俺専用。快楽命令にとろける美少女と美女の甘堕ちカタログ 作:Mr.クロード
金曜の夕方。編集部のフロアには、週末を前にした開放的な空気が漂っている。
あかりは、デスクで来週の企画書を整理していた。赤茶色の髪を耳にかけながら、パソコンの画面を見つめる。赤いリムの眼鏡越しに映る文字を追いながら、今週のスケジュールを確認する。
「紅葉さん」
背後から声がかかって、あかりは振り返った。
「Kさん」
そこに立っていたのは、営業部のエース・K。28歳、整った顔立ちと洗練されたスーツ姿で、社内でも特に女性社員からの人気が高い男性だ。今月も営業成績トップで、社長賞を受賞したばかりだと聞いている。
「お疲れ様です。今、ちょっといいですか?」
Kが、爽やかな笑顔で尋ねる。あかりは頷いて、彼の話を待った。
「実は、今度の土曜日なんですけど……良いレストランを予約したんです。よかったら、紅葉さんと一緒にディナーしたくて。いかがですか?」
その誘いに、あかりの心臓が一瞬跳ねた。デート、だ。明確に、そういう意図が込められている誘い方。
(綺麗な人……会社で一番人気だって聞いてる)
Kは、誰もが認める二枚目だ。仕事もできて、優しくて、女性への気遣いも完璧。こんな人に誘われたら、普通なら喜んで受けるはずだった。
でも──
頭に浮かぶのは、蒼太の顔。蒼太の手。蒼太の声。
昨夜も、タカヒロが寝静まった深夜に、窓から忍び込んできた蒼太に抱かれた。壁一枚隣の部屋で弟が眠っているのに、声を堪えながら何度もイかされた。朝起きた時、身体中に残る蒼太の痕跡を感じて、顔が赤くなった。
(ごめんなさい……無理)
「あの……ごめんなさい。その日は、予定があって」
あかりは、できるだけ柔らかく断った。神谷さんは少し残念そうに笑ったが、すぐに表情を戻す。
「そっか。残念です。また機会があれば、ぜひ」
「はい……すみません」
神谷さんが去った後、あかりは深く息を吐いた。
(なんで……断っちゃったんだろう)
自問する。蒼太は、恋人じゃない。好きかどうかも、まだ分からない。ただ、身体の関係があるだけ。
でも──
身体が、蒼太以外を受け付けない。蒼太以外の男性に触れられるなんて、想像するだけで拒否反応が出る。
(蒼太……)
携帯を取り出して、LINEを開く。蒼太とのトーク画面。今朝送られてきたメッセージが目に入る。
『今日も可愛かったよ、姉ちゃん』
たったそれだけの言葉なのに、胸が温かくなる。返信を打とうとして、やめた。仕事中に、こんなことを考えている自分が恥ずかしい。
でも、止められない。
あかりの脳裏に、この三ヶ月の記憶が次々と蘇ってくる。
◆◆◆
二週間前の昼休み。編集部の資料室。
「姉ちゃん、ここ……誰も来ないよね」
蒼太が、あかりの手を引いて資料室の奥に連れ込んだ。普段は誰も来ない、古い雑誌のバックナンバーが積まれたスペース。
「え……でも、昼休みだし……っ」
抵抗しようとする言葉は、弱々しく消えていく。なぜなら、蒼太を会社に入れたのは、あかり自身だから。朝、出社した時から蒼太のことを考えていた。触れられたい、求められたい、という欲望が、ずっと身体の奥で疼いていた。
「大丈夫。姉ちゃん、我慢できる?」
蒼太の問いかけに、あかりは首を横に振った。できない。もう、我慢できない。三ヶ月前、初めて蒼太に抱かれてから、あかりの身体は蒼太なしでは満足できなくなってしまった。
壁に押し付けられて、スカートを捲られる。外では、同僚たちが昼食から戻ってくる気配がする。廊下を歩く足音、笑い声、誰かが資料室のドアを開ける音。バレたら、全てが終わる。会社にいられなくなる。
「声、出しちゃダメだよ」
蒼太が耳元で囁く。でも、それは無理な注文だった。蒼太の指が、あかりの急所を正確に責め始める。この三ヶ月で、蒼太はあかりの身体の全てを知り尽くしている。どこを触れば声が出るか、どう動かせば我慢できなくなるか、全部分かっている。
「ん……っ! んん……っ!」
声を堪えようと必死に唇を噛む。でも、快感が強すぎて、喉の奥から漏れ出してしまう。昼間なのに。会社なのに。こんな場所で、蒼太に触られている。
「姉ちゃん、もうこんなに濡れてる」
蒼太の囁きに、恥ずかしさが込み上げる。でも、否定できない。朝からずっと、蒼太のことを考えていたから。今日も触られたい、抱かれたい、と思っていたから。
「だ、だって……っ、蒼太が……あんなLINE送るから……っ」
言い訳する。でも、蒼太は優しく笑った。
「朝の写真? 姉ちゃんの寝顔、可愛かったから撮っただけだよ」
