切り光薄い本いろいろ 作:風剣
※長いです。ごゆるりとお読みください。
以下闇ファイター以外出禁
鈍い音が断続的に響く。
その度にくもぐった悲鳴があがった。
「――もう一度聞くぞ。このカードとボードの持ち主の女の子を……お前ら、どこにやった?」
「ひっ……! なっ、なんなんだてめえ……、お゛ご っ 」
死屍累々となって転がる屈強な体格の男たちを従えていた細身の男、その体が勢いよく吹っ飛ぶ。
傍目には軽く胸の中心を拳で小突かれただけ。にも関わらずタックルでも浴びたかのように撥ね飛ばされた男はそのまま壁に背を打ちつけ、ゲホゲホと激しく咳き込む。
その耳元を掠めるように突き出された足が、轟音とともに路地を揺らした。
「ひっ、ひぃぃ⁉︎」
震え上がる男、その頭のすぐ横に叩き込まれた脚は壁を罅割れさせている。もし数センチずれてたら、どうなったか――。容易に自身の末路を想像してしまえた彼からは、
「――もう一度聞くぞ。お前らがどう処分するか話してた、カードとボード。その持ち主の女の子を、テメェらはどこにやった?」
「ひい……! こ、答える、答えるから……あ゛ぁ ⁉︎」
会話で時間を稼ぎ救援を呼ぼうと端末に伸ばした手が絡め取られる。
黒服も裂いて肉に食い込むワイヤー。激痛に悲鳴をあげる男を見下ろすのは、闖入者の少年に付き添ってやってきた、連れをのしたら玩具にしてやろうと目論んでいたサレンだった。
「変な真似はしない方がいい。今のモブは過去一でキレてるから、選択を間違えたらそれが貴方の最期になる」
「いや……、ブチギレてんのはサレンもだろ」
「それはそう。過去1、2を争うライン。だから――とっとと吐け。ごねればごねるだけ、お前の寿命が縮むと思え」
そう突きつけてはワイヤーで腕を危うい音とともに軋ませる少女の紫紺の瞳は今にも燃え盛らんばかりだった。普段の淡白な言動と打って変わって本気の殺意と憤怒を露わとする彼女の声音に、男はたまらず悲鳴をあげる。
「ひ、わ、わかった、わかったからぁ…! が、ガキを連れ込んだのは俺らの拠点だ! ば、場所は――」
尋問をサレンに任せた普夫は、時々響く汚らしい悲鳴に顔をしかめながら無力化した男たち――、闇の領域に囚われて音信不通となったユウキの最後にいた場所で
闇のカードを使われるよりも早く拳とワイヤーで無力化された男たちの隠し持っていた銃や刃物、闇のカードを見つけ次第処分しながら彼らの懐を漁っていた普夫は、探し当てた1枚のカードを確認すると苦虫を噛み潰したような顔をして唸った。
「〈ブレイバー・焼刃〉……」
思い出す。自身のデッキの構築を見直す機会に触れた彼女が、初めて「欲しい」と言い出してパック1つに一喜一憂を繰り返しようやく手に入れたカードを。
『――やったぁーーーーーー!! モブさんっ、モブさんっ! 見て見てっ、引けたよ! 焼刃! これで……勝てるっ! 次からは敗けないよっ!!』
『そっかあ。次の10戦は気持ち妨害と除去割り増しにしておくかな……』
『えぇーーっ!』
『うわーんまた敗けたー! 花葬輪廻つっっっよ! 影刃さんや焼刃さん並べたのはこっちの方が早かったのに、気付いたらパワーでも数でも負けてたんだけど⁉︎』
『速攻付与は通さなかったからねえ。あとこのデッキで一番悪さしてるのは〈名義貸し〉だから、これに対処できたらまた内容は変わってたと思うよ』
『逆に私がコストゾーン破壊されてたんですけど。モブさんの意地悪! 放火魔!なんで植物なのに火をつけてくるのあれ!? ……うーん、なんかいい魔法とかなかったかなあ。モブさんが使えばあんなに強いんだから、私だってみんなの力を引き出せるようにしないと……』
思い出す。勝てば満面の笑顔を浮かべて心から喜び、敗ければ心から悔しさを露わにして嘆き。自分の手にしたカードのことを本当に大切にしていた少女のことを。
奴らは――そんな女の子のなにもかもを、踏みにじりやがった。
「……ユウキちゃんの前で、殺しはしたくないが。流石に抑えられるか、自信がないな」
「同感」
後方であがった悲鳴と命乞いは途絶えていた。思わずこぼしたひとり言に頷くサレンの同意を聴き取るなり足早に歩きだす少年は、ユウキの敗北し連れ攫われた現場から立ち去り闇のファイターの本拠地へと向かっていく。
「場所はわかった。連中闇のカードでいくつかの建物を乗っ取って、そのうちのひとつにユウキの身柄やカードをダシにセトを誘い込むつもりだったらしい。今のところ、別働でMeekingを狙っている様子はないけれど……」
「師匠に頼んで店やユウキちゃんの家族のところに護衛をまわしてもらっているけれど、店長をこれ以上心配させるわけにはいかない。最短最速で助けに行こう」
「モブ、そのカード見せて。……うん、まだこれ、
「……」
言葉を濁す少女の危惧を察しながら、深く、深く息を吐き出す。
全力で己を鎮めなければ、今にもこの場にある全てを破壊してしまいそうだった。
「……とにかく、行こう」
ごめん、ユウキちゃん。
俺は間に合わなかったかもしれない。
だけど――。せめて、生きていてくれ。
必ず、助けるから。
***
やだ。
やだ。 いや。 やだっ、やだっ、いや。
やだやだやだやだ!
