◇◇◇
「真昼ちゃん……」
浴室を出てベッドにぐったりと横たわる真昼の髪を卓夫が梳く。
汗と石鹸の香りが混じる。
「どうだった?気持ち良かったでしょ。二回もイったんだもんね」
「……」
真昼は何も答えられない。ただ虚空を見つめている。
(わたしは……負けたんだ……)
心の奥で屈辱と諦めが入り混じる。
しかし同時に――さっきの絶頂の記憶が甘く甦っていた。
「明日も……楽しみにしてるよ。おやすみ」
卓夫が満足そうに微笑む。
真昼は無言で顔を背けた。その横顔を静かに窓から差し込む月明かりが照らしている。長く過酷な夜がようやく終わろうとしていた。
卓夫に裸で抱かれたまま、真昼は眠りに落ちた……
◇◇◇
深い闇の底から意識がゆっくりと浮上する。
瞼越しに微かな光を感じる。まだ空が白みはじめたばかりだろうか。
卓夫は天井をぼんやりと見つめていた。
身体が妙に軽く、それでいて満たされたような充足感に包まれている。
(ああ……そっか……)
隣を見やる。そこには安らかな寝息を立てて眠る椎名真昼の姿があった。
昨夜の激しい行為が嘘のような穏やかな寝顔。
朝日を受けて輝く肌は、まるで大理石の彫像のように美しい。
(天使様……か)
藤宮周がこの少女をそう称していた気持ちが今ならわかる気がした。
きっと、学校でそんな風に言われているのだろう。
だがその天使は今、自分だけのものだ。
手に入れたのだ。
(もっと……見たい)
卓夫はそっと毛布を剥いだ。
風呂から出てそのまま寝てしまったので、下着はなく、真昼の裸身が露わになる。
華奢な肩。鎖骨の窪み。桜色の乳首。くびれたウエスト。
そして朝日に照らされわずかに湿り気を帯びた茂み。
(キレイすぎるだろ……)
ゴクリと喉が鳴る。
昨日さんざん味わったはずなのに、新しい欲望が湧き上がってくるのを感じた。心臓が早鐘を打ち始める。
(起きないよね……?)
そっと指先を伸ばす。額にかかった髪を優しく払い、頬に触れる。
温かい。柔らかい。
そのままゆっくりと首筋を辿り、鎖骨へ。
そしてぷっくりと膨らんだ胸へと指を滑らせる。
「ん……」
かすかな吐息と共に真昼の眉が微かに寄った。
しかし目を覚ます気配はない。
それをいいことに卓夫はさらに大胆になる。
右手で乳房を優しく包み込むように揉みしだきながら、
左手はゆっくりと腹を這い下りていった。
茂みに指が触れた瞬間、真昼の身体がピクリと震える。
(あぁ……ダメだ……もう我慢できない)
卓夫は真昼の脚をそっと開かせた。
薄い茂みの奥に昨夜さんざん貪った蜜壷が朝日に照らされヒクついているのが見える。
とてもオトコのモノが入り込んだとは思えない美しさだ。
(ここに……また入りたい)
躊躇いは一瞬だった。
卓夫は自身の熱く滾るものを手に取り、コンドームを被せ、まださほど濡れていない入口にあてがった。
「んんっ……?」
異物感に真昼が小さく呻く。しかし卓夫は構わず腰を押し進める。
ズブズブッ……昨夜の愛液の残りがあるのか、何とか挿入できる。
まだ完全には覚醒していない真昼の膣だが、意外なほど容易に侵入者を受け入れていく。
「あ……ぁ…?」
半分覚醒したような朦朧とした声。それでもまだ夢うつつなのか抵抗は弱い。
その隙をついて卓夫は一気に最深部まで突き入れた。
「んっ!? いやぁっ!? なっ……なにっ!?」
突然の衝撃に真昼はようやく完全に目を覚ました。
自分の上で動いている卓夫の存在と、体内を貫く硬い感触に驚愕する。
「ちょっ……何やってるんですか!? 肝付さん!?」
「おはよう……真昼ちゃん」
卓夫は悪びれもせずニヤリと笑った。
「朝から……真昼ちゃんがあまりにキレイだから、ちょっと欲しくなっちゃってね」
「やっ……やめてください! 今すぐ抜いて!」
真昼は必死で卓夫の胸を押し返そうとする。
しかし密着した腰は微動だにしない。
それどころか卓夫はゆっくりと抽送を開始した。
ズチュ……ヌチュ……
結合部から粘つく水音が響く。
それは紛れもなく真昼自身の蜜が絡みつく音だった。
「あっ……嘘…なんで……? 私……濡れてなんか……」
混乱する真昼をよそに、卓夫は一定のリズムで腰を打ち付け続ける。
「ほら見て……真昼ちゃんのここ……
僕のを入れたらすぐ濡れてくるようになったんだよ」