そう、今朝。目覚めたら、隣に蒼太がいた。夜に忍び込んできて、あかりを半ば気絶のような眠りに追い込んで、そのまま泊まったらしい。
タカヒロに気づかれたらどうするのかと焦ったが、蒼太は「大丈夫、朝早いから」と言って、寝起きのあかりにキスをした。
その写真が、仕事中にずっと頭から離れなかった。
「ん……っ、あぁ……っ、もう……っ」
蒼太の指が、中を擦る。気持ちいい。でも、声を出せない。外に人がいる。バレたら、終わり。
でも、止められない。蒼太の指が、あかりの一番敏感な場所を見つけて、執拗に責め続ける。
「イっちゃう……っ、ダメ……っ、こんなとこで……っ」
必死に堪える。でも、限界が近い。
「いいよ。イっていいよ、姉ちゃん」
蒼太の許可の言葉が降りた瞬間、あかりの身体は反応した。全身が震えて、声が喉の奥から溢れそうになる。蒼太が、慌ててあかりの唇をキスで塞いだ。
「んんっ……! んん……っ!」
キス越しに漏れる声を、蒼太が受け止めてくれる。身体が痙攣して、快感の波に飲み込まれる。
昼休みの資料室で。会社で。同僚たちがすぐ外にいるのに。
あかりは、絶頂を迎えてしまった。
◆◆◆
一ヶ月前の深夜。あかりの部屋。
タカヒロが寝静まった夜中の二時、窓をコンコンと叩く音がした。カーテンを開けると、そこには蒼太がいた。
「蒼太……っ、バレたら……」
窓を開けて中に入れながら、あかりは不安そうに囁く。でも、蒼太が部屋に入ってきた瞬間、不安よりも喜びが勝った。
「バレないように、静かにしないとね」
蒼太が悪戯っぽく笑う。あかりは、その笑顔を見て、胸が熱くなるのを感じた。
ベッドの上。タカヒロの部屋は、壁一枚隣。音が聞こえるかもしれない。バレたら、全てが終わる。
「姉ちゃん、今日の下着……赤だったね」
蒼太が、パジャマの上から胸を撫でながら囁く。あかりは、驚いて目を見開いた。
「え……なんで分かるの……っ?」
「考えてたから。ずっと」
恥ずかしい。でも、嬉しい。蒼太の心に自分がいる。蒼太に選ばれている。それだけで、身体が熱くなる。
「姉ちゃん、もう準備できてる」
蒼太の手が、あかりの秘所に触れる。確かに、もう濡れている。
「だ、だって……蒼太が来るって分かってたから……っ」
正直に答えてしまう。蒼太を待ってた。蒼太が欲しかった。寝る前に、シャワーを浴びて、身体を綺麗にして、蒼太のために準備した。
「いい子だね」
褒められると、嬉しい。もっと褒めてほしい。身体が、蒼太を求めて動く。
「蒼太……お願い……して……っ」
自分から、懇願してしまう。三ヶ月前は考えられなかった。でも今は、蒼太に抱かれることが、何より幸せだった。
「声、出さないようにね」
服を脱ぐと、蒼太は後背位でゆっくりと繋がってくる。
あかりは、枕に顔を埋めて声を堪えた。でも、蒼太が動き始めると、堪えきれなくなる。
「ん……っ、あ……っ、あぁ……っ」
小さく、でも確実に声が漏れる。壁の向こうは、タカヒロの部屋。もし起きてしまったら。もし聞こえてしまったら。
その恐怖が、快感をさらに強くする。
「姉ちゃん、感じてる?」
「うん……っ、すごく……っ、気持ち……いい……っ」
素直に答える。蒼太のリズムに合わせて、あかりの腰も動き始める。自分から、求めている。
「もっと……っ、奥……っ」
懇願する。恥ずかしいけれど、我慢できない。もっと、蒼太が欲しい。
「いい子だね、姉ちゃん」
蒼太が、あかりの願いに応える。深く、激しく。あかりは、枕を噛んで声を堪えた。
「イっちゃう……っ、イっちゃう……っ」
限界が近い。でも、声を出せない。タカヒロに聞こえたら、終わり。
「イっていいよ」
蒼太の許可。その言葉で、あかりは解放された。
「んんっ……! んん……っ!」
枕に顔を埋めて、声を殺して、絶頂を迎える。全身が震えて、意識が飛びそうになる。
タカヒロの部屋の隣で。壁一枚隔てた場所で。弟の友人に抱かれて、あかりは何度も何度もイかされた。
◆◆◆
三日前の夕方。マンションの階段。
買い物から帰る途中、階段で蒼太とすれ違った。
「姉ちゃん、ちょっとこっち」
蒼太が、階段の踊り場にあかりを引っ張り込む。
「え……ここ……っ?」
驚くあかり。でも、蒼太は構わずに抱きしめてきた。
「我慢できない。姉ちゃんに会いたかった」
その言葉に、あかりの胸が高鳴る。昼間から、蒼太に会いたいと思っていた。今すぐにでも、触れられたいと思っていた。
「蒼太……でも、誰か来たら……っ」
抵抗する言葉は、弱々しい。本当は、あかりも同じ気持ちだから。
