極寒の冬空の下、ヒューヒューと隙間風が吹き抜ける悪の組織・極東支部のアジト。築数十年の木造家屋は、本来ならば吐く息も白くなるほどの寒さに閉ざされているはずだった。しかし、その中心である六畳間だけは、異様な熱気と、甘いココナッツの香りに包まれていた。
「えー、マジ? イスズっち、料理プロ級じゃん! このおでん、大根に味が染みすぎてて超エモいんですけど! 優勝!」
こたつに下半身を突っ込みながら、真鍋ミウは目を輝かせて小皿をつついていた。蛍光ピンクのキャミソール一枚という薄着にも関わらず、彼女の肌は内側から発光するような血色の良さを見せている。アジトに来てまだ数十分。だが彼女は、まるで実家に帰ってきたかのような、あるいは行きつけの居酒屋にいるかのような寛ぎっぷりを見せていた。
「あらあら、お口に合って嬉しいわ。寒いから、たくさん食べて温まってね。練り物もまだあるわよ」 イスズが割烹着姿でお茶を淹れながら、慈愛に満ちた微笑みを向ける。 「サンキュー! イスズっち、マジ『オカン』って感じで尊いわー。実家のママより料理上手いし!」
ミウはイスズの肩をバシバシと叩き、次は足元で小さくなっているメイに視線を移した。
「で、この子がメイちゃん? 超カワヨ! ペット的な? それとも妹キャラ? 撫でていい?」 「んぅ……。わたしはペットじゃない……。マスターの専属……。あんまり見ないで……」 メイが恥ずかしそうに改蔵の背中に隠れるが、ミウはお構いなしだ。 「ウケるw 人見知り? よーしよしよし! 肌白くてモチモチじゃん!」
ミウは遠慮なくメイの頭をわしゃわしゃと撫で回し、その頬を指でプニプニとつつく。そのコミュ力は圧倒的だった。悪の組織の怪人や幹部相手に、物怖じする様子が微塵もない。彼女の周りだけ、気温が5度くらい上がっているようだ。
「……たく、順応性の高い女だ。俺のアジトでここまでリラックスできる人間も珍しい」
黒野改蔵は呆れつつも、その光景を悪くない気分で眺めていた。万年床とちゃぶ台という昭和の空間に、平成リバイバルの派手なギャル。その不協和音が、逆に心地よいリズムを生んでいる。ミウの健康的な小麦色の肌と、遠慮のない笑い声は、湿っぽく停滞していたアジトの空気を一掃してくれていた。
「で、ボス。さっきマナっちが言ってた『儀式』って何すんの? まさか、おでん食べて終わりってことはないっしょ?」
ミウが身を乗り出し、改蔵の顔を覗き込む。距離が近い。蛍光ピンクのキャミソールから、豊かな谷間がこぼれ落ちそうだ。日焼けサロンのオイルと、彼女自身の甘い体臭が混ざり合い、強烈なフェロモンとなって改蔵の鼻孔をくすぐる。
「ああ。ここからが本番だ。……お前のその身体に、俺の『魔力』をたっぷりと注ぎ込む。そうすれば、お前は人間を超えた存在……欲望のままに生きる『怪人』に生まれ変わる」
「魔力を注ぐ? ……ふーん、なるほどね。そういうコトか」
ミウはニヤリと口角を上げた。彼女は直感で理解したようだ。それが何を意味するのかを。そして、それを拒絶するどころか、舌なめずりをして待ち望んでいる。
「痛いのは嫌だけど、気持ちいいなら大歓迎だよ? ボス、見た目ワイルドだし、テクも凄そうじゃん。最近の男の子って草食系ばっかでつまんないんだよねー」
「へっ、期待していいぜ。俺の魔力注入は、脳味噌が溶けるほど熱くて、長ぇぞ。朝までコースだ」
改蔵が不敵に笑うと、ミウは「うひょー! アガるー! オールナイト確定じゃん!」と歓声を上げ、自らダウンジャケットを脱ぎ捨てた。バサッ。さらに、マイクロミニスカートのジッパーを下ろし、躊躇なく脱ぎ捨てる。
「じゃ、始めよっか! 暖房代わりのエクササイズ的な! バイブス上げてこー!」
彼女は極小の紐パン一枚という、ほぼ全裸の姿になった。日サロで焼かれた肌には、水着の
「うわぁ、大胆ですねぇ……。いくらアジトでも、みんな見てますよぉ? 恥ずかしくないんですかぁ?」 マナが目を丸くして尋ねる。