「や、いやっ、いやぁっ! やめて、来ないでぇっ。うぅぅっ……! ソコ、触るの、やめてよっ! 放してぇ!!」
呼吸するだけで肺を喉を犯される錯覚をしてしまいそうになる、饐えた空気の充満した空間。
どんなにもがいても抜け出すこと叶わない、四方八方を異形によって囲まれた肉獄。
そこに囚われたユウキは、全身を白濁の粘液に穢されながら触手に嬲られていた。
「――っ、ぅぁぁ、いやだ、ぃッ、やだぁぁあ……!」
掌サイズの胸の膨らみを赤黒い肉が撫であげる。
饐えた臭いを発する粘液にまみれた触手が臀部をさする。
露出した肌を無遠慮に嬲る。臍から鼠径部にかけてのラインをなぞるように動いたソレは、スパッツの上からくにくにっと秘裂に触れた。
手足を懸命に振りまわし拘束を抜け出そうとするも、少女を捕らえる肉の塊はびくともしない。必死に周りを見回して出口を探すも、周囲には今も肢体を掴んでいる異形と同様の肉触手がくまなくひしめいて壁となっている。
ただでさえぴっちりとしたデザインの命衣流も、今や触手粘液に上から下まで侵されてどこまでも頼りない。怪物の体液に塗れた装束は、中学生となり年相応の女性らしい輪郭を宿しつつあるユウキのボディラインをほとんど裸同然に浮き彫りとしていた。
「ぃやっ、やだぁっ。本当に、ほんとうにヤダぁ……! おねがいっ、おねがいだからっ、もうやめてぇっ……! んぅっ、いやぁ、もうやめてよぉ……触らないでよぉ……!!」
うねうね、ぬるぬる。触手が少女の身体を玩弄する。胸も、脇腹も、太腿も、鼠蹊部も、鎮圧した少女の身体を異形は容赦なく蹂躙した。
ぞくぞくとする悪寒、饐えた悪臭への嫌悪、全身をどこまでも穢される不快感……そして敏感なところから広がる、自分で慰めているときのような甘い痺れ。許容し得るキャパシティを容易く超えた辱めに、たまらずその瞳から大粒の涙をこぼす少女はぶんぶんと首を振って触手愛撫を拒絶する。
「ぃやだ……っ、やだぁ……!!」
自分ですら遠慮がちにしか触ってないような場所さえも、粘液まみれの肉塊は玩弄する。
「もう……やめてぇ……っ」
ユウキにも、そういう知識は当然ある。今も無遠慮に異形の怪物によって嬲られている場所が、断じて余人に触れさせることの許されないところであることもわかっていた。
本当なら、大好きなひとに、一生をともに過ごすくらい愛し愛されるような関係となるヒトにだけ捧げたかった純潔。年相応の少女が抱いていた恋愛の理想図が、大切にしていたいと思っていたささやかな夢が、今にも穢し尽くされようとしている現実に少女の心はもう限界まで追い詰められていた。
「ひっ⁉︎ やっ、あっ! やっ、やだっ、ぃやっ──きゃぁぁぁぁぁぁああああああ!!??」
突然、ワレメが食べられた。ユウキにはそうとしか思えなかった。
ぼろぼろになって辛うじて鼠蹊部に張り付いているだけの
耳朶を犯すかのような粘ついた、壮絶な
「――――――。あっ、ふぁっ、あ……っっ????」
「あっ、あっ。ふぁぁぁアあぁ!?!?!?」
腰から力がぬける。全身ががくつく。思考がバカになる。
自身の股から脳天にかけて炸裂したのは本当に自分で慰めているときに経験したのと同じなのか。何が起きたのかわからなくて。今もくちゅくちゅと音を立てながらずっと弾け続けている性感に舌を突き出して痙攣する。
「ぅ、あ。あぁ。な、なに、がぁ――え?」
震えながら状況を確認しようとした彼女だったが、気付けばその鼻先には2本の触手が突きつけられていて。本能の鳴らす警鐘に従って手足に力を籠め抵抗の動きを再開しようとしたのも、腰の抜けた少女にはどうすることもできなくて。
ぐぱっと、眼前の肉塊が『口』を開いたのにひっと喉を震わせた。
『――』
「ッ……」
とめどなく垂れ流される白濁の粘液。ブラシか何かのようにびっしりと生えそろった肉のイボイボ。開かれた口の中心から伸びているのは、舌か何かか。あまりにもグロテスクな異形が近づくのに最早声すら発することもできずに、いやいやと涙を流す少女は首を振る。
いま自分の女陰にナニが張り付いているのかはよくわかった。
そしてこの2本の異形が、どこに狙いを定めているのかも――。
「やら、やだぁ。おねがい、もうやめ――っ」
ほとんどボロ布も同然となった
「っ、ヒィっイっ!? ぎっ。ゃぁあ、あっ、や、ぁ、ぁあああーーーーっっっ!!??」
肉獄の密室に激しい水音が響き、のけぞる少女の叫喚があがった。
「やらぁっ、もうやっ、いやぁ、いやだぁっ! もうそれ、ひぎっ、おかしくなっちゃうからぁ! やめてぇ、おねぇ、おねがいっ、だからぁ!いやだぁ、そこもっ、だいじな、トコなのっ、やめてぇぇっ……!!」
悲痛な悲鳴が薄闇に木霊す。華奢な少女の身体は四肢を囚われているのにも関わらず電流に撃たれたかのように何度も跳ね、涙と汗の雫を散らしながら桜色の髪が振り乱された。
(とまんないっ、きもちわるいのにっ、こんなに乱暴なのにっ、気持ちいいのがとまってくれないっ⁉︎⁉︎ 私の身体、こんな……やだっ、やだやだやだやだっ‼︎ こんなのおかしいっ、おかしいよぉ……つ。私、こんな身体じゃない!なんで、なんでえ⁉︎ また……っ、やだぁぁぁ……!)
