性処理係が導入されたのに、誰も使ってないらしい。〜しかたないのでクラスの女子はみんな俺が孕ませます。〜 作:ユリイカ
静かな夜にしんしんと雪は降り積もり、天から落ちてくる氷の花を受け止めるには俺の手は小さすぎる。とめどない天からの恵みは大地に深く積み重なり、冷たく、硬く、この身に滲みていく。時折吹く風が、殊更に我が身を震わせ、骨までも冷え切って意識まで朦朧とする。
深い大地の下には確かに灼熱の溶岩が激っているというのに、明けることのない夜の雪はそれを固く封じ込めてしまう。胎動の響きさえも雪の層に染み込んで、溶けるように消えてしまった。
春はいまだ遠く、雪解けまでしばらくの時が隔たる。ただ身を縮めて、冷たい風に凍えながら耐え忍ぶことしかできない自分は、なんて矮小なものなのか。この雄大な自然に晒されるほどに、幼稚な慢心が削ぎ落とされていく。
「おーい、近藤? 大丈夫?」
「嗚呼、未だ光は届かず……」
「ダメだこりゃ。オナ禁しすぎて頭がおかしくなっちゃってる」
まとまらない思考の流れに漫然と身を任せていると、目の前で小麦色の肌の少女が肩をすくめていた。静謐な授業の只中で席を立つとはなんたる愚行かと苛立ちが神経を痺れさせるが、はたと気が付いた。すでに時は過ぎ去り、人々は解放のひとときを享受していたのだ。
「そんなに辛いなら、一発くらいヌいていいんじゃないのー?」
「甘言に惑うほど、俺は迷妄しているわけではない。姦淫こそ天命に背く悪徳であり、約定を違えることはそれに勝る悪辣であろう」
「何言ってるか全然分からないんだけど……。近藤ってそんなキャラだっけ」
加賀女史はすっきりとした柳眉を寄せてわずかに首を傾げる。ほっそりとした頸がしなやかな線を作り、醜い男の習性は吸い寄せられるように目を向けてしまう。
「ほーら、なんなら私がシコシコしてあげよっか♡」
指で輪を作り、意味ありげな笑みを浮かべて上下に動かす様は淫猥だ。健康的で爛漫な少女が繰り出す生々しい所作は、その理想と現実の落差に背徳の香りが立ち込める。
「安易なる行いは己を詰める。熟慮こそ賢しき者に相応しい。そも、貴殿には共に歩べき伴侶こそありはせぬか」
「本当に頭が……。ていうか私、別に伴侶なんていないけど?」
……うん?
シコシコ動かしていた手を止めて、加賀はきょとんとした顔をする。周りを見渡せば、昼休み。男たちは三々五々纏まって食堂にでも行ったのか、教室の中には女子しかいない。
「いや、あれ。佐藤は? 幼馴染の」
「翔吾のこと? アイツは後藤だけど……」
そうだそうだ。名前はあんまり覚えてないが、加賀と一緒に小さい頃から陸上をしていたというスポーツマン。彼はなんだかんだと俺にちょっかいをかけてくる加賀に口を尖らせていたし、加賀自身も砕けた態度で接していた。てっきり、二人はそういう仲なのかと思っていたんだが。
「二人はその、付き合ってるんじゃないのか?」
「は? いやいや、誰がそんなこと言ってるの。あははっ」
その指摘がよほどおかしかったのか、加賀は腹を抱えて笑い出す。一方の俺はきつねにつままれたような馬鹿面だ。
「そりゃ、昔はちょっとそういう雰囲気もあった気がするけど、向こうは陸上一筋だったしね。シューズの話はしても、そんなロマンチックなことは一切ないよ」
「そ、そうなの、か……?」
「まだ疑ってる? 本人に聞いてみてもいいよ。どうせ即答されるだろうし」
加賀のからりと爽やかな笑顔は、本心からの言葉のようだった。それじゃあ佐藤はほんとうに、ただの幼馴染なのか。
よくよく考えてみれば確かにそうだ。身近に加賀みたいに健康的で活発で可愛い女子がいて、今の今まで我慢できる男がいるだろうか。きっと佐藤は本当に、そんなつもりが一切ないのだ。
なんだか、雪解けの気配が近づいてきた。
「そ、それじゃあ……もしかして、加賀も青交委員に立候補する可能性があったりするのか!?」
「へ? そりゃまあ、ね♡ あ、でも、私みたいな奴は、あんまり、魅力ないでしょ?」
恐る恐る尋ねると、なぜか加賀は驚いた様子で頷く。身体をくねらせ、胸に手を置く。もしかして、自分の胸が他の子と比べて小さいことを気にしてるのか。
「そんなことない! 加賀の体つき、めちゃくちゃエロいだろ。全体的に引き締まって無駄なところが一切ないし、抱き心地がめちゃくちゃ良さそうだし、その身長もセックスする時めちゃくちゃ相性が良さそうだし!」
「うぇっ!? あ、あは……。近藤って結構アレなんだね。翔吾は男みたいにしか見えないって言うんだけど」
なんだ、あいつ。目付いてるのか?