卓夫が嬉しそうに結合部を指差す。
卓夫の猛々しい肉棒がずっぽりと真っ白な真昼の股間を穿っているのが見える。
そして、確かにそこは既に充分な潤いを湛え、摩擦による痛みはほとんど感じない。
それどころか――
(あっ……だめ……これ……気持ちいい……かも……)
さっきまで見ていた夢の心地良さが蘇ってきた。
暖かくて柔らかいものにもたらされる幸福感。
それが夢の中のものだけでなく、今まさに与えられている快感と重なる。
「あっ……あんっ……いやぁ……」
抗議の言葉とは裏腹に真昼の身体は正直に反応し始める。
膣壁は卓夫のペニスをきゅうきゅうと締め付け、さらなる快感をねだるように蠕動する。
「真昼ちゃんの中……昨日よりもっと絡みついてくる……
名器だし、僕らの相性はぴったりだね」
卓夫は興奮した声で囁くと、真昼の反応を見極めるように角度を変えたり速度を緩めたりする。そのたびに真昼の口から抑えきれない嬌声が漏れる。
卓夫が言ってることはよくわからないが、
あの悍ましい肉棒が自分をまたしても狂わせていくのはわかる。
「んぁっ……そこ……ダメぇ……」
特にGスポットを擦られると腰が跳ねる。
さっきまでの拒絶感はどこへやら、真昼は快楽の波にただ翻弄されていた。
(なんで……こんな……朝から……こんな人に……犯されてるのに……
気持ちいいなんて……)
悔しさと羞恥が入り混じる。だが身体はもう歯止めが効かない。
卓夫のペニスが奥を突くたびに目の前がチカチカし、快感のスパークが散る。
「ひっ……あぁん……また……くる……!」
その瞬間を見計らったように卓夫がラストスパートをかける。
パンパンパンッと肌と肌が激しくぶつかる音が室内に響き渡る。
「あっ……あっ……ああああぁぁっ!!
もうダメっ ! イクっ、イっちゃう」
真昼は背中を大きく仰け反らせ、甲高い悲鳴と共に絶頂に達した。
思わず、ひしと卓夫の肥満体に抱き着いてしまう。ほ
ぼ同時に卓夫も低く呻き、コンドーム越しに熱い精を放つ。
激しい行為が終わり、二人は荒い息をつきながらベッドに横たわった。
真昼は虚脱したように天井を見つめている。
まだ全身が痺れるような快感の余韻に浸っていた。
(わたし……またイカされたんだ……しかも朝っぱらから……)
屈辱感と疲労感が津波のように押し寄せてくる。
だがそれ以上に大きいのは――自分の身体の変化に対する戸惑いだった。
(昨日よりも……ずっと簡単に……しかも……あんなに……
気持ちよく……なっちゃった……)
まるで身体がその行為を待ち望んでいたかのように。
「真昼ちゃん」
隣から卓夫の声がかかる。
振り向くと、満足げな笑みを浮かべた彼の顔が間近にあった。
「僕とのセックス……だいぶ馴染んできたみたいだね」
「……っ」
真昼は顔を赤らめて目を逸らす。否定できない現実がそこにある。
卓夫はそんな真昼の髪を優しく撫でながら呟いた。
「これからもっと……たくさんしようね。真昼ちゃんが……本当に僕のものになるまで」
その言葉は脅迫でもあり、懇願でもあるように聞こえた。
真昼は唇を噛みしめる。このままでは、この男に自分は確実に変えられてしまう。
その恐怖と……わずかな諦観が胸の奥で渦巻いていた。
朝日が窓から差し込み始めた室内で、新しい一日の始まりを告げている。
◇◇◇
シャワーを浴びた真昼は、キッチンに立っていた。
食欲など全く湧かなかったが、卓夫に「お腹すいた」と言われてしまったからだ。
逆らう気力もない。
簡単なフレンチトーストとコーヒーを用意する。
焼いている間にふと卓夫が浴室から出てくる気配がした。髪がまだ濡れている。
「美味しそうだね」
卓夫がトーストの匂いに鼻を鳴らす。
真昼は皿をダイニングテーブルに置くと、冷たい声で告げた。
「これを食べたら……帰ってください」
「え?」
卓夫が意外そうに顔を上げる。
「もう十分満足したでしょう。これ以上……ここに居座る理由はありませんよね」
「そうだなぁ……」
卓夫はしばし考えるふりをしたが、案外あっさり頷いた。
「うん、わかったよ。真昼ちゃんがそう言うなら帰る」
拍子抜けするほどあっさりとした承諾に真昼の胸が戸惑う。
(よかった……わたしに……でも、……こんなにあっさり?)
