※この作品はR-18です。

天江たい年頃   作:158

3 / 3
智紀さんと

 五月病とはどんなものなのか、ご存じだろうか。

 新しい環境に放り込まれたことによるストレスが元となり発症する、心の病である。

 その予防法は至ってシンプル。適度にガス抜きさせてやれば良いのだ。

 以上全ては、智紀がネット上であさった、にわか知識である。

 にわかは相手にならんよ! という誰かの声が聞こえたのは気のせいか。

 

 

 

 龍門渕家別館に備え付けられている遊技場。

 そこにある自動卓を、天江姉妹と智紀、純が囲んでいた。

 渚は学校指定のジャージ姿。

 衣はフリフリの付いた白いワンピースに、同じく純白のハイソックスという組み合わせ。

 智紀はゴシック調のメイド服に身を包み佇んでいる。

 純は黒のタンクトップに、ホットパンツというラフな格好だった。

 今日、透華は本家の方で大事な用事があるらしく留守である。それに付いていった一の姿も

同じく見当たらない。

「……だから今日は変則脱衣麻雀をする」

「お前いつから国広くんの同類(露出狂)になったんだ?」

 気でも狂ったか? と純は胡散臭げな目で智紀を見つめた。

 天江姉妹に脱衣麻雀を挑むというのは、自ら裸に剥かれに行くのも同じである。

「まずはルールを説明する」

「おい、無視かよ……」

 

□ルール

東風戦 アリアリ 16000点持ち

南入なし 同点の場合は上家優先

東4局終了後、順位に応じて衣服の着脱を行う

1位 +1枚

2位 ±0枚

3位 -1枚

4位 -2枚

ハコ下なし 0点ジャストは続行 その場合リーチは不可

ドボン賞は得点者/失点者がそれぞれ1枚着衣/脱衣する

 

「ルールは普通だが、持ち点が半端だな」

「緊迫感を演出するために減らした。一応、親の役満ツモでも持ちこたえられる」

「親の跳直でトビじゃねぇか」

「……振り込みは自己責任。そして、主役はこの箱」

 智紀が取り出したのは、真ん中に穴の空いた長方形の箱。

 コンビニとかでたまにやっているあれだ。

「……1位はこの中に罰ゲームを書いた紙を入れる。全裸になったプレイヤーは、この中にあ

る罰ゲームをこなすことにより、任意の衣服を1枚取り戻すことができる」

「無茶苦茶な要求が入ってんじゃねぇだろーな」

「……大丈夫。まだ何も入れていない」

 まだってことは入れる予定満々じゃねーかと、純は顔を顰める。

「……そして、これが今日の決め手」

 そう言ってドヤ顔で智紀が取り出したのは、無線対戦が可能な携帯ゲーム機。

「自動卓で勝負すると純が負けるのは自明の理。だから、能力の及ばない形で麻雀をする」

「“私と”が抜けてねぇか?」

 確かに助かりはするんだが、何だか納得がいかねぇと、純は抗議の視線を智紀に向けた。

「……使い方はわかる? 問題なければすぐに開始する」

 智紀は純の訴えを意図的に無視して、天江姉妹にゲーム機を手渡す。

「衣は覚えているぞー」

「私も大丈夫」

 元気の良い返事を聞いて、それは良かったと智紀は胸をなで下ろした。

 そして、純の元へポイッと投げ捨てるようにゲーム機をよこす。

 

 

 

(根暗メガネ……絶対脱がす)

 純は打倒智紀と闘志を燃やす。

 

(男女に興味はない。狙いは……ょぅι゛ょ)

 智紀は天江姉妹を見て、メガネの奥にある瞳をあやしげに光らせる。

 

(姉の威厳を見せる時がきたか……)

 衣はない胸を張って、威風堂々を構えている。

 

(純を自然な流れで脱がせられるチャンス……逃さない)

 渚はキッと表情を引き締め、純を見つめる。

 

 四者四様の思惑が入り乱れる、脱衣麻雀の幕が切って落とされた。

 

 

 

