※この作品はR-18です。

灰の世界で~脱法受胎~   作:朝凪小夜

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1-1 伊澄凛の場合①

 朝の教室は中々に騒がしい。女生徒は両の手に届くほど、男子生徒は他クラスも交じっているのか珍しく4人も居るためか声の中に低いものが聞こえる。

 教室に入る自分への視線は感じるが声がかかることは無い。それでも良いのにとは感じるがその原因は自分ではなくその隣、伊澄凛。彼女の香水の香りがかなりはっきりと分かるくらいの距離で俺の右を歩く。 

 その気持ちもわかる。自分がもしその立場であればわざわざそこに割って入ろうとは思わない。少し遠巻きに見ておけば良いだけだ。

 加えて今日は少しそこに違ったものがある。それを知っているのは俺だけのはずなのに、いつも通りの登校にいつも通りの学校でありながら、何かが違うような気がしてしまう。

 視線も話題ももしかしたらと疑念を持ってしまう。

 理由はとても簡単で俺の頭の中にあるそれが強烈に主張をしているから。

 それを伝えられたのは昨日。珍しく朝から晩まで家に居た父親が語ったもの。笑いながら話していたくせに世界で他に知る者が存在しない程の爆弾を放ってきた。

 しかもそれ以上にどうしようもない程に困ったのはそれがとても魅力的で、いや、好奇心をこれ以上なく煽ってきて試してみたくてしょうがない。

 そのことを考えるだけで心臓が主張を始めるし、身体が、下半身が熱くなる。ざわざわして燃えるような熱い何かが満ちていく。

 

 「座らないの?」

 

 「…! あ、ああ、…ちょっとぼーっとしてたわ」

 

 ふと現実に引き戻す声にハッとした。

教室はとっくに横切られて自席の窓際のそこは目の前だった。

不思議なことにほぼ無意識でも自分の席くらいはわかるらしい。

俺が座るのをちらりと見てから凛も席に腰掛ける。彼女の席は俺の一つ前で、いつも前を見るときにはその姿が嫌でも目につく。

今日はそれがやけに鮮やかに、その濡羽色の髪に視線が吸い込まれていく。

頭がおかしくなりそうだ。退屈で仕方なくても何でも良いから早く授業が始まってほしいと願い続けた。

 待ち望んでいたような気もしたが、いざ授業が始まれば退屈感もあって焦燥感に似た火照りは冷めていった。

 代わりにまた記憶を反芻する。

 俺の常識と世界の当たり前をぶっ壊す、あの父親の、親父の言葉を。

 この社会は女性が多い。比率は場所にもよるが男の大体8から10倍。クラスに数人いれば良い感じだ。男子校なんてものはありはしないが、共学なんて言いつつ女子校な学校はいくらでもある。

 マイノリティとしてどうこうという気持ちはありはしないが、男としてはありがたいことに時折の精液提供をして社会貢献にも、個人的にも漫画を結構買えるのは嬉しいものだった。高校で始まったものではあるが中学からやらせてほしいものだと思った。時間こそそこそこ掛かるが眠っているだけで済むのは楽極まりないし、早めに行けば昼食も融通が効く上に欲しいものも買えるとあればむしろ役得ですらある。そうしていずれは見知った誰かがあるいは見知らぬ誰かが子をなす。それも最低で10が限度と定められている。結婚も最低3人だ。理性的に考えれば社会維持には当然だし特に不都合も感じていない。 

 高校を卒業すれば大学に行くかもしれない、だがその先には存在するのだろうとふわっとした未来。

だがそれはまやかしだと。

 本来人間の行う行為を排除し、徹底的に世界を清浄化した故の産物。欲望を覆い隠して科学と知性の名のもとに作り上げられたディストピア。

 俺たちには元来男女の番が行う行為があったはずだった。

 セックスと呼ばれるそれは子を為す以外にもコミュニケーションとしても行われていたのだと。

 

 正直研究室にこもり過ぎてとうとうイカれたのかと思った。だがその言葉に続いた内容を聞くにつれてそれが真実なんじゃないかと頭の中が染まっていた。元々どこか不自然なところは感じていたのかもしれない。それが疑いに変わり、違和感に至る。そしてその違和感は推定真実で打ち破られた。同時にどこか高揚と興奮があった。

 

 「こんなの知ってんの世界でもちょっとばかし、高校生ならお前だけだぜ?」

 

 今では継承の問題も消えそうだという葉巻を吸いながら、そんな親父の言。

 

 「ぶっちゃけ、俺が教えたことをどうしたっていいが、お前は思想テロなんてもんはやらんだろ。適当に楽しんどけよ」

 

 当たり前だろ、という俺の発言には親父はニンマリと笑って、また研究室に戻っていった。

 随分長く話していたのかやけに空腹の主張がうるさかった。

 

 そうして一日。眠りを経て確信に変わった推定は欲望も搔き立てた。交合を、この身を使った交わりを果たしたいと。

 これはどうやら性欲と呼ばれるらしく、耳慣れこそないが今の自分を表すにはそのものだとも思えた。

 その欲求は身体にも現れていて、これまでは成熟の証拠としてしか思わなかった自身の一部が未知の用途に供されることにひどく猛る。

 何とか普段通りに生活をはじめながらすぐにその生活はもう無理だとも悟った。

 いつも通りの筈でありながらとっくに不可逆。

 破綻は玄関を開けた時には生じていた。

 朝には必ずチャイムが鳴る。その主は伊澄凛、俺の幼馴染でこれまで幼稚園からずっと高校まで一緒だった。下校は部活の関係でズレることはあるが登校は必ず二人で。それがいつの間にか決まっていたルール。