「来ないって。それに、姉ちゃん……もう我慢できないでしょ?」
蒼太の手が、スカートの中に入ってくる。確かに、もう濡れている。蒼太に会えた瞬間から、身体が反応していた。
「ごめん……我慢、できない……っ」
正直に答える。蒼太に触れられたい。蒼太に抱かれたい。その欲望が、もう抑えきれない。
「素直でいいね」
蒼太が、階段の壁に押し付ける。冷たいコンクリートの感触が、背中に伝わる。
「や……っ、誰か来たら……っ」
でも、止められない。蒼太の指が、もう中に入っている。気持ちいい。階段で、外で、誰が来るか分からない場所で。
でも、それがまた興奮を煽る。
「ん……っ、あぁ……っ」
声が漏れる。上の階から、誰かが降りてくる気配。でも、蒼太は止めない。あかりも、止めてほしくない。
「姉ちゃん、もうすぐイきそう?」
「うん……っ、もう……っ」
限界が近い。誰かに見られるかもしれない。でも、止められない。
「イっていいよ」
蒼太の許可。
「イく……っ、イっちゃ……っ」
声を堪えて、あかりは絶頂を迎えた。足が震えて、立っていられない。蒼太が、崩れ落ちそうなあかりを支えてくれる。
階段で。外で。こんな場所で。
あかりは、蒼太にイかされてしまった。
◆◆◆
現在。編集部のデスク。
あかりは、回想から現実に戻った。
(三ヶ月……こんなことばかり……)
気づけば、蒼太なしでは生きられない身体になっていた。会社でも、家でも、外でも。場所も時間も関係なく、蒼太に求められると、拒否できない。
でも──
(本当に好きなのかな……私……)
まだ、分からない。身体は正直。蒼太の声を聞くだけで疼く。蒼太に触れられるだけで濡れる。蒼太に抱かれると、世界で一番幸せだと思える。
でも、それは好きってことなのか。それとも、ただ身体が蒼太に依存しているだけなのか。
携帯が震えた。LINEの通知。蒼太からだ。
『今週末、海行かない?』
その誘いに、あかりの心臓が跳ねた。蒼太と、二人きりで。海で。一日中、一緒にいられる。
返信を打つ指が、震える。
『行きたい』
送信ボタンを押した瞬間、あかりは自分の気持ちに気づいた。
蒼太と一緒にいたい。それだけは、確かだった。
◇◇◇
同じ金曜の夕方。大学のカフェテリア。
蒼太は、タカヒロと向かい合って座っていた。タカヒロが注文したコーヒーが、テーブルに運ばれてくる。
「なあ、蒼太」
タカヒロが、深刻な顔で切り出した。似合わない顔すんなよテニス馬鹿め。
「ん?」
俺は、できるだけ自然に応える。でも、心臓は激しく跳ねている。バレたのか。姉ちゃんとの関係が、バレてしまったのか。
「姉ちゃんのこと……最近、変じゃね?」
その言葉に、俺の心臓がさらに跳ねた。
(バレた……?)
「変って……どういう?」
平静を装う。でも、手のひらに汗が滲む。
「なんか……すごく綺麗になったっていうか」
タカヒロの目が、真剣だった。俺は、その目を見て、少しだけ安心する。バレてはいない。少なくとも、まだ。
「前から綺麗だったけど、最近……なんか違うんだよ。色っぽいっていうか。肌もツヤツヤしてるし、スタイルも良くなった気がする」
タカヒロの言葉に、俺は内心で頷いた。その通りだ。姉ちゃんは、三ヶ月でさらに綺麗になった。毎晩のように抱いて、愛撫して、求め続けた結果が、姉ちゃんの身体に現れている。
「……そう?」
「うん。会社でも、デートに誘われたりしてるみたいで」
その言葉に、胸がざわついた。
(……っ!)
「で、でも断ってるんだろ?」
つい、声が強くなる。タカヒロは、不思議そうに俺を見た。
「うん。全部断ってる。不思議なんだよな。姉ちゃん、恋愛に興味ないのかなって」
タカヒロが、ため息をつく。その表情には、明らかな心配が浮かんでいる。
「俺、姉ちゃんに幸せになってほしいんだよ。ずっと俺の世話ばっかりで、彼氏もいなくて。このままじゃ、姉ちゃん……一生独身かもしれない」
「……そっか」
「姉ちゃん、優しいし、綺麗だし。いい人、見つけてほしいんだけどな」
タカヒロの目が、優しい。その優しさに、違和感を覚えた。
(これは……)
この瞬間、理解した。
タカヒロは、姉ちゃんのことが──本気で、好きなんじゃないか。
「なあ、蒼太。お前から見て、姉ちゃんってどう思う?」
タカヒロが、突然そんなことを聞いてくる。俺は慎重に答えを選んだ。
「綺麗だと思うよ。優しいし、頭もいいし」
「だろ? なのに、なんで彼氏できないんだろうな」
タカヒロは、本気で悩んでいる様子だった。その姿を見て、胸に複雑な感情が渦巻く。
(ブラコンって言うけど……逆もあるのか?)