牌の表記

萬子 一二三四五六七八九 赤【五】×1枚

筒子 ①②③④⑤⑥⑦⑧⑨ 赤【⑤】×2枚

索子 123456789 赤【5】×1枚

字牌 東南西北白發中

 

第一戦目

東家 純

南家 衣

西家 渚

北家 智紀

 

東1局0本場 ドラ六 親 純

 

純 配牌

一二六七九④④⑤189東西 ツモ③

 

(……聴牌まで遠いな。オリることを考慮して西は残しておくか)

 

切九

 

 この局は見に回ることになりそうだ。

 純がそう結論を出して、のんびりと構えていると、衣が無邪気な声でリーチを宣言した。

「リーチだー」

「わざわざ声に出すな……つーか、早すぎるだろ!」

 画面を見れば、下家の河に①が横に曲げられて置かれている。

 最近の機械はオカルトの影響を受けるようになったかと、純は頭を抱える。

「衣はお姉さんだからな」

「……関係ねぇよ」

 何故か誇らしげに胸を張る衣に、純はゲッソリと疲れ切った顔で言葉を返した。

 そして、迎えた二巡目。

 画面には『W立直一発ツモ裏ドラ3 3000・6000』という無慈悲で残酷な文字列が

並んでいた。

「ひでぇ……」

 

衣 手牌

二三四五五⑨⑨⑨11456 ツモ1 ドラ六 裏ドラ⑨

 

純10000(-6000)

衣28000(+12000)

渚13000(-3000)

智紀13000(-3000)

 

 

 

東2局0本場 ドラ北 親 衣

 

『リーチ』

 八巡目、純の上家の牌が曲げて河に捨てられた。

 

捨て牌

衣

九八南21三

白⑧

 

渚

南東97中8

②②

 

智紀

六3⑥西93

西七(リーチ)

 

純

一東四28中

③

 

 序盤から中張牌が切り出されており、幺九牌があまり見えていない。

 チャンタもしくは七対子の可能性が濃厚である。

 

純 手牌

六六七八【⑤】⑥⑦⑧⑧⑧北北北 ツモ⑦

 

(ありえそうなのはチートイなら北単騎。チャンタなら⑨と發あたりのシャボか……)

 純からは⑧は全て見えている。それにも関わらず、⑨が場に出ていない。

 ならば誰かがまとめて持っている可能性が高い。

(……勝負してみっか)

 純は六切りで追っかけリーチを仕掛けた。

 智紀の危険牌である⑨を掴んでも和了れるし、智紀の現物である⑥が待ちに含まれている。

 發を掴むとマズイが、リーチ自風牌ドラ4で跳満確定、裏が乗れば倍満になる手。

 親かぶりで点棒を失った純としては、多少リスクを冒してでも回収したかった。

(剥いてやる、クソメガネ)

 

 

 

九巡目

智紀 手牌

二二五【五】①①⑨⑨88北發發 ツモ⑥

 

(一発ならず……)

 ノータイムで河に⑥が捨てられた。

『ロン。立直一発自風牌ドラ4 12000』

(は? 点棒……なくなった)

 

純 手牌

六七八【⑤】⑥⑦⑦⑧⑧⑧北北北 ロン⑥

 

純23000(+13000)

衣28000

渚13000

智紀0(-13000)

 

 

 

東3局0本場 ドラ⑧ 親 渚

 

五巡目

渚 手牌

二四六⑥⑥⑦⑦⑧33678 ツモ⑧

 

(親番で勝負手を引いた……)

 タンヤオ一盃口ドラ2を聴牌。

(出和了りなら点数変わらないし、ダマで)

 40符4翻は満貫、リーチを足しても裏ドラが乗らない限り5翻は満貫で変わりない。

 リーチはかけず、切六とした。

(純、待ってろよ)

 渚の脳内では、既に百合の花が咲き乱れていた。

 

 

 

六巡目

純 手牌

三六八①①①③223東東西 ツモ四

 

(さっきから渚がクネクネしている……張ったのか?)