 すっかり慣れ切っていたそのルールは躊躇いを生じさせず、ただ一瞬の淀みさえなく俺に、俺の脳に凛を捉えさせる。

 ただ彼女しか見えなかった。世界に他に何もないんじゃないかと思うくらいには。

 160センチに少し欠ける身体はしみの一切ない、多分黒子さえもない程の透き通った白。そこに背の半ばまでの真直ぐなか黒い髪。少し釣り上がって細い目がこちらを見つめている。

 日常の筈だった。少なくとも昨日までは。

 もし凛と、それをしたらどうなるんだろう。

 そんな考えが風船みたいに膨らんで、頭の中が、詰められていく。

 

 「…学校、行かないの?」

 

 玄関を開けたまま固まった俺に声。

 ある意味でそれは救いで、もし声が無ければずっと見つめていたままだったかもしれない。手汗と体温でノブが嫌に熱くなっていた。

 その後は少しだけ楽だった。2人での登校は徒歩で並んで歩けたのが主だ。

 視線こそ時折彼女の方に、その唇に、身体に、胸に、下半身に揺れてしまうのがわかったが止められなかった。ただどうにか変だと思われないくらいに一瞬で済ませることだけに努めた。

 

 それが今日の今まで。

 幸いだったのは登校中に上手く放課後に遊びに行くことを約束できたことだ。

 準備なんてそんなものはない。どうせわからない以上突っ走るしかない。その機会が一秒ごとに迫っている事実がひりつくような感覚を覚えさせる。

 授業でどうにかその退屈さから落ち着けないかと思ったのはある程度は当たっていた。凛の事を見てしまうのもほぼ髪だけだからまだ楽だ。だが同時に体験への期待が際限なく強くなることは想定できなかった。

 

 そんなただ高まっていく情動に耐えつつ、ほぼ上の空になりながら一日を終えた時には何とも言えない達成感とようやくという満足感にも飢餓感にも似た気持ちになった。さながら最高に空腹のときにテーブルの上に並んだ食事を見た時のようで、歓喜の為の準備を全力で整え切ったような、そんな感覚。

 

 「…凛、返ろうぜ」

 「うん」

 

 帰り支度はそれはもう早かった。教科書もノートも手当たり次第に鞄に突っ込んで背負いこんだ。凛の方はまだ済んでいなくてその様子を見る。その手も、指先も。

 手を握ったことはある。でもその時の感覚はあまり覚えていない。確か、結構自分とは違うんだな程度だった。その時の感覚をもう一度知りたいなとも思った。

 そんなことを考えるうちに支度も終わって歩き出す。校舎の外は少しだけ天中を外した太陽が存分に輝いて、すっかり葉桜になった木々にその光を浴びせている。

 朝に来た道をただ戻るだけ。そのはずなのにやけに道が長いようでいつもどんなことを話していたんだろう。確か授業の事も話していた気がする。

 

 「今日の数学さ、何かやけに色々話してたし、受験に出るぞって黒板凄くなかったか?」

 「ああ、アレね。鈴木先生は受験に出るところはとにかく黒板強調するんだって。全部大事な気もするからちゃんと教科書読めばいいのにね」

 「そりゃ凛だったら勉強してるし意識もしてるんだからそうなるけどさ、他はそうでもないじゃねえかな」

 「ま、そこはね。実際それなりにはやってるし」

 

 ああ、そうだった。こういう感じ。一日に何があったか適当に話ながら歩いていたんだ。

 

 「感覚的には結構いけそうなんだろ?」

 「まあね、模試もうけるけど多分今のままなら何とかなる。 …翔も受ければ良いのに」

 「俺はまあ、いいんだよ」

 

 今はそれ以上にやりたい事があるしな、と飲み込んだ。

 凛は頭がいい。そして同時に努力家だ。将来についてぼんやり適当に考えている俺と違って、かなり明確に目標とその期限を定めている。いわゆる将来の夢ってやつがはっきりと決まっている。何故か親父の方も暇だったら勉強は見てやるとか言っていた。大学の方も行きたいところはとっくに決まっていてそのための勉強は進んでいる。俺たちのいる高校も結構良いところの筈だが、それでも少し違ったものがある。

 

 「でも、結構久しぶりだよね。うち来るの」

 「まあな、前行ったのいつだっけ」

 「多分、お正月かな」

 「マジか。…おばさんにも挨拶全然できてねえや」

 「別に、それはいいから」

 

 ただし逆は多い。一昨日くらいにも家に来ていた気がする。

 

 そうこう話すうちに俺の家は通り過ぎて、凛の家に着いていた。

 見慣れていて何度も通ったはずの扉が少しだけ違う色に見えた。

 

 凛の部屋は白を基調としている。でも彼女の肌よりはもう少し濃い白だ。クリームっぽいような暖色系という感じ。そこに少しピンクの小物とクッションが色を足す。同時に甘い香り。うっすらとだが肺を満たして息に混じるその香で彼女の部屋にいるという実感がより強くなった。

 

 「今日は話したかったの?」

 「まあ、それもあるかな」

 「それも?」

 「いや、まあ、何というか…」

 

 どうしようか。やりたいことを直接言うべきなのだろうか。だとするとあの話を最初からするのだろうか。それは少々、いや非常に面倒で正直昂りはもう最高潮だ。

 

 「…凛はさ、高校でやりたいことあんの?」

 「…んん、特には無いかな」

 

 お互いにクッションに座りながらの会話。凛は少し考えるように顎に指をあてたが、考える時間はごく微小。

 

 「…だったらさ、高校分の時間を俺に使わせてくれ」

 「どういうこと?」

 