タカヒロが、姉ちゃんを姉として以上に想ってる可能性。それが、姉ちゃんが俺のことを「好き」だと認めない理由なのか。
三ヶ月。何度も、姉ちゃんを抱いた。色んな場所で。色んな時間に。姉ちゃんの身体は、完全に俺のものだ。俺の指の動かし方を覚え、俺の声に反応し、俺の許可なしではイけない身体にした。
でも──俺は学生で、社会人の姉ちゃんにしてあげられることはセックスしかない。だからなのだろうか、「好き」って言ってくれないのは。「恋人」って認めてくれないのは。
姉ちゃんはいつも、タカヒロのことを気にしてる。タカヒロにバレることを、何より恐れてる。それはタカヒロが、セックスしか与えない俺より、価値のある男だからなのか。
「蒼太、どうした? 難しい顔して」
タカヒロの声に、蒼太は我に返った。
「ああ、いや……なんでもない」
誤魔化す。でも、心の中では焦りが募っていた。
(くそ……焦るな……)
姉ちゃんを、完全に俺のものにしたい。身体だけじゃなく、心も。タカヒロのことなんか気にせず、俺だけを見てほしい。俺を「好き」だと認めてほしい。
携帯を取り出して、姉ちゃんにLINEを送る。
『今週末、海行かない?』
すぐに既読がついた。そして、返信。
『行きたい』
その言葉に、胸が高鳴る。
(よし)
今週末。姉ちゃんと二人きりで、海に行く。そこで──
姉ちゃんの心を、完全に俺のものにする。
◇◇◇
土曜の朝。あかりは白いコンパクトカーを運転して、海岸線の道路を走っていた。
助手席には、蒼太。後部座席には、海水浴の荷物。ビーチパラソル、クーラーボックス、そして水着。
「姉ちゃん、運転上手いね」
蒼太が、窓の外を流れる景色を見ながら言う。あかりは、ハンドルを握りながら微笑んだ。
「ありがと。免許取ってから、結構乗ってるから」
信号待ち。あかりが前を見ている隙に、蒼太の手が、あかりの太ももに触れた。
「ちょ、蒼太……っ、運転中……っ」
あかりの声が、小さく震える。でも、蒼太の手は離れない。
「分かってるよ。触るだけ」
でも、その「触るだけ」が、もう危険だった。蒼太の手が、ゆっくりとスカートの裾を撫でる。その感触だけで、あかりの身体は反応してしまう。
「姉ちゃん、今日の下着……」
「や……っ、聞かないで……っ」
あかりの頬が、赤く染まる。今日の下着は、赤。蒼太の好きな色。昨夜、クローゼットから選んだ時から、ずっとドキドキしていた。
「赤だね」
蒼太が、確信を持って言う。
「な、なんで分かるの……っ」
「姉ちゃんの反応で分かる」
恥ずかしい。でも、嬉しい。蒼太に、全部見透かされてる。それが、あかりにとって何より幸せだった。
信号が青に変わる。あかりは、アクセルを踏んだ。でも、蒼太の手は、まだ太ももに残っている。
「蒼太……っ、事故起こしちゃう……っ」
「大丈夫。姉ちゃん、集中力あるから」
蒼太が、悪戯っぽく笑う。あかりは、必死にハンドルを握りしめた。
(こんなの……集中できない……っ)
でも、止めてとは言えない。蒼太に触れられている。それだけで、もう幸せだから。
海岸線の道路を走りながら、あかりは思う。今日は、蒼太と一日中一緒。それが、何より楽しみだった。
◆
三十分ほど走って、目的地の海水浴場に到着した。週末ということもあって、駐車場はそれなりに混んでいる。
「着いたね」
蒼太が、嬉しそうに言う。あかりも頷いて、車を降りた。
後部座席から荷物を取り出す。ビーチパラソル、クーラーボックス、そしてトートバッグ。その中には、蒼太が選んだ水着が入っている。
「姉ちゃん、楽しみにしてたよ」
蒼太が、あかりの手を握る。人前で。堂々と。
「う、うん……私も……」
あかりの心臓が、激しく跳ねる。蒼太と手を繋いで、海に行く。まるで、恋人同士みたいに。
(恋人……なのかな……私たち……)
まだ、分からない。でも──
蒼太の手の温もりが、あかりに幸せを感じさせていた。
◆
更衣室で着替えを済ませて、あかりはビーチに出た。
赤いビキニ。蒼太が選んだ水着。胸元は深めのカットで、谷間が強調される。腰紐は細く、ヒップラインが際立つデザイン。
「姉ちゃん……」
蒼太の視線が、あかりの身体を舐めるように這う。その視線に、あかりは恥ずかしさで顔が赤くなる。
「や……っ、見ないで……っ」
「見ちゃうよ。姉ちゃん、すごく綺麗だから」
蒼太の言葉に、あかりの胸が高鳴る。三ヶ月前より、確実に身体が変わっている。胸は大きくなり、ウエストのくびれは深くなり、ヒップは丸みを増した。
全部、蒼太に抱かれ続けた結果だ。
「ほら、パラソル立てよう」
蒼太が、あかりの手を引いて砂浜を歩く。人目があるのに、堂々と手を繋いでいる。その姿は、どう見ても恋人同士にしか見えないはずだ。
