切り光薄い本いろいろ 作:風剣
※ユウキちゃんガチ泣きさせる予定だしさせます。ユウキちゃん推し脳破壊注意
時系列は一応道場訪問後想定、今後の原作の進行に伴う矛盾はご愛敬
治安が急激に悪くなって自分たちのカードが狙われ出したときのこと。
カードショップMeekingで闇のカードへの対策を皆と練っていたときにサレンさんに言われたことを思い出す。
「闇のカードを使う連中にも、ある程度傾向がある」
「傾向?」
「おおまかに2種類」
無法な力を振りまく呪われたカード。それを使うようなひとたちにもいい思い出はないのだろう(私もないけど)サレンさんは普段と比べても物凄く刺々しい顔と声だったけれど、それでも真剣に私に教えてくれた。
「
「なんて……??」
「前者はまあ、対策さえ整えられてればそこまで脅威度が高いわけでもない。典型的な力に溺れた、理性もなく好き放題するだけのロクデナシ……。勿論極めて危険な存在ではあるけれど、ユウキのように対抗手段を持ち合わせていればまず負けはないと思う」
身につけるデッキケースの存在を意識する。
レガシーカード。
「そいつらは大抵、相手の力量を計る眼すら腐り切ってる。闇のカードの力を過信して欲望のままに突っ込んでくるだけの連中はまだ全然与し易い……。けれど、後者は話が違ってくる」
「え?」
「自分に対抗し得る相手に対して、
温度のない声音で告げられた言葉に、ごくりと息を呑んだ。
「所詮奴らは、カードがなければ超常の力なんか振るえないただの人間。そして──
「気をつけて、ユウキ。あいつらは自分たちへの対抗策をもってる相手に対して、絶対に無策でかかってはこない……。闇のカードを使う奴らは、勝てる勝負でだけ戦う」
***
「キミがユウキちゃんだね?」
「会えて嬉しいよ。キミもそう思うだろう?思ってくれるよねえ。いや、いい。良いんだ。もし思っていなかったとしても──きっと、ファイトが終わればこの運命を悦んで受け入れてくれるから」
──っ。
背筋を駆け抜けるような悪寒が走った。
夕暮れ時、Meekingからの帰路を歩く中で背後からかけられた言葉。まともに顔を見合わせるまでもなく、そのねっとりとした声音をかけられた時点で少女はつんのめるようにして背後の何者かから距離をとり、デッキボードを展開する。
本能的な危機感があった。
目で見るよりも早くよくないものが来るのを知覚。ほとんど反射的にデッキを取り出したのが功を奏したのだろうか……目を見開いた少女の眼前には今にも踊りかかろうとしていた異形があって、ミミズかタコを想起させるような赤黒いヌメヌメは直後見えない壁にぶつかり跳ね返った。
『ゲゲガガガギガッ……⁉』
『ユウキ、大丈夫⁉︎』
「アリーシャ……ありがとう!私は、平気だけど……」
今にも肉に呑み込まれようとしたところにデッキから飛び出し桜色の髪の少女を守ったのは、錫杖を携え異形を打ち払った
「いきなり何!? 貴方は……また闇のファイターなの!?」
「……たいした反応速度だ。それに今の精霊の動き……随分と充溢したスピリッツを宿しているね、レガシーでもあるまいにそこまでの力を発揮するとは。ただの子どもだと思っていたが、なかなか優れたファイターのようだ……。ひひっ、なかなか、食いでがある……」
血をぶちまけたかのような赤黒い髪をした男だった。
黒一色の
相手は闇のカードを使う。臨戦態勢とならなければ――今の奇襲のように、こちらが一方的に追い込まれる。
「さて、さて。さてさてさて……。キミはどんな声を聞かせてくれるのかな……」
「まだ、慣れないけど――!」
相手がカードを取り出す。像――? 真ん中に切れ目が入っていてナニカが溢れ出そうとしているような、いかにも不吉な印象の女性の像。そのカードから噴き出した黒い煙が、周りの空間を真っ黒に染め上げていく。
相手の共鳴率を奪う空間。
闇のフィールド。
ファイトを他者を傷つけるためのそれに変える、非道なルールが押し付けられる。
それを――。
「いくよっ、みんな――力を貸して!」