 息を吸い込む。もうやるしかない。迷いもない。後はただ行動するだけだ。 

 

 「…ちょっと目を瞑ってくれないか」

 「…? 良いよ?」

 

 スッと閉じられた目。わずかに開いた唇。その表情を見つめているだけで心臓が痛い程。

 膝立ちで凛に近づく。その衣擦れの音さえ異様な大きさに感じる。

 距離が縮まって行く毎に彼女の香りが少し変わったのがわかった。普段のオレンジの香りがもっと甘く、どこかワッフルにも似たような香りになっている。そして体温も。空気が違っているように、温かな層があるようで一つ一つの層を超える度にその熱が身体に移っていく。

 そして、触れる。頬に、先に右の指先が触れ平に動いていく。手にかかる髪がさらさらと腕に流れていく。

 

 やるぞと唱えたのは一瞬。そっと唇を合わせた。

 

 凛の身体が少し震えたのが触れ合ったそこからわかった。

 無音、互いの身じろぎさえわからない程に。いつの間にか息も止めていた。

 

 多分10秒ほど。心臓はその倍くらいの鼓動の後、ふっと唇を話す。

 呼吸の限界はまだ先、それにまだほかにも先がある。

 

 少し長めに酸素を取り入れて、

 

「まだ目空けるなよ」

 

 再びの口づけ。

 同時に左腕を凛の背中に伸ばしていく。包み込むようにゆっくりと。目的地は頭へ。

 髪をふわりと抑えるように彼女の後頭部に触れる。

 それを合図にほんの少しだけ顔を今一度近づける。

 

 唇を開いて、舌をそっと伸ばす。

 

 凛の唇は雪よりずっと柔らかいのに暖かくて、吸いつくようで。

 その感触を感じるのと同時に身体が跳ねるのがわかった。

 だけどそれは俺の腕が制する。左手で彼女の頭をそっと自分の方に押す。

 抵抗は皆無だった。代わりに凛の方から抱きしめられる。

 背中に腕が伸ばされ引き寄せられて、ただでさえ近かった距離はほぼ0へ。凛の胸が胸板に密着した。

 その感覚に喜びを覚えながらも行為は止まらない。

 既に凛は俺の舌を迎え入れて口内での触れ合いが始まっている。

 ぬるり、とした舌の感触。唇よりずっと温かくて重たい。

 舌先を動かすたびに絡み合って互いの唾液が混じっていく。その度、くちゅり、となる音がどうしようもなく心をくすぐる。

 

 「…んっ、…んぅっ…、」

 

 時折舌に感じるのは硬い感触も。彼女の歯だ。整ったその並びは下とは違った心地よさで、舌と交互に触れることでどうにも差が楽しくて仕方がない。

 それにいつの間にかこそばゆい感覚もあった。

 凛の鼻息だろう。

 決して荒げているというものではないのに強く口元をくすぐるその風が心地いい。

 もしかしたら俺の方もとっくに息を止められていなかったのかもしれない。

 思い出すと少しだけ苦しさを覚えて名残惜しさを覚えながらも唇を離す。

 体験は言葉で聞いたより想像よりも何倍も上回った。自分がたった今した行動のゆえに心臓がわけわかないくらいに早鐘を打っているし、もう痛いという程に太ももの辺りで屹立が存在を主張している。

 

 凛の方は少しぼーっとしているようにも見える。俺を引き寄せていたはずの腕の力はずっと弱くて腰のあたりでやんわりと互いを結んでいる。よくよく顔を見つめれば目じりに少しばかり涙が浮かんで、きっと目を開けていたら潤み切って零れるだろう。

 そんな表情にも、もっとだと、掻き立てられる。たまらなく欲しい。

 

 「…凛、服脱いで。 俺も脱ぐからさ」

 「…え…、うん」

 

 消え入るような声。だがそこに否定はなくただ受け入れるだけ。ゆっくりと自分の方に腕を戻してブラウスのボタンを外していく。

 それが無性に長く、ゆっくりとした時間に思える。

 自分の服はその動きを見ている時間でとっくに脱げた。半ば脱ぎ散らかしたようなものだがどうでもいい。外気に触れた肉体が一瞬涼しさを覚えてもすぐにまた熱くなる。

 

 彼女の手は胸の下ほどで3つほどまだ外されていないボタンが残る。

 手を伸ばす。自分のシャツとは逆向きのそれは俺から見れば扱うのは簡単で秒すらかからずに彼女の身体を覆うベールとしての役割を終える。はらりと開いたそこからは白く滑らかな凛の肌が、その胸が見えた。

 そこからは早くてさっと腕を抜いてテーブルの上にブラウスが置かれる。

胸を支える下着は部屋と同じで白を基調としながらところどころに見える淡いラインがどこか凛ぽいなと思えた。

 

 「下も、だよね?」

 

 小さな声。どこか躊躇うような含みも感じる。迷わず頷いた。

 スカートの方はブラウスと違って構造が単純なのか手先を右腰のあたりで少し繰るだけで衣としての役割を終える。

 上下で揃えたのだろう同じく白色のショーツはただ一番大事な部分だけを隠して、凛の太ももや腰回りの姿を顕わにしている。少し視線を上げれば女性の象徴としてのふくらみ。どこも服の中にあるせいか顔よりも白いような気がして、それでいて柔らかな曲線が目を奪う。

 

 「…ブラも、取るね」

 

