豊かな胸が、ぽよん、と無邪気に揺れた。 改蔵は、チッ、と舌打ちをした。
「……魔力の量が、足りなかったか?」 「そ、そんな! 改蔵様の、あの『全力』で……!」 「いや、こいつの『器』が、デカすぎるんだ。俺の魔力を、全部、快感に変換しやがった。変身する前に」 「な、なんですって!?」
マナは、ハッと顔を上げた。
「……そ、そうかもしれません! 神聖な儀式(セックス)が、あまりにも『気持ちよすぎた』せいで、変身のための『ストレス』が発生しなかった……!」 「……そういうことにしておくか」
改蔵は、再び、イスズの裸体に向き直った。 その目は、まだ、諦めてはいなかった。
「……神主様?」
イスズが、不安そうな顔で改蔵を見上げる。
「巫女様よ」 「は、はいっ!」 「……どうやら、儀式の『手順』を間違えたらしい」 「えっ!?」
イスズが、ショックを受けたように目を見開いた。
「『陽』の魔力を注ぐ『角度』が、悪かったようだ。これでは、世界平和のエネルギーにならん」 「そ、そうだったんですか!?」 「ああ。だから、もう一度だ」 「も、もう一度!?」 「そうだ。今度は、正しい『角度』で、やり直す」
改蔵はそう言うとイスズの身体を掴み、うつ伏せにさせた。 そして、その豊かな尻を、高々と持ち上げさせる。
「ひゃあっ!? か、神主様!? こ、こんな、恥ずかしい格好……!」 「神聖な儀式だ。文句言うな」 「は、はいぃ!」
改蔵はその無防備な『陰』の器に、再び、自らの『陽』の気を狙い定めた。
「い、いくぞ! 試行錯誤第二回!」 「は、はいっ! 世界平和のため! あ、あ、あああんっ!」
今度は先ほどとは違う角度から強烈な魔力が叩き込まれる。 イスズの新たな絶叫が蔵に響き渡った。
「あ、あ、あああっ! さっきと、違う! もっと、奥に、神様の力が……!」 「どうだマナ! 今度は!」 「だ、ダメです! 魔力パターン、変化なし! まだ、快感に変換されてます!」
マナが、涙目で叫ぶ。
「くそっ! なら、こっちだ!」
改蔵は、体勢をさらに変える。 今度は、イスズを自分に跨らせる、騎乗の体勢。
「ひゃあっ! わ、私が神主様の上に……!?」 「巫女様が自ら『陽』の気を、受け入れろ! 制御しろ!」 「は、はいっ! えいっ! えいっ!」
イスズは、言われるがまま、その豊かな身体を、上下に揺さぶり始めた。 ぽよん、ぽよん、と、凄まじい『ポテンシャル』が、改蔵の顔面を叩く。
「お、おお……! これも、すげえ……!」 「改蔵様! 鼻血出てます! 観測! 観測を!」 「だ、ダメだ! これでも、変わんねえ! クソッ!」
その後も改蔵は考えうる限りの、あらゆる『儀式の体勢(体位)』を試した。 立たせて。 抱きかかえて。 蔵の壁に押し付けて。
「あ、あ、あああんっ! だめ、神主様! もう、私……!」 「まだだ! まだ、試してねえ『儀式』がある!」 「も、もう、何も、出ませんぅ……!」
どれほどの時間が、過ぎただろうか。 蔵の中央で改蔵はついに、ぜえぜえと肩で息をつき、畳の上に大の字になっていた。 絶倫であるはずの彼が、初めて明確な『疲労』を感じていた。 だが。 その傍らで。 あれだけ何度も魔力を『注入』されたはずの、五十嵐イスズは。
「……はふぅ。す、すごかったです、神主様……」
なぜか、さっきよりも、肌はツヤツヤになり、血色も良く、恍惚とした表情で、ぽーっと座り込んでいた。 変身するどころか、むしろ、さらに『健康優良児』になっている。
「……」 「……」
改蔵とマナは、顔を見合わせた。 マナが、震える声で、観測結果を告げた。
「だ、ダメでした……。何度やっても、怪人になりません……!」 「……そうか」
改蔵は、ぐったりとしたまま、天井を見上げた。
「それどころか、改蔵様……」 「……なんだよ」 「改蔵様から注がれた魔力が、巫女様の中で『中和』されて、そのまま、改蔵様に『還流』しています……!」 「……は?」 「お二人の『相性』が、良すぎるんです! 悪魔の魔力(怪人化因子)が、巫女様の『癒し』の力で浄化されて、無害な『生命エネルギー』として、循環しちゃってるんです!」 「……」
つまり。 怪人になるはずがない。 それどころか、この女とセックスすればするほど、お互いが、元気になる。 まさに、神聖な『儀式』そのものだった。
「……どうすんだよ」
改蔵が、力なくつぶやいた。 怪人にならない『素材』。 悪の組織に、納品できない。
「あ、あの……神主様、マナちゃん?」
イスズが裸のまま、不思議そうに小首を傾げた。
「儀式これで終わりですか? 世界、平和になりましたか?」
そのあまりにも純真無垢な瞳に、改蔵とマナは言葉を失うしかなかった。