闇を祓うようにして、キラキラと輝く光が周囲を照らした。
片腕に構えた黄金の腕輪、ぎゅうと握りしめた大切な鍵。そして自分を支えてくれるカードたち。それらを支えにして少女は満身の力を振り絞る。
思い出す、メガバベルでの決戦を。思い出す、感覚を掴んだ二度目の変身を。胎の奥から溢れる熱が全身に広がり――そして、闇に抗うための力が具現化された。
「――ほぉう」
未成熟ながらも女性らしい輪郭の表れつつある性徴期の少女、その身体つきが余すことなく浮き彫りにされた装束。好色な様子を隠しもしない男はうえから下まで少女の肢体をねめまわし、だんだん顔を紅くさせるユウキの姿にニタニタとした笑みを浮かべ口にした。
「随分際どい恰好じゃないか。その年で男を誘うとはまた覚悟の決まった――」
「違うからっ!!」
腹奥から張り上げた否定の言葉とともにデッキボードを展開するユウキに嗤い、構築された闇のフィールドのなかで男もまたデッキを構える。
「まさか
「――っ! 勝手に、決めないで!」
背筋を走る怖気を振り払うように毅然と叫ぶユウキ。この闇のなかに在っても繋がりの喪われない、頼もしい仲間の気配を支えに闇のファイターに立ち向かう、が――。
胸の奥にこびりついた不吉な悪寒は、どうしても消えることはなかった。
「――私のターン!」
「先行だからメインドローはなし、ライフカードを2枚ドロー。土地を――」
じりっと嫌な音が聞こえた。
少女の生命力の具現である
ライフデッキが喪われた瞬間、焦げたような熱と一緒に腿のあたりがすーすーしたのに一瞬動揺して、それでも戦わなければと羞恥を堪えながらユウキは行動を続けた。
「――土地をセットして、私は<ブレイバー・鉄肌>を召喚!すべてのブレイバーは、タフネスが1つ強化されるよ!ターンエ」
「布面積自体はあってよかったじゃあないか。これまで私がヤったなかだと何人かのファイターは命衣流が情婦のような恰好をしていたからな、ライフが半分にもなる頃には胸がすっかり露出して――」
「――ターンエンド!!」
大声でエンドフェイズを宣言しながら、明らかに意図して調子を狂わせてくる男の
「俺のターン。ドロー……。ンンン」
にやりと笑う神父。カードの引きがよかったのか否か。赤黒い頭髪を揺らし嗤う彼に警戒を払い少女はどんなデッキが構築されているのか見定めようと対面する男の動きに注目する。
そして1ターン目から早々に事態は動いた。
「土地をセット。手札を1枚捨て〈ワーム・クインタ〉を場にぃ!」
(ストレージで見たことある、登場時に手札を捨てるデメリットのある、
見間違いかと一瞬思った。
「なっ……」
そうでないことは、実体化を果たしたカードを凝視して嫌というほどにわかった。
わかってしまった。
その闇のカードに、
<ワーム・クインタ>(1)
このクリーチャーが場に出たとき自身は手札を1枚捨てる。できなければこのクリーチャーは破壊される。
スレイヤー
ワーム/人間《三原アカネ》
1/1
『――――ぅ、ぁぁ。ま、たぁ?』
「……!!」
人間だった。
異形にその身を半ばまで取り込まれた、短髪の赤い髪の少女。如何なる手段を使われたのか、彼女がカードに閉じ込められるまでの経緯はユウキには伺い知れない……。
けれど間違いなく、そのうねうねと動く肉塊のなかに囚われて虚ろな目をしている少女は生きた人間だった。
「っ、──、……⁉︎⁉︎」
「なんだ、そんな珍しいものでもないだろう? どこにでもあるカードじゃあないか。……ああ、まあ、
「信じ、られない……。なんでっ、そんな――!」
「ペットといえどヒトひとりを首輪つけて連れまわすわけにはいかないじゃあないか。まあそういうのも悪くはないが、目立つし足も遅い。カードに取り込むと持ち運びもしやすいからなぁ」
絶句する。自分のターンがまわってきたにも関わらずドローをすることすらできないでわなわなと震えるユウキは、その瞳を揺らしながら場に現れたクリーチャーとそれに囚われる少女を凝視する。
