唯一無二の親友だった幼馴染が実は女で何かもうぐちゃぐちゃだ 作:山崎世界
祝日と土日を挟んでの大型連休。それに向かって、バイトに邁進しつつ金を貯めて準備をしていた。
そしてようやく目途がついたので、しのぶに内緒にしていた計画を打ち明けることにした。
「……温泉旅行?」
「まあそこまで予算があるわけでもないし割と近場だけどな」
電車で三十分くらいか。
「ふむ……」
「都合悪いか?」
「いや、そこは別にいいんだけど。ただ……ゆーとだってそこまで余裕あるわけでもないだろうに、何だってそんな」
訝いぶかしんでたのはそれか。
なるほどその疑念は正しい。俺だって酔狂でこんなこと言いだしたわけでもないのだ。俺が温泉に目覚めたかと言えばそんなこともない。
無論、狙いがあってのことであるのだがそれをこいつに明かす気はない。という話なのだ。少なくとも今は。
※※※
それから、出発当日。例のごとく駅前で待ち合わせして、女装(?)したしのぶと合流する。
「それじゃ荷物持つよ」
「ん? うん、ありがとう」
今日はお互いに旅行カバン持ちではあるが。まあ何だ……女扱いというのにも慣れておきたいところではあるし。
「……ん? 何か妙に重くないか?」
まあ泊まりの予定なので着替えが多いのは事実であるがそれとは別にどこかずっしりとした重みを感じるというか。
「あー……まあ、うん。その辺りは色々とね。後でいいかな?」
心当たりがあって申し訳なさそうにしてはいるが、話す気はないらしい。
まあ俺も荷物を暴いて正体を探る気はないが。持てないと音を上げるほどの重さでもないし。
それから電車に揺られること数十分。
「思ったより早く着いたな」
初めて来る場所だったのでそれなりに余裕を持って出発したんだが。宿泊先の旅館のチェックインにはまだ早い。
「あー……その前に飯かな」
どうするか……。焦るんじゃない。俺は腹が減ってるだけなんだ。なんて一人でもないんだが。
「うーん、そうだね。じゃあちょっと座れる場所でもあればいいんだけど……」
「座れる場所……ねえ」
「ぁ、ちょ、ゆーと?」
俺はしのぶの手を引いてとりあえず歩き始める。
「疲れてないか?」
「別に平気だよ。そんな気を遣わなくてもいいよ……。ちゃんと、ついていける」
「そっか」
そしてちょうどよく芝生の生えた公園を見つける。地元の人たちが思い思いのまま過ごすその場所に何となくお辞儀をしながら通り過ぎて、空いている場所にどっしりと座り込んで、しのぶを隣に誘う。
しのぶはスカートを気にしながら隣に座って、何やら荷物を取り出した。
飛び出てきたのは、風呂敷に包まれたお重だった。
「はいどうぞ」
「は、え……?」
あんぐり口を開けてぼけっとしていた俺の口にから揚げを突っ込んでくる。美味いな……。
「まあ今回はたっぷりと時間があったからね。自信作だよ」
「これ……冷凍とかじゃないよな?」
味付けからして市販のものとは違うというか。味わい深い。
「そうだね。だってそんなのつまらないじゃない? 自分で作るんだから色々やってみたいって思うんだよ」
つまらない、と来たか。
「まあそこまで余裕のある旅でもないからね。節約するところは節約していくほうがいいと思うよ」
「まあでも、やっぱり旅先じゃここでしか楽しめないものってあると思うんだ。泊まる旅館の方でも夕食と朝食は頼んであるから。うん、そこらへんは楽しみにしような」
食事も終わり、んーっと手足を伸ばして寝転ぶ。しのぶは上品そうに佇みながら、そんな俺をじっと見つめる。
「ゆーと……結構、旅先でも落ち着いてるね。やっぱり少し変わった、のかな」
少し寂しそうな眼をしていた。
そうだな。こいつと会ったころの俺は、新しく来たばかりの土地でつまらなそうにしていた。
しのぶは、結構人見知りだったな。
しのぶはずっとあの街で暮らしていて。俺は各地を転々としてた。根無し草で、だから初めて来る土地でもへっちゃらで慣れたもんだ。
だけどきっとそうじゃない。俺にとって大事だったのは……
「……うん、でもまあ……あれだ。しのぶの手料理が食えて俺もありがたいと思うぞ。こういう時でもないと食えないもんだし」
「……あはは、ありがとう」
しのぶは少し顔を赤らめて返事をした。