「は? 何が? 見られるのって快感じゃん? 減るもんじゃないし、今日はパーッと盛り上がっていこー! ストーリーに上げられないのが残念だけどねー!」
ミウはこたつ布団を蹴飛ばし、部屋の中央で大の字になった。そのあけっぴろげな肢体は、生贄というよりは、これから始まるパーティの主役のようだった。彼女にとって、セックスは隠すべき秘め事ではなく、コミュニケーションであり、最高のエンターテインメントなのだ。
「いい度胸だ。……その底抜けの明るさ、気に入ったぞ」
改蔵がミウの上に覆い被さる。彼の剛直はすでに、彼女を受け入れる準備を整え、血管を浮かび上がらせて猛り立っていた。その凶悪なサイズを目の当たりにして、ミウの目が点になる。
「デカっ! マジで? 日本人サイズじゃなくね? 規格外すぎん? ……これ入んの? ウケるw」
ミウは改蔵のモノを見ても、恐怖するどころかケラケラと笑い、好奇心いっぱいに指で突いた。ツンツン。その指先には、煌びやかなネイルアートが施されている。
「試してみるか? ……たっぷり可愛がってやるよ。壊れるくらいにな」
「いーよー。壊さないでね、ボス♡ 優しく激しくお願いしまーす!」
ミウは両足を開き、改蔵の腰を招き入れた。M字に開かれた股間は、すでに蜜で濡れそぼり、期待に震えている。
「いくぞ……!」
ズプッ……ヌプンッ!
「あはっ♡ いきなり根元まで! キッツーい! でもスゴーイ! お腹いっぱいになるぅ!」
結合の瞬間、ミウは悲鳴ではなく歓喜の声を上げた。彼女の膣内は熱く、そして吸い付くように改蔵を受け入れた。ミヤのような野性味とも、イノリのような恥じらいとも違う。純粋に快楽を肯定し、楽しむためのセックス。罪悪感も背徳感もない、ただひたすらにポジティブな交合。
「すげえ締め付けだ! ギャルってのは中も元気だな! まるで生き物みたいに吸い付いてきやがる!」
改蔵は激しく腰を打ち付けた。パンッ! パンッ! パンッ! 肉と肉がぶつかる音が、軽快なリズムのように六畳間に響き渡る。それはまるで、打ち込みのドラムビートのように規則的で、力強い。
「ヤバいヤバい! ボスの腰使い神ってる! 電動こけしより凄ーい! バイブス上がるぅぅ!」
ミウは改蔵の首に腕を回し、積極的に舌を絡めてくる。彼女の吐息は熱く、全身から発せられるポジティブなエネルギーが、改蔵の魔力と混ざり合っていく。汗ばんだ肌が擦れ合い、互いの熱を交換し合う。
「もっと! もっと奥突いて! パリピな種ちょーだい! 脳みそ飛んじゃうくらいイかせて!」
「おう、望み通りにしてやるよ! アゲてけよォッ!」
改蔵のピストンが加速する。ミウの巨乳が激しく揺れ、汗ばんだ小麦色の肌が、天井の裸電球の光を反射してギラギラと輝く。その姿は、スポットライトを浴びて踊るダンサーのように美しく、躍動的だった。
「……空間変異、検知。室内の魔力濃度、急上昇。……BPM140。上昇傾向」
押し入れの隙間から、クルミがキーボードを叩きながら実況する。その言葉通り、部屋の空気が物理的に変わり始めていた。
ズン、ズン、ズン、ズン……。ドンドコ、ドンドコ、ドンドコ……。
どこからともなく、腹に響くような重低音のバスドラムの音が聞こえ始めたのだ。最初は幻聴かと思われたが、次第にその音は大きくなり、畳を振動させ、障子を震わせる。ミウの「楽しい」「気持ちいい」「もっと騒ぎたい」という感情が、改蔵の魔力を触媒にして具現化し、現実世界を侵食し始めているのだ。
「あははっ! 何これ、音楽聞こえる! クラブじゃん! アガってきたー! 最高!」
ミウは腰を自ら動かし、ビートに合わせて改蔵を求めた。リズムに乗ったピストン運動。快楽の波が、音の波とシンクロして高まっていく。
「イく! イっちゃう! ギャルピースでイくぅぅぅ! ボス、出しちゃってぇぇぇ!」
ミウは両手で顔の横にピースを作り、舌を出してアヘ顔を晒した。絶頂の瞬間さえも、彼女にとっては最高のエンターテインメントであり、自己表現だった。
ズドォォォォォン!