見知らぬ相手だ。年頃はユウキよりも少し上くらいか――。あどけなさを色濃く残す容貌に疲弊と恐怖を滲ませる彼女は、均整の取れた身体を穢す触手に弄ばれながらぐったりと力をぬいてされるがままにされている。
クリーチャーに取り込まれた少女の身に起きたことを鋭敏に悟りながら、ユウキはその目に涙さえ滲ませて対面する男を糾弾した。
「ふざけないでよ」
「あなたはっ。……あなた達は!! どうして!! どうしてそんな簡単にっ、ひとを踏みつけにできるの!!??」
「効きそうとは思ってたけど、
「答えて!!」
その訴えを、男は鼻で笑った。
「やりたいことをやっただけだが?」
「――」
「欲しいものは奪う。食らいたければ食らう。金も、女も、国さえも、この闇の力さえあれば欲しいものはなんだって手に入れることができる――。薄汚い教会の掲げる信仰も、それに殉じる聖女たちすらも俺たちを駆逐することはできやしないんだ。だから、嗚呼――。ひひひひっ。見目のいい娘の泣き声を味わうのも、その肢体を貪り尽くしてやるのも、健気に立ち向かってくる正義感に燃えた小娘を同じ目に逢わせてやるのも――。結局たいした理由はないさ。楽しいからやる。愉しいから犯す。それに抗う力をキミがもってるなら……それだって私たちのものにしてやるともさ。ふはははひひっ!」
爛々と目をギラつかせながら言う男の言葉は支離滅裂だ。めちゃくちゃだった。
口調も安定しない。落ち着かなく肩を揺らす男はどこまでも歪で。
それでも、向けられる悪意だけは本物だった。
「――ドロー!」
それ以上彼の言葉を聞く気にはなれなかった。怖気がして、吐き気すらして、頭の奥さえずきずきと痛かった。
ただ、決意を燃やす。怒りを燃料に、必勝を胸に誓う。
「わかった。……あなたは、絶対に許さない」
「――私が勝ったら、そのひとを解放して! 絶対に――絶対に、これ以上あなたを好きにはさせない!」
「いいとも。勝ったら、の話だけれどね」
嘲笑いながら認める男の言葉を聞きながら土地をセットするユウキ。
しかし彼女の頭の中は既に、焦燥でいっぱいになりつつあった。
(――こっちが攻撃したら、相手は必ずあのカードでブロックしてくる! スレイヤーなのだって厄介、だけれど……。闇のファイトではファイターですら攻撃を受ければ重傷になる、
「なんだい手札も見ずにこちらの場ばかり気にして。悩み事かな?」
「っ……!! 私は〈ブレイバー・影刃〉を召喚――パワー・タフネスが1のトークンを2つ生成するよ。ターンエンド!」
「まずは守勢にまわるか。
「……っ」
そのクリーチャーを見た瞬間ユウキが顔を歪めたのは、登場時効果で土地を手札から捨てさせられたからではない。
「
『ひぃ……っ。いやだぁ……』
続いて現れたワーム・クリーチャー。生温かい吐息を吐き出す異形にその身を貪られるツインテールの少女がフィールドを見ては狼狽えて泣き出すのを目の当たりにしたユウキは歯噛みして男を睨む。
「ひひひひっ。どうしたんだい、クリーチャーを見ただけでそんな反応をしてえ。さて、早速動くとしよう――。ワーム・クインタで攻撃!」
「……!」
粘液まみれの肉塊が号令に従い動く。大した攻撃力もない、コスト1の軽量クリーチャー……。だが、目の前に迫ってきたユウキの矮躯よりもひとまわりもふたまわりも大きい怪物は闇のファイトにより実体化を果たし確かな『重み』の乗った脅威と化していた。
眼前に迫り、触手からぐぱっと音を立てて牙でひしめいた『口』を開いたワームが触手をふりかぶる。その圧力にごくりと生唾を呑みながらも、桃色の髪の少女は場に並べたプレイバーを呼んで脅威を退けようとはしなかった。
「……うぁっ!」
横薙ぎに振り抜かれた触手。それに打ち据えられ踏鞴を踏みかけるユウキだったが、怪我はない━━。肩の装飾が砕けて宙を舞い瑞々しい柔肌が露出するなか、呼吸を整えた彼女は泣きそうな顔をする少女に向けて声をあげた。
「大丈夫!」
『……あ。だ、ダメ、逃げ──』
「必ず、助けるからね!」
召喚されたばかりのクリーチャーに肌を嬲られる少女に対しても向けられた言葉。