 視線も感じているのだろう。うっすら目は開いているのに視線は合わない。いや、俺の方がずっと胸を見つめてしまっている。何となく同級生よりも大きいとは思っていたがその大きさをたった一枚の布を剥ぐだけでこれほどまでにとは思わなかった。同時にその描く稜線が、彼女が身じろぎする度に揺れてその動きを追わずにはいられない。

 ブラウスの時と似て、腕を抜く動作を経て、その残った一枚もなくなる。丸みを帯びながら突き出すような形状に先端の突起が赤く強くそそり立って主張している。

 

 「…っ♡ あっ♡、んぁっ♡」

 

 たまらずに手を伸ばした。片手を右の半球を掴み取るように被せる。ムニッと弾力を感じながらも指先はふわふわと沈む。掌には少し固くこちらをつつくような尖った部位。

 押しつぶす様にゆっくり手を丸めながら、また開きながら開放する。

 

 「んっ♡、…ふ、ふぅ♡、あぁっ♡」

 

 柔肌の食感と凛の高く上ずった声が心地よくて、ずっと続けたくなる。

 

 「…翔♡…、翔っ! …これじゃ脱げないよ♡…んっ♡…」

 

 少し荒い息と共に告げられた言葉で我に返る。

 名残惜しさをどうしようもなく感じながら手を離せばおずおずと凛が手を腰に伸ばして、身体に残った最後の衣服を外していく。脚を器用によじりながら座ったままで脱いでいく。そのさなかに少しだけ見えた。ショーツにかかる水糸。

 

 「…何か、湿っちゃって…。生理でもないのに変、だよね…」

 

 俺の視線はやはりわかっているのだろう。伏し目がちに、恥ずかしそうに口にする。

 その身体の反応の意味はわかっている。俺だけが。

 そんなことはないと呟きながら凛を抱き寄せる。

 その動きに凛も期待があるのだろう、目を閉じて顎を上に向ける。その期待に応えるべくまたその口に触れる。

 今度は凛から舌先を求めてきた。俺の口内に凛がいる。

 先程俺がしたように舌をゆっくり回転させながら、頬を味わいながらお互いを混ぜていく。

 俺としてもただそれを楽しむだけではない。背中に回していた手を少しずつ、少しずつ擽るように彼女の腹へ。引き締まりつつもゆったりとした柔らかさに興じてから少しだけ上に移す。

 両の手で持ち上げられた乳房はその重みを感じさせながら少したわむ。

 指を絞るように捏ねる。

 

 「…んぅ♡、うぁっ♡」

 

 指の浮き沈みに合せて弾力が押し返してくる。さっきよりも凛の声が大きい。

 動きを変えて身体の芯、双丘の裾から指の背面でこする。触れるか触れないかのギリギリで。さわさわと肌と熱の境界を追っていく。その軌跡は乳輪から乳首へと、爪先で触れる。

 そして少しだけ勢いをつけて、弾いた。

 

 「…ああっ♡」

 

 一部分で繋がっていた俺たちの身体が離れる。一番の高い響きと同時に頭が上に向ききって首筋をさらす。

 

 「…あ♡、…うぅん♡…」

 

 ため息に似たゆっくりとした息。それと共に凛はその身体を、その重さを俺に預けてくる。髪が触れ合って髪がこすれる。

 

 「大丈夫か?」

 「…ごめんね、結構限界♡…。身体痺れるみたいでわけわかんないよ…」

 

 それは強烈な刺激、快楽という爆弾。これまで存在すらまともに知らなかったところに極々短時間でぶつけられた以上こうなるのもわけもない。それにこれは好都合だ。身体が強張るより余計な力が抜けて俺にはずっといい展開だ。

 

 「…わかった。ベッドに移るか」

 「ベッドに…?」

 「凛はそのままで大丈夫、俺が運ぶよ」

 

 身体が碌に動かないのは本当なのだろう。俺の言葉に少し頷いただけで身じろぎもない。胸に置いていた手を背に脚に回して一息に持ち上げる。

 凛は思っていたよりもずっと軽い。軽いのに何故かとても大きく感じる。

 ベッドには僅かに数歩。人一人を抱えているとしてもその隔ては一瞬で超える。凛の身体はスプリングとマットレスに優しく受け止められて、柔軟剤にも似た寝具の匂いがふわりと香った。

 

 「…ありがと」

 

 膝を布団の上に落として再び口づけを。ただし今度はすぐに離す。下どうしの触れ合いを期待していたのか凛の舌が口先から伸びている。その舌先をぺろりと舐めあげた。

 そこから頭を首筋へ。喉に首筋は白い肌の内に細い赤と緑の筋がうっすらと見えて、その上に桜が躍っている。唇を通じて体温が唇よりも強くわかる。強い鼓動も。

 さらに動きは下へ。手でしか触れていなかった乳房へと。頬を、唇を押し返す力は指の時より穏やかでどこか安らかな気持ちさえ感じさせる。しかしそれは直ぐに劣情へと変わる。

乳首を口に含めば指先よりもずっと繊細に乳輪のぷっくりとしたふくらみも、その先端の固さもはっきりと分かる。

 

「…ひゃ!? あぁん♡」

 

 口での戯れは少し予想外だったのか、もしくは感度の閾値を超えたか。驚きの声が出て、すぐにまた甘い声に変わる。

 吸いついて、ねぶって、また吸って、最後に前歯で甘くかみついた。

 

 「…あ♡、あぁっ♡、あぁぁぁっ♡」

 

 今日の一番を超える声。高さはもとよりずっと大きなものに変わっていた。そして凛の匂いがずっと濃くなったのがわかった。その源はわかっている。だが、まだ。まだ最後まではいかない。代わりに腕を腹から脚へ動かしていく。途中のへその凹みが面白くて、円を描いてみたりつついてみた。