異形の凌辱など知るはずもなかった少女性器は触手の開いた口腔に呑まれ貪り尽くされていた。イボのびっしりと生えそろった生温かい肉ブラシがクリも巻き込んで恥丘をこすりあげる。ワレメを好き放題にこねまわし、押し拡げ、吸い上げる。伸びた舌はその肉を割り開かれた秘裂に沈ませ、ぺらぺらの処女膜を舐めあげるとそのまま膣壁を、陰唇をねぶりまわして『開拓』を続けた。
胸にしゃぶりついているのもそれと同じだ。白濁粘液を白い肌にたっぷりとねりこみ、柔肌を嬲り、慎ましい膨らみのなかでつんと自己主張する乳突起を蹂躙する。
もういやだと、何度も何度も訴えているのに。こんなのおかしいってわかっているのに、身体はちっとも言うことを聞いてくれない。火照った身体は芯まで熱くなり、触手の凌辱を前になすすべなく何度も何度も絶頂に導かれていた。
「ぃやっ……いやぁ……っ。 やめてぇ……、おねがいだからぁ、もうゆるしてよぉ……おうちに、かえしてぇ……」
手足からはとっくに力が抜けきっていた。すすり泣きながら凌辱に身を震わせる少女の脳裏によぎるのは、いつだって自分を慈しんでくれた大切なひとたちの面影――。
パパ、ママ、サレンさん、セト店長、ストラちゃん、アリーシャ、勇者王。
――モブさん。
誰か。誰か。おねがいだから。
「――たすけ、て」
***
血みどろ神父と呼ばれる男がいた。
詳細な出自と本名は不明。
当人の服装と言動から教会の関係者ではないかとの疑いが浮上するも声明を出した
「――いやはや、最初にリストをみたときはこんなに楽な仕事はないと思っていたが。流石に、
かつてメガバベルの事務所として利用されていた建物のなかに足を踏み入れてはひとりごちる男に応えるものはいない。配下たちは彼が来るなりお喋りをやめて命令を待っていたし、別の部屋で玩具にされていた少女たちも必死に口を抑え彼の機嫌を損ねないように耐え続けている――。
そんな彼の耳元には、精霊を識る者ならば視えただろう《渦》があった。
「ああ。まだレガシーの屈服は済んでいないのでな。ファイターの娘を堕としてから所有権を放棄させる。無力化が済んだら人質にして
「――ひひっ。まあ待ってな。こちらにはノウハウがある、無垢な相手、冷酷な手合い。純粋な強者――。誰であろうと、人間である以上穴はあるものだ。用意さえ整えば女ファイターごときハメ殺すくらいは容易いさ。貴方の計画は面白い、報酬分の仕事はさせてもらうとも――ん?
「地柩セトの護衛か? まあそれは確かに警戒すべきだが……。――は? あははははっ、冗談を言うな! 共鳴率がないだと? そんなファイターにどうして警戒する必要がある! ふひひひひっ、あー笑いが止まらねえなぁ……。……あ。切れてしまったか、仕方ない。それにしてもあの小娘も面白い冗談を言う……」
からからと笑いながら応接間を改装した自室へと足を踏み入れた男は、どっかとソファに座ると上機嫌そうに『戦利品』を眺める。
「冗談といえば、ああ。この娘もまあ、健気なものだったが――」
真ん中から割り開かれその中身を露わとした女神像、その内側で触手に嬲られる桃色の少女の痴態を眺めながらくつくつと嗤う。
レガシーカードをもつファイターは、時に闇のカードによる共鳴率の簒奪すら意に介さずファイトを続行する――。その点でいえば
間違いなく、星座にも通用する水準だ――。極めて高い共鳴率、強力な
対策が本当に刺さりすぎてずっとファイトの間泣きそうな顔をしていたのは笑ったが。
『貴方は、絶対許さない』
『――大丈夫! 必ず、助けるからね!』
「ああ、本当に……。健気なものだ」
少し、昔を思い出した。
かつて教会に所属していたときに彼がいたのは、
才覚をもち、縁に恵まれ、温かな善性を宿し、真っ当に他者を愛し愛されて生きてきた者。いずれは将来を担う若く未熟な、けれど確かに輝く光。
――それが堕ちる様を眺めているときの、あまりにも甘美な味わいが彼は好きだった。
「さて、どんな仕上がりになったかな……」
そう呟きながら、彼はユウキを取り込んだ闇のカードを実体化させる。
ダスト・レガリア――。かつて聖域を護る役目を担っていた聖遺物たちは、闇に呑まれ異形の棲家へと成り果てた。亀裂の入った浸叫の女神像ががぱっと開き、あっという間になかから溢れ出した瘴気が部屋に充満するなかで男はひゅうと口笛を吹いた。
『ぅぁ……。ぁ――』
惨たる有り様が広がっていた。
上気した頬。とどめなく涙を溢れさせる瞳。あらゆる体液に濡れた肌が照明の光を反射し艶めかしく光る。身に纏っていた衣はボロ布同然とされたうえから触手に嬲られ、少女の秘所を隠すこともままならずにその痴態を晒している。スパッツをずらされて露出させられたワレメからはとろとろと淫蜜を垂れ流し、綺麗な桜色の髪さえもどろどろとした白濁粘液に塗れた彼女に穢されていない箇所などほとんどなかった。
「………………マジか」
すすり泣く少女の痴態を見て一瞬浮かべた愉悦の笑みが引っ込む。片眉を跳ね上げた彼はずかずかと歩み寄っては自身に捧げられた敗北の少女ファイターに迫り、それに気付いたユウキが怯えを露わに身を竦ませるなかで僅かな布地とともに首元に残された金色の鍵を掴み取る。
引き千切れなかった。
「痛っ……! えっ、や、やだっ、触らないで! それは、それはお父さんの――!」
「ああ?