闇のカードの犠牲者を真っすぐに見つめて誓ったユウキの姿に、男はといえば肩を揺らしてその口元に引き裂いたような笑みを浮かべていた。
――ああ、なんて。
――なんて、与しやすい。
「魔石〈ザ・エントリー〉をセット……。〈ブレイバー・装甲〉を召喚、影刃の効果でトークンを生成……ターンエンド!」
「土地をセット。秘宝〈血染めの環〉を発動!山札のうえから3枚を墓地に置き、俺は墓地から〈呪鎧 ダストシルバー〉を手札に……。〈ワーム・クインタ〉で攻撃ぃ!」
「1体目の〈ブレイバー・装甲〉でブロック!」
「土地をセット。……っ。ターンエンド!」
「ははははっ、配慮が透けてるねぇ! 魔石〈浸蝕の聖杯〉をセット……。クインタで攻撃だ、また攻撃力のないザコでも使うかい!?」
「……ライフで、受けるよ!」
ワームの触手を胸の中心に浴び、命衣流の布地が裂ける。生身だったらひとたまりもなかっただろう攻撃をほとんど無傷で凌げていることに感謝しながら、しかしユウキの表情はどんどん険しくなっていった。
「――。――ふぅーーー、ふーーーー。……だい、じょうぶ……」
頬を汗が伝う。胸が苦しい。呼吸が少しずつ荒くなる。
ここまで不自由なファイトをしたのは、ユウキは初めてだった。
「ターン、エンド……!」
「俺のターン、ドロー。土地をセット――召喚、〈
手札には味方の攻撃力をあげてくれる〈焼刃〉と〈火閃〉。でも出せなかった。攻撃力0のクリーチャーでなければ女の子を取り込んだワームの攻撃をブロックできないから。
攻撃もできない。ユウキがブレイバーを展開して攻めかかれば、男は必ず
次のターン。ユウキは、切り札の
(破壊は絶対ダメ、手札戻しやステイ効果を持ったカードは入ってない……! 除去、はどうなの!? ――本当に消えちゃったり、しない!?)
「苦しそうだねえ」
「楽にしてあげようか?」
けらけらと嗤って。
男は1枚のカードを場に出した。
「〈呪鎧 ダストシルバー〉……このクリーチャーが場にでたとき2体クリーチャーを破壊。その後キミのクリーチャーを1体破壊する」
『ひっ』
「ぇ」
待って。
それって。
「俺は〈ワーム・クインタ〉と〈蝕爛蟲グリーズ〉を破壊。キミの〈影刃〉を破壊しようか」
『い、いやだっ。やめて』
「待って、待って、待ってよ!! おねがい! ねえ待ってってば――やめて!! お願いだからぁ!!」
『いっ、いやぁあああああああああああああああああああ!?!?』
『それやだっ、いやっ、ぎぃぃ……ッッ!!』
血飛沫が舞う。愕然と見守ることしかできないユウキの前で囚われた少女ごと、2体のワームを錆びついた銀色の騎士が斬り捨てた。――直後の斬撃で、ブレイバー・影刃がまっぷたつにされ消えていく――。
桃色の髪の少女が呆然と立ち竦むなか、彼女の顔をみた男はげらげらと嗤い天を仰いだ。
「種明かしをしようか? 闇の力でカード化された人間はファイトにも出せる。破壊・除去をされたところで死んだりもしないよ、
「……!!!! 貴方は、絶対ゆるさな――」
「効果発動」
手元が。
白濁の粘液にまみれた触手に、カードごと囚われていた。
「……⁉」
「浸叫の女神像の効果。場のクリーチャーが破壊されるごとに、相手の手札を1枚破壊する――嘆きの声を聞くといい」
石造りの像に切れ目が入る。開く。中には異形が棲んでいた。
――そこから伸びる触手が、ユウキの手から手札を奪い――牙を剥き出しにしたナニカのなかに――呑まれる。喰われる。破壊される。
勇者王も、また。
『―――――――!!??!?!』
「みんな……!」
カードの苦悶が聞こえた。蒼白になったユウキが言葉を喪うなか――秘宝の効果で墓地から男がたった今破壊された『人質』のカードを回収するのをみて、身を震わせ戦慄する。
またやる気だ。
次のターン、彼は今度こそ盤面を完成させる。そしてユウキの戦意を挫いた瞬間、一気呵成に攻め込んで少女を叩き潰すだろう――。
そうなった場合。
今の娘たちはどうなる? 誰が、あのひとたちを、他にもいるかもしれない犠牲者を助けられる?