パラソルを立てて、レジャーシートを敷く。あかりが座ると、蒼太も隣に座った。
「姉ちゃん、日焼け止め塗る?」
「うん……お願い」
あかりが背中を向けると、蒼太の手が肩に触れた。ひんやりとした日焼け止めのクリーム。でも、蒼太の手は温かい。
「ん……」
小さく、声が漏れる。蒼太の手が、背中を丁寧に撫でていく。日焼け止めを塗っているだけなのに、まるで愛撫されているみたい。
「姉ちゃん、肌……すごく綺麗になったね」
蒼太が、耳元で囁く。
「……蒼太のせい」
小さく答える。本当だから。蒼太に毎日触られて、愛撫されて、求められ続けた結果が、こうして肌に現れている。
「そうだよ。姉ちゃんを綺麗にしたの、俺だから」
蒼太の手が、背中から腰へと滑る。その感触に、あかりの身体が震えた。
「蒼太……っ、ここ……人がいる……っ」
「分かってる。でも、触りたくなっちゃうんだよね」
蒼太の手が、あかりの腰のくびれをなぞる。三ヶ月前より、確実に深くなったくびれ。蒼太に抱かれ続けた証。
「姉ちゃん、身体……すごくエロくなった」
「エロいって……っ」
恥ずかしい。でも、否定できない。自分でも分かる。鏡を見るたび、身体のラインが女性らしくなっているのを感じる。
「でも、嬉しい」
あかりが、小さく呟く。
「え?」
「蒼太に……綺麗になったって言われると……嬉しい」
正直に答えてしまう。蒼太のために、綺麗になりたい。蒼太に、もっと喜んでほしい。そう思えるようになった自分が、不思議だった。
「姉ちゃん、可愛い」
蒼太が、後ろから抱きしめてくる。人目があるのに。でも、あかりは嫌じゃなかった。
むしろ、幸せだった。
◆
海水浴を楽しんで一時間ほど経った頃。蒼太が、飲み物を買いにビーチの売店へ行く、と言った。
「姉ちゃん、何飲む?」
「オレンジジュースがいいな」
「分かった。すぐ戻るから」
蒼太が離れて、あかりは一人、パラソルの下に残された。レジャーシートに座って、海を眺める。波の音が心地いい。
でも、一人でいるのは少し寂しかった。蒼太が戻ってくるのを待ちながら、あかりは携帯を取り出してSNSをチェックし始める。
「ねえ、一人?」
突然、声がかかった。
顔を上げると、そこには見知らぬ男性が二人立っていた。どちらも20代半ばくらい、日焼けした肌に派手な海パン。典型的なナンパ目的の男たち。
「あ……いえ、連れがいるので……」
あかりは、できるだけ丁寧に断ろうとした。でも、男たちは引き下がらない。
「え〜、いいじゃん。ちょっとだけでも」
一人が、レジャーシートの端に座り込もうとする。あかりは、反射的に身を引いた。
「本当に、すみません。連れを待ってるので……」
「連れって、彼氏? それとも女友達?」
もう一人が、しつこく聞いてくる。あかりは、答えに窮した。
(蒼太は……彼氏……?)
まだ、そう認めていない。でも、こういう時に「彼氏」だと言えば、諦めてくれるかもしれない。
「あの……その……」
言葉に詰まる。その隙に、男の一人が、あかりの手を掴もうとした。
「俺たち、向こうでバーベキューしてるんだよ。一緒に食べない?」
「触らないで……っ」
あかりが手を引こうとした、その瞬間──
「触るな」
低い声が、響いた。
◇◇◇
飲み物を持って戻ってきた俺の目に、最悪の光景が飛び込んできた。
知らない男が、姉ちゃんに手を伸ばしている。姉ちゃんは、明らかに嫌がっている。
(……っ)
怒りが、一気に込み上げてくる。
「触るな」
声が、低く響いた。持っていた飲み物を近くのテーブルに置いて、大股で男たちに近づく。
男たちが振り返った。俺の剣幕を見て、一瞬怯む。でも、すぐに強がった表情に戻る。
「なんだよ、お前」
「俺の女に、手を出すな」
はっきりと、宣言する。
『俺の女』。
その言葉を口にした瞬間、心の中で何かが確信に変わった。
姉ちゃんは、俺のものだ。俺専用だ。
「蒼太」
姉ちゃんの目が、驚きで見開かれた。でも、何も言わない。ただ、俺の腕を掴んでくる。その仕草が、答えだ。
「お前、この子の彼氏?」
男が、不満そうに聞く。
「そうだ。文句あるか」
一歩前に出る。男たちは、こっちの目を見て、何かを悟ったようだ。
「ちぇ、彼氏いんのかよ。最初から言えよ」
「美人だから声かけたのに、残念」
男たちは、捨て台詞を吐いて去っていった。
その背中を睨みつけながら、姉ちゃんの方を向く。
「姉ちゃん、大丈夫?」
「う、うん……」
姉ちゃんの声が、小さく震えている。俺は姉ちゃんの肩を抱いた。
「ごめん。一人にして」
「ううん……蒼太が、来てくれたから」