敗北のショック。ライフの全てをごっそりと奪われた虚脱感。――そんな状態で、異形の触手に凌辱された精神的・肉体的苦痛。
それで十分に、彼女とその保有レガシーとの共鳴は途切れると見積もっていた。そうすれば、如何にレガシーといえども彼女を依り代とした十全な力の発揮は望めなくなる。あとは
だが――彼女はまだ、
「……?」
「ちぃっ」
予定が狂った。『悪さ』をしてそうな懐のカードを意識し舌打ちするが――これはこれで『壊しがい』があると思い直す。一転して嗜虐的な笑みを浮かべた彼は、眼前の少女に向け手を振りかぶると勢いよく平手をその胸に叩きつけた。
「きゃぁああああああ!?!?」
勢いよく打ち鳴らされる肉の音。したたかに打擲されたささやかな胸の膨らみが震え、甲高い悲鳴があがる。痛みによる意識の覚醒でようやく自分が男の前でこれ以上ない痴態を晒した状態にあることに理解が及んだのか、途端に元気よくユウキはもがきだしたが彼女を捕らえるクリーチャーの触手は一切の抵抗を許さない。
そのまま掌サイズの膨らみをくすぐるように指の腹で撫でていた彼は、膨らみかけの触手にたっぷりと嬲られた痕跡の窺えるしこり勃った乳突起を僅かな乳肉ごとぎゅうと指で捻りながら乱暴に引っ張った。
「やっ、痛ぁっ、ぁッ、あッ、うっソ、やぁ、擦っちゃ、ぁ~~~~~~~~っ!!??」
苦痛しか与えない乱暴。少女の身体を踏みにじったただの暴力。それだけだ、それだけのはずだった。
にも関わらず被虐の苦痛と同等以上の性感が胸を中心に弾け、一発で絶頂に押し上げられたのに当の少女さえも混乱を露わにして震える。がくがくとのけぞってアクメの余韻に震え、ひくつくワレメから潮を噴きだしながら、なんでと力なく呻いた。
――蝕爛の毒素は問題なく作用している。
「それにしても本当にたいしたものだなぁ君は。なんでこの状況でまだ挫けずにいられる? 教会の狗どもと違いこれといった後ろ盾があるわけでもあるまいに、一般人だろうキミ」
「ぃやっいやぁっ。こないで、さわらないでっ。おねがいっおねが」
自身の身体の異変、異常に火照りきって感度も増してしまっているのを認識できているのかいないのか。混乱のなかでも触られたらそれだけで尊厳を放棄されることには察しがついたのか、男の手が再び近づくのにその瞳を震わせ怯えを露わにするユウキはいやいやと涙を流して首を振るが――それに構わずどこまでも無遠慮に、彼の指はずぶ濡れになった少女雌穴に押し入っていった。
「っ、――!!!! やだっ、あっ、やだぁっ、あっ、あ――――ッ!!」
「とはいえ、それもこの始末だ。なァ、聞かせてくれよユウキちゃん。誰を許さないって? 誰を助けるって?」
「――っ、ぅぅぅ……!」
冗談のようにイかされる。
入口だけ、陰唇を指で割り開かれて乱雑に擦りあげられる。指を第一、第二関節と膣肉に押し込まれかき混ぜるように、指の動くたびに響く淫靡な水音の聞こえやすいようにして貝口から玩弄されていく。
甲高い少女の悲鳴が、打ち捨てられた事務所のなかに響き渡った。
――やめて。
――ゆるして。
――たすけて。
どれだけ泣き叫んだか。数分だった気もするし、何時間もすぎた気がした。
気付けば涙も枯れ息も絶え絶えになっていたユウキから指は引き抜かれていた。どろりと淫蜜でぬめる指を見せつけるようにしてからからと嗤いながら、男は得心のいったように笑う。
「それが支えか」
「……ぇ……」
「なるほど、助け、助けな……。まあ、来るだろうな。レガシーホルダーを見捨てるだなんて選択肢はそうそうないが――誰が来るかな? やはり地柩セトか? それともあの紫色の精霊持ちの女の子かな? どちらもかなりやりそうだが――。そうだな。もし彼女たちが助けにきてくれたら、キミを人質にとって降伏でも呼び掛けてみるかな。それともさっきみたく
「――」
理解ができなかった。その無尽の悪意が。
どこまでも怖かった。ゲームでもしてるかのように愉し気に嗤いながら際限なく溢れてくる邪気が。
身体の火照り以上の悪寒に、身も心も竦むような心地がして、いよいよ触手に囚われながらもがいていた手足の動きを止め大人しくなった少女。
からからと嗤った男は彼女の胸の中心、臍、下腹部へと指を這わせ、ある一点で腕を止めると軽く指を柔らかい肌と肉の奥にあるソレを意識させるように軽く押し込む。
「っ、――?」
「君もよく共鳴するだろう。……そのスピリッツどこで稼働させてるか、なんとなくわかるんじゃないのかい? ――強いファイターの娘はね、
「…………………………や、やめて」
「ここで私に敗けること、幸運に思った方がいい。なにせシャフルの連中は
「いやっ、いやだぁっ! おねがいっ、おねがいだから、もう、そんなことやめて! お願い、おねがいぃ……っ。もう……許してぇ……!」
「――じゃあファイトでもするかい?」
「……ぇ」
ユウキを取り込んでいた触手が彼女を放す。その身が床に降ろされ、へなへなとほとんど裸のまま少女がへたりこむ。
「ふぁ、ファイト……?」
「ああ。もう一度闇ファイトを行い、その結果で話を終わらせようじゃないか。デッキボードと君のカードは捨てたが、まあボードくらいは貸してやろう。レガシーと精霊だって多少消耗しているが使ってもらって構わない。勝てば君は解放され、敗ければ今度こそファイターとしての誇りにかけて君のもつ全てを捧げてもらう。どうだ?」