――ここで、倒すしかない。
「――!!!! お願い……、みんなっ。力を貸して!」
任せてと、聞こえたきがした。
指をかけた山札、その上が光を放つ。闇にもなお敗けない、強い煌めきを。
「――これだからレガシーは。俺の授かった闇の干渉を、跳ねのけたな……?」
「――ドロぉおおおおお!!」
忌々し気に神父が唸るなか、光を発して引かれるカード。
それが誰なのかは、見るまでもなく分かった。鍵を力強く握るユウキは、手にしたカードを即座に場へと繰り出す――。
『――ユウキ!』
「〈勇気を示す乙女 アリーシャ〉を召喚! そして――。来て!
純白の衣装を纏うアリーシャの登場時効果。異形によって喰い砕かれ墓地に打ち捨てられた勇者王が蘇る。
そして、アリーシャの力で蘇ったクリーチャーは
(今が最大のチャンス! それしかない……! だけど、だけど――)
足りない。
相手のライフは14。それだってコストゾーンの補強を目論んだ
ユウキの場にいるクリーチャーで攻撃できるのは5/5の勇者王、トークンが2つ。相手の場には2/2の女神像。コストゾーンの〈ザ・エントリー〉を駆使しても、なお。
ここで仕留められなければ、相手は溜まったコストと手札で確実にこちらを叩き潰しにくるだろうことは明白だった。それを凌いだとしても、人質を取り込んだワームは確実に盤面に並ぶ。そうなれば手札もなく、除去手段も次のドローに頼るしかないユウキには勝ち目がない。
だけど――。
やるしかない!!
フィールドに現れた勇者王、その場に現れた誰よりも屈強な巨大ロボを見上げる。
――託すことに、決めた
「〈ザ・エントリー〉!このカードをステイして墓地に送り効果発動、勇者王にパワーを3追加!
――勇者王は貫通効果をもっている。女神像が攻撃を阻もうとしても彼は確かにその刃を相手に届け、そのライフを削ってみせるだろう。
そして、
「おねがい、勇者王――!
――勇者王は
闇のカードに対抗し得る3つの力、その一角。セトに連れられていった道場の師範は、レガシーカードには闇の瘴気さえ跳ねのける力があると教えてくれた。
人質を取っているカードそのものには届かなくても。
闇のファイトを構築する舞台そのものを、壊してしまったなら――もうあのひとたちを、傷つけることはできないはず!
「悪だくみしてる顔だ」
「――」
剣を振りかぶっていた勇者王、その動きが停まった。
「3コストを払い瞬間魔法、〈謀殺磔架〉。1/1の
「そんな」
鎖が勇者王を絡めとった。
巨大な鎖。巨大ロボがいくら暴れようと罅ひとつ入らない。
浮かび上がるのは、巨大な槍――。
鎖を引きちぎった勇者王は吼える、その胸を巨槍が貫く。
倒れこむ間際、最後の最期に彼の振るった腕による一撃は処刑人を粉砕し、余波だけで神父を吹
き飛ばし7ダメージを与え……そして、そこまでだった。
「そんな!?!? っ、――まだっ!」
諦めちゃ、諦めちゃダメだ!