 

捨て牌

渚

北九③2六九

 

智紀

北八一中41

 

純

9南白56

 

衣

⑨發②發3

 

(両面待ちなら四七あたりが危なそうだが……まだわかんねぇな)

 情報が少なすぎる。

 純は現物である六を切り、一旦回すことにした。

『ロン。清一色三暗刻 16000』

「なぁ!?」

 

衣 手牌

一一一三三三五七七七八八八 ロン六

 

(衣は二巡目からはツモ切りだった。つまり、渚が捨てた六を見逃している)

「とんだシスコンが居たもんだ」

 配牌でこの形とは運が良いにもほどがある。

「衣はお姉さんだからな」

 またそれか。参ったと純は天を仰ぐ。

(こいつらの能力、乱数にまで影響するのか?)

 

純7000(-16000)

衣44000(+16000)

渚13000

智紀0

 

 結局、このリードを誰も詰め切れず、第一戦目は衣の勝ちとなった。

 

1位 衣45000 

2位 渚13000 

3位 純6000 

4位 智紀0 

 

「智紀! 衣が1位だから罰ゲームを書くぞ!」

 衣は『汝、衣に膝枕されながら耳かきを受けるべし』と書いて箱の中に紙を入れた。

 自身のお姉さん願望を叶えるための、ささやかでほほえましい罰ゲームである。

 

 

 

「クソッ! ラスは逃れたとはいえ惨敗じゃねぇか」

 ダブリー一発ツモ、さらに裏ドラまで乗ったものを親かぶりしたのは、不運としか言いよう

がない。

 純は心底悔しそうにしながら、スニーカーソックスを脱ぎ捨てようと手を伸ばす。

 しかしその瞬間、智紀から待ったの声がかけられた。

「……言い忘れたことがあった。脱衣する際は、1位が3位の服を脱がし、2位が4位の服を

脱がす」

「何でわざわざ……」

 純はめんどくさそうに、智紀を見やる。

「女同士だし、自分で脱いだのでは恥ずかしがる様子が見られない。せめて、脱がし、脱がさ

せられるくらいはやらないと」

 恥じらいのない脱衣麻雀は、真なる脱衣麻雀ではない。

 顔を赤らめ、涙目になりながら服を脱ぐ。それが本来の姿なのだ。

 智紀は自身の脱衣麻雀観をつらつらと述べる。

 純はバカ言ってんじゃねぇと反論しようとしたが、その前に衣がうれしそうに自身の元へと

駆け寄ってきていた。

「わかった。ジュンの靴下を脱がせば良いのだな」

 誰かの世話をするという行為は、衣の母性本能を激しく刺激したらしい。

 鼻息を荒くして、キラキラと目を輝かせ純を見つめている。

 さすがの純もこれには勝てず、諦めて衣の前に脚を投げ出した。

「それでは……脱がすぞ」

「ああ、頼む」

 衣は純の靴下を脱がすため、地面にペタッと女の子座りをする。

 そして、うんしょうんしょと、かわいらしいかけ声を出しながら、スポン、スポンと靴下を

脱がした。

「できたー。ジュン、これから着替える時、衣が手を貸してもいいぞ」

「ハハッ、考えておく」

 衣は鼻歌でも始めそうなほどご機嫌な様子。

 純もまんざらではなさそうな顔をして答えた。

 

 

 

 衣と純のほほえましいやりとりを、智紀は鼻で笑った。

 果たしてそれは脱衣麻雀と言えるのか。否、ただのおままごとである。

 これだから素人は困ると、智紀は嘆息した。

 警戒されるので、初っ端からやるつもりはなかったが、予定を変更せざるを得なくなった。

(あまり舐めない方が良い。脱衣麻雀の怖さを)

「渚、お願い」

 智紀は立ち上がると、いつもの無表情でおもむろに自身のスカートを捲り上げる。

 黒いニーソックスに包まれた脚と、黒いレースで編まれたスケスケのショーツをありありと

見せつける。

 ショーツの奥からは秘毛が見て取れ、靴下を脱がすのだと思いしゃがんでいた渚には、花園

が露わになっていた。

「えっ!?」

 智紀の突然の凶行に、渚は目を白黒させている。

「……脱がせて、ショーツを」

 さあ、早くと智紀は腰を前に出す。

(……私の勇姿、しかとその眼に焼け付けて)

 脱がすだけではない、脱がされるのもまた一興。

 それが理解できない内は、一流の脱衣麻雀士とは言えないのだ。

 

 

 

(何で!?)