「……。ぁ……」
もう、ユウキにはまともに戦える自信なんてない。
最早『詰め』の段階であることは、薄々とユウキにも感じ取れていた。
だけれど、彼の提案を断ることは彼の提案に乗るのと同じくらいに怖い。血みどろの髪の男はユウキの名前を知っていた。Meekingで自分が接点をもつひとたちのことも……。そんな闇のファイターがあのような卑劣な手でまたセト店長やサレンを毒牙にかければ――。ユウキの唯一の肉親である母親まで狙われたら――。
今度こそ、耐えられない。
答えに窮しているうちに予備のボードを投げ渡される。カードもケースから取り出されて放られるのを、ユウキは慌てて受け取った。
「ぇ……?」
生気を失ったかのようにくすんだ色合いとなった
『――ユウ、キ……』
「……ねぇ」
効くのが怖かった。
けれど、どうしても聞かなければならなかった。
「他の、カードは……。私の、デッキは……?」
「うん?
「――ぇ」
言ってることがわからなかった。わかってしまった瞬間壊れてしまう気がした。
「ぇ、うそ、うそですよね。ね……?そんな、だって。あれは、私の。私の――」
「だからキミはそのままだとデッキ2枚で俺とファイトをしてもらうことになるな。予備のカードはあるかい? ……くはははははっ! ないよな、ないよなあ!? そんな周到なファイターなかなかいないもんなぁ!!」
「――」
ひどい。
ひどいよ。
みんな。みんな。私の、私の大切な
「……ぅあぁぁ」
もう限界だった。
ぼろぼろと大粒の涙がこぼれおちる。自分のなかでぷつんと、壊れる自分をなんとか繋ぎとめようとして張り詰めた糸が切れて。それでもう、ダメだった。
「うぁぁぁ、あああああああっ、やだぁ! やだぁっ、もうやめて、やめてよっ……。おねがいだからもうっ、かえしてっ、かえしてぇっ!!」
泣き叫ぶ声が響く。命衣流が明滅する。最早そのボロ布はなんの防備にもならないだろうことは容易に想像がついた。
ただの女の子になって泣きじゃくるユウキに舌なめずりして神父が近づき――最後の力を振り絞ったように光を放つ
『ユウ、キ』
アリーシャが名を呼ぶ。今までにない弱り切った、悔恨と疲弊を露わにした声音で。
『ごめんなさい、ひとりにしてしまって。ごめんなさい、守れなくって』
『でも、でもね、もう大丈夫。大丈夫だから。貴方が頑張ってくれたから、ずっと耐えてくれたから』
領域が少女を囲う。捕らえる。ここまで来れば、最早一度敗北を喫した
その直前、建物が揺れた。
「――ぁ?」
『――助けが、来てくれた』
眉を顰め身構える男。彼が感じ取ったのは、巨大な獣による暴力の気配。耳を澄ませば事務所の出入口付近から配下の悲鳴が聞こえたような気がした。
(――たす、け?)
揺れに耐えきれずに床に転がりながら少女の脳裏に思い浮かんだのは、好敵手であり友人のサレンの顔。鮮やかな身のこなしとワイヤー捌きで体格や数の有利不利を覆す『精霊狩り』。
だけど、不思議と。
そこの扉から聞こえてくる足音は、彼女じゃない気がした。
あのひとだったらイヤだなと、自分の痴態を思い出しながら思った。
あのひとだったら本当に泣いちゃいそうだなと、既に決壊を迎えた自分の心が震えるのを感じて思った。
でも、きっと。それより、もっと、ずっと――。
「――失礼します!」
駆け込んできたのは若い男だった。
屈強な体格、どこにでもいそうな顔立ち。柄の悪いチンピラのようなギラついた装束に口元には黒いマスクをつけた黒髪の男。彼は白濁まみれの裸体を晒すユウキに僅かに瞠目し――ユウキは一瞬怯えを露わにして蒼褪め、目を瞬き、丸くし、顔を紅潮させ、涙腺を決壊させてぼろぼろと泣き出し、泣きながらも必死に身体を隠そうとして――すぐに修道服の男の方に向き直り跪いて報告する。
「ボス、襲撃ですっ、突然女ファイターが仲間を返せと……! 闇カードもちが5人も一斉にやられて、なんとか他の連中が領域に引きずり込んだんですがすぐにやられてしまいました……! ご指示を!」
「……思ったより早いな。だがこっちには人質もいる、このガキを助けにきたってことは人質としての価値もあるってことだ……。こいつをダシにすれば動きは止まるだろう、そこを嬲り殺しにしてやる。精々女に生まれたことを後悔させてや――あ?」
いつの間にか、やってきた青年は男の胸倉を掴み取っていた。
ぐいと引き寄せられ、足を払われて体勢を崩す。なんのつもりだと、
「くたばれクソ野郎」
顔面を、ぶち抜く。
「おごっ、ぁ――」
横っ面に深々とめり込んだ拳。首のあたりから響く破砕音。肉と骨を潰す不愉快な手応えに歯噛みしながら、
「……ぁ」
もうもうと埃が舞うなか、呆然と目を見開く。もうこれ以上泣けやしないと思っていたのに、次から次へと涙がこぼれていく。
黒いマスクと入口を固めていたチンピラから奪った趣味の悪い上着を脱ぎ捨てた普夫の姿を見たユウキは、泣き腫らした目で彼を見上げながらぱくぱくと口を開いて、閉じて。
「モブ、さ」
よろめきながらなんとか起き上がろうとして、近づこうとして――。
『ユウキ!』
「ユウキちゃん危ない!こっちへ!!」
――へ?