「勇者王が破壊されたとき、効果を発動!私は山札からっ、<手を取り合う勇気>、を――。……ひっ」
手が動かなかった。
震えながらたった今山札からカードを引いたばかりの手を見たら、ほっそりとした手首は粘液と肉に呑みこまれていて。
魔法カードも、既に貪られていた。
「あ~~~~痛え。やってくれるじゃ……お?」
頭を抑えながら起き上がった男も硬直するユウキを見ると目を丸くし、自身の腕に装着するボードを確認しては愉し気に嗤う。
「ほお、破壊時のドロー効果って今言ってたな? ……残念、どうやら俺の効果の方は後の処理だったみたいだ。スクリームの処理が先だったら……。まだ希望はあったかもしれないのになぁ!?」
「っ、う、ぅう。……ターン、エンド」
『ユウキ!』
「俺のターン、ドロー。コスト7を支払い――
『きゃぁああああああああああああ!!』
「アリーシャぁ!」
「後は――そうだな、これでいいかな。蝕爛蟲グリーズを召喚っと」
声が途切れる。この闇のなかでも少女のことを支えてくれていた仲間の声が。
ほとんど泣き声になって叫ぶユウキの場には、最早1/1のトークンしかなかった。
ギチギチと、音が聞こえた。
ガシャガシャと、金属音が響いた。
気付けばユウキの前には、血染めの鎧が、飢えた異形が、怪物の棲まう像が――彼女を取り囲むようにして、立っていた。
虚ろな顔をした少女を取り込むクリーチャーも、また。
「ひっ」
「ターンエンド。……おいおいまだサレンダーしないのか、ええ? ならとっととドローしてくれよ、こっちは思い切り吹っ飛ばしてくれた礼をしなきゃならないんだからさぁ」
「……、ぁ。――」
涙で滲む視界のなかで無我夢中になってドローする。
その手は、もう光を灯してはいなかった。
「〈相、殺〉……」
引いたのは、妨害用の瞬間魔法。ライフからは魔石。
当然この状況を打開できるものは、ない。
「……〈勇気サイン〉を、セット……。ターン、エンド……」
「なんだ、本当にサレンダーしないのか。死ぬぞ?」
悠々と近づく男に酷薄に告げられるのに、少女はびくりと肩を震わせた。
既にライフは11。相手は適当なカードでトークンを屠るだけでユウキを嬲り殺しにすることができる。命衣流があったとしても、どこまで保つか――。実体化したカードの戦いで敗れた経験のなかったユウキにすらも、計り知れなかった。
「そうだな。……今すぐ
「――そんな、の」
論外だ。
父さんの形見。大切な友だち。ずっとずっと助けてくれた、かけがえのないカード。自分可愛さにそれを、よりにもよって闇のカードを使う非道の人間たちに渡すなんて――認められるはずもなかい。
怯えまじりになりつつも必死に相手を睨みつけて。首を振って拒絶しようとして――気付く。
なんで、こんなことをいちいち聞かれた?
闇のファイトのアンティは絶対。もう勝ちのほとんど決まった状態で、決着さえつけばあらゆるものを奪える環境下で、こちらに配慮してやる理由もないはずなのに――。
(……できない、理由が……?)