しかし卓夫は席につく前にスマホを取り出した。
「でもその前に……一つお願いがあるんだけど」
画面にはメッセージアプリのID交換画面が表示されている。
「僕とID交換してくれない?また連絡とりたいし」
「それは……できません」
真昼は即答した。
これ以上この男と繋がりたくはない。
「どうしても?」
「当たり前です。あなたとはもう……関わりたくない」
卓夫の目が一瞬細められる。次の瞬間、彼の表情から笑みが消えた。
「じゃあ仕方ないね」
低い声で呟く。
「お隣りだから、必要な時にトントンするよ」
(そんな、それは困る……万一周くんがいる時に訪ねて来られたら……それに、そもそも隣だから何をされるか……)
しぶしぶ真昼はID交換に応じる。
去り際に振り向いた卓夫は
「君が警察に行きたければ行けばいいよ。僕は抵抗する気ないし」
「え……?」
「もう最高の体験はしたしね。理想の天使様と何度もセックスできて思い残すことはないんだ」
思わぬ卓夫の言葉に真昼は強張る。
脅しではなく本心のように聞こえたからだ。狂気じみた執念を感じる。
「それじゃあね真昼ちゃん。また連絡するよ」
爽やかそうに手を振る卓夫を真昼は黙って見送った。
慌てて鍵をかける音が虚しく響く。
一人残された部屋で真昼は崩れるように椅子に座り込んだ。
「終わった……の?」
ようやくの解放に安堵する一方で、胸にぽっかり穴が開いたような虚無感も拭えない。メッセージアプリには新たに登録された“肝付”のアイコン。
(あんな男と……ID交換なんて)
後悔と屈辱がこみ上げる。しかし同時に――
(これで本当に終わり?終わって欲しい)
卓夫の最後の言葉が頭から離れない。
「最高の体験」「思い残すことない」
本当にこれで全てが終わるのだろうか。
それともこれは……ひと時の静けさなのかもしれない。
真昼は自分のスマホをぎゅっと握りしめた。
画面には無機質な通知音が点滅している。
新たな悪夢の始まりを予感させるように。
◇◇◇
卓夫は満足げに隣の自室に戻った。
スマホ画面に映る新規追加の“真昼ちゃん”のアイコンを何度も眺める。
(ふふ……天使様の連絡先ゲット)
ID交換は予想通り難航したが、警察云々の切り札は効果てきめんだった。
あの驚いた顔。
「最高の体験をした」という台詞も決して嘘偽りではない。
夢にまで見た美少女椎名真昼との素人初体験はまさに天国だった。
(これできっとまた会える……)
メッセージアプリを介せば簡単に真昼と接触できる。
さすがに、本当にドアをトントンノックしてアプローチは危険過ぎてよほどのことがない限り実行は控えたい。
自分から招き入れさせるか、この部屋に来させるか。
そして何としても、真昼とまたエッチして、あの清純な顔が再び快楽に染まるのを想像するだけで胸が高鳴る。
(待っててね……真昼)
卓夫のスマホ画面を撫でる指が妖しく蠢く。
彼の脳内では既に次なる計画が始まっていた。
(まずは、あれを使って真昼の状態を探れれば…… どうかな)