姉ちゃんが、胸に顔を埋めてくる。その温もりに、心臓が激しく跳ねた。
◇◇◇
蒼太の腕の中。あかりは、まだドキドキしている心臓を落ち着かせようとしていた。
でも、ドキドキの理由は、ナンパ男のせいじゃない。
蒼太が言った言葉。
『俺の女』
その言葉が、まだ耳に残っている。
「蒼太……」
あかりが、小さく名前を呼ぶ。蒼太が、優しく髪を撫でてくれる。
「なに?」
「さっき……『俺の女』って……」
言葉を続けようとして、止まる。恥ずかしい。でも、聞きたい。
「ごめん。勝手に『俺の女』とか言って」
蒼太が、謝ろうとする。でも、あかりは首を横に振った。
「……ううん」
「え?」
「嫌じゃ……なかった」
小さく、でもはっきりと答える。蒼太の顔が、驚きで固まった。
「姉ちゃん……」
「蒼太が……守ってくれた」
本当だった。ナンパ男に絡まれて、怖かった。でも、蒼太が来てくれた。蒼太が、守ってくれた。
「頼もしかった」
その言葉を口にした瞬間、あかりは自分の気持ちに気づいた。蒼太を、男として見ている。タカヒロの友人としてじゃなく、年下の男の子としてじゃなく。
一人の、頼もしい男性として。
「私は……蒼太の女」
「姉ちゃん……」
蒼太の声が、熱を帯びる。その声に、あかりの身体が反応した。
(また……疼いてる……)
蒼太に守られて、蒼太に抱きしめられて。それだけで、もう身体が熱くなっている。
「姉ちゃん、顔……赤いよ」
蒼太が、悪戯っぽく笑う。
「だ、だって……っ」
言い訳しようとして、できない。全部バレている。
「我慢できない?」
蒼太が、耳元で囁く。その囁きに、あかりの身体がビクッと震えた。
「……っ」
答えられない。でも、沈黙が答えになっている。
「姉ちゃん、ちょっとこっち来て」
蒼太が、あかりの手を引く。パラソルから離れて、海の家の方へ向かう。
人が少ない時間帯。昼過ぎの暑い時間は、みんな日陰で休んでいるか、海に入っている。
「蒼太……どこ……っ」
「更衣室」
◇◇◇
海の家の更衣室。個室に入って、俺は鍵をかけた。
狭い空間。二人きり。
「姉ちゃん」
姉ちゃんを壁に押し付ける。目が、潤んでた。
「蒼太……ここ……っ」
「我慢できない」
本当だった。さっき、姉ちゃんがナンパ男に絡まれているのを見た瞬間、独占欲が爆発した。姉ちゃんは、俺のものだ。他の誰にも、触れさせない。
「さっき、ナンパされて……怖かった?」
「う、うん……」
「でも、俺が守った」
「……うん」
「だから、姉ちゃんは俺のものだよね」
その言葉に、姉ちゃんの頬が赤く染まる。でも、否定しない。
「……蒼太の、もの……」
小さく、繰り返す。その言葉を聞いた瞬間、理性が飛んだ。
「姉ちゃん……」
キスをする。深く、激しく。姉ちゃんの唇を貪る。
「ん……っ、んん……っ」
姉ちゃんが肩に掴まってくる。その手に力がこもっている。
「姉ちゃん、我慢できない」
「う、うん……私も……っ」
姉ちゃんの言葉に驚く。この人から、そんな言葉が出るなんて。
「姉ちゃんが……そんなこと言うなんて」
「だ、だって……蒼太が……守ってくれたから……っ、嬉しくて……っ、それで……身体が……っ」
言葉が途切れる。でも、意味は分かる。姉ちゃんも、俺を求めている。
「姉ちゃんのビキニ姿……ずっと見てて、限界だった」
蒼太の手が、ビキニの紐に触れる。姉ちゃんの身体が、ビクッと震えた。
「や……っ、脱がさないで……っ」
「でも、姉ちゃん……もう濡れてるでしょ?」
ビキニの上から秘所に触れる。間違いない、もう濡れている。
「ぁ……っ」
姉ちゃんが、小さく声を出した。
「姉ちゃん、さっきから……ずっと我慢してたんだ」
「だ、だって……蒼太が……隣にいるのに……っ、触ってくるから……っ」
言い訳する姉ちゃん。でも、その表情は、完全に蕩けている。
「早く……して……っ」
姉ちゃんから、お願いされた。三ヶ月前は考えられなかった言葉。でも今は、姉ちゃんが自分から求めてくる。
「いい子だね、姉ちゃん」
俺は、ビキニの紐を解いた。
◇◇◇
蒼太に、ビキニを脱がされる。上も、下も。全部。
狭い更衣室の中で、あかりは完全に裸にされた。
「や……っ、恥ずかし……っ」
両手で身体を隠そうとする。でも、蒼太が手を掴んで、壁に押し付けた。
「隠さないで。姉ちゃんの身体、全部見たいから」
蒼太の視線が、あかりの身体を舐めるように這う。その視線に、あかりの肌が粟立った。
「姉ちゃん、やっぱり綺麗になった」
蒼太の手が、あかりの胸に触れる。
「ひゃっ……!」
「ここも、大きくなった」
蒼太の手が、胸を揉む。三ヶ月前より、確実に大きくなった胸。蒼太に毎日揉まれて、愛撫されて、大きくなった。
「ん……っ、あぁ……っ」