振り返ったら、またあの像がいて。そこは開かれていて。――肉が、触手が。伸びて、絡みついて。少女の身体を、捕らえていて。
「いやっ、いやぁぁっ、もういやぁぁ! なんで、なんでぇっ。やだ、助けてぇ! モブさぁん!!」
泣き叫ぶ。すぐに近づいて来てくれた普夫が妨害しようと次々に伸びる触手を引き千切り肉の塊に拳を叩きつけて進路を確保しようとするのを見ながら、必死に手を伸ばす――絡めとられる。押し込まれる。
――また、あそこに。閉じ込められる。
「――ユウキちゃん!!」
閉じようとする像を抑え込みながら。
『領域』に呑まれようとするあのひとは、私の姿をみて顔を歪ませながら叫んだ。
「もう少しだけ、耐えてくれ!! ――絶対に、助けるから!!!!」
「――」
正直、本当にもう無理だった。
だけど、このひとがあんなに辛そうにしながら、悔しそうにしながら、それでもと叫ぶのを見てしまったら。
――もう少し、頑張らないとって気持ちになった。
「うん!!」
「私――。待ってる。頑張るから!! モブさん!!」
「……妬けるねえ。だが――その娘はもう、私のカードだ」
ユウキちゃんを捕らえた像が消えていく。振り返る。
そこには、カードを手にした血みどろの男が立っていた。
「殺す気で殴ったんだけどな」
「死ぬかと思ったよ。嗚呼――。死ぬかと思った。本当に。だが――まあ、なんとかなるものだ」
ぐっぱっと、奴を殴り壊した右拳を開閉する。
殺せる手応えだった。本気で殺す気だった。だが相手は顔の左半分を陥没され、眼窩も片方潰れ、ひしゃげた部分を片手で覆いながら――、それでも、生きていた。
噂のメイルとかいうやつか? クリーチャーの力にも耐えられる力は装甲に覆われていない部分まで守られるというのか?
いや、それにしては向こうの負った傷はあまりにも大きかった。普通なら死んでいてもおかしくない損傷だ……。奴の持つカードの何かしらの力でも作用しているのか?闇のカードにはまだ自分の知らないなにかがあるのか?
今となってはどうでもいいことだ。
いずれにせよ、初手で奴を殺せなかった俺の不手際でしかなかった。
サレンにこの場を任されておきながら、クソ野郎に闇のカードの使用を許す失態。異形の触手に囚われたユウキちゃんにあんな顔をさせてしまったことを含めて。
――必ず。取り返す。
「まずは手足からもぎとろう。キミが来たときのユウキちゃんの顔と、声。イ~イものだったぁ。あの娘の前で
「頭は残してくれるなんて親切だな。顎さえ無事ならお前の喉笛噛みちぎってやるよ」
闇に互いに呑まれながらの会話。ファイトが始まる。
「痛ぅ……私のターン。ドロー。……それにしても、よくもまあ鍛えられた拳だった。教会の尖兵ではあるまいが――。ここでキミを仕留められれば、それは大きな収穫だ。後顧の憂いを排除できる」
「……」
「コストに土地をセット。手札を1枚捨て――〈ワーム・クインタ〉を場にぃ!」
「あ゛?」
肉に埋もれた女体。
実体化されたカード。異形の怪物に弄ばれながら、ときどき喘ぎ声をあげる少女。
ソレを見た瞬間、俺はユウキの敗北した理由を悟った。
一瞬で沸点を超える。束の間、次の一手を考える思考さえ放棄した。青筋を浮かべ、手札のカードを握りつぶしそうになるのを堪えながら問いかける。
「――お前」
「ひひひっ」
「その娘たちをあの娘に盾として晒して! お前は! ユウキちゃんを嬲ったのか!! お前!!」
「あぁ、あぁ! そうとも――。あれも、いい顔をしていたなあ! 自分が敗けるかもしれないとうっすらと察しながら、それでも必死にこの娘たちを助ける術を探していた!俺の
殺す。こいつだけは絶対に殺す。
虚ろな目をした赤髪の少女を取り込んだワーム・クリーチャー。それを一瞥して効果を思い出し、先程実体化させられていたクリーチャーも併せある程度相手のテーマを絞り込む――。人質を用いての場の停滞、手札破壊に墓地利用ももしかしたらあるか? だとしたら、ユウキちゃんのデッキとの相性は本当に最悪だったのだろう。
『――モブさぁん!』