 渚はパニックに陥っていた。

 目の前には両の手でスカートを持ち上げ、今か今かと待ち構えている智紀の姿がある。

 ……がどうすれば良いのかいまいち掴めない。

 今まで自身の過去を見つめ直すと、他人に服を脱がせて貰ったことは多々あったが、逆に脱

がす側に回ったことはなかった。

 姉である衣は、お姉さんぶりたいらしく、世話を焼こうとすると「衣はお姉さんだから」と

いう一言によって却下された。

 幼児体型というか、幼児そのもののようである自身の体と違い、豊満な肉付きの女らしい体

は渚の性欲をひどく刺激する。心臓は今にもはち切れんばかりに激しく脈打っていた。

(さわっても良いんだよな……)

 ゴクリと喉を鳴らし、渚は智紀のショーツを脱がすため、膝立ちになる。

 すると、智紀の秘所が丁度頭の高さと同じ位置にあった。

 そこからはボディソープの匂いと、虫たちを誘い込む花のごとく、芳しい女のフェロモンが

流れている。

「えっと、良いよね?」

「……うん。お願い」

 智紀の許可を得て、ショーツを掴み、下へとずり下げていく。

 ふとももに差し掛かったあたりで、ツンと汗と愛液の入り交じった、すえたメスの香りが渚

を誘惑した。

 見ればショーツのクロッチの部分から秘所へと透明な糸が伸びている。

(私に見られて感じてるのかな……)

 今、智紀がどんな顔をしているのか気になり、渚が上を向く。

 そこにはハァハァと息を荒くして、頬を赤く上気させた智紀が居た。

 いつもと違う表情を見せられ、ドキンと心臓が跳ね上がる。

「……どうしたの?」

 しばし、智紀が普段見せないえっちな姿に心を奪われていたが、声を掛けられ正気に戻る。

 ショーツを掴んだ手を、太もも、膝、ふくらはぎと下に降ろしていく。

 そして、足首まで到達したところで渚は顔を上げた。

「降ろしたよ……だから脚を……」

 本来ならほんの数センチだけで済む行為。

 だが智紀は、己の蜜壺を見せつけるかのように大げさに脚を持ち上げた。

 その魅力に抗いがえず、渚は釘付けとなった。

 桜の花弁のように薄いピンク色をしていたそれは、膣口から流れる液によりいやらしく光っ

ている。

(どうしよう、私もビショビショだ……)

 あふれ出る愛液が渚のショーツを通り越し、ジャージまで濡らしていた。

「……次は反対の脚」

 智紀は、オーバーヒートを起こし硬直している渚に呼びかけた。

 そして、再起動を果たしたのを確認すると、再びゆっくり、ゆっくりと脚を動かす。

「……ありがとう。ちゃんと脱げたよ」

 無事にやり遂げた渚に、智紀は純度100%の無垢な笑顔を返した。

(智紀は綺麗だな……ってダメだダメだ私には純という相手が……)

 これ以上続けていると頭が変になりそうだった。

 終わって良かったと、渚がホッと一息ついていると、智紀から追撃がかけられる。

「次は、ソックスをお願い」

 そう言って智紀はイスに座り、渚に向けて脚を差し出した。

(ごめん、純。私、もう無理かも……)

 渚の頭の中でプチンと理性のタガが外れる音が聞こえた。

 もう我慢できない。

 渚は右手で智紀のニーソックスを脱がしにかかりつつ、左手を自身の秘所に当てた。

「ダメッ!」

 突然、智紀から強い注意が飛んできた。

 そして顔を近づけて、ぼそりと耳打ちする。

「……我慢できたら、あとでシてあげる」

 妖艶なその声に、渚はコクリと頷くことしかできなかった。

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