 その先に、滑らかな肌の上に指を這わせていきたどり着くのは柔らかな茂み。下腹部の陰毛。視線を向ければ、髪と同様に白い肌に黒の毛先のコントラストが美しく映える。髪ほど長くないくせに、髪が顔を引き立てるように、その先の秘部を彩る。

 毛先は濡れてまとまりつつも根本はまだ乾いていて、感触の違いを楽しみながら指先を往復させる。梳いて、解いて、繰り返す内に少しずつ湿り気は根本にも広がって指に絡みついてくる。そうすると感触もまた変わって柔らかさよりも硬さが勝る。音も変わって、肌でこすれてじりじりと聞こえてくる。その音が聞こえる度に、乳房から口を離しても、悩まし気な声がくぐもって響く。

 

 「…なあ、凛。気持ち良いか?」

 「…はぁっ♡…、気持ちいい? よくわかんない…♡。

 でも、頭がふわふわして、これ好きよ?」

 「それを気持ちいいって言うんだよ。それに最高に気持ちいい瞬間はイくって言うらしいぜ」

 

 多分凛は何度か達して絶頂を味わっている。その感覚に名前を与える。不思議な顔をしているような気もしたがまあそれについては別にいい。

 ベッドに乗せていた片膝を両ひざに変えて、凛の下半身へと向かっていく。脚をまたいで「そこ」の真正面へ。すこしだけ凛の脚を広げることも忘れない。

息を吞む。

 ほんの少し先には女性の、凛の一番の秘密の場所。膣があった。

 陰毛は既に濡れきって肌に張り付いて、宝を覆い隠すという役目を忘れきっている。

 まさに割れ目という語がぴったりで、肉が盛り上がっていることも合わせて唇の様にしか見えない。そして先程何度も繰り返したキスのように少し開かれていて、ゆっくりと水が伝っている。それはさらなる刺激を、快感を要求しているようで、ゾクゾクと体に燃えるようだ。

 凛の濃い匂いはここから生まれていた。熟した果実にも似ていて、もっと重たい香り。嗅ぐほどに心が、俺の先端が強く起つ。その秘所を目で堪能して、迷うことなく口で襲った。

 零距離で、口も鼻も両方を通じて脳へ届けられるアロマは異次元とも言える濃度で脳みそを揺さぶってくる。同時に気持ちがたまらないほどにそそられる。味も匂いももっと、もっと欲しい。

 唇を開けば陰唇も応じて開き、口にとろりと蜜が流れてくる。そこから舌先を伸ばす。口よりもずっと肉という言葉が近いようでむっちりとした感触。甘さにも似た何か、少しの酸、どこかうっすらと塩気。

 

 「な、なんでそんなところ、舐め…ひゃっ♡、んぁぁああっ♡」

 

 俺が刺激を受けるのは同時に凛も刺激を受けるということで、また甲高い声が聞こえてくる。淫蜜をまぶした秘肉を舐め上げながらその声を楽しむ。一度太ももから中心へ向かうように舌を動かせば、段々とあえぐ声が大きくなる。

 再度中心の陰唇に触れながら、今度は下に力を入れ、ゆっくりとその洞窟へ入って行く。

 ほんの少しだけ中に入っただけできゅうっと締め付けられて熱烈な歓迎を感じる。

 

 「あ♡、ああ♡、翔が♡、翔の舌が♡、入ってくるぅ♡」

 

 奥へ奥へと肉をかき分けるように、滑らせるように舌を突き入れる。締め付けもそうだが、穴ということもあって全方位との摩擦がとてつもなく気持ちいい。舌以上にザラザラとしてほんの少しの動きで強烈な快感がやってくる。顔に、頭全体も使って出し入れをしてみれば動きの速さも相まって快感は加速する。

 

「あっ♡、それっ♡、だめ♡、それっ♡、イくっっ♡」

 

 凛の絶頂。すでに数を数えることは諦めているが、今度はちゃんとイくと言ってくれた。太ももの辺りまでビクビクと痙攣が生じている。そしてこの絶頂でまたあのアロマが放たれる。

 舌を引き抜いて、だがまだ責めを終える気は無い。次は指だ。

 左中指を凛に入れていく。乾いていたはずの指はあっといまに濡れて、吸い込まれるように内に潜っていく。先程のザラザラは襞は幾つもあってその襞にさらに襞がついているような感じだ。そして舌より長い分、圧迫に似たまとわりつく肉を強く楽しめる。

 

 「さっきより固いぃっっ♡」

 

 まだまだ入口だけの刺激でも凛はたまらないらしい。まだ指は余っている。まだまだ奥を楽しもうと肉をかき分ける最中で、また違う感触に出会う。

 お腹の側に強いざらついた場所。さっきよりもつぶつぶとしたそこ。指の腹でこすり上げる。

 

 「そこっ♡、だめっ♡、いいいいっ♡、イくっ♡」

 

 そこは強く感じる部分なのだろう。このままここでの快楽で凛の乱れる姿を見ても愉しいが俺の方ももうそろそろおかしくなりそうだ。もう少しだけ、指の限界までを確かめて終えよう。

 ざらつきの場所を超えると指先にかかる圧は少し質を変えた。先程はただ締めるというだけの動きだったのが、今度はリズムに似た強弱がある。まるで呼吸にも似ていて、グッと押された後にふわっと包み込む。意識の下ではおそらくない。だが指先だけも気持ちいいこの場所に、くじるのではなく男性器を突っ込んでしまったらどうなるんだろう。