「おい」
急かすように凄む男。鎧によって掲げられる大剣。
少しでも心が挫ければそこから命衣流ごと自分を両断しかねない剛剣――それが振りかぶられているのを見ながら、それでもユウキは首を振った。
「――ぜったい、ヤダ!!」
「……クソガキが。精々後悔しろ」
直後。男のカードによって最後に残っていたトークンが消し飛ぶ。――号令とともに、大剣が、爪が、牙が少女に殺到してそのライフを粉砕した。
「――うぁぁあああああああああああああああああ!?!?」
後方に吹き飛ばされてアスファルトを転がる。ほとんど跳ねるようにして、蹴られた小石か何かのように弾けて転がった少女はそのまま壁に激突して止まった。
ボードが腕から外れて転がる。デッキが散乱する。
「っ、ぅぅぅ、くうう……!?!?」
袈裟懸けに斬られ、大質量に叩き潰され、牙に喉元に食いつかれた。
命衣流は最早ボロ布同然で、全身が痛くて、胸のなかもめちゃくちゃにひっかきまわされたかのような吐き気があった。
けれど、生きている――。
その事実に安堵するよりも早く、足音が聞こえる。
「ぁ――」
「逃げないように。流石にこの先命の保証はできないよ」
「そん、なの……!」
「今のはキミに言ったわけではないんだけれどね」
そう口にして男が翳したカード。ドクンと、音をたてて禍々しく光った直後、彼の手元から勢いよくぬめついた肉塊が飛び出し雪崩れうって少女に襲いかかった。
「えっ……。きゃぁぁぁあ⁉︎」
呆然としていたユウキになす術はない。蹈鞴を踏み後退ろうとした彼女の片脚を触手は容易く絡めとり、遠慮なしに華奢な身体を持ち上げ宙に吊るしあげた。
囚われた脚から伝わる、年端もいかない少女では抵抗さえままならぬ万力の力。自分の四肢が容易く砕かれる様を想像し蒼白になったユウキは、逆さまになった視界でうねうねと動く幾つものの触手が近づいてくるのをみると喉を震わせいやいやと首を振った。
「ぃっ、いやっ、やだ、こないでっ、放し――ひ、いやぁぁぁぁあああああああああああ!!??」
「……ちぃ、アンティもやはり効いてなかった――。相殺したな?忌まわしい
次々に迫る肉塊。得体の知れない粘液をべったりとつけながらユウキの肢体に絡みついた触手は手足を捕らえ、細い腰に巻きつき、白い肌を蹂躙し──そして、消えていく。
あとには、散乱したカードとバトルボード。ボロボロになったボード、凡百のカードの数々には目もくれず、アスファルトのうえに散らばったカードのなかから先ほどと打って変わって光を失ったくすんだカード……
その手は、弾かれはしなかった。
「……わかるね? アンティを結びきれなかった俺や他のファイターがお前たちの主になることはできない。抵抗だって自由さ、やりたければやるといい」
「――その場合。ユウキちゃんがヒトの形を維持できるかは保証できないけれどねぇ?」
そう吐き捨てては小型のケースに2枚のカードを入れた男。主の為に大人しく従うカードの殊勝さを鼻で笑うと、彼はもう一枚のカードを拾い上げた。
口元を弛ませる。歯茎を剥き出しにして笑う。
「……さっきの、良~~い悲鳴だった。その身体、その心、その魂──贄に捧ぐに相応しい。が――まずは、心から摘み取るべきか。俺が直々に手折るとしよう。それまでは……」
「そのなかで、じっくりほぐしてもらえばいい。案外居心地いいかもしれないぞ?」
そのカードには、ほとんど裸の状態で触手の肉獄に囚われ泣き叫ぶユウキの姿が描かれていた。
『
クリーチャー ダスト・レガリア/ワーム 2/2
場に居るクリーチャーが破壊されたとき相手の手札を1枚墓地に送る。
見た目は女神像。中身にはワームがびっしりと巣食い触手を伸ばして相手を貪る。触手版アイアンメイデンとしてユウキちゃんを閉じ込める薄い本用クリーチャー。
『蝕爛蟲グリーズ』コスト2
クリーチャー ワーム 1/1
場に出たとき自分と相手は手札を1枚選んで墓地に送る。
犠牲者はよくこれに辱められながらカードにされている。
『呪鎧 ダストシルバー』コスト3
クリーチャー ダスト・レガリア/ワーム 5/1
場に出たとき自分のクリーチャーを2体破壊、その後相手のクリーチャーを1体破壊する。
『謀殺の磔架』 コスト3
瞬間魔法
1/1のグール・トークンを1体生成。
相手クリーチャー1体のタフネスを次の相手のターンまで1に固定する。