触手に取り込まれて像に取り込まれる前のユウキちゃんの顔を思い出す。
泣き腫らした眼を。汚濁に穢された肌を。助かるという希望から一転して再び囚われの身となったときの彼女の絶望を。
――あの娘の善性を、積み重ねてきたものを。その全てを、こいつは蹂躙しやがった。
「俺のターン。ドロー、土地をセット。……ターンエンド」
ライフデッキが引き抜かれるのに応じて闇が身を蝕んでくるのすら、もうどうだってよかった。
つう、と鼻から流れる血。軽く拭う。べったりと紅いものが指にこびりついている――意識して呼吸を整え頭を振れば視界ががくついた。思っていた以上に自分の調子が悪くなっているのを自覚し眉を顰める。
――頭に血が上りすぎたか。
――今なら、軽く頭を切れば冗談のように血が噴き出してきそうな気さえした。
「はははぁっ俺のターン! 土地をセット――〈蝕爛蟲グリーズ〉を場に! 手札を捨てなぁ!」
「――俺は手札から〈テスタロッサの墓守〉を捨てる」
「はははっ〈ワーム・クインタ〉で攻撃! 」
強かに叩きつけられる異形の一撃を
この程度がなんだ。
好都合だ、相手は本当に舐め腐っている――何もかもを。
雑念を捨てろ。
ローターを回せ。
……必ず、殺す。
「そのエンドフェイズに、瞬間魔法<考選>を発動します。通りますか」
「おぉ?」
「通るならデッキトップを1枚捲り、中身を確認する。そしたらそれを墓地においてもいい。――通りますね。……キープして、カードを1枚引きます」
早速か。
加えたのは、〈石臼〉。殺し方のひとつが決まった。
既に手札には〈増殖の仕組み〉。要求パーツは〈薪の剣火〉〈植物戦鬼の故郷〉。相手の手札破壊を考えれば山札に埋まってる状態なのは都合がいいか。
――これが停められたなら、それはそれで別の殺し方に切り替える。
ただただ、何もさせずに轢き殺す。今の
「ぅ、ぁ」
最悪だった。
本当に最悪だった。
さっきまでのように指示を受けたうえで無限にイかせてくるだとか、そういう動きはない。あるのはただただ、私が動くたびに全身をまさぐってくるだけ。
それでも全身べとべとするし、いやがったら敏感なところをこすって黙らせてくる。泣きべそをかいてたら口の中にヌトヌトの粘液流し込まれて、それからもっと身体のうずうずが酷くなった。
それ以上に。
それ以上に最悪なのが――。
「私のターン!土地をセット――〈浸叫の女神像 スクリーム〉を場に!」
「クリーチャーが破壊されるたびに手札破壊か。それに――」
いやだ。
いやだぁ。
好きな人に、こんな姿見られたくなかったぁ……!!
いい眺めだろ? 私の後ろに立って、闇ファイターのひとがけらけらと嗤う。
もう命衣流なんて解けてた。代わりに犠牲になったのは制服。着慣れたセーラー服はもうめちゃめちゃだし、スカートもパンツも気付いたら溶けて結局ほとんど裸にされてた。そんな私をちらっと見て――モブさんは一言「ごめん」とだけ呟く。
謝らないでよぉ……!
モブさんは……悪くないじゃん……!!
「グリーズとクインタで攻撃!」
「ライフで受けます」
ひゅっと息を呑んだ。
モブさんの場にモンスターはいない。場には秘宝がふたつ、ゴブリンのトークンがひとつだけ。何か考えがあるんだろうけど、普段なら4コストのクリーチャーを相手が出すころもっと盤面を整えているはずなのに――。
――私たちを、意識してる?
私と違って命衣流さえ纏ってなかったモブさんに、牙を剥き出しにした触手を振るうクリーチャーが次々に襲い掛かる。無抵抗のあのひとの身体を打ち据える。やめてって叫んでも、もう攻撃を指示されたワームは止まらない。取り込まれるあのひとたちもそれを止めることなんてできない。
――平然とした顔。まわってきたターン、攻撃を受けて2枚減ったライフデッキからドローして――けれど一瞬、ドス黒い闇が身体を這ったのにモブさんは顔を顰めていた。
痛いはずだ。
辛いはずなんだ。
鍛えてるって、どこかで聞いたことはあったけど。それでも命衣流に守られていた私なんかより、ずっと――!