声が漏れる。外では、人の気配がする。誰かが更衣室の前を通る足音。女性たちの笑い声。
(バレたら……終わり……)
でも、止められない。蒼太の手は、あかりの身体を知り尽くしている。どこを触れば声が出るか、どう動かせば我慢できなくなるか。
「姉ちゃん、ここは?」
蒼太の指が、乳首を弾く。
「ひゃぁっ……!」
大きな声が出そうになって、慌てて口を押さえる。でも、蒼太は容赦ない。
「声、出さないようにね」
そう言いながら、蒼太の手が下へと滑る。お腹を撫でて、腰のくびれをなぞって、そして──
「ん……っ!」
秘所に触れられた瞬間、あかりの身体が跳ねた。
「姉ちゃん、もうこんなに濡れてる」
「だ、だって……っ、蒼太のせい……っ」
本当だった。さっき、ナンパ男から守られた時から、もう疼いていた。蒼太に『俺の女』と言われた時から、身体が反応していた。
「姉ちゃん、エッチになったね」
「な、なってない……っ」
否定しようとする。でも、蒼太の指が中に入ってきて、言葉が続かなくなる。
「ぁ……っ、あぁ……っ」
気持ちいい。蒼太の指が、あかりの一番敏感な場所を擦る。この三ヶ月で、蒼太はあかりの身体の全てを知り尽くしてしまった。
「姉ちゃん、もっと声出して」
「で、でも……外に……人が……っ」
「だから興奮するんでしょ?」
その通りだった。バレるかもしれない。誰かに聞こえるかもしれない。その恐怖が、快感をさらに強くする。
「ん……っ、あぁ……っ、もう……っ」
蒼太の指が、激しく動く。あかりの身体が、それに反応して震える。
「姉ちゃん、もうイきそう?」
「う、うん……っ、もう……限界……っ」
正直に答える。蒼太の指が、あかりを絶頂に導いていく。
「でも、まだダメ」
「え……っ」
蒼太の指が、突然止まった。絶頂の直前で、止められる。
「蒼太……っ、お願い……っ、イかせて……っ」
自分から、懇願してしまう。恥ずかしい。でも、もう我慢できない。
「姉ちゃんが、何が欲しいか言ったら、イかせてあげる」
蒼太の声が、悪戯っぽい。あかりは、顔を真っ赤にしながら、必死に言葉を絞り出した。
「蒼太の……おち○ちん……欲しい……っ」
下品な言葉。三ヶ月前は絶対に言えなかった。でも今は、蒼太のために、頑張って言える。
「どこに欲しいの?」
「お、おま○こに……入れて……っ、奥まで……いっぱいに……して……っ」
言い終わった瞬間、あかりは両手で顔を覆った。恥ずかしい。でも、言わないと、蒼太がくれない。
「いい子だね、姉ちゃん」
蒼太が、ご褒美をくれる。立ったまま正面から繋がる。一気に、奥まで。
「あぁっ……!」
声が出そうになって、蒼太が唇を塞いだ。キス越しに、あかりの声が漏れる。
「んん……っ! んん……っ!」
蒼太が、動き始める。狭い更衣室の中で、壁に押し付けられて、立ったまま抱かれる。
「ん……っ、あぁ……っ、蒼太……っ」
気持ちいい。蒼太と繋がっている。蒼太に満たされている。それだけで、あかりは幸せだった。
「姉ちゃん、声……抑えて」
「で、でも……っ、蒼太が……激しく……っ」
言い訳する。でも、本当は、もっと激しくしてほしい。もっと深く、もっと強く。
「姉ちゃん、エッチな顔してる」
「し、してない……っ」
否定しようとする。でも、自分でも分かる。今の自分、すごくエッチな顔をしている。
蒼太のリズムが、速くなる。あかりの身体も、それに合わせて動く。
「はぁっ……あぁっ……蒼太……っ!」
もう、声を抑えられない。蒼太が、あかりの唇を塞ぐ。キス越しに、声が漏れる。
「んん……っ! んん……っ!」
外では、まだ人の気配がする。でも、もう気にしてられない。快感が、全てを飲み込んでいる。
「姉ちゃん、イっていい?」
蒼太が、耳元で囁く。
「う、うん……っ、お願い……っ、イかせて……っ」
許可を求める。蒼太の許可がないと、イけない。そういう身体にされてしまった。
「じゃあ、一緒にイこう」
「うん……っ、一緒に……っ」
蒼太のリズムが、さらに速くなる。あかりも、限界が近い。
「イく……っ、イっちゃう……っ」
「俺も……っ」
「イくっ……! あぁぁっ……!!」
蒼太が、慌ててあかりの口を塞ぐ。その手越しに、あかりの叫び声が漏れる。
「んんっ……!! んん……っ!!」
全身が痙攣する。視界が真っ白になる。意識が飛びそうになる。
蒼太の腕の中で、あかりは絶頂を迎えた。
海の家の更衣室で。人がすぐ外にいる場所で。
でも、後悔はなかった。蒼太と繋がっていられるなら、どこでもいい。そう思えるほど、あかりは蒼太に依存していた。
◆
「はぁ……っ、はぁ……っ」
二人の荒い呼吸だけが、狭い個室に響く。