改蔵の剛直から、白濁した高濃度の魔力が、ダムが決壊したように勢いよく放たれた。
ドピュッ! ドピュルルルッ! ドプッ!
「んほォォォッ! 熱いのが来たァァァ! お腹パンパン! マジ尊い……! 子宮がピカピカするぅぅぅ!」
ミウの子宮に魔力が充填されると同時に、アジト内に劇的な変化が起きた。魔力の爆発が、空間そのものを書き換える。
パァァァァァァッ! キュイイイイイーン!
天井の裸電球が炸裂し、代わりに七色に輝く巨大なミラーボールが出現した。それが高速で回転し、色とりどりのレーザー光線を撒き散らす。土壁は吸音材とネオン管に覆われ、畳は強化ガラスの下でLEDが光る最新鋭のダンスフロアへと変貌する。ちゃぶ台はDJブースへ、タンスは巨大なスピーカーへ。寒かった隙間風は消え、代わりにスモークマシンから甘い香りの霧が噴き出した。
「……変身プロセス、完了。……環境変化:強制フェス空間『Club KAIZO』」
クルミがサングラスをかけ、どこからか取り出したサイリウムを振り始めた。
ボシュッ!
光の中で、ミウの身体が再構築されていく。シルバーアッシュの髪がさらに伸びて光ファイバーのように発光し、毛先が虹色に変化する。肌にはネオン管のような幾何学模様のタトゥーが浮かび上がり、心拍に合わせて明滅する。背中には巨大なウーハー(スピーカー)ユニットが出現し、両手足はサイバーチックなスピーカー装甲で覆われた。そして、その瞳はサーチライトのように強く輝き出した。
「ふぅー! 生まれ変わったんですけどー! 超エモい! 自分がネオンとかヤバすぎ!」
スモークが晴れると、そこには『パリピ怪人・ミウ』が立っていた。露出度はさらに上がり、ほとんど裸に近いハイレグのボディスーツが、ビートに合わせてネオンカラーに点滅している。彼女が存在するだけで、その場が「パーティ会場」になる。陰気なアジトは、完全に渋谷のクラブと化していた。大音量のEDMが流れ、重低音が内臓を揺らす。
「す、すごいですぅ! アジトがディスコになっちゃいましたぁ! 目がチカチカしますぅ!」 マナがリズムに合わせて身体を揺らす。 「あらあら、賑やかですねぇ。お赤飯……じゃなくて、シャンパン開けなきゃ」 イスズはどんな状況でも適応し、台所からドンペリ(どこにあったのか不明だが)を持ってきた。
「サンキューマナっち! ボスもサンキュー! 最高だったよ! マジ感謝!」
変身したミウは、改蔵に抱きつき、ディープキスをした。彼女の唇からは、強烈な魔力と、カクテルのような甘いアルコールの味がした。
「へっ、派手な姿になりやがって。……だが、たまにはこういう馬鹿騒ぎも悪くねえ。寒さも吹き飛んだぜ」
改蔵は満足げに笑い、ミウのネオンで光るお尻を叩いた。パンッ! 電子ドラムのような音が響く。
「気に入ったか。……なら、そのテンションで世界を染めてこい。寒くて震えてる連中を、無理やり踊らせてやれ」
「りょ! 任せといて!」
ミウはウインクを決めると、背中のスピーカーから爆音を鳴らした。ズン! ズン! ズン!
「とりま渋谷行って、街ごとクラブにしてくるわ! 全員強制参加のパーティナイトっしょ! 寝てる奴は叩き起こす! 陰キャも陽キャも関係なし! 踊る阿呆に見る阿呆、同じ阿呆なら踊らにゃソンソン的な!」
彼女は窓枠に足をかけた。外は吹雪だが、彼女の周囲だけは真夏のような熱気が渦巻いている。雪が触れた瞬間に蒸発し、湯気となって消えていく。
「行ってきまーす! バイブスぶち上げでいくよー! 徹夜で騒ぐぞー!」
ズドンッ! ミウはロケット花火のように、ド派手な光の尾を引いて夜空へと飛び出した。彼女が通過した後には、虹色の残光と、EDMのビート、そして「うぇーい!」という楽しげな声が残されていた。
「……やかましいのが行ったな」
改蔵は耳をほじりながら、ミラーボールの下で煙草に火をつけた。アジトにはまだ、祭りの後のような熱気と、甘いココナッツの香り、そして鳴り止まないビートの余韻が漂っていた。冬の寒さは、完全に吹き飛んでいた。こたつの中では、メイがリズムに合わせて寝息を立てていた。