スカートで隠しきれない丸みを帯びた尻も、滑らかな肩も、めちゃくちゃ可愛いだろうが。胸も小さいったって叶恵や牛丘先生と比べた時の話だ。ちゃんと正面からじっくり見れば、その膨らみにしゃぶりつきたくなる。
「俺は加賀とセックスしたいぞ! チンコぶち込んで汗だくになるまでセックスしたい!」
「うええ!?♡ もう、節操ないなぁ♡」
抑えていた興奮が、地面を突き破って迫り上がってくる。
加賀は驚きながら頬を赤く染めて、ビンビンに張り詰めた俺の股間に視線を向けてきた。さっきからずっとちょっかい掛けてきたくせに余裕があったのは、自分が女性らしい魅力を欠いていると思っていたからか? そんなわけないだろ。
「お、いたいた。光希、今日の練習メニューなんだが――」
「佐藤!」
つい加賀に飛びかかりそうになった直前、教室に佐藤が戻ってくる。菓子パンを食べながら、加賀の方へ歩いてきた。今日の放課後、部活でやる練習メニューについて打ち合わせでもしたいらしいけど、その前に確認しなくちゃならない。
「佐藤、お前、加賀と付き合ってないのか?」
「はぁっ!? な、と、突然何言ってんだよ!」
肩を掴んで問いただすと、佐藤は目を白黒させる。一瞬俺の背後にいる加賀を見たかと思えば、ふっと目を逸らして小さく言った。
「俺と、コイツは……別にそういうんじゃねえよ」
「本当なんだな?」
こいつ、まじか。ずっと一緒にいたくせに、加賀の魅力に全く染まっていないだと。なんて奴だ。
「その、翔吾。……わたし、放課後は健診あるし」
「……おう。なら俺は勝手にやっとくわ」
加賀の方を見ることもなく、そっけなく言うと、佐藤は離れていく。
「あははっ。だから言ったでしょ。翔吾はわたしのこと、女の子とも思ってないんだって」
からからと笑う加賀は、どこか悲しそうだ。自分に魅力がないと思われて、ショックを受けないはずがない。なんて健気でいい子なんだ。
「俺が証明する。加賀がめちゃくちゃエロい女で、魅力的で、可愛いってこと、俺が教えてやるよ!」
「うええっ!? ……もう、しかたないなぁ。健診まで我慢して、ね♡」
佐藤が出て行った教室の扉を見た後、加賀は可愛らしく微笑んだ。
今すぐ彼女を抱きしめて、抱き上げて、トイレにでも直行したかったけど、ぐっと我慢して、
「加賀は可愛いからな!」
「んぅえっ!? ちょ、腕の力強すぎっ♡」
我慢できずに抱きしめてしまった。
しっかりとした身体付きだけど、柔らかくていい匂いがする。こんな子と青春を送るなんて、全ての男の夢だろうに。なぜ佐藤は気付かないんだ……。
なんとか加賀から手を離して、椅子に腰を落ち着ける。彼女は顔を真っ赤にして、暑そうに手で仰いでいた。