 指がそのすべてを凛の中に収めると同時に指先は奥地に突き当たった。これまでの柔らかな肉とは違ってコリコリと固い。どこか乳首のあの固さにも似ていた。そこに触れながら手全体を振るようにして振動を届ける。

 

 「…あれ? 何か違う? でもこれも気持ちいいかも…♡」

 

 これまでと違って快楽は苛烈さを控えている。だがその安らぎも僅かな時間だった。

 

 「だ、だめっ♡、これ…♡、止まんない♡、止まんないよぉっっ♡」

 

 連続絶頂。刺激は弱い代わりにその持続性が長く絶頂の波は引くことを知らず津波の様に押し寄せる。

 

 「また♡、イっちゃう♡ ずっとイっちゃううぅぅ♡」

 

 絶叫にも似た声。それを合図に指を引き抜いた。

 数えるのも馬鹿らしいほどの絶頂の為にか指どころか腕の全体がすっかり濡れていた。

 凛の身体も下半身が小刻みに震えて収まる気配はない。

 自分も下半身が熱くてたまらない。凛の様に絶頂こそしていないが雫がとめどなく溢れていてる。今もまた滴って落ちていっている。

 挿入る。

 右手を剛直に添えて、ゆっくりと照準を合わせる。 凛はイきすぎたせいか息を荒げて自失している。

身体を少しずつ近づけていく、自分でも息が荒いのが分かる。膝を少し動かして、先端が花びらに触れる。

 全身にびりびりと鳥肌が立っていく。興奮と狂いそうなほどの達成感に熱情。

 一瞬の静寂。息を止めてすべての音が消えて、腰を前に突き出す。

 あふれ出る蜜に濡れて肉の棒がぐぷぐぷと沈んでいく。

 

 「…♡! 翔♡、 それ♡、っ…♡、太いっっっ♡」

 

 自失を吹き飛ばして再度の絶叫。見開いた目がこぼれそうなほど。

 その絶叫のせいか、とんでもない刺激が男性器から伝わってくる。これまでよりもずっと強くて、強すぎるほどに鋭い刺激。温かくてぬるりとしながらも強烈な圧迫。

 半ばまでしか埋まっていないのにもかかわらず決壊は止められず。

 

 「…うっ、ヤベエ! 出るっ!!」

 

 どびゅっ♥ どぶゅぅぅー♥ ぶびゅーっ♥ どびゅー♥ どぷっどぷっ♥ 

 

「あああぁぁぁあっ♡、あっついよぉぉ♡ それ、それ、好きぃぃ♡」

 

 身体が溶けて流れ出すのではないか、腸が引きずり出されたのではないか。肉に埋まった自分の一端からは迸りがマグマの様に放出される。一瞬か一時間か、精液の放出が続いて、目の前が白くなって浮いているような気分だ。

 滔々として揺蕩うような気持でいれば、いつの間にか凛の裂くようなキンとした声も聞こえなかった。そんなことに気づくと視界が晴れてきた。凛もこれまで以上に息をあらげて、はー、はー、と大きく息をついている。

 未知は実体験に変わった。それも最高の形で。

 でもまだ足りない。

 その思いに応えるように剛直はその硬さを僅かも失わずに凛に突き立っている。それに本人は放心に近いのに女性器はこれでもかと締め付けて快楽を求めている。

 やってやる。

 身体を傾けて凛に圧し掛かるような体制に。膝も太ももに密着させて、凛の脚を完全に開脚させる。さっきよりもずっと動きやすく、誘い込まれる。

 その肉穴に、半ばまで埋まっていた自分を、一息に突き入れる。

 

 「…ひぃあああぁぁぁ♡」

 

 一度精を放ったためか二回目まではまだ持ちそうだ。だがそれも長くはない。舌先、指で味わっていた膣内の動きはもっと鮮烈に刺激を与えてくる。亀頭の先端から、付け根、それも陰嚢の付近まで揉み解すような、握ってくるような種々の悦びを。

 腰を引いて引き出してみれば、また違った襞との摩擦が起きる。傘へのひっかりが肉を削るようにぞりぞりと擦り上げる。それだけでまた達してしまいそうだ。

 引き出した屹立には俺自身の精液に泡立った凛の水が絡みついて白く染まっている。その中には薄っすらと赤い筋。そうだろうとは思っていたが、この世界で経験なんてあるわけがない。その証拠。そしてその知るはずのない男を刻み付けたのだとどこか昏い喜びが満ちる。

 次は往復で。

 

 「んっ♡、んは♡、はぁっ♡、つぁっ♡」

 

 腰の動きを止めずに突き入れては引きずりぬく。これまで一度一度で止めていた動きを連続にすることで絶え間ない快楽は電流の様に駆け巡る。凛の声も短く、吐き出すような声だ。それに膣肉もその振る舞いを変えた。ゆっくりと自身を歓迎し抱擁ともてなしをしていたのが、動く度離れることを嘆くように吸い付いてまた戻れば熱く密着してくる。しかもその動きにはリズムがある。俺が動いて連続でつき込んでいるせいか凛の身体が反応して、同じ律動に揃えるように蠕動する。そのせいでまた腰の往復が加速してしまう。快楽の追いかけっこは果てても終わらない。

 

「…あっ♡、んぁ♡、あ♡、あぁっ♡」

 

その中で一瞬、強く突き込んだ際にひときわ大きな声の跳ね方があった。

俺の方でも怒張の先端に固い感触を覚える。それが指先でも触れたあの最奥だとはすぐにわかる。

 その最奥めがけてもういちど腰を突き出す。ぷりっとした感触に少しだけ食い込む感覚。これまでより強くはめ込むという快楽がまたボルテージを上げてくる。

 