蒼太が、ゆっくりと身体を離す。あかりは、壁にもたれかかって、立っていることしかできなかった。
「姉ちゃん、大丈夫?」
「う、うん……」
嘘だった。足に力が入らない。でも、幸せだった。
「すごかったね」
蒼太が、あかりの髪を優しく撫でる。あかりは、その手に顔を寄せた。
「うん……すごく、気持ちよかった……」
素直に答える。蒼太に褒められたい。蒼太に、もっと喜んでほしい。
「ありがとう……蒼太……イかせてくれて……っ」
感謝の言葉を伝える。三ヶ月前は恥ずかしくて言えなかった。でも今は、ちゃんと伝えたい。
「姉ちゃん、可愛い」
蒼太が、額にキスをしてくれる。その優しさに、あかりの胸が温かくなった。
「ねえ……蒼太」
「ん?」
「このまま……もっと一緒にいたい」
小さく、でもはっきりと伝える。蒼太の目が、驚きで見開かれた。
「姉ちゃん……」
「今日……泊まっていかない……?」
その言葉を口にした瞬間、あかりは自分の気持ちに気づいた。
蒼太と、もっと一緒にいたい。一日中じゃ、足りない。夜も、朝も、ずっと一緒にいたい。
「本当に?」
蒼太が、嬉しそうに聞き返す。
「うん……お金、私が出すから……民宿とか、探そう……?」
恥ずかしい。でも、言わないと。蒼太と、もっと一緒にいたい。その気持ちが、もう抑えきれなかった。
「姉ちゃん……」
蒼太が、あかりを強く抱きしめる。
「嬉しい。俺も、姉ちゃんともっと一緒にいたい」
その言葉に、涙がにじむ。
セックスって、おちんちんをオマンコに入れるだけじゃないんだ。自分の欲望を、相手に受け入れてもらうことなんだ。
「じゃあ……決まり、だね」
「うん。今日は、朝まで一緒だね」
二人で、微笑み合う。
外では、まだ人の気配がする。でも、この個室の中は、二人だけの世界だった。
蒼太と一緒にいられる。それが、あかりにとって何より幸せだった。
◆◆◆
更衣室を出て、二人は再びビーチに戻った。もう夕方近く、陽が傾き始めている。
「宿、探そうか」
蒼太が、スマホを取り出す。あかりも頷いて、一緒に画面を覗き込んだ。
「ここ、どうかな。小さな民宿だけど、評価高いよ」
蒼太が指差したのは、海沿いの小さな民宿。『潮風荘』という名前。レビューを見ると、料理が美味しいと評判らしい。
「いいね。予約してみよう」
あかりが頷くと、蒼太は電話をかけた。
「もしもし、今晩、一部屋空いてますか? ……はい、二人です。……本当ですか! ありがとうございます!」
電話を切って、蒼太が嬉しそうに言う。
「取れたよ。しかも、今日は他にお客さんいないって」
「え……貸切?」
「うん。ラッキーだね」
二人で顔を見合わせて、笑った。
他に客がいない。つまり──
二人きりで、一晩過ごせる。
その事実に、あかりの心臓が激しく跳ねた。
「じゃあ、荷物まとめようか」
蒼太が、あかりの手を引く。パラソルを畳んで、荷物をまとめて、車に戻る。
夕暮れの海。オレンジ色に染まる空。波の音。
全てが、ロマンチックだった。
(今日は……蒼太と、ずっと一緒……)
その事実が、あかりを幸せで満たしていく。
車に乗り込んで、民宿へ向かう。海沿いの道を十分ほど走ると、小さな民宿が見えてきた。
『潮風荘』
木造二階建ての、古いけれど風情のある建物。玄関には、女将さんらしき人が立っていた。
「いらっしゃいませ。お電話いただいたお客様ですね」
「はい。よろしくお願いします」
蒼太が、丁寧に挨拶する。女将さんは、二人を見て優しく笑った。
「お若いカップルですね。ごゆっくりどうぞ」
カップル。その言葉に、あかりの頬が赤くなる。でも、否定しなかった。
(カップル……なのかな……私たち……)
まだ、分からない。でも──
今日は、そう思っていたかった。蒼太と、恋人同士として、この民宿で過ごしたかった。
案内された部屋は、二階の角部屋。六畳の和室で、窓からは海が見える。
「お食事は七時からです。それまで、ごゆっくり」
女将さんが去って、二人きりになった。
「綺麗な部屋だね」
蒼太が、窓から海を眺める。あかりも隣に並んで、同じ景色を見た。
夕暮れの海。オレンジ色の空。遠くに見える水平線。
「綺麗……」
あかりが呟くと、蒼太が手を握ってきた。
「姉ちゃん」
「なに?」
「今日……すごく楽しかった」
「私も……」
二人で、微笑み合う。
今日は、まだ終わらない。これから、夕食があって、お風呂があって、そして──
夜が来る。
蒼太と二人きりで過ごす、特別な夜。
あかりは、その時間が来るのを、楽しみに待っていた。
(続く)
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