「~~~~~~~~!! モブさん!」
もう耐えられなかった。
「ユウキちゃん?」
「私のことは良いからっ! 好きにして! このひとが言ってたのっ、破壊されたって除外されたってカードにされたひとが死んだりはしないって! 痛いだけだって!」
「おいおい」
「だから――!!」
「ユウキちゃん」
「俺は大丈夫」
「心配かけてごめんな」
私の顔を真っすぐに見つめて、モブさんは笑っていた。
いつものような、優しい笑顔だった。
「もう少し、我慢してくれ。必ず助ける――瞬間魔法〈残らずの契約〉を発動。通りますか?」
そこからは、凄かった。
「おい――。なんだ、そのデッキ」
「これは除外します」「これは除外します」「これは除外します」「これは除外します」「これは除外します」「これは除外します」「これは除外します」「これは除外します」「これは除外します」「これは除外します」「これはキープ。〈薪の剣火〉を手札に加えます。秘宝〈薪の剣火〉をプレイ、通りますか?通るならセットします」
「コード・
知らないデッキだった。
「秘宝<薪の剣火>を起動。ゴブリントークンを薪に、2コスト得る」「<増殖の仕組み>によりコントロールしているクリーチャーが死亡したためカードを1枚ドローする」「1コスト支払い、カードを一枚捨てて<植物戦鬼の故郷>を起動。1/1のゴブリントークンを1体生成する」
「――この手順を繰り返します」
「は?」
コストを増やして、トークンを出して、生贄にして、ドローしてコストを増やして。デッキを使い潰したと思ったら、墓地から山札に戻るクリーチャーの効果を組み合わせて無尽蔵にコストを増やす。
気付いたら、コストは50枚。
「本当にごめんユウキちゃん、待たせた」
「お前の手札、さっき墓地から回収した2枚のクリーチャーだけだな。墓地から発動するカードは除去が1枚……。ならこれは通る。そうだろう? コスト3を支払い秘宝<石臼>をプレイ。このカードは互いのプレイヤーのデッキの上から2枚を墓地に置く」
「……待て」
「おい、つまり。それは。――俺の場には3人、ガキを取り込んだクリーチャーがいる! 今すぐこいつらを殺すことだってできるんだぞ!!」
「できるならやってみせてるだろ、お前なら。……それに今は俺のターンだ。仮にできたとして、それはお前のターンの話だろう」
「なっ、なっ。な――」
「3コスト支払い、〈石臼〉起動。――<ウタの化身>は如何なる領域からでも墓地に送られた場合、デッキに戻る」
「あ、あぁ。あっ」
「つまりこれからはお前のデッキを壊すだけの作業だ。――ユウキちゃんを返してもらうぞ。石臼を15回発動、きっちり0枚だな」
「ぁぁぁぁあああああ」
「【
ガラガラ、ガラガラとそれは鳴って。
相手のデッキを、完膚なきまでに削ぎ落した。
「あ、あぁぁ。あぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!??!?」
「うるせえよ。――ユウキちゃん!!」
――ぁ。
真っ黒に塗り潰された空間が罅割れる。破れる。
モブさんが、勝ったんだ。
私を捕まえていたクリーチャーが苦しそうに痙攣して、それで――中の私ごと、像が、閉じ
「い゛っ、言っただろう、俺の
「何度も同じことさせるかクソ野郎がッッッ!!!!」
『ギッ――』
身を竦ませてた私の目の前に覆いかぶさる影が見えた。
それは爆弾みたいな音を出して、空っぽの像のなかにひしめいてる触手のバケモノを突き出した足で串刺しにして止めを刺した、モブさんだった。
「敗けたなら大人しく死んでろ、マジで……。ユウキちゃん、大丈夫か?」
私のことを持ち去ろうとしていた触手が灰になるようにして消えて、べしゃって倒れ込みそうになったところを支えてくれたモブさんはそのまま私を優しく降ろしてくれた。
実体化を維持できなくなったクリーチャーが私を置いて消えていくのを確認しながら、自分の上着を脱いで着せてくるモブさんが聞いてくる。
「う……うんっ。大丈夫、へいきだよっ。モブさんが助けてくれたから――」
「頑張ったな。本当にごめんな、待たせて」
ぎゅうと、手を握ってくれた。
温かくて、大きな手だった。
「――う゛ん っ、ん。ほんとうに、だいじょうぶだから。あ、ありがとう」
甘えてしまいそうだった。
こんな格好なのに。あんなにひどい姿をみせてしまった後なのに。今だって、本当にひどい匂いで、なのに。
「……後で渡した方がいいかもだけど、いま渡すかな……。あ、ちょっと待ってくれ」
『――ユウキ!』
声が聞こえた。
アリーシャの声。その声に少し励まされて、同時に捨てられたカードのことを思い出してしまって。折角助けてもらえたばかりなのに苦しくて、気落ちする。
私がクリーチャーに取り込まれてしまったときに床に落としてしまったアリーシャと勇者王。その2枚を手に取ってもってきてくれたモブさんは、慌てて粘液を拭った私の手のうえに大切な相棒を返してくれた。
「あ、ありがとう、モブさ――」
「それと、これ」
「……え?」
一緒に渡されたカードの束。
覚えのある感覚に、慌てて中身を確認する。1枚1枚、決して見逃しのないように。
ぜんぶ、ぜんぶが、間違いなく。
確かに、私のブレイバーデッキ、で。
「ユウキちゃんが攫われた現場に散らばってたのを集めた。一応サレンとも確認したけど、抜けはないよな?」
「………………………………………………モブさぁん」
もう、むりだった。
「ありがとう……、ほんとに、ほんとうに……ありがとう……。う、うぇえ、えぇぇぇん……ッ、ありがとぉ、ほんとうにありがとうモブさぁぁん……!!」
どうしても耐えられなくて、静かになった建物のなかで、モブさんも、様子を見に来てくれたサレンさんも見守る前でわんわんと泣き出す。頭に手を置かれて撫でられるのに、デッキを握ったままたまらずにモブさんに飛びついた。
おずおずと、それでも確かにぎゅっと抱きしめてくれるモブさんに甘えて。私は意識が落ちるそのときまで、泣き続けていた。
・神父のカス
場面外で両手足闇に呑まれて瀕死。
・サレン
有象無象ぜんぶ仕留めた。ユウキちゃん追跡の立役者。
・モブくん
普通にブチギレすぎて体調不良、頭に血が上りすぎてコンディション最悪だったが無事救出を完遂した。
・ユウキちゃん
死ぬほどムラムラして次回モブくんの家に突撃する