 「ああっ♡、それ…♡、お腹震えちゃう♡、好き♡、すきぃぃ♡」

 

当然凛もその快楽にはとっくに浸っている。先程の強烈な絶頂の沼は記憶にも身体にも刻み込まれている。

 

 「またっ♡、また…♡、イっちゃうっ♡ さっきの…♡、さっきの♡、あのあっついのちょうだいいぃぃ♡」

 

目尻から涙を流しながら蕩けききった顔で叫ばれたその声に、我慢は無意味だった。

全力で腰を叩きつけ、亀頭が最奥に、子宮にめり込むのを感じながら撃ち出す。

 

 「ああっあっつぅぅいっ♡ イっっくぅぅぅ♡」

 どぶゅぅー♥ ぐぷっ♥ びゅー♥ ぶびゅーっ♥ どびゅー♥ どるるるる♥

 

 吐き出された欲望は弾丸のように奥へ奥へと飛び込んでいく。それは肉の壁も超えて閉ざされた最奥にも。最後の秘として守られていた子宮へと。放出する度飲み込まれる。魂が吸われるというのはこういう感覚なのかもしれない。自分が液体になって啜られるようだ。

 また白く染まった視界が晴れれば、見えてくるのはところどころ朱に染まった凛の姿。全身がぴくぴくと震え余韻に浸りきっている。俺もそうだが息は絶え絶えで汗が球になって肌を滑る。

 もしかしたら無理をさせてしまったかもしれない。少し、そんな不安がよぎった。

 せめて水くらいはとリビングを目指す。部屋から出れば冷気にも似た空気が全身を撫でる。どれだけ行為に熱中していたのかと思うのと同時に、そのひやりとした流れが気持ち良いのも事実だった。

 服を着ていないこともあって動く度に腹にぺちぺちと少し柔らかさを得たモノが当たって少し鬱陶しさもあったがそれ以上に全裸で幼馴染の家を歩くというあり得ない体験が背徳をくすぐる。

 そんな経験もすぐに終わり、水のペットボトルを持って部屋に戻るのに3分と掛かってはいないだろう。扉を開ければ、これまでとは逆にむわりと湿と熱をたっぷりと含んだ空気が体を包む。何よりその中に混じる誘う香り。一度落ち着いたように思えた半身も芯を通してまた猛る。

 その猛りを一旦は追いやり、凛の身体を支えながら水を飲ませる。

 腕に感じる体温は触れた部分から溶けるように伝わってくる。まだ凛は快楽の波から抜け出せていないようだ。今の凛の全てが自分を興奮させてくる。また一段と血流が増してどくどくという音さえ感じられそうだ。すぐにでも襲い掛かりそうな気持ちを抑えて何とか彼女の薄く開いた唇にボトルの口をあて水を飲ませる。コクコクと少しずつ細い喉が揺れる。

 

 「…はぁ…これ、これが翔のしたかったこと?」

 

 口元から離したボトルの淵をちろりと舐めてから、どこか俺の肩の後ろを見るような目で問いかける。

 

 「そう、そうだ。 凛はどうだった?」

 「…よくわかんない。頭は真っ白になるしどこかに飛んじゃうみたいな気持ちになるし。

 …でもまたしたいって気持ちにはなるかも」

 

 自分の興味を満たしたくて、半ばどころか全てにおいて凛の意思は無視していた。それでも自分と同じ感情を抱いていたことに心が躍る。

俺も水を飲む。ペットボトルから伝って、胃へと落ちていく冷感がかえって自分の火照りを思い出させる。まだ足りない。

 

 「じゃあ、もう一回しようぜ」

 「…良いよ」

 

 どこか焦点の合わず虚ろに似た視線はようやく俺を見た。

 それを合図に口づけをする。もう息を止めたりはしない。触れあって貪り合いながら、粘膜をこすり合わせて、吐息を相手にかける。唇をゆっくりを舌でなぞって、刺激を求めて突き出された舌を唇で挟んで先端を舐め、ねぶりまわす。

 

 「…はぅ、んっ♡、…はぁあっ♡」

 

一度中断されていた程度で欲望の炎は消えず、むしろ小休止のせいで激しくなってきた。

 

 「…凛、今度は凛が動いて」

 

 急に相手を失った舌を所在なさげに伸ばしながらどこか呆けた表情の凛に求める。凛は相当キスにもはまっているようで、中断されるとどこかもっとしたいという反応が見える。でもそれも良いかと思うがそれ以上に強く激しい刺激が欲しくてたまらない。

 そんな思いからの要求だったが凛は不思議な顔をしていた。

 

 「…私が…? …どうするの?」

 

 小首をかしげながら聞いてくる。

 ああ、そうだった。さっきは俺がしたからとはいえ、根本的にこの行為に、セックスについて凛は何も知らないんだ。

 

 「俺がベッドに横になるから、凛は俺をまたいで座ってくれ。それで俺のその、陰茎をさ、凛の膣に入れて。その後は俺がしたみたいに擦り上げて」

 「…わかった」

 

 互いの位置を交換しながらベッドに横たわる。頭を乗せた枕からは凛の髪の匂いがしてドキドキする。

 

 「これで、良いの?」

 

 俺をまたいで座った凛が訊ねる。膝で分散しているとはいえ腹の上に人が乗るというのは新鮮でその重みが面白い。そして、凛がこぼす蜜が腹を塗らしているのがわかる。少し冷たくて絶えることなく腹に落ちては背に伝っていく。

 

 「そう、それで挿入てみて」

 

 その言葉の後でやってきたのは予想外の感覚。

 いつの間にか脚の方まで動いていた凛は俺の張り詰めたそれを握りしめていた。手つきそのものは優しく痛みはない。むしろすべすべとしていて自分の手とは全く違う柔らかな感触。

 想像とは違った心地よい刺激にまた興奮が脳髄を登る。一瞬俺の方も叫びに似た変な声を出してしまった。その声にびくりとした凛の反応がまた新しく屹立を苛む。そのループにも似た快感の連鎖の中で、凛は薄く笑っていた。

 何年も一緒にいたはずなのに一度も見たことは無くて、たまらなく艶やかな表情。蠱惑的な雌の顔に身震いする。

 

 「…り、凛っ。 頼むっ…」

 

 懇願にも似た言葉に凛の返答はない。代わりに先程までの無知が噓のように迷いなく肉棒を膣穴に受け入れた。

 

 「またっ♡、来たぁっ!」

 

 陰茎の全てを包み込む熱。忙しく快楽を与え続ける肉の饗宴。

 先程俺が主導権を握っていた時と違うのは凛がリードを握っていてその快感のタイミングも強度も全然予想が付かない事。

 

 「ここ♡、これっ♡、ここっ♡、いいっ♡」

 

 腰の動きは加速しきって、とめどなく女の水があふれ出てくる。スイートスポットを見つけたのか激しくこすりつけるような動きが繰り返され、じゅぶじゅぶと結合した部分から音が聞こえてくる。

 熱に浮かされたその動きに、俺の上で跳ねるように乳房を踊らされる凛に少し悪戯心が芽生える。

 腰を掴んで、凛が重力と共に落とす動きに従って、その動きを加速する。勿論自分の腰も全力で突き上げることは忘れない。

 

 「ひゃああぁぁぁっ♡」

 

 イった。間違いなく。

 この体勢だと先程よりも深く入るらしい。屹立の先端は子宮に触れるというよりもはやめり込んでいるだろう。

 埒外の突き込みに凛は動きを止めてしまった。イっている以上無理もない気がするが俺の気が済まない。だから、俺の方が動く。

 

 「えっ♡、だめ♡、それ♡、だめぇ♡、お腹…♡、子宮入っちゃううぅぅ♡」 

 

膝を立てて下から腰を振り、凛の腰を掴んで無理矢理動かす。

 その反応は先程よりもはっきりとして、腰から首までぴんと伸びて、天井を見上げての絶叫。舌から見上げる凛の身体は曲線の美しさに2つの頂点が添えられてる。

 その姿にメラメラと心が燃える。

 

 「ま、また♡、イくっ♡ 子宮♡、おかしくなっちゃうっ♡」

 

 腰の動きは一層激しくなり、水音も泡がはじけるぱちゅぱちゅとした音に変わっている。

 

 「ああっ♡、イっ♡、 …またっ♡、あっ♡」

 

 凛もほぼ突き上げるごとに絶頂を覚えている。しかしそれは同時に俺も限界がすぐに訪れることを意味する。

 高速での摩擦はこれまで以上に奥まで己が入り込んでしまって、そこからの快感はこれまでよりもずっと烈しい。マッチ棒で焼かれていたのがバーナーに変わったように、1センチ、いや1ミリでさえ動かす瞬間に電流が走る。

 

 「凛! また、俺っ、出すぞ!」

 

 最後の最後の為に全力を。これまでをしのぐ速さの往復運動で目のくらむほどに膨れ上がる快感。

 

 「あぁっ♡、…凄い♡ 膨らんでるぅ♡ あれっ♡、また♡、ちょうだいいぃぃ♡」

 

 限界まで膨らみ切った怒張からの放出。まさに爆ぜるような一撃。

 

 どびゅっ♥ びゅるるるるっ♥ どびゅるるる♥ ぐびゅ♥ びゅぅぅぅぅぅ♥どぶゅぅー♥ ぐぷっ♥ びゅー♥ ぶびゅーっ♥ どびゅー♥ どるるるる♥

 

 

 「イっ、くぅぅぅぅ♡、 子宮に入ってくるぅぅ♡」 

 

 長い長い射精。

 それが終わった時、凛は倒れ込むように身体を預けてきた。息が胸にかかって少しこそばゆい。

 気絶、ではない。意識はありそうだが、腰も脚も震えている。肩に触れればそれだけでまた大きくびくりと跳ねた。 

 

 「…凛、これはな。 セックスって言うんだ」

 「…セックス…?」

 「そう、本当は俺たちが、男と女が子供を作るときにはこうするんだ」

 「でも、子供は…お医者さんのところじゃないと…」

 胸の中でくぐもった声。凛の中の世界と常識を壊してやろう。

 「そうじゃないんだ。それはこの社会を健全に、綺麗にするための噓なんだよ」

 「…そんな…」

 「でも、信じなくてもいい。 それよりセックス、気持ち良かったろ?」

 「……うん…」

 

 その声はとても小さくてギリギリで聞き取れた。もしかしたらあれだけ叫んでいたことに羞恥を覚えたのかもしれない。

 

 「…でも、もし本当ならさ。 アタシ、赤ちゃんできるの?」

 「確実に、とは言えないけどな。繰り返してたら出来るかも」

 親父が言っていたのは、「自然」受精率という言葉。およそ20から30パーセントというそれは時期もあるということで必ずというにはほど遠い数値。

 「…そっか、そうなんだ。…だから高校の時間をって…」

 「ま、出来たら出来たでまた考えるさ。 また、しような?」

 「……良いよ」

 

 凛との関係はもう10年を超えてる。だけどこの関係は今が最初だ。これからどうなるのかその興奮に期待とが胸躍らせた。

 

 

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